コラム「春秋一話」

 年/月

2019年 12月2日 第7016号

世界経済、リーマン以来の低迷

 景気の減速傾向が強まっている。内閣府は11月14日に今年7~9月期の国内総生産(GDP)の速報を明らかにした。物価の影響を除く実質(季節調整)で前期(4~6月期)に比べ0.1%増となった。年率換算では0.2%増となる。
 GDPの半分以上を占める個人消費は、実質0.4%増と2四半期連続の増加。化粧品、パソコン、テレビなどが増加に寄与したとみられている。10月からの消費増税をにらんでの駆け込み消費が、一定程度は押し上げたものの、前回の消費増税前(2014年1~3月期)の2.0%増に比べると低い伸びに止まった。
 駆け込み需要と反動減を抑えるために、ポイント還元などが行われているが、消費する力そのものが縮小していると指摘されている。駆け込み効果は限定的だった。雇用者報酬の伸び率もわずかだがマイナスとなっている。
 輸出は0.7%の減。日韓関係の悪化に伴い、訪日外国人の減少によって消費が低迷したことが響いた。また、米中摩擦の激化や中国経済の鈍化があり、これらの影響はしばらく続くと見られている。
 実質GDP成長率に対する寄与度をみると、国内需要(内需)は0.2%と4四半期連続の増だが、伸びはわずかだ。また、輸出から輸入を引いた財貨・サービスの純輸出(外需)は0.2%減と2四半期連続でマイナスとなった。
 来期(10~12月期)は消費増税の影響も強まり、マイナス成長も予測されている。内需は力強さを欠き、外需の回復も見通せない。今後の景気動向が懸念されている。
 国際通貨基金(IMF)は、2019年の世界経済成長率は3.0%と、リーマン・ショックでマイナスに落ち込んだ2009年以来の低さと最新の見通しを10月15日に明らかにした。
 今年は世界経済が縮小した09年以降で最も低い伸びとなるという。2020年の予測も3.4%と前回より引き下げている。長期化する米中貿易摩擦による世界的な貿易の減速、企業の設備投資の減少が主な要因としている。
 2019年の成長率は、米国が2.4%と前回より0.2ポイント、ユーロ圏は1.2%で0.1ポイント、中国は6.1%で0.1ポイントといずれも下方修正している。2020年は米国が2.1%、ユーロ圏が1.4%、中国が5.8%と予測している。
 日本の2019年の成長率は前回の0.9%から変更はなかったが、消費増税で家計支出が鈍化し、景気減速は避けられなく、2020年は0.5%まで成長率が低下するとした。家計を温め内需を拡大する施策が求められている。
(和光同塵)

2019年 11月18日 第7014・7015合併号

天皇陛下の即位の儀式に思う

 10月12日に天皇陛下の即位のパレードが予定されていたが、台風被害などに配慮して11月10日に延期となった。11月14日の夜から15日の未明にかけては「大嘗宮の儀」が行われた。即位に関連する主な行事は、一応終ったと言えよう。こうした動きを見ながら、久しぶりに天皇制のあり方などについて考えさせられた。
 パレードには多くの人が参加し、即位の儀礼は共感のうちにあったと報道は伝えている。他方で、この儀式には無関心も多かったとも伝えられる。思い起こせばということになるが、昭和天皇の崩御時に見られたような自粛も含めた雰囲気とは違っていたのは確かである。
 昭和天皇の崩御時には重くるしいムードが自粛という雰囲気と共にあり、ここに天皇統治(神聖天皇)の遺風を感じた。もちろん、これに警戒心や違和感を持った人も、逆に共感した人もいたのだろうが、上皇陛下はこの時のことを思って、象徴天皇にふさわしいあり方を模索し、それが生前退位の提起になったと言われる。
 今回の生前退位から新天皇の即位の儀式を見ていると、象徴天皇のあり方への配慮が見られた。今回の一連の儀式が共感というか、安堵感を持って迎えられた理由であると思う。しかし、儀式のあり方は、その様式を含めて天皇統治の時代の名残を感じさせることもあった。
 日本国憲法に記されているように、国民の総意としての象徴天皇なら、その儀式についてもっと国民的議論があってもよかったと思う。今回の儀式はかなり宗教色が強く、それならば天皇家の私費で行ったらという提起が秋篠宮さまからなされたと伝えられる。
 かつての天皇統治の下では、こうしたあり様などを議論することなどできなかった。終戦を契機に天皇のあり方は転換、それは憲法に記された国民主権に基づく象徴ということになった。神聖天皇ではなく、天皇統治は否認するということを最低の合意とするものだった。それは象徴天皇やそのあり方はタブーなく論議されるべきであり、天皇は開かれた存在であるべきだということだろう。
 一連の儀式を見ていると、かつての神聖天皇時代の遺風であると思わざるえないところもある。いくつもの儀式が古くからのものの踏襲であるのはいい。ただ、それがどのような手続きを経て決まったかであり、そこに国民的な議論が存在したかということだろう。その媒介役を担うメディアの問題もあるように思う。この問題は女性天皇や女系天皇の是非にもつながるだろう。女性天皇や女系天皇は、保守派には否定の意向が強いようだが、これは万世一系というこだわりでもあるとされる。世論の8割以上が女性天皇や女系天皇を容認する考えだと伝えられる。神聖天皇(天皇統治)を否定して出現した日本国憲法に立つならば、女性天皇や女系天皇を否認する理由はない。天皇制維持には議論が深まることが期待される。
 タブーではなく、もっと論じて結論は出せばいいのだろうが、天皇のことになるとどこか身構えてしまうことから自由になることも今の時代には求められるのだろう。女性天皇、女系天皇についての議論は活発ではなく、公然とは論じにくいといことが見受けられる。天皇や天皇制についてもっと自由な議論が必要と、これは儀式を見ながら感想でもあった。
(坂田の力)

2019年 11月11日 第7013号

「憮然」は腹を立てている様子?

 「失望してぼんやりとしている様子」を意味する「憮然」を、「腹を立てている様子」と理解している人が56.7%と半数を超える。同様に「大いに有り難い」の「御の字」を「一応、納得できる」が49.9%、「無味乾燥でつまらない様子」の「砂をかむよう」を「悔しくてたまらない様子」が56.9%と、本来の意味とは違う使い方をする人が多くなっている。
 文化庁は2018(平成30)年度「国語に関する世論調査」の結果を10月29日に公表した。1995年度から毎年実施しているもので、社会状況の変化に伴う日本人の国語に関する意識や理解の現状を調査し、国語施策の参考にすることを目的としている。
 漢字・慣用句・敬語・外来語などの理解度や関心度、会話や手紙といった言語コミュニケーションの現状に対する意識を調査。18年度は無作為に抽出した16歳以上の男女3590人を対象に個別面接を行い、1960人の有効回答数を得た。
 「自分の言うことに、うそ偽りがないことを固く約束するさま」を表す慣用句では、53.7%が「天地天命に誓って」を選び、本来の言い方の「天地神明に誓って」より多かった。同様に「論理を組み立てて議論を展開すること」を「論戦を張る」とする回答が44.0%と、「論陣を張る」という本来よりも多数となった。一方、「前言に反したことを、すぐに言ったり、行ったりするさま」では、「舌の根の乾かぬうちに」という本来の言い方が「舌の先の乾かぬうちに」より多かった。
 また、常用漢字表にはないが、よく使われる字について聞いている。注目されるのは「絆」。「絆を深める」との例文で尋ねたが、「この漢字を使うのがいい」が90.9%に達した。東日本大震災を機に、目にすることが多くなったものと思われる。また「手を叩く」の「叩」、「癌を取り除く」の「癌」も支持が高い。「訊問をする」の「訊」、「道が交叉する」の「叉」、「障碍を乗り越える」の「碍」は相対的に支持が低かった。
 言葉は時代と共に変化する。これまでも敬語などの言葉遣い、慣用句・熟語の誤用が多数派になっていくことや、「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」、漢字の使い方や読み方、外来語の理解度などが話題になってきた。本来は誤用であったものが多数派となった例もある。
 「来る」「食べる」「考える」など「ら抜き」の定着、「お召し上がり下さい」「お帰りになられました」「おっしゃられた」などの二重敬語への抵抗感も既に少ない。「休まさせていただきます」「伺わさせます」「帰らさせてください」などの謙譲語の誤用を、気にならないとする者も半数を超えた。
 「与える」の尊敬語「あげる」を目下などに対して「やる」に代わる丁寧語として用いる傾向も増加。言葉のしつけや言語環境の変化だ。「情けは人の為ならず」を「情けは人のためにならない」とする誤解が正答と並ぶ。「取り付く暇がない」も「島」にほぼ並ぶ。「汚名返上」の誤用である「汚名挽回」も多数派となった。
 会話で、その人の言いたかったことと自分の受け取ったこととが食い違っていた経験は、6割以上が「ある」という。言葉による世代間のギャップが指摘される所以だが、正しい意味を理解することも重要だ。
 国語に関する世論調査では、読書についても回答を求めた。1か月に何冊くらい読むかは、「読まない」47.3%、「1、2冊」37.6%、「3、4冊」8.6%、「5、6冊」と「7冊以上」がそれぞれ3.2%だが、以前と比べ「読書量は減っている」が67.3%に達し、増加傾向にある。
 読書の良いところは「新しい知識や情報を得られる」「豊かな言葉や表現を学べる」「感性が豊かになる」などの回答が多く、「読書量を増やしたい」と思う人は60.4%と、読書の効用は認識している。
 読書の秋だ。じっくりと本に親しみたい。
(和光同塵)

2019年 11月4日 第7012号

母を偲ぶ残された郵便ポスト

 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災から8年、まだ復興は道半ばだ。地震規模のモーメントマグニチュードは9.0、最大震度7を記録した。震源域は岩手県から茨城県の沖まで南北約500キロ、東西約200キロのおよそ10万平方キロにも及んだ。
 地震に伴う津波も記録的だ。場所によっては10メートル以上、最大遡上高は40.1メートルにも達する巨大な津波が発生、東北・関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害が出た。
 震災による死者・行方不明者は1万8429人、建築物の全壊・半壊は合わせて40万4890戸が確認されている(今年7月9日時点)。いまだに約5万人の避難者がいる。自然災害で死者・行方不明者が1万人を超えたのは戦後初めてで、明治以降でも関東大震災、明治三陸地震に次ぐ被害規模だった。

 宮城県石巻市鮎川の鮎川郵便局(佐々木和弘局長)も津波にのまれた。仮設店舗から2016年12月19日に現在の地に移転し、営業を再開している。震災前の郵便局は解体されたが、その前にあった郵便ポストは残った。同じ場所で震災後も地域を見守ってきた。
 しかし、防潮堤が建設されることになり、9月24日に撤去された。9月28日に放送されたNHKテレビの朝の番組「おはよう日本」で、「母思う郵便ポストがなくなるとき」として、郵便局で働いていた母に寄せる娘さんの思いが取り上げられた。
    
 鮎川郵便局では津波で社員に3人の死者、2人の行方不明者が出た。行方不明者の一人が佐々木久子さん(当時56歳)。娘のゆかさん(38歳)は高台の自宅で家族6人と暮らす。
 地震後、一度は自宅へ避難したが、「お客さまのお届けものを濡らすわけにはいかない」と郵便局へ戻った久子さん。7メートルを超す津波が郵便局を襲った。遺骨も見つからず、居所も分からない母を、ゆかさんが感じることができる場所が郵便ポストだという。
 町の景色も変わる中、郵便ポストは残されてきた。辛い気持ちを呼び起こす場所だから、普段は立ち寄ることはほとんどないが、命日には郵便ポストの側に花を供えてきた。
 震災から8年、復興工事が進むなか、郵便ポストの撤去が決まった。海岸沿いに造られる防潮堤が郵便ポストの位置にかかるためだ。「母が最後に居た場所」の証だった郵便ポスト。子どもの送り迎えや買い物に出るとき、ふと目にする郵便ポストが、母を思うきっかけになってきた。
 同居していた母は、子どもたちにとって優しいおばあちゃん。ゆかさんは「気持ちの区切りになればいいけど、なくなったら寂しさを感じる」と話す。
    
 番組では9月10日、郵便ポストの利用中止・撤去予告のお知らせを集配社員が貼り付け、24日に撤去された郵便ポストへの佐々木局長の思い、ゆかさんが子どもたちと最後に手を合わせる場面などが放送された。
 震災から月日が経つにつれ、大切なつながりを感じてきたものも消えていく。辛い記憶を思い出す一方で、家族の複雑な思いもあるだろう。震災後も地域に親しまれてきた郵便ポスト、撤去された郵便ポストは石巻郵便局で保管されているが、東北支社へ移管され、震災遺構として展示されることが検討されている。
 震災は人々の心に大きな影を残し、生活の変化も余儀なくさせる。しかし、次世代の防災のためにも、語り継ぐことの大切さを改めて思う。
(麦秀の嘆)

2019年 10月28日 第7011号

台風と復旧・復興 日本列島保全

 「即位のパレード」が延期される事態を招いた台風の威力だが、連休ごとに日本列島を直撃した感の台風は、これからも毎年にように続くように思う。台風には当たり年があって、集中する年とそうではない年があるようだ。だが、台風はこうした年によってではなく、早くからと遅くまでということも含めて、増加する傾向にあるのではないだろうか。いわゆる気候変動による自然災害の恒常化と考えてもいいだろう。
 地震が活性期に入ったと言われることとも対応するのかもしれない。地震を日本列島の特徴として、日本文化と関連付けて論じていたのは横光利一という作家だった。『旅愁』という小説においてだった。いわゆる西洋文化と対比して日本文化を考えるのに、地震を根底にしていたのだ。それはともかくとし、台風などの自然の脅威を、重要な案件として考えざるを得なくなってきた。どう名づけてもいいのだが、台風などの自然の脅威が、年々と大きく恒常化していくことは避けられなく、対応策が提起される必要があるのではないか。
 今回の一連の台風の被害の甚大さを、時間が経てば経つほど知らされるという事態の中で、切実なことと実感する。災害からの復旧・復興に向けた迅速で適切な対応は必要だが、それを超えて、もう少し日常的かつ恒常的に取り組む対策を要するのではないか。今回の一連の台風のもたらしたものを見ながら、日本列島改造論のことを思い出した。そして、これからは列島改造論のようなものではなく、日本列島保全論のようなものが必要ではないかと思った。
 日本列島改造論は田中角栄によって提起されたものだが、脱農業と産業化を根底とする日本列島の改造論であったが、大きくいえば開発論でもあった。ダムや原発を建設してのエネルギー革命を中心にしたものだった。ある意味では達成し、経済の高度成長の終焉とともに停滞した現在に至っている。
 そこにもたらされているのが、気候変動という自然の変化であり、日本列島と住民の生活を災害という形で直撃している。自然を技術(科学技術)で改変・加工してきたことであり、大きくは貧困からの脱出ということを達成させた。技術は生活に不可欠なものであり、なくてはならないものだ。
 ただ、技術は万能ではなく、肯定的なものと否定的なものがある。かつては科学技術万能という信仰が支配していた時期もあるが、現在ではその肯否が問われる。日本列島改造論(開発論)から日本列島保全論への転換は、そこに媒介される技術の転換ということが根幹になる。一例としては原子力発電のようなものが挙げられる。私見だが、原子力発電から再生エネルギー(自然エネルギー)への転換は開発技術の転換である。
 日本列島の脱自然化(自然の改変・加工)は、ある意味で長い歴史を持ち、稲作をはじめとする農業はその初めだった。ただ、この技術を媒介にした自然の改造は、自然の循環のうちにあり、改造ではあっても自然の破壊(生態系の破壊)にまでは至らなかった。
 近代科学技術には自然の循環を破壊するものもあり、そこが問題を生じさせた。日本列島の保全には技術は不可避なのだが、それには自然を改変・加工する技術の見直しが不可欠である。自然の循環を破壊しないで可変・加工していく技術が模索されるのだろうが、自然の脅威に対する治水を含めた技術は困難であれ、見出されるものと思う。
 生活に即した、かつて農業に即してあった治水の技術も含めた列島保全のための技術(知恵)に、大きな期待を寄せたい。いま一番必要なことは、私たちが日本列島保全ということに気がつくことではないか。
(坂田の力)

2019年 10月21日 第7010号

求められるSDGsの取組み

 地球温暖化に伴い海面上昇が加速している―、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、海面上昇や海洋生態系に及ぼす影響などについての特別報告書を9月25日に公表した。地球温暖化は最近の数十年にわたり氷床や氷河の消失など雪氷圏の広範に及ぶ縮退をもたらし、海面は20世紀初頭から現在まで16センチほど上昇したとする。このままの状況が続くと、海面は2300年までに最大5.4メートル上昇する。
 南極やグリーンランドなどで氷床の融解が進み、さらに水温の上昇に伴い海水が膨張していることが要因とする。海水温度の上昇は1993年から、それ以前と比べ2倍を超えるペースで加速、水温が高くなる海洋熱波も82年以降、頻度が2倍に増大した可能性が高いとする。
 生態系への影響も大きい。生物多様性の喪失にもなり、今世紀末までに世界の漁獲量は最大24.1%減少すると予測。森林火災は今世紀の残りの期間において、一部の山岳地域を含むほとんどのツンドラ、北方林の地域にわたり大幅に増加する。穀物などにも影響、食料安全保障といった健康や福祉に負の影響をもたらすことになる。
 100年に1度の歴史的に稀とされる現象も2050年までに頻繁に起きるとし、海洋熱波や極端なエルニーニョ現象、ラニーニャ現象は、さらに頻発すると予測した。「大西洋子午面循環」も弱まるとする。これは大西洋における海洋大循環。子午面に沿って南北に行き来することに由来。海水は赤道付近と極地域をまたいで循環する海洋大循環と呼ばれる現象を生じている。この海流が熱帯域の熱を循環させることで、地球の気候を温和に保つ働きをしている。
 ヨーロッパ最高峰、フランスとイタリアの国境にあるモンブラン(標高4810メートル)からの氷河が、100年前の1919年に撮影された状況と比べると大きく後退している。かつて流れていた谷からは氷河が消え、地表がむき出しになっている所が多くあるという。
 南極大陸やグリーンランドでも氷床の融解が進み、海面の上昇や気候への悪影響が懸念されている。21世紀末までに西南極のアムンゼン海に面した地域で氷床の厚さが大きく低下するなど、南極全体でも氷床の融解が進むことが分かってきている。
 グリーンランドの氷床融解の影響で、大西洋に流れ込む水の量が増加、数十年以内に「大西洋子午面循環」が弱まることにもつながる。世界平均海面水位は、グリーンランドや南極の氷床から氷が消失する速度の増大、氷河の質量の消失、海洋の熱膨張の継続により、熱帯低気圧による風雨の増大をもたらす。日本を襲った台風15号、19号も温暖化の影響を受けたと専門家は指摘する。
 温室効果ガスの排出量の大幅な削減によって、2050年以降のさらなる変化が低減されると予測され、CO2の抑制は待ったなしだ。国家的な施策が求められるが、日本郵政グループもSDGs(持続可能な開発目標)の推進として、温室効果ガス排出量の削減、資源の有効活用と廃棄物の削減、働き方改革、JP子どもの森づくり運動などに取り組んでいる。
 その一環として、10月5日には東京都八王子市で里山保全活動を行った。家族を含めて約80人が参加し汗を流した。また「募集します!私たちのSDGsアクション」として、個人やチームでのSDGsに関連した取組みの投稿も呼びかけている。“やれる人がやれることから着手しよう”というものだが、個々の生活でもできることを積み上げることが求められる。
(和光同塵)

2019年10月14日 第7009号

春秋一話  お休み

春秋一話  お休み

2019年10月7日 第7008号

働く高齢者は過去最多の862万人

 総人口は昨年に比べて25万人減少している一方で、65歳以上の高齢者人口は32万人増えて3588万人と過去最多となった。総人口に占める割合も28.4%と過去最高。総務省が「敬老の日」を迎えるに当たって9月15日、65歳以上の高齢者人口と就業の状況について明らかにした。
 65歳以上は男性が1560万人(男性人口の25.4%)、女性が2028万人(女性人口の31.3%)。年齢別では、いわゆる“団塊の世代”(1947~49年生まれ)を含む70歳以上が2715万人(21.5%)、75歳以上は1848万人(14.7%)、80歳以上は1125万人(8.9%)となっている。
 総人口に占める高齢者の割合は1950年以降、一貫して上昇しており、85年に10%、2005年に20%を超え、19年は28.4%に達したが、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、今後も上昇を続け、25年には30.0%となり、第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)が65歳以上となる40年には35.3%になると見込まれている。
 日本の高齢者の割合は世界でも最も高い。イタリア(23.0%)、ポルトガル(22.4%)、フィンランド(22.1%)、ギリシャ(21.9%)、ドイツ(21.6%)、ブルガリア(21.3%)、フランス(20.4%)、イギリス(18.5%)、カナダ(17.6%)、アメリカ(16.2%)、韓国(15.1%)、中国(11.5%)などと比較しても大きく上回っている。
 少子高齢化が今後も進展することが予測される。これに伴い、高齢者の就業者は04年以降、15年連続で増加し、862万人とこちらも過去最多となった。就業率は男性が33.2%、女性が17.4%と、いずれも7年連続で上昇している。また、15歳以上の従業者総数に占める高齢就業者の割合は12.9%となり、これも過去最高になった。
 年齢別では65~69歳で46.6%、70~74歳で30.2%、75歳以上で9.8%が就業している。内訳は雇用者(会社などの役員を除く)が469万人、高齢就業者の54.9%と半数以上を占める。自営業主・家族従業者が278万人で32.6%、会社などの役員が107万人の12.5%。
 雇用者のうち正規の職員・従業員は111万人で23.7%に過ぎない。パートやアルバイト、契約社員、派遣社員などが358万人と76.3%を占める。こうした非正規の職員・従業員は10年前に比べ204万人増え、4人に3人となっている。正規の職員・従業員は41万人の増だった。
 高齢就業者は「卸売業、小売業」が127万人と最も多く、次いで「農業、林業」が107万人、「サービス業」が98万人、「製造業」が94万人などとなっている。就業者数に占める高齢就業者の割合も「農業、林業」では51.0%に達している。次いで「不動産業、物品賃貸業」が25.4%、「サービス業」が22.0%、「生活関連サービス業、娯楽業」が18.2%。
 高齢者の就業率も日本は24.3%で、主要国の中では高い。韓国は31.3%だが、アメリカ18.9%、カナダ13.4%、イギリス10.5%、ドイツ7.4%、イタリア4.7%、フランス3.0%。
 人生100年時代と言われるが、政府は全世代型社会保障検討会議の初会合を9月20日に開いた。「少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行う」とする。
 “団塊の世代”が75歳になり始める2022年を見据え、70歳までの就業機会の確保や、年金の受給開始年齢を自分で選択できる範囲の拡大などを議論していく予定だ。高齢になっても健康で、意欲のある人が働ける環境整備は必要だが、生活のため働かざるを得ない社会とならないことを願う。
(和光同塵)

2019年9月30日号 第7007号 

台風15号と自然災害への対応力

 千葉県を襲った台風15号の被害が、予想以上であることが明るみになっている。ブルーシートで屋根を覆われた住宅をテレビなどで観るたびに思うが、一番の問題は長引く停電のようである。東京電力は速い復旧を提示していたが、実際は予想以上に手間取っているらしい。初期出動に批判が集中しているが、問題の根は他にもあるように思える。
 近年、とりわけ「3.11」の東日本大震災以来、気候変動によると目される自然災害が多くなっていると感じる。集中豪雨、台風、地震など様々だが、従来の枠組みを破っていると思う。自然循環を壊す(環境破壊)ことに対する自然からの警告とも受け取れるが、原因の把握と対応(復旧)には、従来とは違う考えが求められるのだろう。
 台風15号の直撃による被害は、強風で電柱や杉などの樹木が倒れることで大規模な停電が起こり、復旧に予想外の時間を要しているということらしい。電柱には地下化ということが提示されてはきたが、なかなか進んでいない。また、杉林などの森林は手入れや保全が行き届かなく、林業の衰退が今回の事態を招いたと言われる。
 台風15号だけではなく、集中豪雨等のたびに予想以上の被害が報告される。地域社会が自然災害に脆いというか、対応力を衰退させていることに気がつく。従来にはない豪雨(従来の記録を超えた雨量などの出現)や強風ということもある。だが、そればかりではないように思う。土地の対応力が衰退しているように見える。
 概括的に言えば、農業生産から工業生産に社会の中心が移り、かつては農業生産に付随してあった里山の手入れや保全、治水対策が衰えているのではないか。村落共同体が保持してきた災害対策などが機能しなくなってきている。地域によって異なるだろうが、里山は荒れ、治水対策がおろそかになる傾向は、一般化して言えると思う。地域社会が持っていた自然に対処する機能が衰えてきているのだ。
 行政などだけに任せて解決できない問題であり、かつて地域社会が農業に付随して持っていた自然との対応力をどのように再生していくかということである。地域住民が公共性として自然災害に対応していく機能を創り、維持していくことが大事になるのだと思う。これからの動きとして期待されるが、行政はその創出や維持を助け、協力していくことだ。
 千葉の大規模停電は何を物語るのか。電柱などが電力の供給装置として自然災害に弱く、脆いという結果を露呈した。電柱の地下化などを怠ってきたことであり、今後はそういう対策が進むか、どうかということになるのかもしれない。だが、ここで、重要なことは何故、電柱の地下化などが停滞してきたかである。
 コストということがあるだろうが、電力会社はその供給の対象を一般の家(地域住民)から、企業などの社会的生産者に軸を移してきたことがある。原発などの電力生産の大規模化と対応しているが、暮らしの中の電気ということは、社会生産(工業生産)のための電気から軽く見られてきたのであり、そのための投資は怠ってきた経緯がある。
 これについてはここではあまり触れるスペースがないが、暮らしの中の電気ということを見直すことが促されているのだ。自然災害に対応力のある電気というか、その装置を整備していくためには、何のための電気かという考えの検討がいる。復旧にはそれが必要だし、災害に対する予防力にもなるのである。
(坂田の力)

2019年9月23日 第7006号

多様な事業に活用の年賀寄附金

 2020(令和2)年用お年玉付年賀葉書が11月1日から販売開始となる。今年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会にちなんだ寄附金付年賀葉書も発行される。年賀葉書は1949(昭和24)年に「お年玉付郵便葉書等に関する法律」が制定され、同12月1日に発行されたのが始まり。
 寄附金による助成事業は、法律に基づき、社会福祉の増進、風水害・震災等非常災害による被災者の救助、がん・結核・小児まひなど特殊な疾病の研究・治療、原子爆弾の被爆者の治療・援助、文化財の保護、青少年の健全な育成といった10の事業を行う団体が対象となっている。1991(平成3)年には寄附金付年賀切手も登場した。
 戦後の復興という時代背景に、国民の福祉向上を図ることを目的とした寄附金の助成事業は、地球環境の保護などの要素も含め、今年で71年目を迎える。これまでに寄附金の配分総額は509億円にのぼるという。
 日本郵便は、寄附金配分団体の公募を9月9日に開始し、11月8日まで受け付けている。先駆性が高く発展が見込まれる、社会的ニーズがあり波及効果が期待できる、実現性がある、緊急性があるといった事業に優先され、できる限り多くの団体に配分したいとしている。
 寄附金は様々な活動や施設の改修、機器の購入などに有効に活用されてきた。障がいのある人もない人も一緒になってつくるチャレンジド・ミュージカルの上演、児童虐待や育児放棄の未然防止として子育ての悩みを電話で聴く「ママパパライン」の展開、過疎の島で高齢者に「お元気ですか」との便りを手渡し、安否の確認と生活の不安をなくす事業、引きこもり経験者の就労支援、魚のハタハタの増殖などにも助成されてきた。
 最近では、がんや難病などの外国人が医療機関で的確な相互の意思疎通ができるよう“医療通訳”の確保(NPO法人「シェア=国際保健協力市民の会」、東京都台東区)、アオリイカの人工産卵床を海底に設置、資源回復を目指すとともに、藻場の再生を目指す事業(NPO法人「黒潮実感センター」、高知県幡多郡)などもある。
 アオリイカの回復は、小学生が間伐作業を行い、不要となった枝葉で“マイ産卵床”を作り、ダイバーが海底に置く。産卵状況を調査、小学生に報告し環境学習の一環として学んでもらうが、設置した100基の大半に産卵が確認されたという。海藻を食べるウニ類も除去、藻場の再生にも取り組んでいる。
 また、ゲーム機に夢中になって外遊びが少なくなっている子どもたちに、自然体験をさせ、自然の美しさや雄大さを気づかせるとともに、郷土愛を育ませる活動(NPO法人「KAプロジェクト」、熊本県上天草市)にも配分された。
 熊本地震で被害にあった子どもたちを上天草市に招き、自然体験や地域交流で、大きく変化した生活環境によって傷ついた心のケアを図り、成長をうながすものだ。「ふさぎ込むことが多かったが、笑顔が戻った」「母子家庭で子どもと野外で過ごすことが少ないが、自然と触れ合うよい機会となった」など参加者から好評だった。
 障がい者の就労機会の創出を目的に小型漁船を導入(NPO法人「ライブ」、鳥取県米子市)した例もある。漁船を利用した障がい者の就労は全国初の試みとして注目されたという。少ない人手や資金で、地域の触れ合いや交流、産業振興、環境保全に奮闘しているNPO法人は多い。年賀葉書の寄附金が、こうした事業に活用されることは意義深いし、多くの人に購入してもらいたいものだ。
(和光同塵)

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