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2012年10月29日号

【主な記事】

JPタワー商業施設
「KITTE」
来年3月に全面開業

 五月末に竣工した東京・丸の内の旧東京中央郵便局敷地に建設されたJPタワーは、商業施設を含め来年三月二十一日に全面開業する。十月二十三日の記者発表会では商業施設を「KITTE」と名づけたことを明らかにした。「切手を貼ることで想いが届くのと同様に、商品やサービスに込められた想いまでも届ける施設でありたい」との願いと“来て”との意味を込めたという。


 


 JPタワーは郵政グループの大規模開発として五月末に竣工、一階の東京中央郵便局とゆうちょ銀行本店は七月十七日に業務を開始している。日本郵便の鍋倉眞一社長は「従来は郵便、貯金、保険の三つのサービスが中心だったが、今後は人生の各ステージでお役に立つ総合生活支援企業グループを目指していく」と強調。


 「郵便局会社と郵便事業会社の統合は『昔の郵便局が戻ってきた』と考えている。この郵便局を通じて新規事業を行いたい。不動産事業は日本郵便としてだけではなく、郵政グループを支える大きな柱になっていく」と述べた。


 野村洋不動産部長は「JPタワーは“つなぐ”をコンセプトに、東京と地方、人と人をつなぐ重要な都市機能を果たしている」ことを説明。地上部は、建物内のアトリウム(中庭)を介して有楽町駅と東京駅を結ぶ。地下部は有楽町の国際フォーラムまで、五駅(東京駅、有楽町駅、日比谷駅、二重橋駅、大手町駅)二十路線を天候に左右されずに歩けることになる。商業施設の内装は建築家の隈研吾東京大学教授が手がけた。


 地下一階はJR東日本グループの鉄道会館が全国のご当地食を扱う飲食店舗・物販が入る。一階から四階は飲食店舗・ファッション雑貨などのフロア。五、六階はレストラン。現在までにショップ七十一店舗、レストラン二十七店舗が決定しており、十二月にはテナント名を発表し、来年三月二十一日の全面オープンを目指す。


 一部、旧東京中央郵便局を残したところには、郵便局長室を復元したメモリアルコーナーが四階に設置されている。


 旧東京中央郵便局は昭和六年(一九三一年)に竣工した。逓信省の技師・吉田鉄郎が設計、白い二丁掛タイルと黒いサッシで構成された地上五階、地下一階の局舎は戦前の優れた近代建築として高く評価されていた。


 このほか、商業施設には東京を訪れる内外の人に情報提供するJTBの「東京シティアイ」(地下一階、地上一階)、東京大学と連携した学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」(二、三階)、国際会議や企業セミナー、レセプションなどに対応する多目的ホール「JPタワーホール&カンファレンス」(四、五階)が設けられる。


 通信文化新報は二十三日の会見で「不動産事業は郵政グループのその他の経常収益として、どの程度を目標にしているのか。また、統合メリットとJPタワーの収益性の関連をどのように見ているのだろうか」などと質問した。


 鍋倉社長は「旧東京中央郵便局もそうだが、中央郵便局と名づけられる局の多くが駅近くの一等地にある。時代の変遷を経て郵便物は鉄道から自動車輸送になった。窓口は必要といっても、郵便を処理する工場としての機能は縮小している。日本郵便として、多くの駅前郵便局の資産を長期的には活用していきたい」と述べた。


 また、統合メリットについては「分社化時代は、大きな局は郵便事業会社が保有していた。しかし、不動産事業を認められていたのは郵便局会社だ。統合することで不動産事業を一貫してできるようになったことも大きなメリットだ」と語った。


 郵便、貯金、保険の事業規模が縮小する中、不動産事業は「郵政グループビジョン2021」や「平成二十四年度事業計画」にも掲げられている。 


 JPタワーは日本郵便とJR東日本、三菱地所の三社共同事業だが、このほかにも札幌中央郵便局や名古屋中央郵便局駅前分室も業者の発注および着工が進められている。


 テナント料による収益向上を目指すが、オフィスフロア(八~三十七階)の入居状況が注目される。現在、入居済みは三菱東京UFJ銀行とコニカミノルタの二社。日本郵便は総工費や賃料、入居決定会社などの状況は明らかにしていない。


 総事業費は千数百億円と言われ、商業施設を含め年間三百億円の賃貸収入があるとされていた。オフィス部分は二万八千百六十四坪。全て埋まれば百三十五億円程度にはなるが、経済情勢などから早期にどのくらい埋まるかが課題だ。

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