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2026年4月27日 第7350号

【主な記事】

「おたがいマーケット」開始から2年
「共助」によって成り立つ
郵便局長あっての施策

日本郵便地域共創事業部自治体連携事業室課長 兼
日本郵政地域共創事業部自治体連携事業室グループリーダー 
横森龍太郎さん


   2022年4月に始動したローカル共創イニシアティブの一環として、2024年3月に「おたがいマーケット」が開始された。買い物支援の施策として、これまでに28件の問い合わせや引き合いが寄せられたという。「郵便局長あっての施策」とも言われ、取り組みの拡大が望まれる。開始以来2年が経過した今、日本郵便地域共創事業部自治体連携事業室課長兼日本郵政地域共創事業部自治体連携事業室グループリーダーの横森龍太郎さんに聞いた。
■「おたがいマーケット」の背景について、改めて聞かせてください。
 2022年4月にスタートしたローカル共創イニシアティブの一環として、2024年3月に日本郵便の社員1人が奈良市と同地域の団体へ派遣出向し、自治体と地域団体の双方に所属することになりました。現地で地域の様々な実情を把握したうえで、この社員が考案したサービスが「おたがいマーケット」です。人口減少に伴い、買い物環境などのサービス水準が低下し、あわせてコミュニケーションの機会も減っていくという負の連鎖を、できるだけ一挙に解消したい――その思いから生まれたのが「おたがいマーケット」でした。
■「おたがいマーケット」の概要について、聞かせてください。
 ネットスーパー、郵便局(日本郵便)、地域住民の方々が、それぞれの役割を持ち寄り、助け合うことで成り立っているサービスです。
 流れとしては、まずお客さまがネットスーパーで商品を注文します。ネットスーパーは、その商品を集荷に出すのではなく、郵便局に持ち込みます。
 日本郵便は、郵便局間を毎日運行している運送便を活用して商品を輸送し、受取拠点に置き配します。受取拠点が郵便局であれば郵便局間の輸送のみで完結しますが、拠点が社外施設の場合には、郵便局間の輸送に加え、社外拠点まで配達します。お客さまには、各拠点まで商品を受け取りに来ていただきます。
 運送便には、積載量の波動により空きスペース(余積)が生じます。「おたがいマーケット」では、その余積を活用して商品を積み込み、受取拠点への置き配に特化することでコストを抑え、通常サービスより比較的安価な運賃をスーパーからいただいています。そうした意味で、三者がそれぞれの強みを出し合う「共助」によって成り立つサービスと言えます。
 通常のネットスーパー配送では、生鮮食品やお弁当、冷凍食品の配送が難しい地域であっても、毎日往復している運送便に積載することで当日配達が可能になり、これらの商品も購入・配送できるなど、利便性が高まるケースもあります。
■買い物支援という大命題の中で「おたがいマーケット」はどのように位置付けられるのでしょうか。
 ネットスーパーの豊富な品ぞろえの中から生鮮食品を選び、注文の翌日には受け取れる点が、大きな特徴だと考えています。利用可能な運送便があり、余積の範囲内という条件付きではあるものの、買い物支援が必要な地域を対象とした他のサービスと比べ、少人数の利用者でも対応しやすいという利点もあります。


■現時点での「おたがいマーケット」の進捗状況を教えてください。
 現在は、奈良市東部と山形県山辺町作谷沢地域の2地域で展開しています。いずれもイオンのネットスーパーを利用いただいており、奈良市東部ではイオンリテール西日本カンパニー、作谷沢地域ではイオン東北と協業しています。
 受取拠点は、奈良市東部が社外拠点2か所・郵便局2局の計4か所、山形県山辺町作谷沢地域は社外拠点1か所です。作谷沢地域の社外拠点は、作谷沢郵便局に隣接する山辺町作谷沢支所となっています。
■受取拠点を社外にする理由はどのようなものですか。
 基本的にはコスト面から郵便局での受け取りを想定していますが、商品受け取りをきっかけに住民同士のコミュニケーションが生まれることから、コミュニティ形成に関心が高い自治体の場合には、自治体施設を拠点に選定することもあります。
■利用者の声が寄せられていると思います。また、自治体からの評価についても聞かせてください。
 「街中のスーパーまで片道30分ほどかけて買い物に行き、帰宅するとアイスクリームが溶けてしまうことがありますが、『おたがいマーケット』では、イオンネットスーパーが長時間保冷可能な保冷剤入りの箱で届けてくれるので、箱から取り出して受取拠点から5分ほどの自宅に戻ってもアイスクリームがカチカチのままで、おいしくいただけました」といった声をいただいています。単に買い物困難を解消するだけでなく、普段の買い物とは異なる付加価値を感じていただいていると受け止めています。
 また、高齢者だけでなく現役世代からも、「街中までの往復を含めると買い物に1時間程度かかりますが、おおむね定時運行の運送便で拠点まで届けてもらえるので、時間の節約になります。一般的な冷凍宅配便では置き配ができず、荷物を待つ必要がありますが、『おたがいマーケット』では自分の都合の良いタイミングで拠点に取りに行けるのもありがたいです」といった評価をいただいています。
■サブスクリプションについてご説明ください。
 ネットスーパーを利用すると、地域によって事情が異なりますが、一定額以上の商品代でないと送料が自己負担となる場合がほとんどです。ですが、おたがいマーケットに参加して1650円のサブスクリプション料を払えば、ネットスーパーが設定している最低発注金額を満たさなければなりませんが、都度の送料は発生しません。
■郵便局長が果たしている役割について聞かせてください。
 郵便局長は、利用見込みのある人への働きかけや会員対応に加え、ネットスーパーでの注文に不慣れなお客さまのサポートや、会員登録時の支援などを担ってくださっています。この施策は、まさに局長あってこそ成り立っており、深く感謝しています。郵便・物流機能や支社がしっかりとそれを支えることで、サービス全体が成立しています。
■今後の展望について聞かせてください。
 運送便の余積の有無や、受取拠点で受け取り可能となる時間帯が地域の生活リズムに合うかどうかなど、いくつかの条件を満たし、なおかつ黒字を確保できる地域でなければ展開が難しい側面があります。今後も地域や自治体からの意向・要望を伺い、諸条件を丁寧に確認したうえで、条件が合致する地域から順次実施していきたいと考えています。
■最後にメッセージをよろしくお願いします。
 希望している地域と、実際に展開可能な地域が必ずしも一致するとは限りませんが、いただいた声をできるだけ形にできるよう、取り組みを進めていきたいと考えています。
 地域の事情により買い物にお困りのことがありましたら、まずは各地域の支社まで相談してください。実現可能な地域で、一つでも多く展開していければ幸いです。意見・要望をお寄せいただければと思います。


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