「通信文化新報」特集記事詳細

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2025年12月8日 第7330号

【主な記事】

手紙・手書き文化を継(つな)ぐ 
まちづくりシンポジウム
 
地域の特性を生かそう
おくる楽しみ・うけとる喜び

参加したスタッフ等の皆さん


 「手紙・手書き文化を継(つな)ぐ まちづくりシンポジウム」(主催‖龍野の文化遺産を生かす会)が10月13日、兵庫県たつの市龍野町のガレリアアーツ&ティーで開催された。兵庫県の西脇中本町郵便局の谷口委鈴局長、伊丹桜ケ丘郵便局の堺洋之局長、鳥取県鳥取市の用瀬郵便局の有田義之局長がパネラーとして参加した。
 
 シンポジウムは、手紙を楽しむ取り組みを知ってもらうこと、各地の特性を生かした手紙文化振興や、様々な手紙の楽しみを知ってもらうこと、作成した手紙を差し出す体験をしてもらうことを目的に開催された、
 地元の住民や、町づくり・手紙や手書き文化・手紙ワークショップに興味や関心がある人など、約30人が参加。「おくる楽しみ・うけとる喜び」をテーマに、龍野コンシェルジュの丸尾とし子さんと、おてがみ向上委員会のうちだまきさんが司会進行を務めた。
 初めに、うすくち文化研究所代表の淺井良昭さんが「龍野の文化遺産を生かす会は、地域に残る文化や歴史的な建物を生かしたまちづくりや文化活動に取り組んでいる。手紙や手書き文化と龍野の風情はとてもマッチングすると思う。龍野の大切なテーマの1つとして、まちづくりをしていきたい」とあいさつ。
 うちださんが趣旨を説明し、「手紙は楽しく、自分の気持ちと向き合え、もらうとうれしく、その喜びを人にも与えられる、素敵な文化。私は何か宿るものがあると思って手紙を書いていて、後の世代に手紙の温かさ、力を伝えていけたらと思って活動している」と思いを語った。
 そして、おてがみ向上委員会として年4回発行している、手紙を楽しむ小冊子「ふみぶみ」について紹介し、「今日は何か楽しい〝ふみぶみ〟を皆さんにも見つけてほしくて、パネリストとして3人の郵便局長を迎えた。手紙を送る、受け取るのに郵便局や郵便システムは欠かせない大事なもの。そのトップ(郵便局長)がこんなに手紙好きで、手紙のことを伝えようとしてくれることが本当にうれしい。時間の許すかぎり、いろいろな楽しみ方、手紙の温かさなどを感じ取ってもらえたら」と話した。
  ◇ ◇ ◇
 第1部は「手紙文化を広めるために」をテーマに、パネルディスカッションが行われ、パネラーを務めた3人の局長がそれぞれの取り組みを紹介した。
 【丸型ポストフェスティバル2024in鳥取~ご縁と出会いで繋ぐ絆~】有田義之局長・・・鳥取市で昨年開催されたイベントについて紹介。楠田祐士切手デザイナーや地元のイラストレーター・りりぽっちさん、因幡地区連絡会専属デザイナーでもある鳥取湯所郵便局の有田和代さんによる講話や、写真家・庄司巧さんによる能登半島地震被災地の写真展示、観光マイスター資格を持つ女性社員がバスガイドを務めて、因幡万葉の郷郵便局やハヤブサライダーの聖地・若桜鉄道隼駅を巡るなど、イベントは盛り上がった。
 なお、因幡万葉の郷局のポストは、役目を終えて廃れて放置されていた丸型ポストを、一から研磨して塗装して現役復帰させた。「手紙文化の歴史を繋ぐ丸型ポストと手紙文化を大切に想う方々との絆がいつまでも続くことを願っている」。
 【播州織産地博覧会×郵便局 地域とつながる、手紙のチカラ~地域連携と文化発信の可能性~】谷口委鈴局長・・・播州織産地博覧会(播博)について紹介。地元の若手有志が中心となり、播州織と町の活性化を目指して開催された。郵便局が応援できないかと考え、休憩も兼ねて家族で楽しめる場所として手紙ワークショップを開催し、回を重ねるごとにブラッシュアップ。
 今年の播博では播州織コラージュカード、ペットボトルメール、蜜蝋ラップなどSDGsワークショップを実施し、多くの人が楽しんでいた。臨時出張所では切手類や飲料の販売や押印の他、電話一本で集荷に行くエリア内集荷サービスを実施。主催者からも独自性あるサービスとして大好評。「私にとって地域の特産品を活かした手紙の取り組みは〝手紙の力を使った地域応援〟」。
 【絵封筒プロモーター】堺洋之局長(伊丹桜ケ丘)・・・料金分の切手が貼られていて、宛先も明瞭であれば郵便物として届く。切手の絵柄をうまく活用し、封筒をデザイン。ちょっとしたダジャレの要素なども盛り込んで楽しめる。自局で毎月発行している「桜ケ丘つうしん」(伊丹桜ケ丘郵便局だより)でも毎月絵封筒を紹介。伊丹市昆虫館で開催されるイベント「鳴く虫と郷町」では、「レトロ郵便屋さんがやってくる」という関連イベントを開催。初心者でも取り組みやすいよう、鳴く虫をテーマにした塗り絵絵封筒のワークショップを実施。尼崎城再建に合わせた、丸ポストの上に銀の鯱のオブジェを載せた「シャチホコポスト」の設置に携わった。
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 続く第2部では「播州織コラージュカード・絵封筒」ワークショップが行われ、谷口局長と堺局長に加え、茨木中穂積郵便局の辻田忠広局長と茨木畑田郵便局の大西史子局長も応援に駆け付け、講師を務めた。
 「播州織コラージュカード」は、好きな播州織のハギレを選び、切り貼りしてオリジナルのカードを作成。文字を書くことだけでなく、いろいろな形で気持ちは伝えられることを体験。「絵封筒」は取り組みやすいよう、塗り絵形式の封筒を用意し、色を塗っていき完成させた。
 谷口局長は播博でも行った「ペットボトルメール」の現物を持参し、みんな興味津々。どちらのワークショップも、参加者たちは思い思いに楽しみながら取り組んでいた。
 うちださんは「手紙をもらったことのない小さな子どもは多い。もらって嬉しい感覚がないから、自分が出した手紙で誰かが喜ぶという経験、感覚がないので、親や祖父母等に手紙を書いてもらうことを進めている」と話していた。


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