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2025年11月17日 第7327・7328合併号
【主な記事】
支所の行政サービス、郵便局に委託
広島県安芸高田市 実証事業を開始
総務省の地域の持続可能性の確保に向けた郵便局の利活用推進事業「安芸高田市実証事業開始セレモニー」が10月29日、甲田文化センターミューズ(広島県安芸高田市甲田町高田原)で行われた。藤本悦志市長(前吉田郵便局長)をはじめ、郵便局長、地元国会議員ら関係者47人が出席し、盛大に挙行された。市内の15の郵便局でのオンライン行政相談や証明書の発行などを行う。来年2月までの実証事業後は継続して本サービスに入る予定。
同市は市内の5つの支所で行っている行政サービスを市内15の郵便局に委託する。「行政手続きよろず相談」と「らくらく窓口証明書交付サービスによる公的証明書の交付」の2つ。
専用のテレビ電話の端末を使い、市の担当課による行政相談を行う。また、スマホでのオンライン手続きについても郵便局員が使い方などのサポートを行う。証明書の発行はマイナンバーカードを利用した専用端末を導入。郵便局に導入されている端末から印刷される。
参加する郵便局は、丹比郵便局(大田健一郎局長)、吉田入江郵便局(森下浩一局長)、八千代郵便局(迫田一則局長)、来原郵便局(竹廣陽介局長)、生桑郵便局(森恒樹局長)、高宮郵便局(今岡智志局長)、北郵便局(齋藤英二局長)、甲田郵便局(谷口明局長)、横田郵便局(中本寅彦局長)、小田郵便局(田原尚司局長)、川根郵便局(土居浩二局長)、可愛郵便局(岡村太希局長)、美土里本郷郵便局(藤井将志局長)、刈田郵便局(田村裕則局長)、向原郵便局(白川昌治局長)。
この日は隣接する甲田郵便局で、藤本市長が専用端末を使った証明書発行のデモンストレーションを行った。マイナンバーカードをかざし、利用したいサービスを選び、暗証番号を入力すると、受付票がプリントされる。それを窓口に持っていくと、証明書が発行される。藤本市長が選んだのは印鑑証明書で、郵便局員から市長に手渡された。受付票を局員に手渡してから受け取るまではスピーディーに処理が進んだ。
スマホを使ったオンライン手続きもあり、郵便局員がサポートしながら手続きを進めるデモンストレーションもあった。
タブレットを使ったよろず相談は、郵便局から担当窓口をオンラインでつないで相談が受けられるサービス。相談内容により適切な担当課につないでくれる。電話で依頼すると、担当課からメールでミーティングIDやパスコードが送られてくる。市ではすべての課にテレビ会議システムと端末が配備されている。担当課がわからない場合は総務課が対応する。
事業開始セレモニーでは、藤本市長が「行政サービスの地域間格差の是正や行政分野の効率化、デジタル化の促進という成果を得ることを目的にしている。事業の効果を実証事業で検証し、行政の効率化と住民サービスの向上というこれまで両立が難しかった取り組みを日本郵便の力を借りて進めていきたい。窓口業務のすべてを郵便局に委託する思いで取り組んでいきたい」とあいさつ。
来賓として出席した地元選出の東克哉衆院議員は「介護療法士をしていた時に、外出しなくなり、体力が落ち、歩けなくなった高齢者を何人も見てきた。地域の高齢者や職員から、郵便局の窓口システムがあってよかったという声がたくさん上がるよう、協力し合っていただき、住み慣れた地域や家で長く暮らせるようにサポートや持続可能な事業運営をお願いしたい」と祝辞。
梅村研総務省中国総合通信局長は「郵便局ネットワークは地域を支える生活インフラとして重要な役割を担っている。行政サービスを多くの郵便局で取り扱うことについては、自治体が人口減少下で限られた職員で多様な行政ニーズに応えていくことが求められている。取り組みが全国に広がるよう、全力で推進していきたい」と抱負を述べた。
横田晋一広島県中山間地域振興課長は「広島は20数年後には二人に一人が高齢者となる。マンパワー不足を補うため、デジタル技術の活用が大事になる。この実証事業が地域に根付いて発展して持続可能性が高まっていくことが重要で、県としても関係者としっかり連携し取り組みを後押ししたい」と述べた。
砂孝治日本郵便中国支社長は「市内の全郵便局、全社員が、市民に夢と希望と誇りをもって笑顔で暮らせるまちづくりに貢献したいという思いで取り組んでいく。郵便局を地域の安心の拠点としてご利用いただけるようお願いしたい」と述べた。
石飛慶久市議会議長は「自治体の面積が広く中山間地もあり、5つの支所はあるが、行政サービスが受けにくい課題がある。15の郵便局で行政サービスの実証事業が開始され、うれしい限り。日本郵便には市民生活の利便性向上に向けて今後もご協力を賜りたい。他の自治体のモデルとなることを祈念したい」と述べた。
セレモニーには芸北地区連絡会の岡本英生統括局長(大竹小方)と、高宮郵便局の代理として廣藤政則吉田郵便局長が出席した。
長谷川英晴参院議員、犬童周作参院議員らからの祝電があったことが伝達された。この後、藤本市長から15の郵便局長に「行政事務取扱局」の看板が手渡された。(藤本悦志市長インタビュー2面)
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