「通信文化新報」特集記事詳細
2025年10月20日 第7323・7324合併号
【主な記事】
ロジスティードと提携
日本郵便 総合物流企業の基盤構築
日本郵便は10月6日、ロジスティードホールディング株式会社(東京都千代田区/マイケル・ロンゴ代表取締役)および中核子会社のロジスティード株式会社(東京都中央区/中谷康夫代表取締役会長兼社長執行役員〈CEO〉)との資本業務提携契約を締結した。ロジスティードは、株式会社日立物流を吸収分割により承継した会社で、1980年代から手掛けている3PL(サードパーティー・ロジスティクス)に強みを持つ。12月以降の提携契約実行を予定しており、資本業務提携を契機として、ラストワンマイル、国内物流・国際物流のすべてを一気通貫で運営できる総合物流企業としての事業基盤を構築していく考え。
3PLは、顧客に最適な物流戦略の設計、提案、構築から運用までを行う物流形態。荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行することを意味する。
同日、ウェブ会見に臨んだ、日本郵便の行木司常務執行役員は、「物流サービスの提供を、スピード感を持って実現するために、国内の3PLトッププレーヤーであるロジスティードとのパートナーシップ締結に至った」としたうえで、「今回の資本業務提携を機に、日本郵便に加え、企業間物流を提供しているJPロジスティクス、トナミHD、トール社のグループ各社は、ロジスティードとの協業を推進していく」と述べた。
行木常務によれば、これまでは日本郵便とグループ各社が、国際物流(コントラクトロジ事業・フォワーディング事業)、宅配超サイズの中大口配送(トラック輸送)は、宅配(ラストワンマイル)を担っていたが、総合物流企業を目指す日本郵便にとっては、国内物流(コントラクトロジ事業《3PL・倉庫》)の部分がミッシングピース(欠けている部分)だったという。
ロジスティードとの資本業務提携によって、コントラクトロジ事業が補完され、一気通貫での物流サプライチェーン網(総合物流)の確立を目指していくことになる。郵便・宅配中心の現在の姿から、郵便・宅配に加え企業間物流を得意分野とする将来像=総合物流企業像を描く。
行木常務は「ロジスティードの特色であるアジア・パシフィックナンバーワンの3PL実績、国内外の強固な顧客基盤、グローバルな物流拠点網、業界トップのオペレーショナル・エクセレンスは、一部国際物流を手掛け、足回りを中心とした得意分野を持つ日本郵便にとって、非常に望ましい相互補完関係にあると考えている」と利点を語った。
想定されるシナジーは、事業面ではラストワンマイル、国内物流、国際物流の各領域において、顧客基盤の相互補完などのシナジーを実現することにある。また、人材面では国内外での人材交流を通じ、お互いの技術・ノウハウを共有し、サービスの高付加価値化を目指すとともに、他社の研修や業務機会などの既存リソースを活用し、人材育成を推進することが見込まれる。
行木常務は「今回の出資にともない、日本郵便からロジスティードに取締役を1名派遣することで合意している」と述べた。
資本業務提携の内容は、Kohlberg Kravis Roberts&Co.L.P.によって間接的に保有・運営されているリミテッド・パートナーシップであるHTSK Investment L.P.(総称してKKR)と株式譲渡契約を締結し、ロジスティードHD株式の19.9%を譲受する。譲受価格は1422億7900万円。議決権所有割合は14.9%、経済持分は19.9%となる。同資本業務提携は競争法をはじめとする関係法令の手続きを経た後、すみやかに完了することを見込む。具体的な役割や協業内容の詳細は、今後協議のうえ決定する。
持ち株会社のロジスティードHDの株主は、HTSK Investment L.P.(90.0%)、日立製作所(10.0%)。物流会社ロジスティードはロジスティードHDの100%子会社。ロジスティードの2025年3月期の純資産は6424億8500万円、総資産1兆7550億円、売上収益9107億4200万円、営業利益370億3300万円、当期純利益319億52百万円。
日本郵政グループは、昨年5月に中期経営計画「JP ビジョン2025+」を公表し、成長ステージへの転換を図るため、成長分野である物流や不動産への資金や人材の積極的な配分を推進している。今年4月には公開買付けを通じてトナミホールディングス株式会社の株式取得を実施し、6月には完全子会社化するなど他社との提携・協業等の取り組みを加速させている。
ロジスティードは、2030年に目指す姿として、パートナーとの協創で世界に挑むグローバル3PLリーディングカンパニーを掲げており、3PLオペレーションでのオペレーション優位性、高度な物流DX実行能力、ならびに海外物流事業のマネジメントにおける強みを最大限活用できるパートナーとの協業を志向している。
日本郵便の小池信也社長の話=ロジスティードは、アジア・パシフィックナンバーワンの3PL実績を誇り、グローバルネットワーク、多様で大口の顧客基盤、高いオペレーション遂行力を有している。当社は、資本業務提携を通じて、国際物流事業の拡大に加え、一層の強化領域と位置付けていた国内企業間物流分野の更なる拡大を実現し、ラストワンマイル、国内配送、国内企業間物流・国際物流のすべてを一気通貫で運営できる総合物流企業を目指していく。資本業務提携は当社にとってのみならず、顧客・業界・社会にとっても有益な取り組みになると考えている。
ロジスティードの中谷康夫代表取締役会長兼社長執行役員(CEO)の話=日本郵政グループは国内輸配送に関して高い能力を有している。日本郵政グループの国内輸配送におけるリソース・ノウハウと、当社の3PLにおけるオペレーショナル・エクセレンス、物流DX技術が融合することにより、「物流の2024年問題」への社会問題解決に留まらない、より強靭で持続可能な双方の物流基盤を創出できると確信している。
また、海外事業の強化においても、日本郵政グループの国際物流事業を担うToll Holdings Pty Limitedと連携することによって、海外3PL及びフォワーディング事業の拡大を通じた両社の国際物流事業の更なる価値向上の実現とグローバル市場への挑戦が可能になると考えている。
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