「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2025年10月06日 第7321号

【主な記事】

オンライン診療、買い物支援
郵便局を活用、地域の持続性確保
山口県美祢市で実証実験 みねポス


   総務省の郵便局活性化推進事業の一環として、郵便局でつながる地域・医療・生活ネットワーク「みねポス」創出事業の実証事業の開始セレモニーが9月18日、山口県美祢市美東町赤の赤郷郵便局(田中純也局長/赤郷公民館内)で行われた。総務省の今年度の同事業としては初の開始となった。オンライン診療・服薬指導や買い物支援などを通じて郵便局をコミュニティ・ハブとして活用する。10月1日から来年2月まで実施し、運営上の課題を抽出し解決策を検討する。
 
 実証事業は、美祢市内の赤郷郵便局、豊田前郵便局、嘉万郵便局の3か所で実施される。総務省の同事業に応募したのは、山口大学発ベンチャー企業で医療機器向け支援サービスを提供する「メディモニー」(山口県宇部市東小串1丁目、資本金1000万円、2024年11月設立、𠮷田透代表取締役)。
 同市では、人口減少によるバスの減便や乗り合いタクシーの運行日限定で、医療サービスや、生活必需品の購入が課題となっている。
 メディモニーでは、サービスを持続的に提供するため「郵便局をコミュニティ・ハブとして、行政の全体調整のもとで公費負担なしで全地区での医療・生活サービスの充実を実現する」ことをコンセプトとして同省に申請した。
 事業化に当たり、「買い物関係が週5人、薬局関係が月10人の利用を想定し、利用者ニーズに応じた利用者負担を設定。それに見合うまでランニングコストを低減し、実質公費負担ゼロ」を目標としている。
 𠮷田代表取締役は「行政の補助に頼らず利用者が負担できる料金にするのが目標。それには毎月の利用料を低価格にしなければ持続できないと思う。病院と薬局が毎月の基本料金を支払い、利用者には通信費などの費用として、1回500円から1000円の利用料を想定している。利用者が多ければ安くできるが、利用者の数が分からないので未定。利用者はタクシーなどで病院に行けば、交通費が5000円から1万円ほどかかり、待ち時間などの時間もかかる。実証を行う中で、利用者のメリットになるよう考えていきたい」と話す。
 オンライン診療は、行政のバックアップが得られず、実装に至らなかったケースもあり、どのようにコスト負担をしていくかが事業継続の鍵となる。採算ベースに乗るよう、このシステムを活用し、医療だけではなく、行政相談なども組み入れたいという。
 実証事業は、オンライン診療・服薬サービスと買い物支援を実施する。日本郵便をはじめ、メディモニー、美祢市、美祢市立病院、山口大学医学部附属病院、山口県産業技術センター、美祢市商工会、美祢市内郵便局、ライジンググループHDが連携・協力し、進めていく。
 買物支援は郵便局のぽすちょこ便(美祢局、厚保局、大田局、秋吉局から実証3局に配達、利用者は3局に取りに行く)を活用する。
 オンライン診療は、美祢市立病院に通院している、高血圧や糖尿病など比較的症状が安定している患者が対象。利用は木曜日の午後1時から午後3時頃まで。
 専用ボックスを郵便局に隣接する公民館側の空きスペースに設置。郵便局で受付を行い、局員がボックスまで案内。予約時間になると自動で電源が入る。診療が終わると病院側から切るため、利用者はタブレットに触らずに診療が受けられる(ゼロタッチタブレット)。ボックスはすりガラスになっているうえ、音も漏れないため、プライバシーが保てる。
 利用料はゆうちょ銀行の口座を使い、郵便局の窓口またはATMで振り込む。(3面につづく)


>戻る

ページTOPへ