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2025年08月25日 第7315号

【主な記事】

関東地方会黒岩伸一会長 グループ一体感を取り戻す法改正
郵便局は社会インフラ
地方創生に重要な役割


 関東地方郵便局長会の黒岩伸一会長は、祖父以来、三代にわたって草津栗生郵便局でハンセン病患者の人たちに寄り添ってきた。草津栗生局は希望を失った患者たちの灯だった。黒岩会長は地域住民のために献身的に尽くすという局長としての強い使命感を貫いてきたからこそ、少子高齢化、過疎化の進行による地域住民の生活に危機感を抱いている。地域に密着した社会インフラ、「地域の最後の砦」となった郵便局が果たすべき役割を強調する黒岩会長に聞いた。
 
■6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」では、「コミュニティハブ」としての郵便局の利活用の推進が盛り込まれています。「地域の最後の砦」として期待が高まる郵便局が地方創生において果たすべき役割についてどうお考えでしょうか。
 郵便局は、全国津々浦々にネットワークを持つ、地域に密着した社会インフラとして、地方創生において非常に重要な役割を担っています。特に、人口減少や高齢化が進む地域では、その存在価値は一層高まっています。そこで、郵便局が地方創生において果たすべき役割として、次のようなものがあげられます。
 第1に「地域住民の生活を支えるインフラ」です。郵便、貯金、保険といった基本的なサービスの提供を通じて、地域の金融・物流インフラを維持し、住民の利便性を確保しています。特に、過疎地域では郵便局が唯一の金融機関であり、重要な役割を担っています。
 第2に「地域コミュニティの拠点」です。郵便局は地域住民にとって身近な存在であり、情報交換や交流の場としての役割を果たしています。地域イベントのお知らせや開催、地元の特産品の展示販売など、地域コミュニティを活性化させるハブとしての機能が期待されています。
 第3に「行政サービスの補完」です。地方自治体の窓口機能の一部を郵便局で受託することで、住民の皆さんが遠方の役所まで出向かなくても、身近な郵便局で行政サービスが受けられます。
 例えば、住民票の写しや印鑑登録証明書の交付、マイナンバーカードの電子証明書の発行・更新申請の受付などを行うほか、プレミアム商品券の販売など、一時的に集中する事務を郵便局に委託することで、役場の窓口混雑緩和にも貢献しています。このような事務について、全国的には地方自治体の事務を受託している郵便局は多くあり、これからもさらに増えていくでしょう。
 第4に「防災・減災の拠点」です。災害時、郵便局の建物や車両、人力を活用し、避難所の開設支援、物資輸送、安否確認などの地域の防災・減災活動に貢献しています。関東管内の相模原市の吉野郵便局では、郵便局スペースを防災倉庫として活用している例もあります。
 また、郵便局長が防災士の資格を取得し、地元消防団での活動や防災研修の企画・運営を行うなど地域防災のリーダーとして活躍している事例もあります。先般、関東管内の千葉県の木更津桜井郵便局の鶴岡俊之局長が、日本防災士機構から日頃の積極的な活動が認められ表彰されました。
 第5に「地域経済活動の活性化への支援」です。地域の名産品・特産品を掲載したふるさと小包カタログを全国の郵便局で展開しており、地域特産品のPRや販路拡大を支援しています。また、地域ならではの題材を用いたオリジナルフレーム切手の企画・販売を行い、地域の魅力を発信しています。
 そして、第6に「情報通信インフラの提供」です。郵便・物流を通じて、地域間のモノや情報の流れを支える重要なインフラとしての役割を担っており、スマートスピーカーを活用した高齢者向けの見守りサービスなど、新しいデジタルサービスを提供し、地域課題の解決へ貢献しています。
■今後の取り組み方についてのお考えをお聞かせください。
 以上のような役割を担いつつ、今後の取り組みとしては次のようなことが考えられます。
 第1に「包括連携協定の更なる深化」です。地域が抱える課題解決のため、多くの地域では自治体と郵便局で包括連携協定を結んでいます。地域によってその取り組みに濃淡はありますが、協定を結ぶことが目的となってしまい、具体的な取り組みに欠ける地域も少なくありません。そういった意味でも、それぞれの地域課題に対して、郵便局として何ができるのか、今一度検証する必要があると考えます。
 第2に「地方公共団体事務包括受託の推進」です。全国で郵便局の地方公共団体事務包括受託が始まって6年目になりますが、今年1月末までに全国40自治体に広がりました。マイナンバーカード関連事務や証明書交付事務などを、もっと多くの地域で自治体と一体となって進めるべきと考えます。また、受託事務の内容も地域の課題に合わせて拡大することも必要だと思います。
 そして第3に「地域コミュニティの核としての存在」です。少子高齢化の進展が避けられない現状で、今後もさらに地域が疲弊することが想定されます。特に、過疎地域においては、役所・支所の統廃合、地銀や農協、スーパーマーケットやガソリンスタンドなど生活インフラの撤退がさらに進むことが容易に想定できます。
 その一方、生活の中ではデジタル化の要素が色濃くなり、高齢化が進む中でデジタル化に馴染みにくい年齢層の方には、「優しさ」や「温もり」が求められます。社会においてデジタル化が進む傍ら、リアルの「優しさ」と「温もり」の双方を実現できるのは郵便局です。リアルとデジタルの融合を一体的に行える地域コミュニティの核としての存在にならなくてはならないと考えます。(2面につづく)


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