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2025年07月14日 第7309・7310合併号

【主な記事】

物流や不動産、成長分野に投資
日本郵政根岸社長 ガバナンス徹底を最優先


 6月25日に日本郵政のトップおよびグループCEOに就任した、根岸一行社長が27日、東京・大手町のサンケイプラザで会見を行った。点呼業務不備事案やクロスセル問題など相次いで表面化する事案について、「何よりもグループガバナンスの徹底が必要な状況と考えている。まずはグループ全体の体質改善に全力を注ぐことが責務だと思っている」と述べるとともに、「次期中期経営計画は、通常は来年の5月に公表する予定だが、その概要・骨子については、できれば年内に示していきたい」との見通しを示した。
 根岸社長は冒頭、「日本郵便における点呼業務未実施の事案については、お客さまの信頼を損ない、不安とご心配をおかけしていることを、グループを代表して改めてお詫び申し上げます」と陳謝した。
 6月25日に発出された、国土交通省および総務省による行政処分・命令について触れたうえで、「今回の行政処分を厳粛に受け止め、点呼の適正実施あるいは飲酒運転の根絶に向けて、グループを挙げて取り組んでまいりたい」と述べた。
 さらに、「何よりもグループガバナンスの徹底が必要な状況だ。前体制の下でも、グループガバナンス強化に取り組んできたが、点呼およびクロスセル、保険の認可前の募集の問題など、コーポレートガバナンスに違反する事象が多発している。まずはグループ全体の体質改善に全力を注ぐことが責務だと思っている」との姿勢を示した。
 そのうえで「中期経営計画『JPビジョン2025+』の最終年度に当たるため、しっかりと遂行したうえで、新たな針路・指針としての実現可能な将来に向けた成長戦略、次期中期経営計画の策定に取り組んでまいりたい」と語った。
 「次期中期経営計画は、通常は来年5月に公表する予定だが、その概要・骨子については、できれば年内に示していきたい。物流事業や不動産事業といった成長事業にしっかりと取り組み、今後も必要な投資を行っていくという内容になると考えている」との見通しを示した。
 また「成長戦略の検討も、グループのガバナンスがあってのものなので、まずは、その徹底を最優先して取り組みたい。そのうえで、人口減少などの社会問題に各地域でお役に立てるようにグループとして取り組んでいきたい」と述べた。
 「点呼業務の未実施問題対応の振り返り」の問いについては、「改めて考えると、ひとつの対応でことが足りるのではなく、複合的に見て、至らなかったことがあった結果だと思っている。そうした問題を一つひとつ解決していくことが重要」とした。
 そして、「一義的には、日本郵便の問題だが、ここまで重要な事案なので、持ち株会社の日本郵政としても、状況についてきちんと把握し、足らないところがあれば是正をすべく持ち株会社としての義務を果たす必要があると考えている」と回答した。
 「第3者委員会の調査の可能性」については、「今後、具体的な施策について第3者からのご意見をいただくことはあり得るが、今回の事案では、できていなかった点についてはかなり問題点が明らかになっているため、第3者委員会を設けて検証するような形は必ずしもそぐわないと思っている」と否定的な見解を示した。
 
点呼問題解決は成長のステップ
 
 「点呼問題への対応で忙殺される中、どのように成長を模索していくのか」との問いについて、「物流事業と不動産事業が大きな柱になると現時点では考えている。そのうちの物流事業の施策のひとつに、トナミ運輸への出資がある。これまでのBtoCの分野から幹線輸送という形で拡大させていくよう足元の問題とは別に取り組めると考えている」と語った。
 「足元の問題が絡む全国のネットワークを活用した、小型の荷物については、アドバンテージがあるので、これを活かしていく」と強調した。
 「ガバナンスの回復を強調したのは、そこが成長戦略の領域であるからこそ、今の問題点を早期に解決して、小型の荷物の分野について注力できるような態勢を一刻も早く確立する必要がある」とし、「逆に言うと、小型の荷物の量を取り込めないと、成長戦略としてかなり限定的になってくるので、まずは点呼問題への対応をしっかりと行うことが成長戦略の次のステップになると考えている」と述べた。
 
郵便局長はじめ意見交換が重要
 
 「全国郵便局長会の会長が5月に交代し、新しい体制になった。このような危機的な状況にあって、局長会との連携協力は必要ではないかと思うが、どのようにお考えか」との質問については、「局長会は部外の任意団体なので、会社の施策についての議論というのは難しい。その一方で、お客さまと日々接しているのは郵便局であり、社内の郵便局長の声というものをきちんと聞いてコミュニケーションを取ることが重要」との考えを示した。
 また「全特の勝又一明新会長は静岡(裾野岩波郵便局)の(地区統括)局長だが、東海の支社長の就任時から、存じ上げている」とし、「勝又局長はじめとする局長の皆さんともいろいろな形で意見交換をするのは必要なことだと思っている。あくまでも社内での話であり、一義的には日本郵便の中でということになろうかと思うが、グループ内の社員ともコミュニケーションを取っていきたいと思っている」とした。
 「そういった意味では、危機的な状況だからこそ、フロントで働いている社員といろいろな形でコミュニケーションを取り、現実を把握することは非常に重要なことだと考えている」との方向性を示した。 =いんどう周作氏出陣式(2面)=


 


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