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2025年07月07日 第7308号

【主な記事】

オペレーションの確保に万全
日本郵政株主総会 顧客サービス向上
 


 日本郵政の第20回定時株主総会が6月25日、東京・港区のザ・プリンス・パークタワー東京で開かれた。増田寛也社長は日本郵便の点呼業務未実施について、同日、国土交通省から一般貨物自動車運送事業許可取り消し処分を受ける予定であることについて、「極めて深刻な事態だと受け止めている」と株主に陳謝し、「グループの総力を挙げて再発防止策に取り組み、法令順守を徹底する」と述べた。=ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株主総会の模様は3面=
 
 事前に寄せられた株主からの質問の一つは点呼業務未実施に関するもので、来場した株主の質問も点呼業務未実施に集中した。
 増田氏の後任として社長に就任する根岸一行氏は「不祥事に対してグループ総力を挙げ、再発防止策に取り組む。中期経営計画で取り組んできた改革を進化させ、顧客サービスの向上と持続的な会社の成長を実現させることが、私の責務だ」と述べた。
 285人の株主が出席し、YouTubeでのライブ配信の再生回数〈総再生回数(総視聴数)〉は2210回だった。
 定款第15条の定めにより、増田社長が議長を務めた。
 最初に佐竹彰監査委員長が、監査報告と連結計算書類等の監査結果報告を行い、「事業報告記載の非公開金融情報の不適切な利用に関して、お客さま本位の業務運営の徹底を引き続き注視する」と述べた。
 増田社長は第20期事業報告、連結計算書類と同社の計算書類について「ウェブサイトに掲載している招集ご通知に記載の通り」と述べ、日本郵政グループの主な取り組みを映像により説明した。
 第1号議案「資本金の額の減少並びに資本準備金およびその他資本剰余金の額の増加」について、増田社長は「機動的な自己株式取得による資本効率の向上を図るために、資本政策の柔軟性を確保することを目的として、当社の資本構成を見直す」と説明した。
 事前に寄せられた株主からの質問の一部について、増田社長が回答した。「点呼業務未実施発生の経緯、原因は何か」との質問に対して、「近畿支社管内の小野郵便局において、法令で定められた点呼業務を実施しないまま配達業務を行った事案を2025年1月下旬に確認した。これを受けて、1月中に近畿支社管内の同規模の集配郵便局について点呼業務執行状況を確認し、その後全国の郵便局でも調査したところ、多数の郵便局で点呼業務の不備を把握し、4月に調査結果を国土交通省に報告するとともに公表した」と回答した。
 そして「このような事案が発生したのは、点呼の重要性に対する意識の欠如、本社、支社における実態を確認する意識の欠如、ガバナンスの不足、職場のマネジメントにおける課題、点呼に関するマニュアルの一部誤規定が原因と考え、策定した再発防止策を徹底し、点呼不備の根絶に向けて全力で取り組んでいる」と続けた。
 「点呼業務未実施による、今後の事業運営や業績への影響」については、「本日、国土交通省から一般貨物自動車運送事業の許可取り消しの処分を受ける予定で、行政処分執行後は全国の約330局の郵便局で使用している約2万5000台の1㌧以上の車両が使用できなくなる。これらの車両は、比較的大量に荷物を差し出される一部のお客さまへの集荷や、地方における近距離の郵便局間の輸送の一部に使用している。今後は、トラックでの集荷や運送などの業務を、他の運送会社へ委託することを基本に考え、確実な点呼の実施を大前提として、自局保有の軽四車両などを使用することにより、郵便やゆうパックなどのサービスをお客さまに安定的に提供できるようオペレーションの確保に万全を期す」と回答した。業績への影響については「精査中」と答えた。
 「配当は繰り越し利益剰余金から捻出すべきではないか」との質問について、「当社は2023年11月公表のPBR(株価純資産倍率)改善に向けた取り組みの方針として、自己資本利益率向上のための機動的な自己株式取得による資本効率の向上を掲げ、これまで数千億円規模の自己株式を取得してきた。さらなる資本効率の向上を図るにあたり、分配可能額を増加させ、資本政策の柔軟性の確保を早期に実現する必要があると考え、資本金を資本準備金とその他資本剰余金に振り替える議案を上程した。剰余金の配当については、当年度の利益および過去の利益の積み上げである利益剰余金を原資としている。当社の利益剰余金については、2024年度末に約4920億円に増加している。配当金額との関係で、現時点で配当原資が不足しているわけではない」と回答した。
 続いて、来場した株主の中から13人が質問した。
 「置き配の取り扱いについての日本郵便の考え方」に関する質問に対して、美並義人常務執行役は「日本郵便は、お客さまの受け取りの利便性向上を追求している。荷物についてはラインなどによる配達予告通知を普及拡大させたい。また、宅配ボックスなどお客さまが指定した場所で商品の受け取りができる『指定場所ダイレクト』を拡大していきたい。すべて置き配にするということではなく、お客さまの希望に沿ったサービスを心がけていきたい。駅、コンビニストアなど受け取り拠点の拡大にも努めている」と回答した。
 「本社と郵便局の現場で働く人の考え方に乖離があるのではないか。株主が本社の仕事を理解するために、本社見学を検討してもらえないか」との質問に対して、西口彰人常務執行役は「日本郵政グループにとって、郵便局はお客さまとの接点として非常に重要な拠点だと考えており、郵便局での社員の仕事ぶりも利用者に見ていただく必要があると思う。一方で、本社とフロントラインに考え方の乖離があってはならない。できるだけフロントラインと本社が一体となり、同じ方向感で仕事に取り組めるように努力をしている。組織風土改革の観点からも、本社とフロントラインの一体感の醸成に取り組んでいる。そのうえで、株主の方々の本社見学については、他社の事例も研究しながら今後検討してまいりたい」と答えた。
 続いて、決議事項の「資本金の額の減少並びに資本準備金およびその他資本剰余金の額の増加」と、取締役13人の専任が賛成多数で可決された。
 選任された新任の取締役は次の通り。
【取締役】根岸一行(常務執行役)、小池信也(日本郵便常務執行役員)


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