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2025年06月16日 第7305・7306合併号
【主な記事】
日本郵便の主体的な判断で
総務省料金政策委 「上限認可制」も検討
総務省の第11回情報通信審議会郵政政策部会郵便料金政策委員会が5月30日、開かれた。「郵便事業を取り巻く経営環境等の変化を踏まえた郵便料金に係る制度の在り方」の報告書の最終とりまとめが行われ、これまでの議論されてきた方向性が了承された。6月5日に開かれた情報通信審議会郵政政策部会に提出され承認。同日、意見募集が始まった。
郵便料金は、郵便物の減少と人件費の上昇(営業費用の75.2%)などにより、今後は値上げの頻度が高くなることが予想される。これらを踏まえ、日本郵便が主体的・機動的に対応できるようにする。また料金算定に当たっては、プロセスに透明性・適切性や業務の効率化が求められている。
日本郵便の主体性という点では「日本郵便が会社全体の経営状況や営業損益に与える影響等を考慮した上で料金改定の要否について判断できるようにするなど、日本郵便の経営判断の余地を拡大する方向で検討を行うことが望ましい」という方向性が示された。
郵便の赤字を荷物や窓口など郵便事業以外の収益で補てんすることについては「公正な競争や日本郵便全体の経営に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、適切ではない」とした。
郵便料金改定は現在、日本郵便の届出を基に、総務省が上限料金について、情報通信行政・郵政行政審議会及び消費者委員会での審議、物価問題に関する関係閣僚会議への付議を経て省令改正することになっているが、日本郵便が料金を決めて総務省に認可申請する「上限認可制」も検討する。認可の審査では、実際の原価に基づいて算定を行う「総括原価方式」を用いる。日本郵便は経営状況を見ながら、主体的に料金改定の手続きができるようになる。
人件費が上昇傾向にあり、単年度での組み込みでは値上げの頻度が高くなることから、人件費については「説明可能な範囲で、将来一定の幅を持った期間とすることが望ましい」としている。
一方で上限認可制は業務の効率化へのインセンティブが働きにくいというデメリットがあることから、効率化を促す仕組みを算定基準に組み込み、不必要な値上げを抑制する。
上限認可制に移行した場合の料金改定までは、日本郵便が「上限料金認可申請」、「総務省の審査(審議会への諮問などは必要とする方向で検討)」、「総務省の認可」、「日本郵便は認可の上限以内で料金を決定し届け出る」のプロセスを経る。このプロセスの機動性については、検討中の課題はあるが、従来よりは簡素化されるという。
今後の課題として「算定基準の作成・公表」をはじめ、「総務大臣による料金変更命令が可能な規定の整備」「郵便ネットワークの維持の観点から持続可能な郵便事業の在り方の検討」などを挙げている。
同委員会では委員から「算定基準を説明するに当たっては、丁寧な広報が必要。わかりやすい説明をショート動画にまとめてWeb上や郵便局の端末、KITTEなどでのイベントを活用し、公表してもらいたい」「郵便のユニバーサルサービスは長期的に考えなければならない問題。だれにどの水準のサービスをどういう負担で行うのか。その議論を先にしてから料金の在り方の議論をしなければいけなかった。今後の検討課題にしてもらいたい」という意見があった。
同報告書は情報通信審議会 郵政政策部会の承認後は、パブリックコメントを経て、夏をめどに答申をまとめる予定。
報告書への意見募集
情報通信審議会郵政政策部会は6月5日から7月7日まで、同報告書についての意見募集を行う。
提出希望者は、意見書に氏名、住所(法人又は団体の場合は、名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地)、連絡先(電話番号又は電子メールアドレス)を記入し、電子メール、電子政府総合窓口、郵送の3つの方法で送付する。意見が1000字を超える場合は、要旨が必要。
▽電子メール(yusei-yubin@soumu.go.jp)、▽電子政府の総合窓口「e―Gov」(https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public)、▽郵送(〒100―8926東京都千代田区霞が関2―1―2総務省情報流通行政局郵政行政部郵便課)。
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