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2025年05月26日 第7302号

【主な記事】

防災士スキルアップ研修
福井県、日本防災士機構が共催

がれきに挟まれ負傷した人を運び出す訓練


 福井県と日本防災士機構共催の「防災士スキルアップ研修」(企画運営:福井県防災士会・会員235人、久保田幹大会長=一乗谷郵便局長)が5月11日、福井市大畑町の福井県消防学校で行われ、約140人が参加した。
 地震発生直後の救出・搬送方法について、同機構の災害支援チーム(東京消防庁消防特別救助隊OBら)から研修を受けた。日本防災士機構と自治体の共催は全国で3例目となるが、がれきを使った本番さながらの環境で実地訓練をするのは初めて。
 防災士は災害が起きた時に、災害現場で地域住民らの救助活動の指揮を執る役割を果たす。
 この日はケガ人やがれきの下敷きになった人を協力して助け出すのに必要な基本訓練を行った。
 久保田会長が開会を宣言。続いて、主催の日本防災士機構の越谷成一企画課長が「阪神・淡路大震災から30年が経つが、建物の下で生き埋めになり救出された人の6割は住民に助けられた。自分の安全を確保し、家族や同僚、住民の安全を確認したうえで、救助できるなら、住民を救出していただければと思う。日本防災機構は良い形でその支援をしていきたい」とあいさつ。
 福井県の松本春奈防災安全部危機管理課危機管理・国民保護グループ主事は「災害はいつ起こるかわからないからこそ、実際に動きや行動力を身に付けていくことが大切。実践的な技術力と判断力を学び、お互いに高め合いながら、訓練をしていただければ」と述べた。
 実地訓練では「福井県に震度7の直下地震が発生。防火造の建物が倒壊した」という想定で、「救済を求める人がいる現場で防災士がどのように動くか」について救済技術を学んだ。
 ケガをした人2人、がれきに挟まれた人、合わせて3人の救出者がいる現場を想定。リーダーの指示で手分けしながら救済する。
 まずデモンストレーションを見学。防災士たちはリーダーの指示で、テキパキと動くプロの救出技術に見入っていた。
 この後、各班に分かれて、実施訓練を行った。がれきをジャッキで上げて、隙間から引っ張り出し、担架に乗せた。ケガ人は脊髄を損傷していることから首をテープで固定。体が動かないようロープやベルトを掛けて、搬送する。
 同機構災害支援チーム講師から、「リーダー、ここで指示を出して」「がれきのジャッキアップでかませる木を探してきて」「担架を持ち上げる時は足の力で持ち上げないと腰を痛める」など、現場で具体的なアドバイスを受けながら訓練を進めた。
 参加者らは救出・搬出訓練の間を縫って、ジャッキの使い方や、搬送時にケガ人を固定する時に使うロープの結び方なども学んだ。
 今回は福井県東部地区郵便局長会(鈴木清永会長・山王)を中心に51人の局長が参加。そのうち3人は女性だった。
 中林香苗・丸岡横地郵便局長は「デモのようにできるのかという不安がある。講師の先生から繰り返し学びたいので、訓練を定期的に開いてもらえるとありがたい。臨場感がある訓練が必要だと思った」。中林局長は能登災害ボランティアに5回、参加した。田んぼのあぜ道の泥の掻き出しや家屋から出たごみの分別作業などを行ったという。
 天田有紀・南春江郵便局長は「何も知らずに現場に行くよりはこのような技術を身に付けていきたい。ここでは人形を使っての研修だったが、実際のケガ人はもっと重い。首の動かし方一つで損傷にも影響する。頭ではわかっているが、できるのか心配」。
 谷口かおる・金津郵便局長は「ロープの結び方などは、こういう機会がないと習えない。勉強になった」と語った。
 山内浩史・福井県東部地区郵便局長会地域貢献地方創生防災士担当理事(鹿谷)は「局長みんなが防災士の資格を取得して、有事の時には助けられるように活動したい。能登の地震の状況を見て、防災士として活躍できるよう、救助に必要なスキルをしっかりと身に付けたいと思うようになった」と話した。
 防災士制度は2003年に始まった。日本防災士機構では2021年から救出・搬送訓練の研修を行っている。福井県内で防災士の資格を持つ人は4668人。


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