「通信文化新報」特集記事詳細
2025年05月26日 第7302号
【主な記事】
郵便局は地域の公的基盤
郵政関連法改正 住民の生活支援が主眼
自民党は5月9日、郵政事業に関する特命委員会などの合同会議を開き、郵政民営化法などの改正案を了承した。自民党は今国会で議員立法として法案を成立させることを目指している。
郵政民営化法は20年前の2005年に成立したが、サービスの低下や郵政三事業の一体性の低下が指摘される中で、2012年に改正され、郵便業務に加え金融サービスも郵便局で一体的にユニバーサルサービスとして提供することが義務付けられた。しかし、三事業の一体性低下には歯止めがかからなかった。
また、民営化前には郵政事業が果たす「地域住民に対する福祉の増進」が強調されていたが、2012年の改正により、郵便局ネットワークの活用その他の郵政事業の実施に当たり、「その公益性および地域性が十分に発揮されるようにする」との規定が追加されていた。
現在、民営化法が成立した2005年当時想定されていなかったペースで少子高齢化、人口減少、過疎化が進行している。地域によっては、市町村役場の支所、診療所などの公共的な施設、金融機関や商店などの生活インフラが撤退している。こうした中で、公的基盤としての郵便局に対する期待が高まっている。
総務省が郵便局をコミュニティ・ハブとして地域の住民に必要なサービスを提供できるための実証事業を行う施策を講じる中で、郵便局はマイナンバーカード関連事務のほか、買い物支援、オンライン診療などに取り組み始めている。
今回の法改正は、こうした大きな環境変化に対応し、三事業のユニバーサルサービスを確保するとともに、地域住民の生活を支援することに主眼がある。
改正案は、日本郵政に「当分の間」、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式の1/3超の保有を義務付ける。民営化法は、2017年9月までに金融2社の株式を完全に売却することを義務付けていたが、2012年の法改正で「できる限り早期に」に修正されていた。法改正により、「できる限り早期に」の文言を削除する。
郵便局ネットワークを活用し、地域住民の生活を支援するために、公共サービスその他の地域住民が日常生活、社会生活を営む基盤となるサービス(基盤的サービス)を、日本郵便の本来業務と位置づける。これに対応して、郵便窓口業務、基盤的サービス提供業務の一部に充てるための交付金を交付する。財源には政府が保有する日本郵政の株式の配当金や権利消滅した旧郵便貯金などが充てられる。
当初、自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)がまとめた改正の素案には、三事業の堅持を目的とした「日本郵政と日本郵便の合併」が盛り込まれていたが、両社の合併については、施行後2年を目途として、政府が積極的に検討することを附則に盛り込むことになった。また、施行後2年を目途として、政府が郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策について検討することも附則に盛り込む。
ゆうちょ銀行・かんぼ生命に対する上乗せ規制の緩和については、政府が「速やかに」検討を加えるとしていたが、金融業界、野党の意見を考慮し、3年ごとの郵政民営化委員会の検証の際に検討することとなった。=2面に法律案要綱=
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