「通信文化新報」特集記事詳細
2025年05月19日 第7301号
【主な記事】
奥野総一郎衆議院議員 郵政の法改正は暮らしを守るため
事業全体の維持が必要
国民が理解しやすい説明を
議員立法による郵政民営化法改正案提出を目指し、与野党間の調整が本格化している。3月下旬には与野党実務者協議がスタートした。小沢雅仁衆議院議員とともに立憲民主党の実務者メンバーとして協議に参加している奥野総一郎衆議院議員は、法改正の主眼は国民の暮らしを守ることであり、そのために郵政事業全体を維持する必要があることを、わかりやすく説明すべきだと強調する。
■郵政民営化法改正案の今国会提出を目指し、与野党実務者協議が進められています。
自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)が中心になってまとめた改正案の骨格は我々の考えと一致しており、法案提出に向けて順調に協議が進められています。
3月下旬にスタートした与野党実務者協議では、まず自民党から公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の4党に対して、改正の素案についての説明がありました。
実務者メンバーは、自民党が上野賢一郎議員を座長に、国定勇人議員が陪席する形で構成されており、公明党は中川康洋議員、立憲民主党は私と小沢雅仁議員、日本維新の会は藤巻健太議員と片山大介議員、国民民主党は古川元久議員が参加しています。
自民党からの説明を受けた後、各党からの修正希望を伝えました。維新はそもそも完全民営化を主張しているので、今回の改正案に賛同することは難しいという立場です。公明党、立憲民主党、国民民主党は支持するという立場です。
郵活連が当初検討していた素案には、金融2社に対する上乗せ規制の緩和が盛り込まれていました。金融2社の子会社保有の制限については、日本郵政がそれぞれの会社の株式の2分の1以上を売却すれば規制を削除するとしていました。しかし検討の結果、一旦は「政府は、速やかに、移行期間中における規制の在り方について検討し、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとすること」との附則を盛り込むことになりました。
我々は、郵便事業だけではなく、貯金事業、保険事業を含めた郵政事業全体を支えるための制度改革が必要だと考えています。ところが、上乗せ規制があるため、金融2社は著しく経営の自由度が制限されています。特に、かんぽ生命はこのままでは立ちいかなくなります。したがって、我々は上乗せ規制の緩和を期限を切って行う必要があるとの意見を申し上げました。ただ、自民党内にも金融族などの抵抗があるので、簡単ではないと思います。
一方、自民党の素案は、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式の処分について、現行法の「できる限り早期に」との文言を削除し、当分の間、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の3分の1を超える株式を、それぞれ保有していなければならないものと書き込むとしています。しかし、株式の保有義務を書き込むと、「暗黙の政府保証」だという批判を招き、かえって金融2社に対する上乗せ規制の緩和が難しくなりかねません。3社体制が実現すれば、日本郵便と金融2社の関係は強まるので、敢えて保有義務については書き込まなくてもいいのではないかという意見を述べました。
■改正案には交付金の拡充が盛り込まれています。
郵便局ネットワークの維持のため、国が日本郵政から受け取る配当金などを財源として年間650億円程度の交付金を出すとしています。ただ、配当金などを財源にすることについて、『朝日新聞』は「国の収入が減るため、実質的な国民負担になる」などと批判しています。
私は、「郵便局ネットワークの維持」という説明だけでは、国民を十分に説得できないのではないかと思います。ネットの普及に伴う郵便物数の減少は世界的な趨勢であり、デンマークでは約400年続いてきた郵便物の配達を止めることが決まりました。
我が国の郵便物数の減少も、予想を上回るペースで進んでいます。しかし、我々は郵便事業を維持していかなければなりません。
こうした状況を国民に伝えるとともに、金融サービスも含め、国民の暮らしを守るために郵政事業全体の維持が不可欠であることを、もっとわかりやすく伝えるべきだと思っています。また、手紙文化も守る必要があることや、郵便局が地域貢献事業で重要な役割を担っていることなどを国民に理解していただく必要があると思います。
実務者協議では、交付金についてもそのような国民に理解しやすいロジックで説明する必要があると申し上げました。(2面につづく)
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