「通信文化新報」特集記事詳細
2025年04月28日 第7298号
【主な記事】
自見はなこ参議院議員 郵便局ネットは地域の重要なインフラ
「おたがいマーケット」に期待
オンライン診療の拡大を
岸田前政権で地方創生担当大臣を務めた自見はなこ参議院議員は、地域社会を支える郵便局の役割に大きな期待を抱いている。それは、「郵便局は医療と同じように地域社会に不可欠な存在だ」と強調してきた父・自見庄三郎氏の思いを引き継ぐものでもある。地域社会の買い物を支える「おたがいマーケット」の全国展開に期待し、郵便局を拠点としたオンライン診療の拡大を牽引する自見議員に聞いた。
■地方創生における郵便局の役割についてのお考えを聞かせてください。
岸田前政権において、2023年9月から昨年10月までの1年1か月、内閣府特命担当大臣を拝命しました。その中で地方創生は大きな担当の1つでした。
私はもともと、小児科の医療現場で働いていましたが、2016年7月の参議院議員選挙に比例区で立候補することになり、約1年半かけて全国の地域をまわる中で、少子高齢化、過疎化による地域の衰退の深刻さを実感しました。
全国に800以上の郡市区等の医師会がありますが、10年間医師の新規開業がない地域がたくさんあったのです。そうした地域はこの9年間でさらに増えています。地域における人口減少インパクトは、都会では想像ができないほどの大きなものだということを体感的に理解していたのです。
また、2012年4月に成立した改正郵政民営化法には「郵便の役務、簡易な貯蓄、送金および債権債務の決済の役務ならびに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持するものとする」と書き込まれました。
父の自見庄三郎が、郵政改革担当大臣としてこの法案成立に全力を尽くす様子を私は隣で見ていました。だから、当時から約2万4000ある郵便局ネットワークが、ハード面でもソフト面でも地域社会の非常に重要なインフラになるだろうと感じていました。
地方創生担当大臣を務めることになり、医療、買い物、交通、教育などが地域社会を維持していくうえで重要な柱になると考えました。特に中山間地域における買い物支援は、非常に大きなテーマだと認識をして取り組んできました。2024年8月には奈良市の月ヶ瀬郵便局を訪れ、都市部から離れた地域での買い物を可能とする共助型の買物サービス「おたがいマーケット」を視察しました。
地域住民はネットスーパーのWebサイトから注文し、地域内の受取先拠点で商品を受け取ることができます。地方創生の交付金を利用し、旧月ヶ瀬学校給食センターを改修して設置した「月ヶ瀬ワーケーションルームONOONO」を訪れると、ちょうど「ぽすちょこ便」が届き、地域住民が受け取りに来るというタイミングに出くわしました。
その時、住民の人たちから、お刺身、アイスクリーム、ビールなどが人気だと聞きました。住民が集まる地域の拠点には、注文したものを受け取りに来る際に近隣の人たちが顔を合わせ、お互いに元気に暮らしている様子を確認できるといった意味もあると実感しました。
また、「ぽすちょこ便」を活用し、月ヶ瀬地区の市場で売っている特産品を市街地の郵便局に届け、有機野菜などを使用しているお洒落なレストランのメニューとして出すという仕組みも大変素晴らしいと思います。これは、それぞれ地域の中で必要な役割分担をしっかりと見極めたうえで、郵便局を地域の重要なインフラ拠点として位置付けて組み立てた仕組みだと思います。是非全国に広まってほしいと思います。
月ヶ瀬地区での「おたがいマーケット」は、地方創生人材支援制度を活用して奈良市に出向していた日本郵便の職員を中心に、官民共創、協働の取り組みとして始めたと聞きました。こうした人事交流も役に立っていると思いました。
■郵便局を拠点としたオンライン診療にも取り組んできました。
これは私の肝入りです。9年前に当選させていただいた時に、自民党青年局の異業種交流会に参加しました。そこに石川県七尾市の医師会の人や郵便局の職員が参加していて、私が「将来、七尾の無医地区で、郵便局を拠点としたオンライン診療ができるといいですね」と提案したのがきっかけです。七尾市の南大呑地区は過疎化が進んで無医地区となり、高齢者は通院に不便を感じているのです。
その後、私が事務局長を務めている「医師養成の過程から医師偏在是正を求める議員連盟」で、オンライン診療のあり方についての議論を深めました。
オンライン診療はもともと診療報酬では算定されていなかったのですが、私たちの議連が強く要望した結果、「Doctor to Patient with Nurse=D to P with N」(患者が看護師等といる場合のオンライン診療)が診療報酬に入れられたのです。
こうして「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」に「へき地の郵便局でのオンライン診療」の実証実験を入れていただき、2023年11月に七尾市の南大呑郵便局で実証実験が始まりました。2024年元日に能登半島地震が発生しましたが、予定通り2024年2月16日まで実証実験は続けられました。(2面につづく)
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