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2024年04月08日 第7243号

【主な記事】

古屋圭司衆議院議員 「文(ふみ)の文化」大切に
三事業一体の回復へ
日本郵政と日本郵便を合併


 現在、郵政民営化法の改正案作成を進めている「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)副会長の古屋圭司衆議院議員は、民営化によって弱まった三事業一体を取り戻すためには、日本郵政の経営陣が現場の実態をよく理解する必要があると強調、日本郵政が保有する金融2社の株式完全売却に強く反対する。(坪内隆彦)
■人口減少だけではなく手紙利用の減少によって、郵便事業が厳しい状況に陥っています。
 日本は古くから「文(ふみ)の文化」をとても大切にしてきました。江戸時代の日本の識字率は世界一だったと言われていますが、平安時代にひらがなが誕生し、女性も日常的に文字を記し、手紙を書くようになりました。このような国は世界のどこもないと思います。1000年単位で続いてきた我が国の「文の文化」「手紙の文化」をもっと大切にすべきです。
 しかも日本には、すでに江戸時代から迅速、正確に配達するネットワークとして飛脚があり、「文の文化」を支えていました。明治維新後、前島密翁はこうした伝統的なネットワークを活かし、世界に誇る近代的な郵便制度を確立しました。私は日本が生んだ世界に誇るインフラが2つあると考えています。その1つが郵便制度であり、もう1つが全自治体に設置されている消防団です。
■郵政民営化によって三事業の一体感が弱まったと指摘されています。
 私は、日本郵政の経営者が、現場の実態を十分に理解していないのではないかと感じています。会社の幹部が行うヒアリングなどでは、通り一遍の情報しか得られず、現場の実情、社員の本音はつかめません。コミュニケーションをもっと頻繁に、濃密に取らなければいけません。
 私の地元の東海支社ではかなり努力をしていただいているようですが、全国的に見るとそうした努力が会社側に不足しているような気がします。コミュニケーションが不足すると、経営側と局長会との間にも見えないバリアができてしまいます。
 2021年には、かんぽの宿売却をめぐり、驚くことがありました。民営化当初、約70か所のかんぽの宿を109億円でオリックス不動産に一括売却しようとして頓挫した経緯がありますが、2021年9月中旬、日本郵政側から、かんぽの宿を米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」傘下のマイステイズ・ホテル・マネジメントなどに一括売却するという方針を、突然聞かされたのです。
 国民の資産であるかんぽの宿を、まるで「バナナの叩き売り」のように売却してしまうというのです。しかも、そこには私の地元の「かんぽの宿恵那」も含まれていました。確かに赤字になっているかんぽの宿もありましたが、恵那のかんぽの宿は景勝地恵那峡を望む高台という最高のロケーションにあり、コロナ禍を除き一貫して黒字でした。
 「そんな馬鹿な」と思い、岐阜県知事と恵那市長に電話すると、2人とも全く聞いていないとのことでした。まさに「寝耳に水です」だったのです。私はすぐ増田寛也社長に会い、恵那市のかんぽ売却について白紙撤回を強く要請しました。
 恵那のかんぽの宿は、天皇が皇太子殿下だったときに、岐阜国体観戦のためお泊りになられたこともあり、恵那市民にとって精神的ランドマークになっています。それがいきなり外資に買われれば、市民感情が許しません。私は、地域への事前説明もなしに、十把一絡げで売却してしまうのは住民無視も甚だしいと考え、白紙撤回を強く迫ったのです。武田良太総務大臣にも事情を説明し、納得していただきました。
 その後、恵那のかんぽの宿はバローホールディングスを筆頭株主に、地元企業12社が出資した新会社がオーナーとなり、昨年4月に「恵那峡温泉ホテル ゆずり葉」としてグランドオープンしました。非常に好調だと聞いています。
■現在、郵活連で民営化法改正案が作成されています。
 日本郵便が主導する形で三事業一体を回復するために、日本郵政と日本郵便の合併が必要であり、これは確実に実現したいと思っています。
 現場の人たちの話を聞けば、三事業の一体感が損なわれていることがよくわかります。経営者側がそれを認識して、それを是正する努力をすべきです。
■三事業一体を維持するためには、日本郵政が金融2社の株式を一定程度保有し続ける必要があります。
 それが絶対に必要です。一定程度株式を持ち続けて、三事業の連携を強化すべきです。全ての株式を売却するようなことはさせません。我々は立法府ですから、そのための法律を作る権限を持っています。
 もちろん、金融2社の株式をある程度売却する必要はあります。しかし、一定の影響力を残す形で金融2社の株式を売却することに知恵を絞るべきです。
 仮に全部売却してしまえば、150年かけて築いてきたわが国の富が外資に支配されかねません。外資の発想の原点は、株主に利益を還元するために会社の価値を高めることです。郵便局の在り方とは根本的に違うのです。三事業は公的な使命を担っているのですから、通常の民間会社とは全く異なる発想で経営する必要があると思います。
 ゆうちょ銀行とかんぽ生命の上乗せ規制も緩和すべきですし、日本郵政についての外資規制も導入しなければなりません。世界に誇る郵便局制度を取り戻すために、きちんとルール作りしなければなりません。そうしなければ、そこで必死に働いている人が気の毒です。(2面につづく)


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