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2024年04月01日 第7242号

【主な記事】

福島伸享衆議院議員 
郵便局を公的サービスの窓口に
 
重要なネットワーク維持
組織形態の見直しを


 郵政民営化から17年、民営化法改正の議論が高まる中で、福島伸享衆議院議員は2月28日の衆議院予算委員会で松本剛明総務大臣に郵政事業の現状について質問した。郵便局ネットワークを維持するためには、小泉政権の民営化の枠組みから抜け出し、組織形態から根本的に見直さなければならないと訴えた福島議員に聞いた。(坪内隆彦)
 
■人口減少、過疎化が急速に進む中で、地域における郵便局の役割が重要になっています。
 平成の市町村合併が進んだ結果、合併された町や村では役場などが廃止され、行政サービスを提供する拠点が減少しています。その結果、地域によっては住民票の取得など当然受けられるはずの行政サービスさえ受けにくくなっている人がいます。
 公的サービスを提供する拠点も減少しています。特にJAの減少が加速しています。2000年代初頭には1000を超えるJAが存在していましたが、25年春には500を割り込むと予想されています。県内の農協を一つにする「1県1JA」が、すでに5県で実施されています。
 こうした中で、郵便局はあらゆる行政サービス、公的サービスの窓口としての役割を担うべきだと思います。
 一方、国境離島などに住民が住み続け、生業を立てていくことは、安全保障上も国土保全上も極めて重要なことです。住民が生業を立てるためには、公的サービスがきちんと維持されていなければなりません。つまり、必要な公的サービスを提供できなくなることは、国土を放棄するに等しいことだと思っています。
 そういう意味では、郵便局の求められている役割は重大だと考えています。経済合理性だけで郵便局の配置を考えればいいという話ではありません。郵便局の維持のためには公的な資金を入れてもいいと考えています。
 郵便局の現場で働いている局長さんや社員の人たちは頑張っていると思います。ですから、利用者に「窓口の対応はどうですか」という聞き方をすれば、「満足している」という回答は多くなるはずです。しかし、郵政民営化によって小泉政権が言っていたようなバラ色の未来が来たかと言えば、決してそうは言えません。
 今年は25グラム以下の「定型封書」が84円から110円へ、「はがき」も63円から85円へ引き上げられる予定です。約3割の値上げです。私のメールアドレスには、「今年から年賀状は紙ではなくてメールにします」というメールが殺到しました。
 「郵便物がいつ届くのかわからない」といった不満の声も私の元には届いています。これが郵便事業の実情だと思います。
 このような状況の中で、郵政の組織形態から根本的に見直さなければならないでしょう。私は郵便局ネットワークとサービスの質を維持する道は2つしかないと考えています。
 1つは、三事業一体で公社のような形で運営し、それぞれの事業が相互に補填し合いながら郵便局ネットワークを維持するという道です。この場合には、銀行、保険事業は一定の制約を受けながら展開することになります。
 もう1つは、イギリスのように、金融や保険は民間でやり、郵便事業だけを公社という形態で維持するという道です。この場合には、郵便事業の赤字は、ある程度国民が負担する必要があるかもしれません。
 今与党内で検討されている、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の完全民営化をやめる方法では、結局手足を縛られたまま金融事業を行うことになって、郵便事業も儲からず、金融事業も儲からず、公的な支援も受けられないという最悪の事態に陥りかねません。
■日本郵便が金融2社の株をある程度保有し続け、なおかつ金融2社に対する上乗せ規制を撤廃するという方法はないのでしょうか。
 それは受け入れられないと思います。ゆうちょ銀行やかんぽ生命が、同じ金融業の土俵で競争する限り、競争条件を対等にしろということになるでしょう。政治の力でそれを実現したとしても、しっぺ返しを受けることになると思います。(2面につづく)


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