「通信文化新報」特集記事詳細
2023年12月11日 第7226号
【主な記事】
全特結成70周年
岸田首相迎え記念式典
地域を支える役割を繋ぐ
全国郵便局長会(全特)結成70周年記念式典が11月25日に東京の帝国ホテルで開催された。岸田文雄総理大臣をはじめとする多数の来賓を迎え、会員・夫人会・OB等約400人が出席して祝福した。ちょうど70年前の同日に全特が結成されことを踏まえ、末武晃会長(萩越ケ浜)は「地域の皆さま、各方面でご支援いただいている皆さまと、私たち全国郵便局長会の会員が一丸となって郵政事業と地域の明るい未来のため各種活動に取り組んでまいりたい」と述べた。岸田総理は「郵便局ネットワークは大変重要なわが国の社会生活インフラだ。政治の役割は現場の皆さま方を全力で支えることであり、政府としてしっかりと応援をしてまいりたいと考えている」との見解を示した。
地域を支える役割を繋ぐ
来賓の入場を末武会長、宮川大介副会長(土佐山田神母ノ木)、向井則之副会長(広島戸坂新町)、土田茂樹副会長(浜大津)、森山真専務理事らが出迎えた。最後に岸田総理が入場すると大きな拍手が起きた。はじめに、郵便制度と全特の歴史を振り返るビデオが巨大スクリーンで上映された。国歌に続き、全特会歌を斉唱した後、末武会長が演台に立った。
「私たち全国郵便局長会は、70年前の本日11月25日に結成した。結成当初の名称は全国特定郵便局長会だったが、2007(平成19)年の民営分社化の際に名称を全国郵便局長会に変更し現在に至っている」と語り、岸田総理はじめ鈴木淳司総務大臣、公明党の山口那津男代表、郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟(郵活連)会長の山口俊一衆院議員、公明党の石井啓一幹事長(郵政議員懇話会会長)らの国会議員、日本郵政の増田寛也社長をはじめとする日本郵政グループ社長と幹部、日本郵政グループ労働組合の篠原和彦中央副執行委員長ほかの臨席に謝意を示した。
続いて「この70年の間、郵便局の本質はまったく変わっていない。郵便局は地域の皆さまに、郵便、貯金、保険のサービスを安定的に提供し、地域の核、安心・安全の拠点として変わることなく愛され、存在し続けていると確信している」と強調。
「昨年12月の閣議において決定した『デジタル田園都市国家構想総合戦略』の中で、郵便局を地域の核として利活用することを位置付けていただいた。大変うれしく意気に感じている。私たちの使命は地域の皆さまに、郵便局を通じてサービスを安定的に提供していくことだが、急速に変化する社会環境やテクノロジーに柔軟に対応し、環境への配慮なども踏まえ公益性と採算性の両立を維持しつつ、一人ひとりのお客さまにより添う対面でのサービスの提供が可能である郵便局の特性を活かし、地域の皆さまのニーズに応える新たなサービスの提供に取り組んでまいりたい」と述べた。
岸田総理は「臨時国会の所信演説で『私の頭の中にあるのは、変化の流れを絶対に逃さない。つかみ取る。この一点である』と申し上げた。日本は国の内外で起こった大きな時代の変化の流れをつかみ取り、個々の国民の力に変え歴史に残る大きな社会変化を実現してきた」とした。
そして「日本の郵便制度も急激な近代化を目指す明治の日本において、前島密翁が地域の有力者の協力をいただき、わずか1年で全国に郵便網を築いたことに、その端緒がある。日本の郵便制度の成り立ちを振り返る時、改めて私の心によぎるのは、変化の力を掴み取る日本人の力。全国郵便局長会結成70周年という節目の年に当たり、皆さまの長年にわたる多大なる貢献に改めて敬意と感謝を申し上げたい」とたたえた。
「今、日本の社会は大きな変化を迎えている。人口減少、国民のニーズの多様化・複雑化に応える新たな地域の仕組みを作り上げていく必要がある。このような状況にあるからこそ、地域住民の一番身近な存在として地域の方々の生活に寄り添いながら、社会の変化に合わせて進化を模索し続けている郵便局の存在を大変心強く思っている」と語った。
さらに「郵便局はユニバーサルサービスとして、全国に地域の隅々にまで提供していただいている郵便や貯金、保険の金融サービスはもちろん、地域の安全・安心の拠点、また、地方創生の中心として大きな役割を期待されている。今後、地方自治体の支所の統廃合や地域金融機関等の撤退などが続く中、地方自治体事務の実施、マイナンバーカードの普及や有効利用、今月実証事業が開始されたオンライン診療の拠点など、新たな役割を担っていただいている」と評価した。
鈴木総務大臣はまず「70年前に結成された全国特定郵便局長会、現在の全国郵便局長会の皆さまの長年の尽力に支えられ、全国に張り巡らされた約2万4千の郵便局ネットワークは、郵便、貯金、保険のユニバーサルサービスの提供に加え、地域にとって重要な役割を果たしている」と強調。
「総務省では、郵便局が地域のニーズにより一層応えられるよう郵便局と地域の交流基盤を連携させ、地域課題解決のための実証事業を実施している。直近では、日本郵便の協力のもと全国初となる郵便局でのオンライン診療の実証事業を、石川県七尾市の南大吞郵便局で11月15日から行っている。郵便局でのオンライン診療は、医療機関の無い僻地での地域医療に貢献するものと期待しており、実装や横展開に向けて自治体や日本郵便とともに検討を進めてまいりたい」と取り組みを紹介。
「デジタル化が進展する中で、長年にわたって郵便局が培ってきた信頼や地域拠点としての役割に大いに期待している」と述べた。
公明党の山口代表は「かつて小笠原を訪れた時、母島では農協と郵便局が一緒の施設で業務を行っていた場面を拝見した。そこでは特産物である島レモンをゆうパックに小分けして、その箱がうず高く積まれていた。こうして物流も、遥か彼方の離島から担っていただいているのだと実感した。公金の収納サービスが母島にもあったわけだが、後に郵政民営化の議論の中で父島への統合という話が出てきた。しかし、そうなると50キロ離れた母島から父島に行かなければいかなくなる。これは母島の多くの住民にとって大変厳しいことだった。そうした実情を鑑みて、母島にも公金収納の機能を郵政のサービスとともに残すという特別の扱いを法律上認めていただいた」との逸話を披露。
「今日も都市部のサービスだけではなく離島や半島にもあまねくサービスを行き渡らせている。これこそユニバーサルサービスの地域的な基盤の広がりの重要性を象徴するものだと思う。三事業のみならず、さまざまなサービスの担い手として必要欠くべからずネットワークとして機能している」と語った。
山口郵活連会長は「先ほど、岸田総理から『変化をしっかりつかまえて、それに載せて発展をさせていく時代』という趣旨の話があった。これまでの郵政事業も、そういった流れの中でしっかりと対応していただいている。しかし、今はこれまでにない大きな変化の時期。とりわけ人口減少時代に入って、地方がどんどん廃れていく。この大変な変化にどうやって対応していくのか。大事な課題だろうと思っている。民営化されて相当な日時が経過した。さまざまな問題も顕在化している」と課題をあげた。
「郵活連として、そろそろ新たな時代にしっかり対応できる法改正が必要なのではないか。新しい流れに乗ってうまく発展させることができないだろうか。これからの150年、70年をしっかり作っていくことができないだろうかということで、公明党とも相談をし、自民党内で最終的な調整に今入りつつある。果たして今の4分社化体制が良いのかという話もあるだろう。そういった方向性をこれからの議論の中で出していきたいと考えている」と法改正の必要性に触れた。
公明党の石井幹事長は「地域にとって郵便局は、なくてはならない、いわば空気のような存在だと思っている。郵便局がそこにあり、利用できることが自然で当たり前のようなことであり、日ごろ郵便局があることをさほど気にはしないが、なくなることは考えられない存在、なくてはならない存在と考えている。皆さまは日ごろから郵便局を通じて地域の利便性、生活の質を向上させることに渾身の努力をされている」と評した。
「郵便局には、地域の皆さまの生活を守り、利便性の向上を図るために、郵便・物流や金融サービスに留まらず、その地域の求めているさまざまな新たなサービスを展開、活性化する役割の一端を担っていただきたいと期待している」と要望した。さらに「今後も郵便局が安定した経営状況のもとで、さまざまな活動ができるよう課題の解決のために制度や法律の見直しなども含めて取り組んでまいりたい」とした。
日本郵政グループを代表して増田社長があいさつ。「デジタル化やIT化が進み、サービスの在り方は急速に変化をしている。しかし、郵便局が地域の方々に愛され、厚い信頼をいただいていることは創業以来変わりない。先人が築き上げた郵便局への信頼を礎にして、リアルの温かみを大切に、社会の変化に応じたデジタルとの融合を図り、郵便局ネットワークの価値を高め続けることが事業の成長やグループの将来、そしてこの国の将来に繋がるものと信じている」と述べた。
「郵便局が地域の生活に不可欠な存在であり続け、グループが成長し続けていくために、郵便局長の力は必要不可欠なもの。今後とも一層の活躍をお願いしたい」と期待を示した。
日本郵政グループ労働組合の篠原中央副執行委員長は「お客さまに愛され、地域に必要とされる郵便局は、この先も未来永劫続くと思っている。しかしながら、この数年間は、国民の財産である郵便局ネットワークをこのまま維持していけるのかどうかという強い危機感を抱いている。その背景には郵政三事業の業績悪化のほか、分社化による非効率やさまざまな上乗せ規制に問題があり、分割民営化の歪が限界に来ているものと考えている」と問題をあげた。
「経営の課題は経営陣が解決すべきだが、経営陣で解決できるものには限界があり、労働組合の立場でもできることは真正面から取り組みたいという覚悟でいる」と述べ、JP労組が考える事業ビジョン案と将来ビジョン案に言及し、「全国郵便局長会とも多くの部分で共有いただけるものと思っている。今後ともさまざまな機会において、連携・協力をお願いしたい」と語った。
自民党政務調査会副会長・参議院自民党政策審議会副会長の柘植芳文参院議員は「全特の組織は素晴らしい組織であり、私が35年間地域の中で取り組んできたことがすべて凝縮されている。今日、岸田総理も、鈴木総務大臣も、増田社長も多くの方々が地域という言葉をどれだけ使っただろうか。まさに地域があっての全特。日本の国造りは今、地域が疲弊する中でどういう形で立て直そうかということに尽きる」と述べた。
そして「地域が強くならないと、地域がしっかりしないと日本の国は成り立たないという強い信念で今日まで闘ってきた。私は地域に育てられて地域によって郵政事業で働けると感じた。郵政三事業は素晴らしい。しかし、体現できたのは地域の方々の温かい心、共に取り組んでいく姿勢だった。特定局長魂を受け継ぎながら、郵政事業を心底愛し、心底信頼して、国民のために前に進めていきたい」と熱い思いを語った。
全特顧問の長谷川英晴参院議員は「この70年というのは人が繋いできた70年。局長たちはしっかりと地域の方々と信頼関係を結びながら、郵政事業、組織を繋いできた」とした。
そして「私は今、日本Well―being計画推進特命委員会に所属している。Well―beingというのは、そこに携わる方々、郵便局でいえば社員および日々接している地域のお客さまが、幸福を感じないと良い企業、良い事業、良い地域にならない、それがひいては成長に繋がるということを意味する」と説明。
「委員会に招聘した企業経営者によれば、企業におけるWell―beingは、しっかりとした理念を絶対にぶれさせない、そして繋いでいく、それが結果的に社員の幸福度になり、事業が成長していくことを意味する」として、「この70年間、郵政事業をしっかり繋ぐとともに地域のお客さまとの信頼を繋いできた。これを将来に繋げていかなければならない」と述べた。
他の来賓の紹介後、祝辞が読み上げられた。続いて、学校法人小林学園本庄東高等学校による、全特会歌に込められた思いを表現した書道パフォーマンスが披露された。
宮川副会長が「改めてこの素晴らしい機会に、私たちが共に歩んできた70年の歴史、そして明るい未来に向かって希望を共有できることを感謝したい。この後に流すエンディング映像に出てくる、まさに郵便局、郵便局長を体現した『一隅を照らす。これ即ち国宝なり』の言葉で締めくくらせていただく」と閉会のあいさつ。エンディング映像の上映後に散会した。
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