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2020年9月7日 第7056号

【主な記事】

信頼回復に向けた業務開始
[日本郵政]増田社長 本格的な営業はまだ先

 日本郵政グループ4社(日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)は8月26日、「信頼回復に向けた業務運営」を開始すると発表した。かんぽ生命保険の不適切販売や高齢者への投資信託の社内ルール違反などにより、昨年から「かんぽ生命保険商品」や「投資信託」「提携金融商品」の郵便局での積極的な営業活動を停止してきたが、これらが解除される。日本郵政の増田寬也社長は「これは営業再開ではない。業務を開始する時期はまだ決めていないが、勧奨は行わない。今年度いっぱいはお詫び行脚になる」と述べており、本格的な営業再開にはまだ時間がかかる見通しだ。

 かんぽ生命保険の営業再開に当たり、日本郵便は8月24日、日本郵政とかんぽ生命は8月26日に取締役会を開き、「信頼回復に向けた業務運営」の開始が承認された。
 増田社長は「昨年7月以前のように、お客さまの所に積極的に足を運んで営業活動をするのではない。不適正募集で被害を受けたお客さまの怒りや悲しみに思いを馳せて、まずは社員一人ひとりが、お詫びを伝えるところから始めたい」と通常の営業再開ではないことを強調する。
 また、業務再開に当たり取締役からは「二度と間違いを起こすことは許されない。念には念を入れて、再開が可能なことの確認を徹底するように」との指摘を受けていることも付け加えた。
 営業自粛との違いは、自粛中は満期を迎えた顧客が商品の説明を要望した時に限り、説明を行ってきたが、今後はそれ以外の顧客にもコンタクトを取ることができる。新たな商品購入の要望があれば、それに対応するが、積極的な商品の提案は控えることになるという。
 訪問や電話でのコンタクトの際は、お詫びに加え、日本郵政グループは「顧客本位の業務運営を行う企業に生まれ変わる」ということを伝えていく。再開時期が具体的に示されない理由として、増田社長は「社員全員にそういう意識を浸透させるための手順や手続きに時間が必要」としている。
 もう一つの理由として、業務再開の条件として「かんぽ生命の保険契約と投資信託の横断的な販売」で、お客さま本位でない販売が行われた(7月末に発表)。「リスクの高い募集人については現場に出さない」方針を採っており、お客さま本位でない販売の懸念のある社員は営業停止にしている。
 募集人が法律違反の営業を行った可能性のある取引案件(727人)を抽出し調査したが、詳細確認の必要のある契約者(205人)や連絡がつかない契約者(218人)ら6割は調査を終えていない。9月までには調査を終え、法令違反の懸念のある社員活動停止を行う予定。
 信頼回復に向けた業務運営の開始は、「社員の意識の浸透」と「法令違反社員の特定と活動停止」の2項目が十分に確認されてからとなる。
 本格的な営業開始について増田社長は「お詫び行脚は契約満期を迎えるなど今年度優先的にコンタクトを取る顧客(契約者)が900万人(全体の契約者と被保険者は合わせて2500万人)いるが、今年度はそこをお詫びして回るので精いっぱい。本格的営業再開はそれを現場で始めてから状況を確認し、決めていきたい」と話している。
 グループ各社では、営業再開を審議する取締役会開催までの期間に、経営陣が、支社長会議や主幹統括局長会議、郵便局訪問など通じて、現場の意見を聞いたという。
 通信文化新報は「現場の声はどのような意見が多くあったのか。それを受けての感想は」と質問した。
 増田社長は「現場には多様な声があった。7月と8月の支社長会議では『早く顧客の所に行き、きちんとしたお詫びをしたい』という意見があったが、それは昨年7月から1年間に多く寄せられた意見でもある。一方で『社員に会社の趣旨を徹底してもらいたい。すぐに顧客の所に行くのではなく、社としての新しい姿をお客さまに伝えるには準備期間が必要』という意見の人もいた。その他でも『単に業務再開するだけでなく、原点から考え直さなければならない』『行動憲章をきちんと進めていくことは重要な活動』という意見もあった」と様々な意見があることを明らかにした。
 これら現場の意見を聞いての感想について増田社長は「処分が執行され、ざわつく空気感の中で、意見をいただいたのだが、やはり、乗り越えなければ前に進めない。我々に課せられた試練だと思う。組織全体で反省し、お詫びしたうえで、一歩を踏み出さなければならない」と述べた。
 そのうえで「以前の会社に戻らないよう、一段高いレベルで進んでいかなければならない。そのための仕掛けが必要と思っている。お詫びから入り、生まれ変わった姿をお伝えすることから始めたい」と新しい姿勢でのスタートを強調した。


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