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2020年 7月6日 第7047号

【主な記事】

業務改善計画が優先
[郵政民営化委]かんぽ営業再開

 第214回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が6月24日に開かれ、「金融2社のフィンテックへの取り組み」と「業務改善計画の進捗」について、関係者にヒアリングが行われた。業務改善計画の進捗について岩田委員長は「6月末までにはかなり進むという説明を受けた。それなりに進捗していると思う」と述べた。
 業務改善計画の進捗について、通信文化新報は「進捗状況をどう評価しているのか。また営業再開については遅れるだけ、今後の営業収益に影響すると思うが、再開時期についてどう考えるか」と質問。岩田委員長は「進捗状況については丁寧な説明があった。個人的にはいくつかの案件は十分ではないと思っていたが、6月末までにはかなり進むということで、それなりには進捗していると思う」と述べた。
 営業再開については「遅れるほど営業収益にはマイナス。その意味では早くということが望まれるが、業務改善計画をしっかりと実行することを優先的に考え経営判断している。私もそうした判断が正しいのではないかと思う」と回答した。
 委員からの「社員の内発的努力を評価する仕組みは必要と考えるが」との意見に、日本郵便は「営業目標としての数値を追うのではなく、真のお客さま本位の営業を優先している。売りやすい商品に偏っていた営業活動からお客さまの意向を踏まえた商品を勧める総合コンサルティングを目指している。社員の内発的努力は業務改善計画の項目にも掲げており、社員の評価に募集品質を設定している」と説明したという。
 フィンテックへの主な取組みとして、かんぽ生命保険は「健康増進インセンティブを組み込んだ保険商品の開発」、ゆうちょ銀行は「データビジネスの研究」など、デジタル技術を活用した新サービスへの取組みについて紹介した。
 委員会への提出資料によると、ゆうちょ銀行は、新たなビジネスの創造に向けて「データを活用したビジネス」分野の研究を進めている。また、デジタル化による業務の効率化にも取り組み、すでに「ゆうちょPay」や「ゆうちょダイレクト」「ゆうちょ通帳アプリ」「即時振り替えサービス」などスマホやパソコンを活用したサービスは提供しているが、今後も通帳アプリで口座振り込みや住所変更ができるなど新サービスを増やしていく。
 デジタル技術を活用して貯金事務センターなどのバックオフィスや窓口事務の事務効率化を進めている。貯金事務センターでは、AIを活用した相続に関する帳票の自動入力、自動技術を活用した相続金の自動入金を検討している。
 相続手続きは、専門知識が必要で、知識を習熟したベテラン社員が人事異動した時でもサービス水準が保たれるようにするため、AIが専門情報を蓄積し、手続きなどの処理を自動化する。
 コールセンターや郵便局向けのパートナーセンターでもAIを活用した「FAQの自動表示」や電話の声の「リアルタイムテキスト化」を用いることで、業務の効率化を図る。
 かんぽ生命は、テレビ会議専用端末を使った遠隔での保険相談業務を昨年5月から試行で行ったほか、昨年10月からは保険金支払いでAIや自動化技術を活用している。今後は、歩数など健康に関連するデータと死亡・入院データを分析し、健康増進インセンティブを組み込んだ保険商品の開発に生かす。
 また昨年1月からは健康応援アプリ「すこやかんぽ」を提供しているが、今後はWebサイトの行動分析から顧客一人ひとりに合う商品などのコンテンツを提供する。
 委員からは「生命保険業界のフィンテックの動向」についての質問があり、かんぽ生命保険は「健康増進アプリから得られたビッグデータを使い、商品開発に生かす動きがある」と回答。別の委員からは「ネットでの申し込みや健康応援アプリの利用者への割引は考えているのか」との質問があった。同社は「アプリを利用する顧客へのキャッシュバックについてはやってみたいと思うが、もう少し検討が必要」と回答した。
 委員からは「デジタル化は、利便性向上に役立てることは重要だが、データの活用は顧客に不安を与えないようにしてもらいたい」との指摘があったという。


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