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2020年 7月6日 第7047号

【主な記事】

かんぽ営業再開に5条件
[日本郵政]増田社長 信頼回復の道筋など

 日本郵政の増田寛也社長は6月30日、オンラインでの定例会見に臨み、かんぽ生命の営業再開に向けた5つの条件、およびその達成状況を明らかにした。増田社長は「考えられうる取組みについて実施してきたところだが、われわれがここまでできたから良いと判断するのではなくて、第3者がどのように評価するか、社外取締役を含めた取締役会がどう評価するか、といったことを勘案して営業再開に至るものと考えている」とし、「直ちに以前のように積極的な営業を行うのは難しい。今年度は営業目標を設定せず、信頼回復に向けたフォローアップ活動に徹する」と述べ、「1日も早く営業再開ができるような環境整備に全力で取り組んでいきたい」との考えを強調した。

「JP VOICEプロジェクト」立ち上げ

 かんぽ生命の通常営業の再開の条件等については「お客さまへの対応状況、募集人の処分状況、チェック体制の確立の状況を総合的に勘案して慎重に判断する必要があると申し上げてきた。これらを踏まえて、改めて整理した。再開に当たっては次の5つの条件を満たすことが必要と考えている」とした。
 その条件の1点目は「お客さまの信頼回復に向けたご契約調査が業務改善計画で公表した対応スケジュール通りに進捗し、お客さまの利益回復に向けた道筋がついていること」。
 2点目は「法令または社内ルールに違反した、あるいは違反した可能性のある保険募集人については募集停止が行われていること」。
 3点目は「法令または社内ルールに違反した保険募集人、およびその管理者に対して適切な社内処分等を実施する道筋がついていること」。
 4点目は「不適正募集を発生させないための募集管理体制が整備されていること」。
 5点目は「募集に対する再教育が実施されているとともに、引き続き、再教育を行う仕組みが作られていること」をあげた。
 続いて「これらの点については、5月27日に開催した第2回JP改革実行委員会でも議論した。外部の専門家である各委員も同様の認識を持っていることを確認した。条件を満たす状態になったかどうかの判断は、われわれが一人よがりで判断するのは適切ではないので、第3者の意見を十分踏まえて、きちんと判断することが重要」との考えを改めて示した。
 そして「JP改革実行委員会の皆さんにきちんと検証していただく。かねてから申し上げているが、通常営業の再開は各社の取締役会での決議事項であるので、現段階で再開時期を申し上げることはできないが、グループ全体として1日も早く営業再開ができるような環境整備に全力で取り組んでいきたいと考えている」と述べた。
 「5つの条件について現時点での達成状況は」の質問には、「営業自粛を解く条件としては、5つの条件をクリアすることが必要となる。1点目は概ね当初の計画通り進展している。2点目はすでに措置を取っているものもあり、必要な措置を今後もきちんと講じていきたい。3点目は人事上の処分の手続きを進めている状況。4点目は郵便局、またかんぽ生命のコールセンターで募集人が新契約の申し出を受けた場合に、契約者の意向に内容が沿っているかを重層的にチェックすることによって不適切な募集行為をはじくような仕組みを整備し、すでに運用を開始している」とした。
 さらに「業務停止処分を受けた募集人が一定の募集停止期間経過後に、業務停止が解除されて募集活動ができる形にはなるが、通常のチェックに加えてさらに郵便局の管理者、かんぽ生命サービスセンターによる重層的なチェックを行うという仕組みにするなど、募集管理体制をさらに整えたところだ」と述べた。
 5点目についても「募集人に対する再教育ということだが、かんぽ生命についてはかんぽ営業スタンダード、全般的には総合的なコンサルティングサービスでの検証を実施している。法令違反、社内ルール違反によって業務停止処分を受けた募集人に対しては、再教育のための研修を停止期間中に受けさせて、その研修終了後に再び募集を行わせて良いかどうか改めて判定した上で、業務停止を解除する」とした。
 また「解除された後に申し込みを受けて来ても、重層的なチェック体制で内容を確認する形にしている。考えられうる取組みについては、実施してきたところだが、われわれがここまでできたから良いと判断するのではなくて、第3者がどのように評価するか、社外取締役を含めた取締役会がどう評価するか、といったことを勘案して営業再開に至ると考えている」と語った。
 これを前提に「営業再開といっても、直ちにかんぽ生命の不適正な契約問題が発生する以前のような積極的な営業を行うのは難しい。今年度に営業目標を設定しないのは、お客さまにお詫びをしつつ、契約内容を丁寧に1件ずつ確認するのがまずやるべきことだからだ。そして、信頼回復に向けたフォローアップ活動に徹する。これが必要なことであり、今年1年あるいは来年に入っても、そういう姿勢でお客さまとの失われた信頼関係を回復していかなければならない」と強調した。
 加えて、増田社長は郵政グループに寄せられる様々な声を分析して、その活用の高度化を目指した、グループ横断のプロジェクトチームを6月15日に立ち上げたことを明らかにした。
 「郵政グループを取り巻く、すべての声にきちんと耳を傾ける。そういう意味を込めて『JP VOICEプロジェクト』と命名した。昨年度は約680万件に及ぶお客さまからの意見がグループに寄せられている。従来は、グループ各社がそれぞれに寄せられた声を個別に把握していた。今回のプロジェクトチームでは、グループ横断的に把握をして分析を進める」と意義を述べた。
 それらの声は「商品開発やお客さま対応などのグループ価値の向上に活かしていきたい。また、SNS(ソーシャルネットワークサービス)上の様々な情報等を把握分析することによって、グループのリスク感度の向上も目指していく。グループ各社の経営幹部に分析情報が速やかに報告される体制を構築すれば、グループガバナンス向上に繋がるものと考えている」と解説した。
 「地方創生施策を長期的視点に立ってビジネスとして位置付ける考えは」との質問には、「地方創生については次期中期経営計画の中でも様々な観点で、きちんと取り組みたい。これからどういうふうにしていったら良いのかを考え、具体化を進めていく。郵政が張り巡らせている郵便局ネットワークをより活用すると、新規ビジネスを掘り起こすきっかけになる」との意味を明らかにした。
 そのうえで「ネットワーク水準を維持してユニバーサルサービスを義務付けられている当社としては、そのネットワークをどうしていくのかが非常に重要だが、グループだけの努力ではなかなか解決できない。どこまで連携する主体を広げていくのかということも非常に大事になる。そこがうまくいくと、地銀などをもっと引っ張り込む、自治体をもっと引っ張り込む等々ということができる」とした。
 そうすれば「社会的な存在感が高まるし、ビジネス的な観点での視野も広がってくるのではないかと思う。人口減少が進展する中で、多くの企業は『地方でのネットワークやビジネスの可能性が少ない、重荷だ』という意見もある。一方で今回の新型コロナウイルス感染症の問題等を俯瞰すると、(都市部のように)密度が濃いということが必ずしも、経済原則で有利だということにならないことが分かってきている」と指摘。
 「大きな国の動向や変化ということを見通しながら、中期経営計画の中で地方創生の芽をうまく取り込みたいと考えている」と将来ビジョンを語った。
 一部で報道されたグループ社員の持続化給付金の申請については「新型コロナウイルス感染症の影響により、大変な状況に陥っている方が多くいる中で、日本郵便、かんぽ生命の社員が因果関係のない事業所得の減少を理由に、申請や受給していたことが判明した。このような不適切な行為を行っていたことを深くお詫びする」と陳謝した。


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