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2020年 6月29日 第7046号

【主な記事】

AIが最適ルートを表示
日本郵便が試行 ゆうパック配達

効率的な配達ルートを表示


 日本郵便は6月15日から「AIによる配達ルート自動作成などを活用した配達業務支援システム」の試行を始めた。配達先のバーコードをスマホでスキャンするだけで、自動的にルートを表示してくれる。人手不足が深刻な中、新技術を活用することで経験の浅い配達員でも効率よく簡単に配達できる仕組みを確立するのが狙い。

 この新システムは、「CBcloud㈱」(東京都千代田区、松本隆一代表取締役CEO)の宅配業務効率化システム「SmaRyu Post(スマリューポスト)」と「㈱オプティマインド」(愛知県名古屋市、松下健社長)のAIによる配送ルート最適化システム「Loogia(ルージア)」を組み合わせたもので、日本郵便は荷物や配達車などのデータを提供する。
 日本郵便の配送業務は、現状では文字が小さくて見づらい画面の専用端末を使っている。配送ルートは熟練の配達員が地図を見ながら決めている。配達先での受け取り証明は紙の受領証を使い、参照・保管・管理が煩雑になっている。
 新しいシステムでは、情報端末は普段使い慣れているスマホで、専用アプリの画面はわかりやすいデザインや設計になっている。配達ルートは、配達前に荷物のバーコードをスキャンするだけでAIが自動で表示してくれる。受け取りは電子サインを用いており、管理がし易くなった。
 技術を提供するオプティマインドは2018年の日本郵便主催のオープンイノベーションプログラムで最優秀賞を受賞。その後、郵便局で現場の情報収集をしながら実証を繰り返してきた。配送車を左付けにすることや次の訪問先に行く途中でUターンしないルートなど、40項目以上の現場の制約条件の下、AIが学習した走行データなどから最適な配達順序やルートを自動計算するシステムを日本郵便の協力により開発した。
 CBcloudは昨年8月に日本郵政キャピタルから出資を受けたスタートアップ企業。最適ルートの自動表示や受領の電子サイン、配送管理など配送業務を一元管理できるスマホアプリを提供する。
 これらの新技術を利用すれば、配送ルートの作成では、一般社員が地図を使った場合と比べて、40分程短縮できるという実証実験の結果もある。
 ベテランの経験や知識に頼るだけでなく、“誰でも即戦力”になれるよう、働き易い環境を整えるのも導入の目的の一つ。
 日本郵便の三苫倫理執行役員郵便・物流業務統括部長は「200局のトライアルはDX(デジタルトランスフォーメーション)の大きな一歩。将来を見込んだ取組みで、その効果を見極めなければならない。個数や配達時間で、2~3割の効率化や生産性の向上が認められれば効果が上がったと考える。配送業務全体でどれだけ生産性を上げられるかを検証したい」と話す。
 試行は、ゆうパックやゆうパケットの配送に導入される。6月15日から先行する郵便局は、世田谷(東京都世田谷区)、福山(広島県福山市)、宇品(広島市)、安芸五日市(広島市)、徳島中央(徳島市)、松山中央(松山市)の6局。来年3月までの試行期間中に順次、全国の200局に拡大する。


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