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2020年 6月22日 第7045号

【主な記事】

至誠を尽くして重責を全う
[全国郵便局長会]末武晃会長インタビュー


 全国郵便局長会の新会長に、中国地方会の末武晃会長(山口県長門北部地区会長/萩越ケ浜)が5月15日付で就任した。末武新会長は「新型コロナウイルス感染症の問題、かんぽ問題をはじめとするガバナンス、営業の体制の改善など課題が山積。全特を取り巻く環境は非常に厳しい」とし、この難局を乗り切るためには「会員全員の結束が最も大事。全特はすばらしい組織で、力の源泉は会員一人ひとりの地域における活動の積み上げ。力を結集することに使命として尽くす。今以上に良好な会員間のコミュニケーションがとれる『風通しのよい組織』にしたい」と語る。地元の山口県萩市が生んだ幕末の思想家、吉田松陰の「至誠にして動かざる者は未だこれあらざるなり」という言葉を座右の銘に、「全特会長という重責を引き受けたが、至誠を尽くして全うしたい」と改めて強調する。
〈インタビュー=通信文化新報社長・富澤敦〉

「風通しのよい組織」を
会員の結束がもっとも重要

■5月の役員会で会長に就任されました。まずは就任の抱負をお願いします。
 本年度、全特を取り巻く環境は、非常に厳しいと言わざるを得ません。新型コロナウイルス感染症の問題、会社関係ではかんぽ生命保険の不適正募集問題をはじめとするガナバンス、営業の体制に対する問題の改善にいかに取り組むかなど、解決すべき課題が山積しています。
 この難局を乗り切るためには、全特会員全員の結束が最も大事です。全特はすばらしい組織であり、全特の力の源泉は、会員一人ひとりのそれぞれの地域における活動の積み上げです。
 この力を結集することが重要で、それが私の役目であり、使命だと思っています。そのためには、今以上に良好な会員間のコミュニケーションがとれる組織、「風通しのよい組織」にすることです。
 本年度はこれを基本とし、様々な課題に取り組んでいきたいと思います。

■長く郵便局に勤務されてきたと存じます。郵便局、郵政事業への思い、さらに、これまで郵便局の経営に当たって心に留めてこられたことは、どのようなことでしょうか。また、好きな言葉、座右の銘について聴かせてください。
 全国津々浦々に設置されている郵便局は、その地域にお住いの方々に、郵便・物流や金融等のサービスを提供することで、地域社会や郵政事業の維持・発展に尽くしてきました。
 しかし、一番大切なことは、そこで働く郵便局長や社員が、地域社会のためにとの思いを持って、お客さまに誠実に接し活動を続けていくことであり、それが郵便局に対する信頼につながったものと思います。私は今日まで、そういった思いで対応してきました。
 座右の銘は、私の地元山口県が生んだ幕末の思想家、吉田松陰が特に好んだ孟子の一節「至誠にして動かざる者は未だこれあらざるなり」という言葉です。誠意を尽くす大切さを説く言葉です。
 今般、全特会長という重責を引き受けることとなりましたが、至誠を尽くして、これを全うしたいと考えています。

■今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、松山大会が中止となりました。まだ収束には日時がかかるものと思われ、会員の皆さまも業務遂行にご苦労が多いことと存じます。全特として、この新型コロナウイルス感染症への対応をどのように進められていますか。
 今般の新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになった方々に謹んで哀悼の意を表するともに、感染された方々やそのご家族、不安のなかにおられる方々に対して、心からお見舞いを申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の問題については、国民の安定的な生活の維持・確保、さらに郵便局の事業を継続するという社会的使命を果たしていくために、新型コロナウイルス禍の中で郵便局の現場で奮闘する会員、社員のための健康、安全対策の迅速な実施や、この労に何らかの形で報いて欲しいと強く会社に申し入れています。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を含め、ここ数年、郵便局および会員の財産などが被災する災害が多発する傾向にあります。人的支援を含め、今後の被災地域・被災地方会・会員への有効な支援策について、会社とも連携しつつ検討していきます。

郵便局ブランドを再構築

■後継者育成、部会活動の強化など課題も多いと存じます。改めて全特の課題について、また組織強化などについてどのように取り組まれますか。
 先ほども抱負として申し上げましたが、全特を取り巻く環境は、非常に厳しいと言わざるを得ません。新型コロナウイルス感染症の問題、会社関係ではかんぽ生命保険の不適正募集問題をはじめとするガナバンス、営業の体制に対する問題の改善に、いかに取り組むかなど解決すべき課題が山積しています。
 これを乗り切るためには、繰り返しになりますが全特会員の結束が最重要です。全特会員の力を結集し、発揮することが大切です。そのために、より良好な会員間のコミュニケーションがとれる組織、「風通しのよい組織」にしたいと思います。
 組織強化については、会員の意見や要望を踏まえた上で、徹底した議論を行い、決定した方針を、役員自らその必要性とともに会員に伝えることが不可欠と考えています。
 私も時間の許す限り全国をまわって、地方会の役員会や地区会の会合に参加することなどを考えており、積極的に組織内のコミュニケーションの強化に取り組んでいきたいと思います。

■昨年はかんぽ問題で郵便局への信頼が損なわれた側面がありました。会員の皆さまも忸怩たる思いだったと存じます。「安心・安全・信頼」の郵便局ブランドを再度、築き上げる活動に、どのように取り組まれますか。
 かんぽの不適正営業に関しては、ご承知のように、監督官庁から3か月の業務停止命令を受けるなど、これまで郵便局にいただいていたお客さまからの信頼を裏切ることになってしまい、最前線の郵便局の責任者として断腸の思いです。
 このような状況の中でもお客さまからは「局長さんたちを信頼している。頑張って欲しい」との励ましの言葉をかけていただいており、本当にありがたく思っています。この信頼を二度と裏切ってはいけないとの認識を、全特役員をはじめ全会員で共有できるように会長メッセージも発信しました。
 お客さまと接しているのは、郵便局で働く我々、郵便局長と社員です。今回の件で「郵便局は信頼できない」と思われたお客さまから、改めて信頼をいただくには、誠心誠意、お客さまの立場に立って考え、行動し、また、自らの言葉で説明していくということを、日々地道に続けていくことしかないと思っています。
 今回、特に窓口社員や集配関係社員には、新型コロナウイルス感染症拡大の状況の中で、感染リスクの恐怖を感じながらも、郵政事業の社会的使命遂行のため、職務に全力を尽くしていただいており敬意を表したいと思います。
 「安心・安全・信頼」の郵便局ブランドを再構築するために、私たち全特会員が先頭に立ち、お客さま対応・地域での活動を引き続き誠実に行い、会社と一体となって全力で取り組んでいきたいと思います。

■かんぽ問題、また新型コロナウイルスの関係で、日本郵便の収益にも影響が予測されます。引き続き収益を向上させるには、どのようなことが重要とお考えでしょうか。また、次期中期経営計画に、全特としてはどのようなコミットをされていくのでしょうか。
 中期経営計画は、日本郵便が達成を目指す3か年の経営事項をまとめ上げたものであり、全特としては、その策定自体に関与するものではありません。しかし、日本郵便の経営が順調でなければ、郵便局を通じた地域への商品やサービスの提供が困難になる上、社員の雇用にも大きな影響を与えることから、郵便局をご利用いただいているお客さまの声などを経営に反映してもらうため、機会を捉え会社に伝えています。
 今後の収益向上に向けては、高齢化・過疎化が進む中、新型コロナウイルス感染症の収束も見えて来ないので、新しい生活様式を踏まえ、ICT・AI・フィンテック等の技術も取り入れた新しい業務手続きの採用や、かんぽ問題を踏まえた新商品の開発や新しい営業の取組みも考えて行かなければならないと思います。
 また、郵便のサービスレベル見直しや地方公共団体事務受託への制約の解消、ゆうちょ・かんぽの限度額を含め上乗せ規制の撤廃などは、政治的取組が必要であり、その解決に向け、柘植芳文先生や徳茂雅之先生とともに対応していかなければならないと認識しています。

ユニバーサルサービス維持を

■郵便局ネットワークを維持し、ユニバーサルサービスを確保することが求められています。交付金制度も創設されましたが、将来にわたり郵便局ネットワークを維持・発展させるために重要なことは、どのようなことでしょうか。
 ユニバーサルサービスコストについては、現状では郵政自らがすべて賄っています。日本郵便には、郵便・物流、金融のユニバーサルサービス提供が法律によって義務付けられており、郵便局の設置も定められています。
 郵政事業を取り巻く社会経済環境は、かんぽ生命保険の不適正募集問題や新型コロナウイルス感染症の拡大で、我々がかつて経験したことがないほど厳しい状況であると認識しており、楽観できるものではありません。
 ユニバーサルサービスを維持するための「交付金法」が成立し、一定の仕組みができていますが、それで十分に維持できるとは思えません。ぜひ、会社や監督官庁、国会等で真剣に議論いただきたいと考えています。

■郵便局ネットワークの将来像について、多くの意見があったと聞いています。現在の議論の進展状況、また今後の方針などについて聴かせてください
 高齢化・過疎化の進展、ICT・AI・フィンテック等技術革新、金融情勢、労働市場の動向など、郵政事業を取り巻く社会経済環境は大きく変化し、厳しさが増しており、郵便局ネットワークの維持自体、楽観できる状況ではありません。
 新型コロナウイルス感染症の拡大等により中断していますが、郵便局ネットワークの将来像について会社と議論を重ね、現在、総論について合意をしています。今後、各論の議論を急ぎ、あるべき郵便局ネットワーク像を導き出したいと思います。
 郵便のサービスレベル見直しなど、出来ることは確実に進めつつ、今後は、お客さまのニーズを的確に把握して、お客さまの求める新たな商品・サービスの開発・検討・実施を進めることが重要です。
 そして、短期的な収益性に拘らず、公益性・将来性の観点も含めることも大切です。また、地方創生の取組みなどにより、新たな収益を探ることも重要で、全特では次の時代を担う中堅・若手会員の意見を吸い上げ、中長期の将来像に反映させる取組みも行っています。

地方創生、積極的に取り組む

■地方創生のため、全国で自治体との包括連携協定締結が推進されています。今後の自治体との連携強化、さらに地方創生には、どのような方針で臨まれるのでしょうか。
 地方創生活動は、地域社会の維持・発展を願う全特の重要かつ新たな柱です。地方公共団体やNPO法人と連携・協力し、積極的に新しい事業や雇用の創出など地域の維持・発展を図っていく必要があります。各々の地域事情に応じて創意工夫をしつつ、地方公共団体等との相互理解を進め、実効ある地域創生活動に取り組んでいきたいと思います。
 まず、地方公共団体との包括連携協定の締結を推進することにより、地方公共団体との一層緊密な関係づくりを推進していくことにしていますが、そのためには、地方公共団体が求めるニーズを的確に把握し、郵便局としてお役に立てる施策を提案・実施する必要があります。
 特に、長野県・泰阜村、石川県・加賀市で昨年から開始された行政事務包括受託の拡大に力を入れていきたいと考えています。
 この行政事務包括受託については、法律の制約により取扱いできない事務があり、地域の住民の利便向上のためには、この解決が絶対に必要なことと思っており、すでに、柘植芳文先生、徳茂雅之先生をはじめ、関係の国会議員には解決に向けて尽力いただくようお話しており、今後、政治への取組みも行っていきます。
 地方創生活動は、会員がそれぞれの地域で平素から行っている自治会や町会、消防団等をはじめとする地域組織運営・各種行事・防災活動への参画等の地域貢献活動が基盤となるものであり、会員の皆さんには地道ですが、引き続き積極的に取り組んでいただきたいとお願いしたいと思います。

■改正郵政民営化法に則って、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と一体的なユニバーサルサービスの推進が求められています。民営化後に一時は遠心力が働いたとの指摘もありましたが、今後のゆうちょ銀行、かんぽ生命との連携についてご所見を聴かせてください。
 改正郵政民営化法では、郵便局において、金融に関してもユニバーサルサービスを提供することが求められています。
 このためには、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と連携し、グループ一体として取り組んでいくことが不可欠です。特に持株会社である日本郵政には、この取組みの中心としての役割を期待したいと思います。

会員活動の積み上げが力の源

■全国の会員の皆様へ、会長として改めて元気の出るメッセージをお願いします。
 新型コロナウイルス感染症の問題が続く中、国民の安定的な生活の維持・確保に向け、郵便局の業務を継続するという社会的使命を果たしていただいている会員、そして社員に感謝を申し上げたいと思います。
 全特はすばらしい組織です。この力の源は、会員一人ひとりのそれぞれの地域における活動の積み上げだと思います。
 この力を結集出来るよう、今以上に良好な会員間のコミュニケーションがとれる組織「風通しのよい組織」にしたいと考えています。
 本年度はこれを基本とし、様々な課題に取り組んでいきたいと考えています。
 会員の皆さまにもご協力をお願いしたいと思います。


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