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2020年 6月15日 第7044号

【主な記事】

宿泊施設、介護への移行も
[民営化委]逓病は専門性を活かす

 第213回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が6月3日に開かれ、「宿泊事業と逓信病院の現状と今後」「EC市場の急速な発展に対する物流事業への対応」について、日本郵政と日本郵便にヒアリングを行った。岩田委員長は「宿泊は違う用途への活用、病院は日本の医療全体の問題で政府が政策を考える必要がある」と考えを述べた。

 宿泊事業は宿泊施設の廃止・譲渡が凍結された2009年度からは赤字が続く。2019年度の赤字幅は63億円と前年度と比べて26億円増えた。総務省は事業計画認可に当たり「事業の抜本的な見直し」を求めた。
 直営のかんぽの宿33とJPホテルサービスに運営を委託している「かんぽの郷」「ラフレさいたま」「ゆうぽうと世田谷レクセンター」の合わせて36施設が稼働している(小樽と酒田は5月末で廃止)。施設の正社員は312人。
 宿泊事業は2007年10月の民営化後に日本郵政が引き継ぎ、5年以内に譲渡または廃止することとされていたが、2009年12月に凍結された。2012年4月に日本郵政株式会社法(附則第2条)が改正され、「日本郵政は当分の間、本来業務の遂行に支障のない範囲内で、引き継いだかんぽの宿などの業務を行うことができる。ただし、同種の業務を営む事業者の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならない」となった。
 通信文化新報は「宿泊事業については、現在は旅館業法に基づく許可を受けて運営しているが、廃止が増えている。昨年12月に13施設が休業した。事業の方向性として、老朽化した施設から売却を進めて廃業の方向なのか。立て直して収益の一つにしていくのか。どちらなのか」と質問。
 岩田委員長は「2003年に103あったが、現在は38と数は縮小している。売るだけではなく、違う用途に活用する方法もある。介護や公共施設のような形で需要が高いものに移行していく」という一つの考えを示した上で、「基本的な問題は恒常的に続く赤字を何とか解消することにある。そのためにはいろいろな方法があるということだ」と述べた。
 宿泊事業について、委員からは「展望について、インバウンドの需要を取り込むことを考えていたということだが」との質問があった。日本郵政は「新型コロナウイルスの影響で当面は難しい。インバウンドを失い、業界全体で国内マーケットの取り合いになっている。収束後に何割が戻ってくるのか、見通しが立たない。安全対策に配慮し運営を検討したい」との回答があったという。
 逓信病院は現在3つとなった。医師不足により患者の減少傾向に歯止めがかからないのが現状。人間ドック受診者数を増やす対策に取り組んでいるが、新型コロナウイルスの影響もあり、2019年度は33億円の赤字。病院数の減少に伴い赤字幅は減少している。
 委員からは「今後はさらに譲渡を進めていくのか。専門性を高めて存在感を高めていくのか」と質問。日本郵政は「地域で満足いただける信頼される医療の提供も勘案しながら、検討していきたい」と回答。
 「医師不足や医師・看護師の定着に対して、どのような努力をしているのか」との質問には、「研修医やOBへのアプローチに取り組んでいる。看護師は福利厚生の充実に努め、定着を図りたい」との回答。
 岩田委員長は「逓信病院は数を減らしてきたが、構造的な問題がある。民間医療機関の7割は赤字。政府は医療政策を考える必要があると思う。新型コロナの対策としてドイツの場合は医療の能力が高かった。日本は、民間の医療機関を政府がうまくオーガナイズして総力を挙げることができていないと思う。逓信病院は赤字が続き、そのプロセスで数は減らしてきたが、専門性を活かして魅力ある病院にしていくことも考えられる」と述べた。
 EC市場の急速な発展に対する物流事業への対応について、委員からは「物流のワンストップソリューションが提供されているが、国内だけでなく、トール社の活用も含めて、国際展開についてはどのような取り組みがあるのか」と質問。
 日本郵便は「国内と国際を連動させた取り組みについては、2016年にJPトールロジスティクスと進めているが、なかなか具体的な成果が出ていない。トール社の持つ物流網や営業を活用できるよう努力していきたい」と答えた。
 委員から「物流ソリューションの具体的なサービスメニューは」との質問に、日本郵便は「荷主からの注文を受けてから発送までの作業については、荷主のニーズに応じた営業を行っている」と回答した。
 記者からは「デジタルトランスフォーメーションの実験などデジタル化に当たって、それを担う人材はどうするのか。外部からの専門的な知見も取り入れなければならないと思うが、どのように考えるか」との質問があった。岩田委員長は「郵便は減少しているが、荷物は10年で3倍に伸びた。更に拡大することが期待される。置き配などを活用することで、再配達を削減し、コスト減と人手不足を解消する。自動ルーティングシステムや配送ロボットの活用など有力な方向だと思う。デジタルテクノロジーの活用が鍵になる。増田寛也社長が言われるデジタルとリアルの融合の表れだと受け取っている」と考えを述べた。


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