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2020年 6月8日 第7043号

【主な記事】

業務改善計画は順調に推移
[JP改革委]利益回復を最優先

 日本郵政の増田寛也社長の下に作られた「JP改革委員会」(座長=山内弘隆・一橋大学経営管理研究科特任教授)の第2回目の会議が5月27日に開かれた。業務改善計画・契約調査の進捗や国民の信頼回復、営業再開などをテーマに議論が行われた。特定事案調査では顧客対応を3月末に完了、募集人調査の判定も4月末までに終えた。改革委員会では「業務改善計画や利益回復は順調に進捗している」と評価した。

 改革委員会の資料として提出された「お客さまの信頼回復に向けた契約調査」の進捗状況によると、特定事案調査で対象となった約15.6万人の調査は顧客の意向確認後の対応が3月末までに完了し、4万2019人の契約復元などが済んだという。
 特定事案に係った募集人調査は4月末までに判定が終了した。その結果、法令違反は315件・420人、社内ルール違反は3275件・2211人となった。法令違反や社内ルール違反と判定された募集人1335人を対象に研修を実施している。処分は順次進めている。
 顧客の意向を確認するための1900万人の契約者への全件調査では、約100万件の回答が得られた。3月末までには契約内容の説明や住所変更などの手続きが完了。
 利益回復措置は6月末を目途に対応していく。法令違反や社内ルール違反の可能性のある事案は3547件(5月18日現在)あるという。
 多数契約調査では、優先的な対応が必要な契約者897人については、5月20日現在で連絡が取れた契約者のうち約94%の確認が完了した。
 多数契約者のうち、意向に沿わない契約者は55%に当たる493人。それ以外の5532人については、連絡が取れた契約者の約83%の確認を終えている。
 保険募集で法人を担当するかんぽ生命保険では、契約乗換のあった約1800社にアンケートを実施し、5月22日現在で約99%に当たる1807社の内容確認を終えた。
 その結果、契約内容の詳細の確認を希望する会社は24社あり、今後訪問や電話連絡などを通じて確認する予定。
 業務改善計画の進捗(5月末見込み)については、かんぽ生命保険は58の施策のうち、57%に当たる33項目を完了。日本郵便は73の施策のうち85%・62項目、日本郵政は13施策のうち77%・10項目を終えた。これらの進捗状況は6月15日までに総務省と金融庁に報告する。
 今後実施予定の施策としては、営業再開後の営業目標については、募集品質も反映させる方針で、準備を進めている。
 かんぽ生命保険の「契約転換制度」は10月以降に実施予定だが、システムの開発や認可取得に対して準備中。「保障性ニーズに応えるための商品開発」は実現に向けて4月から、検討を重ねている。かんぽ生命保険の支店機能の見直しは10月の改正を予定している。
 募集状況の録音・保管は、3月からは管理者、4月20日からは一部の渉外社員が試行を開始。8月以降の本格実施に向けて準備を進めている。録音録画についてJP改革委員会からは「適切な運用の検討」が求められている。
 日本郵政による郵便局やかんぽ生命支店などへのオンサイトモニタリングについては、5月以降に実施を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、7月以降に延期された。
 その活用について増田社長は「監査室の社員が現場に行って話を聞く形で行われ、現場の状況を執行側に上げていく、という活用の仕方をしていきたい」と説明する。四半期ごとに「お客様本位の業務運営に関する基本方針」に対する監査活動状況をグループの内部監査連絡会議に報告する。
 お客様本位の業務運営の重要性を説くトップメッセージの発出や、経営理念浸透のための取組みについては今後、実施予定。経営理念の浸透はツールの作成や経営陣によるフォーラムの実施も検討されている。
 日本郵政によると、経営陣によるフォーラムは「グループ各社の役員らはフロントライン社員に対して、経営理念に基づいた業務の実施の重要性について講演。その後、社員からの意見や質問に答える」という内容だという。
 風通しの良い組織風土づくりに向けて、経営陣がエリア本部や支店、サービスセンターを訪問し社員と対話する「役員ダイアログ」を2月下旬から実施していたが、新型コロナウイルスの影響で中断している。

国民の信頼回復
営業再開で意見

 第2回JP改革委員会には「日本郵政グループの社会インフラとしての機能や役割の強化、新型コロナウイルスにより提案された新しい生活様式への対応についての意見」や「国民の信頼回復への取り組みと業務改善計画に対する意見」「進捗状況への検証」が付託された。
 同改革委員会後に開かれた会見(Web)で、山内座長は「業務改善計画や被害者への利益回復については順調に進捗している」と評価する。
 違反のあった募集人とその管理者への処分については「募集人本人については適正だが、管理者の人事上の処分については、十分な調査と検討が必要」という要望があったという。
 「国民の信頼回復」に対する意見としては「経営理念の行動憲章が社員に理解されていなかったのではないか」「消費者を生身の人間として捉えていなかったのではないか」「郵便局は地域のインフラとして重要」「多大な苦労をしなければ、信頼回復はできないことへの認識を持つこと」「苦労して積み立てた売上が信頼回復のために消費されてしまうという認識を持ち、多くの役職員を巻き込んで取り組みを進めていくことが大事」「大事なことは社員の意識。それが変わらなければ、チェックが幾重にも必要になる」などがあったという。
 「営業再開」に対しては「業務改善計画の予定通りの進捗は当然だが、お客さまの利益回復の道筋を付けるべき」「問題のある募集人の募集制限の仕組みを考える」「違反者の処分の徹底」「不適正募集を発生させない募集体制の整備」「募集人の意識改革のための効果的継続的な教育」「創造性のある金融コンサルティングの研修」など。
 これらの意見について山内座長は「各社の取締役会で意思決定してもらう際に参考にしてもらいたい」と述べている。
 通信文化新報は「営業再開に際して委員から意見はいろいろと出たが、再開の条件について、業務改善計画がどこまで進んだ段階で行うのか」と質問した。
 増田社長は「委員の皆さまの意見のいくつかはその通りだと思う。営業再開に当たっては取締役会に諮らなければならない。会社の意思として、いただいた意見を重く受け止めていく。再開に向けては、それを実際にどこまで実現できているのかを判断し、第三者的な立場にある皆さまの意見もいただき、具体的な段取りをしていきたい」と話している。そのためには「まずは、グループ内の意識合わせを優先させたい」という。
 増田社長は会見で「お客さまへの利益回復を最優先してもらいたいという指摘は、各社でしっかりと検討したい。新型コロナウイルスの影響で面談の一部が進んでいない所もある。コロナが落ち着いていくのを見極めながら、本来業務とかんぽの不適正募集への対応を進めていきたい。従来通りできなければ、代替手段を考えていきたい」とあいさつした。
 次回の改革委員会は6月18日に開催予定で、各社社長へのヒアリングを中心に営業再開に向けた議論も行う。


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