「通信文化新報」特集記事詳細

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2020年 6月8日 第7043号

【主な記事】

柘植芳文参議院議員インタビュー(2)

*(1) より続く


 公的使命の高い郵政事業


■日本郵政グループの経営陣も変わりました。
 トップが変われば必ず変わると期待しています。ただ、日本郵政の増田社長も民間企業の経営者としての経験は初めてです。
 就任当時、かんぽ生命の不祥事処理という極めて難しい局面での社長就任であり本当に大変だと思います。
 増田社長は郵政事業には関係が深く郵政民営化委員、民営化委員長、総務大臣、岩手県知事等郵政事業に深くかかわってこられた社長であります。
 郵政事業の本分はどこに位置するか、日本の地域社会づくりの中でどのような存在価値があるのか等を幅広い見地で、単なる収益面だけなく新しい公的使命をおびた株式会社としてのビジネスモデル構築づくりに大きな期待を持つものであります。
 日本郵便の衣川社長、かんぽ生命の千田社長は、郵政キャリアとして同じ釜の飯を食べた仲間なのだから、協力して現状を早く落ち着かせてくださいと話しました。衣川社長は保険が長いから、非常にコミュニケーションが取れていると思っています。
 それと衣川社長は真面目な方で、泥臭いといっては語弊がありますが、現場から上がってくる声に謙虚に耳を傾けて実行されています。衣川社長は、それを愚直にやられるということで頑張っておられると思います。
 日本郵便の将来をいかにするか、新たなビジネスモデルを描くことも喫緊の課題だと考えます。
 
■現場の郵便局の皆さんからは、トップの顔や考えがよく見えないと言う声もあます。
 現場の声としてはよく分かりますが、かんぽ問題のように大きな課題の処理がまだ済んでいません。これからもひと山あると思います。とにかく、かんぽ問題を抱えている最中に、降って湧いたような新型コロナウイルスの問題も出てきました。今は、目の前にあるものをどのようにして抑えていくかということが一番です。現場に寄り沿って意見を吸い上げていくことです。
 職場の中で不協和音が出ているのは、何で毎日、渉外社員だけが研修に行くのか、一方の社員はこの忙しい時期に現場に出てきているのに、というようなものです。そうした思いを現場にさせてはいけません。
 6月の株主総会を過ぎ、真に増田新体制ができ、併せてタスクフォースで検討している内容が明確になった時に、それを踏まえて増田社長がどのような体制を生み出すかということです。これは、1年かかるかもしれません。日本郵政グループがこの13年間、どのような方向に行こうとしていたのか、非常に曖昧模糊であったことが社員からしては経営のトップの顔が見えづらいと映ったものと考えます。
 昔の郵政省のように、公的な役割をしっかり担っていく事業体であるのか、完全に株を100%売って民間企業としていくのか、これが明確ではなく右往左往しているのです。どこかに軸足を移さないと、迷走しているだけでは、新しいビジネスモデル、新しい方向性も出てきません。ひいては、現場の社員の皆さんが、会社は何をやりたいのだろう、私たちの会社はどういう会社なのだろうという不平不満が、たくさん溜まっていくのです。
 増田社長も日本郵政グループの明確な方向性を早期に確立したいと思っておられると思います。

■多くのマスコミは、経営形態の話になると、郵政事業の本質を理解しないで直ぐに民営化の逆行だとの論調になりがちです。
 マスコミの皆さんは金融2社が100%株を売った時に、民営化の完成と言っているのですが、しかし、ユニバーサルサービスをどうしたらいいのかという大きな問題があります。国民の生活の拠点である郵便局ネットワークは、どうするのかということになりますが、彼らはあまり考えてはいません。これから新しいビジネスモデルの方向性を出していけば、自ずと社会の中で郵政事業が定義づけられていくと思います。
 様々あると思いますが、現状では日本郵便が単独で郵便・物流だけでは困難ということだけは事実です。これに対してどのような経営へのバックアップをしながら全国ネットワークを守っていくかということです。
 西室泰三氏が日本郵政の社長会見で、良いことを言っていたことがありました。彼は「改正郵政民営化法で公的使命と社会貢献という条項が入った。これが入っていたので社長を引き受けた」、また「郵政というのは完全な民間ではない。国の大きな生活インフラの一大拠点だ。そして郵便局という2万のネットワークを守ろうとすると、そんなに簡単には守れない」と言っていたのです。
 この郵政事業は多くの様々な複合的課題を抱えた事業であり、短絡的に民営化を論ずることに強い違和感を感じます。
 金融2社の株の完全売却も郵便局の社会的使命を果たす郵便局ネットワーク維持に、どのような影響を及ぼすかの議論も併せて行うことが望まれます。
 こうした問題は郵政事業が再び政治の場で議論されるものとなることは避けなければならないと思いますが、極めて大きな政治課題でもあります。
 民営化されて13年、郵政事業の本質について議論される時期に来ているとも思われます。

■今般の郵便認証司についての問題点については。
 郵便証認司の問題は、実は兼業は総務大臣の承認が必要ということを会社が十分に周知していなかった面が大きかったのです。私も郵便認証司に携わってきたので歴史はよく知っています。
 郵便認証司の問題については、郵政公社から民営化になる当時から、郵便局等に郵便認証司を2人配置しなければならないので、要員のやりくりが大変だとの話を聞いていました。
 議員になってからも郵便認証司はもう必要ないのではという話をしていました。今回、急に出て、処分と言われてカチンと来ましたが、規定には書いてあるのです。会社には、研修とか周知を徹底しないから発生させてしまったということの重大さを認識してもらうよう諫言させていただきました。



 社員の夢と希望を叶える

■全国郵便局長会の新体制が決まりました。期待することなど聞かせてください。
 困難な時に山本前会長は1年でしたが、よく頑張っていただきました。任期延長ということもあったのですが、そういうのを振り切って1年で潔く辞めて新体制ができたことに敬意を表したく思います。
 このような時期に、末武新会長も大変だと思います。全特松山総会も中止となりましたから、切り替えも難しいでしょう。新しい感覚に期待しますが、全特の長い歴史も大事にしなければいけません。全特と会社が良きパートナーとして強い「信頼」関係を構築し取り組んで欲しいと思います。
 また、全国に多くの会員がいます。東京に来られない会員に、執行部としてどういった形で考え方を浸透させるか、研修、啓蒙活動を三役がしっかり取り組んで欲しいです。世の中や会社、さらに全特という組織がどのように変わっていくのか、ただ選挙だけやれば良いというような組織ではないのです。
 組織のトップリーダーが会員の皆さんと時代に合った考え方を共有し、会社とパートナーとして協力していかなければ、郵政事業は上手くいきません。発信する力が大事です。
 リーダーとしてもう一度、会員の皆さんに寄り添って、声を聞くとともに、全特は何をやろうとしている組織なのか、どの方向に行くべきかということをしっかり会員との共有化を図っていただきたいと強く期待するものであります。

■今回の新型コロナウイルスの件で、会社への助言、注文など聴かせてください。
 今回のことでは、いろんな形で様々なことを教えてもらいました。衣川社長も小口資金の貸付では郵便局窓口に大変な負担をかけると言っておられました。衣川社長は現場に優しい方です。でも、ここは、かんぽという大きな問題で国民の皆さまに迷惑をかけたのですから、汚名返上でもあります。現場の底力を信頼され、みんなで助け合って、郵政事業の価値というものを示しましょうとお伝えしています。
 一つ苦言ではないのですが、日本郵便はもっと広報活動を上手くした方がいいですね。かんぽ問題で傷ついた郵便局ブランドですが、今度はそれを高めるために徹底的に郵便局が地域で果たしている現状等を広報すべきです。
 “布マスク配布は本来なら26億円ではできません。本当は40億円かかりますが、社会貢献策として安く実施しました。”というペーパーを作って、どんどんマスコミに流したら良いのです。
 また、マスコミを郵便局へお連れして、お客さまから様々な苦情を言われても頭を下げ続けている社員の姿や、郵便局の窓口時短でもPR不足等のためにお客さまが午後3時間際にどっと来て対応に苦渋している局長や社員の姿を見てもらい、郵便局の社会貢献や苦労、努力をマスコミにアピールすべきなのです。
 見かねて知り合いのTV記者に、頑張っている郵便局の姿を取材して欲しいと頼み込み、ニュースの中で取り上げていただきました。
 広報は、悪いことの情報提供ばかりでなく、良いことも戦略的にマスコミにアピールしければいけません。現場の社員の皆さんが頑張っている姿を、どのような形で、上手にマスコミに取り上げてもらうかも大事な仕事です。
 
■最後に、現場の郵便局で一生懸命奮闘されている社員の皆さんに、元気の出るメッセージをお願いします。
 今回、郵便局が都道府県社会福祉協議会の緊急小口資金の特例貸付の申込み窓口となりました。極めて大きな社会貢献策です。マスクの配布、特別給付金にも携わっています。郵政事業は、広く国民、国のために大きな社会貢献をしているのです。こういう仕事を郵政事業は担っているという誇りを持って欲しいと思います。
 郵便局は毎日、お客さまが密の状況下にあります。しかしながら、地域の方にとっては郵便局というのは安心の拠点、なくてはならないものなのです。不信感を持っていたら人は集まって来ません。かんぽ問題もありましたが、お客さまの信頼は失っていないのです。
 新型コロナウイルスで苦労もしていますが、郵政事業は決して目の前にあるものを売って、金を儲けるような仕事ではないのです。地域のお客さまが本当に郵便局に安心して行ける心の拠り所としての大きな使命があります。それが郵政事業の本質です。こうしたことに感謝の気持ちを持って頑張ってもらいたいと思っています。そして、必ずこの先に見えてくるものは、郵便局の信頼がもっと増していくことです。新しい郵政事業の生きる道も生まれてくると思います。
 郵政事業があって、そこで働く皆さんの夢と希望をお互いに共有化し全力で取り組んでまいります。私は郵政事業に強い誇りを持っています。郵政事業が地域を支え、日本の国造りに欠かせない事業であることに強い情熱を持ち、これからも頑張ってまいりますのでよろしくお願いします。


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