「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2020年 6月1日 第7042号

【主な記事】

[日本郵政]増田社長
自治体、他企業とも連携
郵便局ネットの価値、再認識

 日本郵政の増田寛也社長は、5月15日の2020年3月期末決算発表時に、中期経営計画の頭出しとして、リアルとデジタルを融合させた強い組織体を構築する考えを明らかにした。
 アフターコロナをにらんだ構想で、「今後のサービスの基本は非対面・非接触になる」と語った。
 増田社長は、「今後の社会経済の変化によって、アフターコロナは、まったく別次元の新たな世界が展開されるのではないか」と想定したうえで、「日本郵政グループとしても、どう対応していくかが課題となるが、デジタル化への対応が急務であることは言をまたない」と述べた。
 また「郵政グループが持っている郵便局や集配網というリアルなネットワークの価値というものが、非常に重要であると再認識させられたのではないか。グループとして考えると、リアルとデジタル双方を兼ね備えており、しかも非常に強いものを持っているので、双方の強みを生かした強固な事業体にしていくことが今後のわれわれの目指す姿ではないか」とグループの方向性を語った。
 リアルとデジタルを融合させた強い組織体については、「キーワードとすると、『非対面・非接触』。これが今後のサービスの基本になると思う。そういったものをデジタルとリアルの接点という、郵便局ネットワークの価値向上にうまく繋いでいくことが大事だと思っている」と説いた。
 郵便事業に関しては、「足元でもEコマース市場拡大等で通販が伸びて、荷物市場の成長が顕著となっているが、日本郵便は2輪で配達できるなど小型荷物の配送に強みを持っている。そのほか、置き配や、AIを活用した自動ルーティングシステム、配送ロボットといった取組みがどんどん具体化し始めているので、そういったもののオペレーションの見直しを、積極的に取り入れていきたいと思う」と述べた。
 グループ3社の方向性については「郵便領域は、行政手続きのデジタル化が進展していくと考えられるが、その流れの中で働き方改革の観点もあるため、土曜休配などの郵便制度見直しについて、引き続き働きかけていきたいと思っている。ネットワークの関係でいうと、地方公共団体、他企業と連携して具体的なサービスを提供することも必要と考えている」とした。
 また「ゆうちょ銀行はデジタルバンキングシステムを構築して、AI(人口知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など自動化技術の活用拡大をすれば良いと思う。要はサービス・オペレーション両面でデジタル化をさらに進めていきたい。かんぽ生命についても、同業他社と同様、基本は対面で丁寧にお話をしてご理解いただくということだが、今後は非対面でできるマイページ等の既存のデジタル接点をもっと充実させる必要があると考えている」と強調した。
 郵便事業については「ビッグデータも含めて情報をきちんとデジタル化して、時間によって最適なルートが変わるわけなので、その最適なルートを選ぶ。日時によってルートが異なるかもしれないが、お客さまに確実にサービスを届けるうえでは、あらかじめ予測の上に立って決められたものを、非常に良い選択肢として選んでいく。こういったことをもっとやっていけば良いのではないか」とした。
 さらに「過疎地域や離島等々であっても、ロボティクスを使ったり、ドローンを使ったりということもあるだろうが、単にそれだけではなくて、それをどのように使えば一番良い形で、お客さまが望む形で早く確実にお届けできるかというのが重要だ。デジタルデータ、特にビッグデータをきちんと解析することがサービスの価値向上につながってくると思う」との考えを示した。
 ゆうちょ、かんぽ業務については「対面・接触型でやっていくことがなかなか難しい時代となれば、非対面・非接触でお客さまの望む商品を契約して提供するということになる。iPad等を使ってお届けするといった工夫を行うなど、基本はさまざまな情報をデジタル化して、お客さまに最適な商品・サービスを提供するということが必要になってくる」との認識を示した。
 続いて「これだけのきめ細やかな、リアルのネットワークを全国展開しているのは、われわれだけであろう。なくてはならないものをお届けする時に、最後は必ず郵便ネットワークが頼りの元ということになると考えている。そういう期待感にきっちりこたえられるような、ネットワークの付加価値向上にこれから努めていきたいと思っている」と抱負を語った。


>戻る

ページTOPへ