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2020年 4月6日 第7034号

【主な記事】

グループガバナンス強固に
[日本郵政]増田社長 通常営業再開は慎重に判断

 日本郵政の増田寛也社長は、、東京・大手町プレイスで3月31日に行われた会見で、かんぽ商品の通常営業再開の時期について、「我々が独りよがりにならないように、4月2日に設置される『JP改革実行委員会』の社外の意見を伺いながら、日本郵政グループとして判断したい」と述べるとともに、今回の反省を踏まえながら、かんぽ生命、ゆうちょ銀行の株式の追加売却後もにらんだ上で「グループガバナンスをしっかりと立ち上げ、強固にしていくことが必要だと考えている」と語った。

 契約調査による利益回復について、増田社長は「『契約復元等を行うに当たっては、明らかにお客さま不利益のないものを除き、意向に沿って迅速な利益回復を行う』との基本方針のもと、グループを挙げて、措置を進めている。特定事案調査、全ご契約調査については、お客さま都合によるものを除いて、3月31日までに対応が完了した。2月から実施している全ご契約調査の深堀調査は、計画通り進捗している。措置については、概ね6月末をメドに行っていく予定」と述べた。
 処分については「募集人調査の結果、かんぽ生命が法令違反、社内ルール違反の判定をした場合、募集人として業務廃止または厳重注意を行う。保険業法の措置・処分となるが、人事処分は日本郵便において、かんぽ生命の判定結果を踏まえて精査、内容を検討している。ただし、退職願が提出される等の場合には、優先的に調査をして処分を実施する必要がある。3月30日、乗り換え判定を潜脱する行為につき、新規契約と解約を繰り返した2人について懲戒解雇した」と説明した。
 今後のスケジュールでは「チェック体制や再発防止策には年度内に一通りの体制整備を行った。ご契約調査の進捗、再発防止策の徹底を最優先させる。4月以降も、昨年末までと同様に、積極的な保険商品の提案は控える。通常営業の再開の時期は、独りよがりにならないように、社外の意見を伺いながら慎重に進めていく。JP改革実行委員会からのご意見を伺いながら、判断していきたい」とした。
 営業再開の具体的な環境・条件等の質問には「調査がさらに進むということ、それから募集人の処分が進むこと、何よりも経済的な被害を受けられた方々の回復が必要」としたうえで、3月26日に発表された、特別調査委員会の追加報告書の「不適正募集による被害者らの怒りや苦しみを考える時、その被害回復に道筋を付けぬままの営業再開は考えられない」を引用、「たいへん重たい指摘だ」と強調した。
 さらに「(会見冒頭で)基本原則を強調したのも、被害回復を最重点に当たっていかなければならないとの考えがあったからだ。迅速な利益回復を行うことを基本方針としており、それが見えてこないと営業再開は難しい。どこの段階で判断するかだが、JP改革実行委員会などの意見を聞き、最後は主体的に決めなければならない。事態の進捗を見ながら、考えていきたい」と語った。
 「ゆうちょ銀行の株価が簿価の半値以下となっている日もあり、月の平均で見れば簿価の45%減となっている。減損処理の必要性は」との質問には、「簿価との関係では2分の1以下になればルール上、減損処理しなければならない。3月31日の終値を見る限りでは、そのラインまで行っていない。会社の方でいろいろと判断することになる。新型コロナウイルスの影響等があり、期末決算に向けて議論していきたい。ルール上のいわゆる強制減損は必要ないと考えているが、それ以外のこと(所有株式等の期末会計処理等を含む決算全般)については、慎重に検討していきたい」との考えを示した。
 「来年は郵便事業創業150周年。新しい中期経営計画も発表される。グループ一体化へ改めて意気込みを」との質問には、「来年は郵政事業にとっても節目の年。新しい中期経営計画を実行する時でもある。今の計画の最終年の仕上げをきちんと行い、問題点も踏まえて、次の中期経営計画を作るのが通常の考え方。ただ、2020年度が読みづらい状況。金融2社にとっても、低金利のみならず、毎日ボラティリティ(価格変動の度合い)が非常に変わって、金融情勢が揺れている環境下にある。物流も全体的には荷物が国際的には減っていく一方で、非常に小さいエリアでは、いろいろと動いている。新たな中期経営計画の議論は非常に多くの要素を含めていかなければならない」と述べた。
 また「郵便の特性として、きめ細かく全国にネットワークが存在するのは日本郵便くらいだろう。その価値は人口減少時代の中で大きなものだ。単に従来の商品や物流サービスを提供するだけでなく、地域で必要とされるサービス全般を自治体などに代わって提供できるような力をつけていく必要がある。同時に、こうした金融状況の中での運用等を確実なものにして、利益を生み出していくことを中期経営計画に入れていきたい。事業の多角化を図るために、不動産など郵政グループの強みを盛り込んで実のある計画にしていきたい。作業はこれからという段階」とした。
 グループ一体化に関しては「本質的なところに関わってくるが、グループガバナンスをしっかりと構築していく必要がある。民営化を進めて、金融2社は独立していく方向だが、全国の郵便の販売チャンネルを使うことが郵政グループらしい特色だ。株式の保有比率が下がったとしても、グループとしての一体感を共有していくかが大事で、就任以来、意識して実行できるように話し合ってきた。かんぽの問題に象徴されるように、グループガバナンスに欠陥があった部分もあると思う」と述べた。
 さらに「グループガバナンスを強固にする必要があり、それぞれの取締役会の役割、特に持ち株会社の取締役とグループガバナンスの在り方について議論している。グループ各社から必要な情報を受け取った上で、平時であれば独立の方向で、危機的な状況の時には、乗り越えるために、持ち株会社は前に出て、諸事情に柔軟に対応できるグループガバナンスを構築できれば良い。今まで以上に連携を仕組みとしても強化していきたい」と語った。
 通信文化新報は、JP改革実行委員会の運営について質問。増田社長はは、「日本郵政社長の直下でタスクフォースという組織があるが、担当の役員と部局員、さらにグループ3社から兼務で人員を派遣してもらっている。タスクフォースがJP改革実行委員会の事務局となる」とし、「4月2日の開催後、次回は5月の下旬の開催を予定。2~3か月に1回程度は開催したい」と述べた。
 そして「急な事案があれば間隔を詰めて開催することになる。この仕組みは来年3月までは行っていく。特別調査委員会で提言されたことをモニタリングしてもらうのも一つのミッション。郵政グループ全体の信頼回復について様々なアドバイスをいただくことを考えている」とした。


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