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2020年 3月30日 第7033号

【主な記事】

一時金は4.3か月
春闘妥結 期間雇用社員の処遇改善

 日本郵政グループの春闘は3月12日に妥結した。ボーナスは前年と同じ4.3か月(夏季と年末それぞれ2.15か月)、定期昇給は平均で約3900円を実施する。一方で、ベースアップは実施しない。
 日本郵政グループ労働組合(JP労組)からはボーナスは4.5か月、ベースアップは6000円の要求があった。
 妥結内容について日本郵政は「業績が厳しい中で、前年並みにできる状況ではないが、かんぽ問題で現場社員が頑張っていることを踏まえ、前年並みとした」としている。
 日本郵政グループの状況について、日本郵政人事部は「かんぽの問題で業績は厳しい状態。2020年度は日本郵便の金融窓口手数料収入が落ち込む。郵便物流事業は昨年までは単価の引き上げやヤマト運輸の数量規制などにより好調だったが、ここに来て荷物は伸び悩んでいる。新型コロナウイルスの影響で経済は縮小していることもあり、2020年度の業績は厳しい見込み。金融2社はマイナス金利が定着し、回復の見込みが立たない。コロナの影響で世界経済は減速し、運用収益は期待できない状況にある」と分析する。
 黒田新悟人事部担当部長は「前年並みの状況ではないが、かんぽの問題で社員が頑張っていることを踏まえ、前年並みとしたことは大きなポイント」と強調する。
 賃金については、月給制契約社員と時給制契約社員の待遇を改善する。月給制契約社員は基本賃金(基本月額+調整額+地域手当)を10月から、地域の最低賃金に20円を加えたものを下限とする。これまでは地域別最低賃金が上がっても、連動して上がらなかった。
 期間雇用の時給制社員については、スキル評価が習熟度「Aランク」になった回数に応じて、4月から(適用者が出るのは10月)時間給に20円から100円を加算する。
 JP労組からはライフワークバランスや働きやすい環境の整備が求められた。月給制社員の時間外賃金は45時間から60時間の割増率を現在の35%増から50%増とする。組合から提案されたもので、時間外労働の長時間の部分だけ割増率を上げるのは「管理者は、長時間勤務是正のため、残業を抑制せざるを得なくなる」というのがその理由。時間外労働の縮減への取り組みについては今後も継続する。
 また、かんぽの問題で、営業成績を上げるため、管理者によるパワハラがあったことを受けて、組合からは「人権意識啓発とハラスメント行為の根絶のための施策」が強く求められた。組合は「グループ各社ではこれまで、管理者に対して数々の関連する研修を実施しているが、ハラスメントは一向になくならず、それらの研修は、実効性に乏しかったのではないか」と指摘。
 対策として「トップメッセージの発信」と「管理者マネジメント力向上のための研修の実施」を要求し、会社側はこれに応じた。内容については定まったものはなく今後、検討していく。またハラスメントの相談者の保護や質の向上への取り組みも行う。
 来年4月入社の新卒採用と正社員登用はともに抑制。一方で一般職から地域基幹職へのコース転換は増やす。新卒採用は、渉外社員の採用を行わないことから大幅減となった。
 今年4月採用予定者と比べて2705人減の2055人程度とする。渉外社員の採用見直しの理由として日本郵政人事部では「かんぽの問題を受けて、営業推進のあり方を見直している。日本郵便では、金融コンサルタントサービスを進めており、既存の社員研修を優先させたい」としている。
 アソシエイト社員の正社員への登用は前年度比900人減の2750人。一般職から地域基幹職への転換は、200人減の1100人。
 多様な働き方への取り組みとして、男女含めた育児休業取得率100%を目指す。取得申請し易くするため、出産が近い社員には男女を問わず、管理者から取得するように働きかけてもらう。日本郵政グループの男性の育児休暇の取得率は約7割。3日間は有給。残りは無給となるが、国から給与の6割が補てんされる。
 また、リフレッシュのため、5営業日以上の連続休暇取得を促進する。JP労組から提案されたもので、勤務能率の向上にもつながることから、取得促進のためのキャンペーンなども計画しているという。
 知識や経験を業務に生かしてもらうため正社員を対象に、大学や大学院、国際協力機構(JICA)の活動については3年を上限に休暇が認められているが、これを5月からは短期大学や専修学校の専門課程にも広げる。
 性の多様性の一環として、公正証書を取り交わしている同性パートナーも5月から、忌引きに関して特別休暇が取得できるようになる。性的マイノリティ活動への理解を促進するため、広報活動も行う。ALLY(アライ/性的マイノリティ活動の支持・支援する人)に賛同するシールを配布。社内報でも紹介する。


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