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2019年 12月16日 第7018号

【主な記事】

異業種混合で課題解決
[日本郵便]管理職に新たな「気づき」を


 成熟層向け異業種混合社会課題解決プロジェクト「REVIVE2019」が、東京千代田区・大手町プレイスウエストタワーの日本郵便本社会議室で11月25日に開催された。「REVIVE2019」は、今後も活躍が期待される50歳以上の管理職層が、異業種の仲間と社会の課題に真剣に向き合う中で、新たな気付きを得ることを目的としている。

 「REVIVE2019」は、ビジネスのリソースを繋げ、企業人・企業・世の中に変化を巻き起こす趣旨のプロジェクトを手掛ける一般社団法人ALIVEが企画した。
 日本郵便をはじめ、NTT東日本―南関東、オリエンタルランド、ウシオ電機、帝人ファーマから計15人が参加し、各社社員混合の4チームに分かれて課題解決に取り組んだ。
 日本郵便からの参加者は、本社の渡辺正明さん、小林健夫さん、東京支社の坂本義樹さん、南関東支社の落合保浩さんの4人。テーマは「神奈川県小田原・箱根を中心とした西湘エリアで『アーティスト ㏌ レジデンス』を毎年実施できる仕組み(ヒト・モノ・カネ)をデザインせよ」。
 「アーティスト ㏌ レジデンス(AIR)」は、アーティストの育成や芸術の発展を目的として、国内外の芸術家がひとつの地域に一定期間滞在し、創作活動を行う取組み。答申先のすどう美術館(小田原市)と美術集団の湘南アートベースが、「生活の中にアートがあることを普通にしたい」との思いで実施を目指している。
 同日、すどう美術館の須藤一郎館長、湘南アートベースの朝比奈賢代表ほかを前に、10月3日のキックオフから約2か月間にわたるチームでの議論を経て、練り上げた課題解決答申の最終プレゼンテーションが行われた。
 Aチームは「なぜ普通に生活の中にアートがないのか」という疑問を深掘りし、解決するきっかけとしてのAIRのプログラムを提言。一般社団法人格の取得や企業のキャリアデザイン研修へのアートの活用を提案したほか、郵便局のフレーム切手や郵便局窓口でのアート展示のアイデアにも触れた。
 Bチームは「オハコネ~こころのサプリを見つけよう」をコンセプトに、次世代のアーティストや展覧会企画に携わる人材の育成、地域活性化につながるAIRを提案。小田原市近隣の学校の美術部をターゲットにボランティアを募集することや地元鉄道会社とのタイアップをアピールした。
 Cチームは、安定した運営システムの構築をゴールとして定め、美大のインターンシップ等の活用や、クラウドファンディングによる資金調達方法を提案。滞在するアーティストの活動拠点としてアート制作と宿泊が同時に実現でき、関連イベント開催も可能な会場として、小田原市にある森林公園複合施設「いこいの森」を紹介した。
 Dチームは冒頭、アートを取り巻く環境について「これからは物質的豊かさよりも、精神的な豊かさが求められる時代。アートはその精神的な豊かさをもたらすもの」と説明した。実施資金の1割に留まる企業支援を増やすことを目指し、CSR活動に熱心な小田原地区の企業にアプローチ。協賛企業内に制作拠点を設け、従業員と交流しながら制作した作品を企業に贈呈する「企業内AIR」に加え、1日開催の企業内ワークショップ、QRコードを活用した作品説明などを提案した。
 「実現可能性」と「ワクワク度」を軸に行われた審議の結果、Dチームが1位に選ばれた。2位はCチームで、いずれも提案の一部採用という結果になった。
 すどう美術館の須藤館長は「幅広いアドバイスをいただき、自分たちがこれまでやってきた以上のことを実現できる可能性が見えた。Cチームの『いこいの森』の提案は実現できると思う。Dチームの答申内容についても既に企業に接触していただいており、進めていけそうな感じがする。不採用となったチームにも、いろいろな面でアドバイスをいただき、お礼を申し上げたい」と総括・講評した。
 日本郵便は、同プロジェクトへは今回で2回目の参加となった。本社人材研修育成室の吉澤尚美部長は「定年年齢も65歳になり、50歳代前半の時期に自分を振り返り、気づき、これから更にステップアップしていくきっかけになれば、社員にとっても、組織にとっても大いにプラスになる。今回知り合った異業種の方々との交流が継続していけば、より深まっていくと思う」と、今回のプロジェクトの意義を語っている。


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