「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2019年10月14日 第7009号

【主な記事】

「お客さまに向き合おう」
[日本郵便]北陸、沖縄でフロントラインセッション

 社員との率直な対話集会「フロントラインセッション」を開催している日本郵便は、10月2日に横山邦男社長が出席して石川県女性センターで開催、北陸支社管内を中心に約100人が出席した。また、10月3日には沖縄支社で米澤友宏上級副社長が約100人の社員と対話した。「お客さまの要望から日ごろ負担に感じている事柄に至るまで、幅広い意見交換を行い、働き方改革をはじめ各種改革につなげていく」ことが趣旨。

 北陸では横山社長が「誠実に、真摯にお客さま対応に取り組んでいる皆さん、それは金融に携わる社員の皆さんだけでなく、郵便関係の社員の皆さん、そしてお客さまに、一連のかんぽ営業の事案に関して深くお詫びしたい」と陳謝、「今日は率直に対話したい。皆さんの不満もぶつけて欲しい」と呼びかけた。
 経営に当たって「軸は現場・現物・現実。社会構造の変化、テクノロジーの進展、顧客志向の変化などに商品が合っているか、ルールが合っているか、常に検証していかなければならない。そのためには、現場にいる皆さんの考えや意見が重要」と強調した。また「着任以来、企業の社会的使命を果たすことを言い続けてきた。社会との関わりなしでは企業は生きていけない。社会的使命を果たすことは企業が存続する上で不可欠であり、その全う無くして成長はない」と改めて語った。
 さらに「2万4000の郵便局ネットワークは、我々にとっても国にとっても唯一無二の存在。相対的な価値ではなく絶対的な価値で最大の強み。この郵便局の強みを活かし、郵便・貯金・保険のサービスを全国に安定的に提供することが日本郵便の普遍的な社会的使命」と述べた。
 そして「社会的使命には、普遍的な使命に加え、時代の要請に基づく使命がある。これら二つの使命を踏まえ、時代と共に成長していく」とした。
 人材に関しても「人材なくして企業は成り立たない。理想の組織とは、社員が目標意識を持って働くこと。そして、個性のある社員が集まることで組織はより強固になる。様々な考え方を持った社員がおり、一人ひとりの個性を大切にし、1プラス1が2以上になるようにしていきたい」と期待を示した。
 最後に「現在は大変な難局。しかし、お客さま本位の原点に戻れば、難局は乗り越えられる。多くの社員がしっかりやってくれているのは事実。全社員が一丸となって、お客さまの信頼の回復に向け、真摯に誠実に、そして、郵便局で働いているという誇りを持ってお客さまに向き合って欲しい。必ずお客さまの期待に応えられる。信じてついてきて欲しい」と訴えた。沖縄でも米澤上級副社長が「一連のかんぽ営業の事案に関して、お客さまに深くお詫びするとともに、社員の日々の信頼回復に向けた努力に感謝」とし、「フロントラインセッションは本社と現場が直接対話ができる機会として設けたもの。率直に意見を伺いたい」と呼びかけた。
 横山社長の経営の理念や人材の活用について同様に説明、「お客さま本位の原点に立ち戻って、立て直しを図っていきたい。10月1日の営業再開を1月中を目途としたが、判断について甘さがあったことを率直にお詫びしたい。お客さまと最前線で接する皆さんの力を借りて全力で取り組んでいきたい」と語った。
 社員からは「営業の再開が1月以降になったという話もニュースで知った。我々に情報が来る前に世に出てしまうのは悲しい」「郵便局の金融分野の取組みは、あまりにも販売にこだわりすぎており、真の資産形成といった状況からはかけ離れているのではないか」などの意見が出た。
 また「フロントラインセッションについて、言っても何も変わらないという受け止め方をしている社員も多くいる。期限なども明示するなどして、現実味のあるものにして欲しい」「(NHKの)クローズアップ現代の件について、経営陣が責任を取ろうとしないのはなぜか」「物販について、魅力のない商品が多く、社員や家族が買っている」などの声が上がった。

【フロントラインセッションでの主なやり取り】
 《 北 陸 》
■営業の再開が1月以降になったという話もネットニュースで知った。我々に情報が来る前に世に出てしまうのは悲しい。何とかして欲しい。
 本社からの情報が皆さん方に届く前に世に出てしまうことは、大変申し訳ない。日々憤りを禁じ得ない。会社として決めたことは皆さんに最優先でお知らせしていく。

■かんぽの商品はやはりどうしても高齢の方になりがち。若い人にとって魅力のあるものもラインアップして欲しい。
 お客さまのニーズに合った商品は、お客さまと直に接している郵便局の皆さんが一番よく分かっている。郵便局がお客さまに合った商品を作れたら良いと思う。それができるようにしていきたい。
 人生100年と言われる時代、高齢者の資産形成といった考え方があってもおかしくはない。どうすれば、その期待やニーズに応えられるのか考えていきたい。

■今の郵便局の金融分野の取組みは、あまりにも販売にこだわりすぎており、真の資産形成といった状況からはかけ離れているのではないか。何とか改善ができないものか。
 すべての金融商品についてフローからストックに重きを置くように改善する。目標もそうした形態に変えていく。お客さまからの預り総資産をどう増やしていくかが重要で、この預り総資産で企業として成長していかなければならない。
 また、我々は、お客さまと一商品だけで繋がっているのではなく、年齢、家族構成、保有資産といったことからトータルでお客さまのニーズを汲み取っていくということが重要。いわゆるライフプランコンサルティング。もっと言えば、よろず金融相談。

■営業の再開予定が1月からということだが、現状では、1000人余りのお客さまに面談などをしなければならない状況。一日5人のお客さまと面談しても、1年かかってしまう。とても1月の再開までに対応しきれない。どうしたらいいのか。
  8月30日の時点では、契約内容の精査がもっと進展すると考えていた。社内でもいろいろな意見があったことは事実。ただ、最後の一人のお客さままで対応することは当然として、お客さま対応に支障のない範囲で段階的に再開を予定しているもの。不適切な事案がどういった状況の中で発生しているかを精査して、改善していくことで、徐々に再開していくことができると考えている。ただ、いずれにしても、今、やっているお客さまへの対応を続けていくことは必須。

■要員確保は喫緊の課題。通常時であってもなかなか集まらない中、今のような状況ではもっと厳しくなるのではないかと思う。また、後補充も十分にできない。新規採用は重要だが、今の期間雇用社員には正社員になりたい人も多い。こうした人を採用すれば、ゼロベースの人を雇うより、いろんな意味で効果的かと思う。また、意欲があるのに辞めていった社員の再雇用なども効果的だと思う。
 期間雇用社員の方であれ、辞めていった方であれ意欲のある方は会社として欲しい。どうすればうまく機能するのか考えていきたい。

■このフロントラインセッションについて、「また言っても何も変わらない」という受け止め方をしている社員も多くいる。期限なども明示するなどして、現実味のあるものにして欲しい。
 すぐにできることもある。ただ、制度として変えていかなければならないことも多い。今年度内には対策を打つ。これは約束する。冒頭でも申し上げたが、私を信じてついてきて欲しい。

 《 沖 縄 》
■クローズアップ現代の件について、経営陣が責任を取ろうとしないのはなぜか。
 あの放送内容については非常に衝撃を受けた。テーマであった高齢者募集については80歳以上への勧奨の制限や多数契約への制限など、様々な対応をしている。決して看過していたわけではないが、もう少し早くできればという思いもあり、責任は痛感している。

■物販について、魅力のない商品が多く、社員や社員の家族が買っており、本当に喜んで買っている人は少ないのではないか。
 商品の開発力が弱いのは当社の弱点。一方、全国の良いものを紹介できるというのは当社の強み。商品の開発力は強化したい。

■保有契約ベースの指標とは何か。保有契約は全体で減っているので、結局は手当なども減っていくことにならないか。
 これまでは新規を重視してきたが、中身が今回問題になった乗換契約であれば意味がない。現在、詳細は検討中であるが、貯金の純増に近いイメージを考えている。

■人事評価について、正社員登用をする際、上司ではなく同僚の評価を入れるなど、工夫することも必要ではないか。
 現状、日本の会社のほとんどが人材不足。正社員登用に当たってはいろいろな選考方法があると思うので、より良い選考方法を検討していきたい。

■ESの低下により、かんぽの件等の問題が発生しているのではないか。郵便局が明るいとお客さまサービスも向上する。
 郵便局を見ていると、明るい局とそうでない局がある。職場を大事にしたいという気持ちを持てるよう、いろいろな施策を講じていきたい。

■転送制度について、個人情報の関係やDVの問題などいろいろな問題がある。窓口、WEB、郵送での受付があるが、なりすまし等を防ぐ意味で、窓口だけの受付にできないか。
 転送制度は、お客さまにとっては非常に便利な良い制度。WEBでの申し込みは増えている状況であり、なりすましへの対策は本社で考える。

■郵便局クラブについて、ホテルの宿泊の割引や図書券の購入に際して、別の企業に情報連携されることから、個人情報漏洩の懸念があり、自信を持って勧めることができない。
 非常にお客さまにとって使いにくい状況になっていると感じる。なぜ、そのようになっているか確認する。

■ゆうパケットについて、匿名サービスなど利便性が上がったことから、取扱いが増えており、その分手間も増えている。料金を上げるべきではないか。
 全体として採算は取れているが、料金の見直しについては、不断に行っており、売上規模を見ながら判断していきたい。

■産休や育休について、先輩から、育休や産休明けに異動などがあり大変だと聞いて、将来に不安を感じている。
 日本郵便は産休や育休について、制度は整えている。ただ、個別には問題はあると考えている。少子高齢化の中、介護、育児の問題については、会社として対応すべきことで、周りや会社が支えることで、働きやすい仕組みを作りたい。

■かんぽの目標設定について、トップダウンではなく、ボトムアップにできないか。
 目標は会社間で決定されるので、日本郵便として、どこまで実態を掘り下げて、交渉しながら目標を作れるかということになる。これは大事な課題なので、きっちり検討していきたい。

■これまでのフロントラインセッションでも意見があったが、現場に伝えるより、報道が先行するのはなぜか。
 事情はあって、例えば、通常営業の再開時期などはかんぽ生命における適時開示事項であるので、株式市場に一番に伝えなければならない。一方、社員に伝える前にマスコミが予測等で先に書いていることもあり、皆さんの不満は理解できる。我々も反省している。

■事故について、人が減ったことで配達が大変になり、交通事故や郵便事故の要因となっている。また事故が増えると、確認事項が増える状況であり、ますます配達時間が減るといった悪循環に陥っている。
 4輪の事故は、ドライブレコーダーやバックモニターを入れたことにより減っている。2輪においても、サポートできる方法は検討したい。

■窓口と渉外で管理者も違い、営業目標も別に持っているので、連携が図りにくい。
 機能重視のマネジメントにした理由は、単マネ局の局長が金融まで見切れないという問題があったため。結果として、郵便・物流事業についてはうまく機能している。ただし、今回起きている事象を踏まえれば、見直しが必要な部分もあると考えている。

■フロントラインセッションのポータルサイトへの掲載について「検討します。確認します」といった回答があるが、結果についても掲載されるのか。
 検討しますと言ったことは、本社で実際に検討している。また、いただいた意見については、他の場でいただいているものも多い。フィードバックの仕方については考えたい。

■郵便局クラブについて、お客さまへのメリットが少ない。スマホとの連動などはできないか。
 郵便局クラブについてはもう少しネットと連動して、様々なサービスが提供できないかと考えている。

■70歳以上へのかんぽの勧奨について、事務手続きは増えるが、実績はつかない。こういった仕組みは変わる見込みはあるか。
 高齢者募集と多数契約の組み合わせは非常に問題だと感じている。70歳で元気な人もいるといった意見もあるかもしれないが、慎重な対応が必要。本人が納得して保険に入っても、家族との間でトラブルになることがあることから、家族の同席を必要としているもの。頑張ったのだから、実績にという気持ちは分かるが、状況を見て、一定の規制をかけた部分について、評価をするというのは難しいことを理解いただきたい。

■夫婦で郵便局の社員をしているが、営業ができなく、経済的に苦しくなっており、リストラがないかなど将来を心配している。
 これまでも大きな問題に直面したことはあり、宅配便統合の際には郵便・物流の赤字は金融窓口が支えた。今回は金融窓口の問題であるが、郵便・物流が好調であるといった状況。金融窓口は影響が長期に及ぶことから、信頼回復に向けてしっかりと頑張らないといけない。お客さま、社員のために会社はあると考えており、経営の責任として、安易なリストラなどは考えていない。

■本社施策や支社施策について、無駄と思えるようなものもある。現場からの声で改善して欲しい。
 金融窓口については、現場からの提案で手続きなどを変更している。郵便・物流についても、もう少し実施していきたい。

■かんぽのエリア外営業の規制が強くなっている。リレーションシップも重要だと考えるが、規制は引き続き強化されるのか。
 金融の社員は10年に一度は異動している。リレーションシップが悪用される可能性があることから、これはコンプライアンス上、必要な措置と考えており、エリア外営業の規制を緩和することは現状はないと考えている。

■給与補填について、募集手当が多かった人は前年分の税金の問題もあり、相当収入が減るのではないか。また非常勤の社員については補填がないと聞いたが、おかしいのではないか。
 お客さま対応に対してお支払いするもの等であり、補填ではない。

■局舎が狭かったり、車両が足りなかったりする郵便局も多い。なんとかして欲しい。
 局舎は老朽化しているものも多いことから、劣化工事は相当な費用をかけて、順次実施している。また車両については、稼働していないものも多い。足りないということであれば、偏在の問題であり、必要なところにきっちり回るようにしたい。

■金融渉外社員は1万5000人くらいから増えていないが、金融商品の数は増えている。社員数に見合った商品構成について検討いただきたい。
 金融渉外は当社に限らず離職率が高い。一方、スキルが必要な職種であることから、人数ありきで採用するのは難しい。したがって、現在の要員でできる目標を検討していく必要があると考えている。金融環境の変化に応じた目標設定としたい。

■郵便局の作り方について、駐車場が前面にある飲食店が多い中、郵便局だけ駐車場がないなどおかしいことがある。新しい局を作る際には、場所や作り方について、現地の意見を聞いていただきたい。
 駐車場の確保はプライオリティが高いと考えている。今、うまくいっていない部分があるとすれば、現地の状況を見ながら考えていきたい。


>戻る

ページTOPへ