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2019年10月7日 第7008号

【主な記事】

「郵便局ブランドの回復を」
[日本郵便]信越でフロントラインセッション


 「フロントラインセッション」として率直な対話集会を開催している日本郵便は、9月26日に樋口良行専務執行役員が出席して信越支社で行った。「日々お客さまに接している社員一人ひとりの声を経営に活かし、本社役員等とフロントライン社員がフェイス・トゥ・フェイスで意見交換。お客さまの要望から日ごろ負担に感じている事柄に至るまで、幅広い意見交換を行い、働き方改革をはじめ各種改革につなげていく」ことが趣旨。信越支社管内の社員を中心に約120人が参加した。

 樋口専務執行役員は「誠実に、真摯にお客さま対応に取り組んでいる皆さん、それは金融に携わる社員の皆さんだけでなく郵便関係の社員の皆さんも含めて、先ずもって一連のかんぽ営業の事案に関して深くお詫びしたい」と陳謝した。
 また「郵便局はこの150年、お客さまから安心、安全、信頼を築き上げてきた。大変なこともあったが、お客さまからの支持があって発展してきた」とし、「今回はお客さまの信頼を裏切り、郵便局のブランドを地に落とした。今までの危機とは全く異なる。地に落ちたブランドは何とか回復させたい」と強調した。
 そして「本社の役員が皆さんの声を共有できていたかどうか反省すべきだ。ここだけで終わらせるつもりはない。今日は率直に対話したい。皆さんの不満もぶつけてほしい」と呼びかけた。
 経営の軸として「現場・現物・現実」を挙げ、「経営を成長させていく上では、経営環境の変化への対応、社会構造の変革、顧客志向の変化といった様々な視点が必要。これは、現場にいる皆さんが一番感じている。変化に対応できない企業は淘汰されていく。今こそ、皆さんの考えや意見が重要」と、改めて「現場・現物・現実をより強化して対応していきたい」と語った。
 さらに「着任以来、企業の社会的使命を果たすことを言い続けてきた。社会との関わりなしでは、企業は生きていけない。社会的使命を果たすことは企業が存続する上で、不可欠なことで、社会的使命の全うなくして成長はない」との横山邦男社長の話を紹介。
 「2万4000の郵便局ネットワークは、我々にとっても、国にとっても、唯一無二の存在。これは相対的な価値ではなく、絶対的な価値であり、最大の強み。他の企業にはまねのできない社会的使命を担っている」と述べた。
 人材の重要性にも触れ「人材なくして企業は成り立たない。理想の組織とは、社員の皆さんが目標意識を持って働くこと、そして個性のある社員が集まることで組織はより強固になる。一人ひとりの仕事の喜びが、お客さまの喜びと共有できるようにしていきたい」と強調した。
 最後に「現在は大変な難局。しかしながら、お客さま本位の原点に戻れば、難局は乗り越えられる。ほとんどの社員は地域に寄り添うDNAは受け継がれてきている。全社員が一丸となって、お客さまの信頼の回復に向け、真摯に誠実に、そして、郵便局で働いているという誇りを持ってお客さまに向き合ってほしい」と訴えた。
 参加した社員からは「年賀、物販、ゆうちょ、かんぽなどの目標に関しての課題を改善してほしい」「郵便局で声を上げても本社に届かない。本社も郵便局の生の声を聴いてほしい」「営業を再開しても以前と同じようにできるとは思えない。再開後にしっかりした営業ができるようシナリオを示してほしい」などの意見が出された。

【フロントラインセッションでの主なやり取り】
■年賀、物販、ゆうちょ、かんぽなど目標に関して様々な課題があるが、この課題について、改善してほしい。
 目標に関しては多くの課題があるもの。本社、支社は明示的な解決策を示さずに、単純に実需のない販売はやめろと言ってきただけ。何故だめなのか、どうすればよいかなどの抜本的な改善策を示してこなかった。これからは、原点に立ち返って、構造的なものを直していきたい。

■ほとんどの情報は報道が先行しているもの。社員としては悲しい。何とかしてほしい。
 民営化され株式会社となっている以上、どの段階で皆さん方に会社としての決定事項をオープンにするかは難しい問題。会社として決めたことは、できるだけ早く皆さん方に伝えていきたい。

■郵便局で声を上げても、なかなか本社に届かない。また、本社も郵便局の生の声を聴いてほしい。
 本社も郵便局へ出向いて社員の皆さんの意見を聞こうと努力している。ただ、郵便局へ行っても管理者からの話を聞くだけに終わることも多い。これからは、社員の皆さんと話をするような機会を作っていきたい。

■営業の再開が言われているが、現状だと再開しても、以前と同じように営業ができるとは思えない。再開後すぐにしっかりした営業ができるように、シナリオを示してほしい。
 再開した時に、今まで通りに営業を始めるのは難しいと思う。少なくと
も、皆さん方がスムーズに営業を始められるようにガイドライン的なものは作成するべきと考える。

■今日、ここで意見を言うことは我々にとっては非常に勇気のいること。なかなか言いたいことも言えない毎日。ここでの発言の重みを分かってほしい。
 今回、皆さん方がここに参加して、意見を言っていることは大きな意味があるもの。なぜ、今までできなかったのか。これは経営陣の問題。問題意識に欠けていた。認識できたからには、しっかりやっていきたい。

■営業ができないことで、非常に厳しい。生活が一変した。手取りが激減した。何とかならないか。
 以前、基本給の12%を削って手当に振り向けた。渉外社員のモチベーションのアップも狙って実施したもの。今回、この12%分を戻し、また、お客さまへの対応を前提とした新たな手当を設けた。これらを、給与の補填といわれることもあるが、そうではない。
 給与は元々実施する業務に基づいて支払っているもので、今回の手当は窓口の社員と同様の業務をするということや、面談、訪問といった新たな業務が加わったことによるものであり、補填ではない。


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