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第6993号

【主な記事】

日本郵政グループ 株主総会
企業価値の向上を目指す


 日本郵政グループの定時株主総会が6月17日から19日の3日間、東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開かれた。日本郵政は19日、ゆうちょ銀行は18日、かんぽ生命保険は17日に開催。3社とも任期満了に伴う取締役選任や事業報告、計算書類の監査報告などの提案事項は原案通り承認された。天候には恵まれたものの、総会に出席した株主は3社とも前年度と比べ若干減少した。株主からの経営や事業に対する意見や質問は例年通り活発に行われた。

 日本郵政の第14回定時株主総会には918人の株主が出席、前年度より464人減った。議決権のある株主数は62万2647人で、最大株主の政府の持株比率は63.29%。
 総会では、青沼隆之氏(シティユーワ法律事務所、弁護士)と秋山咲恵氏(サキコーポレーションファウンダー)の2人の新任社外取締役を含む15人の取締役の選任が提案され、拍手多数で承認された。
 昨年4月1日から3月31日までの事業報告があり、日本郵政の長門正貢社長は「日本郵政グループの当期純利益は当初の3300億円の予想を大きく上回り4794億円となった。これを踏まえ、株主還元として自己株式の取得を検討したい。2020年3月期は減益を見込んでいるが、2019年3月期と同様に50円の配当を予定する」と述べた。
 また「中期経営計画では2020年までの3年間で、経営基盤の強化のため、インフラ整備に1兆円を計画している。トータル生活サポート企業として、グループの成長につながる幅広い資本提携に数千億円規模の投資も視野に入れている。その一環として、昨年12月にアフラックと資本関係に基づく戦略的提携を行った。今後も成長投資を検討・実施し、企業価値向上につなげていきたい」と経営方針を説明した。
 株価の低迷について長門社長は「株価については多くの株主に心配をかけたことを真摯に受け止めている。各事業の課題については、適切に対処するとともに、成長投資などによりグループの企業価値向上を目指したい。その取組みについては、株主や投資家への情報発信を積極的に行いたい」と述べた。
 質疑では、10人の株主が質問に立った。配当についてある株主は「利益が上振れしたのは良かったが、昨年は57円で今年は50円。今年は60円でもいいと思っている。株主の利益還元を重視するということだが、今年は特別配当の増配に向けて前向きに考えてもらいたい」との意見。
 日本郵政の鈴木康雄上級副社長は「株主還元は重要な柱と考えているが、継続して安定的な配当を基本方針としている。昨年は民営化10年の記念配当を行ったが、2019年3月期は年間50円としたい。2020年3月期もこれを維持したい。アフラックやその他の成長投資、自社株買いも検討したい。今後の成長により企業価値を向上させたい」と回答した。
 不動産事業については、株主から「日本郵政グループは価値ある不動産を持っているが、所有するだけでは価値は高まらない。投資が必要。長い目で見て付加価値を高めるための不動産投資をどうしていくか。明るいプランを伺いたい」と質問。
 日本郵政の岩崎芳史代表執行役副社長は「グループ全体で土地・建物合わせて簿価で2兆7000億円の不動産を持っている。昨年4月に日本郵政の100%子会社の日本郵政不動産を設立し、本業で使わない不動産を活用し、多くのプロジェクトを仕込み中。2023年以降にそれらが実ってくる。10年後にはグループの柱になるということで今、全力で取り組んでいる」と答えた。
 郵便局ネットワークについての質問では「いろんな場で郵便局ネットワークは大事だと強調されているが、銀行は窓口コンサルティング業務に限定し、店舗を廃止する傾向にある。スマホ世代が中心になると人が常駐する需要はなくなるのではないか。フィンテックの時代に昔ながらのやり方にこだわっていると、時代に取り残される。経営が成り立つのか心配している。コスト削減について聞きたい」と質問。
 日本郵政の根岸一行常務執行役(日本郵便常務執行役員)は「郵便局では3事業のユニバーサルサービスをフェース・トゥ・フェースで提供するお客さまとの大切な接点。現在のネットワーク水準を維持しつつ、収益や価値の向上も図っていきたい。大規模商業施設に出店するなど、より良い配置にも努めている」と回答した。
 さらに「3事業以外にも物販やがん保険の販売、地方自治体の事務委託業務などネットワークを活用した新たなサービスに取り組んでいる。局外営業活動やみまもりサービスなど郵便局の強みを生かした事業を展開し、収益改善に取り組んでいるので理解いただきたい」と説明した。
 オリンピック・パラリンピックへの貢献についての質問には、日本郵政の木下範子執行役が「日本郵政と日本郵便は東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーを務めている。寄附金付年賀はがきの発行や、開催中はメダリストの切手の発行も行う予定。開催まで500日前からはバイクにマスコットを貼って全国でPRしている。世界的イベントの日本開催を東京だけでなく、全国で盛り上げたい」と意欲を示した。
 そして「全国津々浦々にある2万4000の郵便局と40万人の社員を持つ中で、国家的に日本のオリ・パラにしようという意向をしっかりと受け止め、オリンピックを盛り上げるために積極的に貢献したい」と語った。
 期間雇用社員の定年について株主からは「人手不足でも期間雇用社員が集まらない現状もあり、期間雇用社員の定年を65歳を上限とすることについて再検討してもらいたい」との意見があった。
 日本郵政の衣川和秀専務執行役は「期間雇用社員の65歳以降の更新は行わない。業務が主に郵便の内務と集配で、体力や持久力が必要となるものが多く、年齢の高い人には過大な負担になり、事故の発生が懸念される。まずは2021年からの65歳定年の延長の円滑なスタートを最優先したい。高齢者にどのように働いてもらうかは重要なテーマ。政府の70歳雇用延長の議論や社会の動向を見て、65歳を超える人の雇用のあり方については遅れることのないよう、適切に対応したい」と回答した。


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