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第6982号

【主な記事】

多様な働き方に対応
[日本郵政]長門社長
育児と両立できる制度に

 日本郵政の長門正貢社長は3月28日の記者会見で、日本郵便の不動産開発事業の展開や春闘での妥結結果、スーパーフルトレーラを活用した共同幹線輸送の開始などについて明らかにした。2020年度に満60歳に到達した社員から導入する65歳定年制は「60歳以下の給与体系は現状を維持、それ以降は現行の高齢再雇用制度の改善をベースに対応、年功要素と生活関連手当を除いた職務給として設計した。役職は60歳で原則定年とし、退職金は61歳以降も退職手当ポイントを一定付与した上で、65歳の退職時に支給」などとした。また、育児、介護、病気と仕事の両立できる諸制度の改正をはじめ、多様な働き方への対応、さらには性の多様性の視点からも「かなり踏み込んだ制度」としたと強調した。

 長門社長はまず東京都内の3か所の社宅跡地を利用して、日本郵便が不動産開発事業として建物を建設、このたび竣工したことを明らかにした。「グランダ目白弐番館」「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」「JP noie 三田」の3棟。
 「グランダ目白弐番館」は、高齢者施設と保育所の複合施設。日本郵便が建設した高齢者施設としては初めてとなる。「JP noie 三田」は賃貸住宅、JP noieブランドによる賃貸住宅としては6棟目となる。このほかにも社宅跡地を活用し、高齢者住宅、保育所などの賃貸住宅において合計7件の竣工を予定している。
 また、地域ファンドへの出資について「3月28日に青森銀行とあおぎん地域貢献ファンドに参加する。2016年7月から地域ファンドに参加し、18年度の6案件を含め18案件、総額約52憶円となった。今後とも地域企業への新たな資金循環の創出、地域経済の活性化に貢献」と強調した。
 3月14日に妥結した春闘については「経済関連要求では、厳しい経営環境にあり正社員の一時金は昨年同様の4・3月とした。全社員一律のベアは実施しないが、優秀な新卒者確保等の観点から一般職3500円の基本給改善、その関係で給与逆転が起こらないように地域基幹職の一部について基本給改善を行う。必要なコストはグループ合計で約32憶円。全社員で平均すると定昇込みで2.58%の賃金改善、定昇プラス700円弱となる」とした。
 同一労働同一賃金では、扶養手当制度の見直しを実施した。「扶養手当を期間雇用社員に適用しないことは、労働契約法第20条に照らし、不合理とは考えていないが、モチベーションアップの観点から、無期雇用に転換した非正規社員のアソシエート社員に対し、正社員の8割ベースの手当を支給することとした」。
 これについては「会社財源の持ち出しで対応し、正社員の処遇を下げた分を非正規社員に充てるということはしていない」とし、支給対象を無期雇用のアソシエート社員に限った理由は「正社員同様、長期雇用に向けたインセンティブという観点で、一定の合理性があると考えた。ただし、正社員とアソシエート社員では、職務内容、期待役割等に違いがあるため、支給水準については労使で協議し、8割水準で妥結した」と述べた。併せて「現行の扶養手当について、子育て世代への経済支援の観点から、段階的に現行1万2000円の配偶者に関わる手当を半減し、子どもに関わる手当を倍増させる制度改正を行う。扶養手当制度の改善に関わるコストはグループ合計で約27憶円」と明らかにした。
 65歳定年制については「労使で協議を重ね、2020年度に満60歳に到達した社員から導入することで一定の整理を行った。60歳以下の給与をどうするかという問題があるが、労使で協議した結果、50代で生計費がピークに達することを考慮して、60歳以下の給与体系は現状を維持、それ以降は現行の高齢再雇用制度の改善をベースに対応」と説明した。
 その結果「61歳以降は60歳以下の正社員の給与体系から、年功要素と生活関連手当を除いた職務給として設計している。役職については60歳で原則定年とし、退職金については60歳では支給せず、61歳以降も退職手当ポイントを一定付与した上で、65歳の定年退職時に支給する」とした。
 このほか、育児、介護、病気と仕事の両立に向けた諸制度の改正をはじめ、多様な働き方に関する社員のニーズへの対応、さらには性の多様性、LGBT等の視点からも「かなり踏み込んだ制度」としたと強調。
 具体的な施策の一部として「育児介護休業等を取得すると、期間に応じて定期昇給に遅れが生じ、休業以後4年間その影響が残っていたが、復帰後最初の昇給日である4月1日に遅れを解消できるよう、昇給復帰の見直しを始める時期を早める。女性社員のみならず育児休業を短期間取得することも多い男性社員にも、制度上一つのハードルになっていたので、育児休業の取得促進につながるのではないか」との考えを示した。
 性の多様性、LGBTへの対応も注目が高まっているが「取り組むべき課題であると認識しており、同性パートナーとの同棲生活の開始に際し、5日取得可とする結婚休暇を適応」とし、「働き方の見直しは社会の大きな流れとなっており、引き続き不断の検討を重ねていきたい」と述べた。
 このほか、スーパーフルトレーラを活用した共同幹線輸送について、「ドライバー不足といった問題、Co2削減などの観点から、特殊車両通行許可基準が緩和された。日本郵便では新東京郵便局、新大阪郵便局間で月曜日から金曜日までの毎日1往復を運行する」ことを紹介した。
 さらに、かんぽ生命が平成30年度東京都スポーツ推進モデル企業に選定されたことを明らかにした。かんぽ生命は3月22日、小池百合子都知事から表彰された。ラジオ体操の普及推進や日本車いすテニス協会のトップパートナーとしての支援等に取り組んでおり、「今後も健康づくりへの貢献やダイバーシティ社会の形成に積極的に取り組む」と語った。
 オリンピック・パラリンピック採用競技種目への協賛についても「日本開催のラグビーワールドカップ2019大会の盛り上げに寄与するため、昨年度から日本代表のオフィシャルサポーターとして協賛しているが、継続する。また、パラリンピック競技支援として一般社団法人日本ゴールボール協会とオフィシャルパートナー契約を締結した。3人制バスケットボール日本代表および日本バスケットボール協会が主催する大会への協賛も決定した」。
 記者からの「ゆうちょ銀行とスルガ銀行との提携についての方向は」の質問には、「スルガ銀行がどういう形で住宅ローン等について対応するのかしっかり見極めた上で、十分に相談して決めたい。一昨年の6月に口座貸し越しのサービスについて認可を得て、今年の4月1日から業務を開始したい予定だったが、このプランにはスルガ銀行が関わっており、方向を見極めるまでは業務も開始できないと思っている。開始のタイミングが遅れる」との見通しを示した。
 金融庁が告示等を改正して保有する際の規制を導入したCLO(ローン担保証券)の保有状況についての質問には「CLOは一部あるが、ゆうちょ銀行の総資産210兆円に比べるとわずか。少しマーケットが荒れてきたが、そのリスクを勘案して、投資ポートフォリオを十分注意して考えているが、より的確に対応していきたい。来年度の計画は、今年度の決算発表の際に改めて報告するが、ゆうちょ銀行で少し注意してポートフォリオを考えるという方向で営業計画を詰めている段階」とした。
 そして「非常に金利が低迷しており、通常の投資では利益があまり上がらない環境。オルタナティブインベストメントの重要性が増し、中計では8.5兆円くらいまで持っていくとしたが、マーケットが敏感になっているということも踏まえ、慎重に見直したい。とりわけヘッジファンドについては、クレジットリスクに反応するから、大きく見直す方向で考えている」と述べた。


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