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第6981号

【主な記事】

65歳定年制を導入
春闘妥結 ベア平均は3500円

 日本郵政グループの春闘が3月14日、妥結した。2019年度のベアは一般職で平均3500円を確保したが、ボーナスは前年並みの4.3か月(夏期2.15か月、冬期2.15か月)となった。65歳定年制導入や、昨年からの継続協議となっていたアソシエイト社員(無期雇用社員/非正規社員)への扶養手当の支給、育児・介護休業による昇給遅れの緩和、同性パートナーにも結婚休暇が認められるなど、「働き方改革」「同一労働同一賃金」「多様な価値観」を軸に、若年層や高齢者、非正規社員、女性に配慮した内容となっている。

 ベアについては、日本郵政グループ労働組合は6000円を要求したが、一般職の賃金の初任給3700円、高齢層給与500円が引き上げられることで決着した。地域基幹職若年層の初任給は4000円改善された。ボーナスは、組合側は4.5か月を要求したが据え置きとなった。
 これらの理由について日本郵政人事部は「2018年度はゆうパックが好調で、日本郵便は当期純利益の業績予想を上方修正したが、2019年度の物流は厳しい状況に置かれる。金融2社は低金利で、ゆうちょ銀行は資金利益の落ち込みが激しく、かんぽ生命保険も新規契約の減少に歯止めがかかっていない。一律のベアができる環境にないと判断した。そのため、地域基幹職若年層と一般職の賃金の改善に絞った」とその理由を話す。
 扶養手当は見直した。昨年から組合と協議していた「アソシエイト社員」(非正規社員/有期雇用から無期雇用に転換した社員)に扶養手当が支給されることになった。配偶者手当が月額4800円、子ども手当が1人月額5000円、父母は1人1200円、子どもが高校や大学生になる16歳から22歳には経済支援のため、特別加算として1人月額4000円が支給される。日本郵政では「アソシエイト社員のモチベーションアップや人材の確保につなげたい」としている。
 正社員の扶養手当も女性活躍や子育て世代への経済的支援などの観点から、「配偶者手当を半額にして、子ども手当を倍増させる」見直しが行われた。配偶者手当は現行の12000円から6000円、子ども手当(生まれてから22歳まで支給)は、現行では1人3100円だが、改正後は1人6200円となる。父母手当は現行の1人月額1500円のままで、支給開始年齢は60歳から65歳に引き上げられる。
 65歳定年制が2020年度から導入される。現行は高齢再雇用制度により、60歳で退職した後、希望者は契約により再雇用されている。65歳定年制では、正社員のまま65歳まで雇用され、61歳以降も退職手当のポイントが付く(役割等級ポイントは役職に応じて、勤続ポイントは35年に到達するまで)。
 同制度では「シニアスタッフ職」と「シニア地域基幹職」の2つのコースが設けられる。シニアスタッフ職は、定年前の役職に関係なく希望すれば誰もが選択できる。シニア基幹職は、定年後もそのまま課長や課長代理として勤務できるが、人事評価の点数や過去の実績、経験などを基にした会社の選考を通る必要がある。
 61歳からの平均年収は、担当者は約410万円、課長代理は約520万円、課長は約570万円。同制度の導入により、一般職で定年を迎えた人は現行制度と比べて賃金面で大きく改善するという。現行制度の適用を受けている人には、新制度と比べて給与が下回る場合は低下額の100%が保障される。日本郵政では「高齢層の働く意欲が高まるのではないか」とその効果を話す。
 65歳定年制導入により、年齢層が揃う5年後の人件費の増加は55億円となる見込み。適用は2020年度に満60歳になる社員。
 期間雇用社員は毎年、約3500人が正社員として登用されているが、初任給の算定方法を改善する。勤務年数の前歴加算を90%から95%にする。
 また、社内業務に精通した時給制契約社員を積極的に登用するための仕組みを創設した。
 正社員への採用に当たり、一次審査でWebテストを行うが、合格していれば2年間有効になる。また過去2回、受験した人の場合、直近の2回のスキル評価がA習熟度の人は会社が認めれば、一次審査が免除される。
 人材確保のため、再採用制度も拡大する。これまでは10月からは育児・介護、出産、がん治療、配偶者同行のため退職した人を対象に再雇用制度を設けているが、これに不妊治療のための退職を加える。
 育児休業取得を促進するため、取得したことでの不利益がないように、休業期間も昇給の対象にした。また、アソシエイト社員の育児・介護制度を拡充。これまで1歳未満の子どもを対象としていた育児休業を3歳未満とした。介護休業は、日数を93日から正社員並みの183日に変更する。
 働き方改革の一環として、短時間勤務職(1日4時間勤務または8時間を隔日で勤務)の要件を緩和する。転換できるのは現在、介護などの特別な事情があると会社が認めた55歳以上に限定されているが、育児やがん治療などと仕事の両立を希望する社員にも適用する。
 多様な価値観に対応するため、同性パートナーと共同生活を始める場合でも、結婚休暇5日が取得できる。同性の婚姻は認められていないため、婚姻届けは出せないが、公正証書を取り交わした場合のみ取得が可能となる。対象は正社員、高齢再雇用社員、短時間社員。10月1日に実施予定。今後は配偶者手当も検討するという。
 日本郵便と日本郵政は東京五輪のオフィシャルパートナーとなっているが、同大会のボランティアスタッフとして採用された場合は、最大5日間のボランティア休暇(正社員と高齢再雇用社員は有給、期間雇用社員とアソシエイト社員、アソシエイト高齢再雇用社員は無給)が取得できる。


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