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第6972号

【主な記事】

お客さまに寄り添う対応を
CS向上へ 窓口グリーフケア研修


 郵便局窓口グリーフケアの応用研修(中級)が1月15、16日に日本郵便の本社で開催された。グリーフケアとは、死別に伴い遺族が悲嘆(グリーフ)を乗り越えようとする気持ちを支援(ケア)すること。相続などで窓口に来る遺族は多いが、心ない言葉で傷つく例もある。心に寄り添った優しい言葉に触れれば信頼関係を築く効果が高い。遺族の心情に寄り添う対応で、次世代の郵便局ファンを増やそうと2015年から一部の郵便局で始まっている。郵便局のCS向上と同時に社員のESにも繋がる大きな効果が出ている。

 郵便局窓口グリーフケアの応用研修は、実施に必要な最低限の知識があり、ギフト(言葉を添えて遺族に渡す「お香」などのグリーフケアギフト)を使って遺族の接客ができる「初級」、リーダーとして初級社員の手本になれ、研修未経験の社員の指導ができる「中級」、専任講師の補助を任せることができ、初級や中級社員の勉強会の講師もできる「上級」がある。
 応用研修には連絡会を挙げて最初に取り組んだ宮城県仙台市北部地区をはじめ、郵便局に取組みが広がっている滋賀県中部地区、兵庫県摂陽東部地区、岡山県備中西部地区、鳥取県因幡地区の代表、さらに横浜市東部、徳島県南部、熊本県南部、三重県中部からも参加者があった。
 参加者は既に初級研修を終えており、今回の中級は実践リーダーとしてOJTを実行し「困ったことが起きてもその場で解決策を見出し、社員をサポートして導ける」「社員の疑問に即答でき、納得させることができる」「グリーフケアを活かす本来業務の在り方を指導できる」ことを目指している。
 さらに「様々な能力や苦手な分野を持つ社員に本質を理解させる」「様々な角度から趣旨を解説し理解へ導くことができる」「社員のCSマインドを開花させ醸成させる」ことで、社員のモチベーションを上げることが求められている。
 こうした社員の養成で、お客さまに寄り添った全般的なCS向上を図り、郵便局ファンの拡大、定着を目指すことがグリーフケアの大きな目的となっている。
 研修の講師は、グルーフケアの普及に努めている日本グリーフケアギフト協会の加藤美千代代表理事、積極的に取り組んでいる仙台市北部地区の内ケ崎慎統括局長(富谷日吉台)、塩釜郵便局窓口営業部の中野隆幸課長、東北支社金融営業部の山内眞規営業インストラクター、三重県中部地区の山﨑靖弘局長(三雲天白)らが務めた。
 内ケ崎統括局長は「遺族に寄り添う応対で企業イメージが上がり、郵便局への信頼が深まる。子供世代にも郵便局を大いに利用してもらうことが、今後の経営にも重要なインパクトとなる」と強調した。
 加藤代表理事は「相続は様々な大きな契約を見直す契機となる。傷つかない対応をしてくれたら、そこで契約したくなる。悲しみの深い遺族は、信頼できる人を見る目が研ぎ澄まされている」と、遺族の気持ちについて指摘した。
 山﨑局長は「人の死を契機とした営業はダイレクトだと失敗する。お香を渡すことで自然と言葉も出てくる。寄り添い受け身になることで、長い目で見て成果が期待できる」と、銀行などの失敗例を挙げながら、選ばれる立場である企業の自覚の重要性を解説した。
 山内インストラクターはグリーフケアの取組みをはじめた思いを述べるとともに、「自分の都合や損得勘定を離れ、相手の立場で物事を見て対処すること。いわば己を忘れて他を利する“忘己利他”の心が郵便局の姿」などと語った。
 また、普及に努めている日本郵便の郵便・物流事業企画部の石津千絵美専門役が「グリーフケアは目に見える『景品』としての側面と目に見えない『気持ち』としての側面があり、バランスをとらなければいけない。『モノ志向』に傾くと信頼性は失われる」と強調。
 「目に見えない肝腎なこと(遺族に寄り添う気持ち)を伝える道具の一種として『モノ』は上手に使う(使わなくてもいい)。グリーフケアの取組みは人材育成」と、改めて意義を説明した。
 中野課長は仙台市北部地区の取組みを紹介し「遺族が相談して良かったと思ってもらえる信頼関係をつくり、次世代にも郵便局のロイヤルカスタマーとなっていただくことが目標。お香は有効に活用するもので、それがないとグリーフケアができないものではない」と述べ、まずは社員が趣旨を理解することが必要と述べた。
 参加した連絡会の代表が「社員育成の実践と課題」と題して報告。初めて取り組む社員の疑問などにいかに答えるかをテーマに、講師を交えてパネルディスカッションを行った。
 2日目の16日は、実践的な教育手法を身に着けるワークショップ。初心者の新入社員に趣旨を理解させるロールプレイングのシナリオ作成と発表などが行われた。なお、2月12~14日には、本社で上級の講師養成講座が開催される予定。


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