「通信文化新報」特集記事詳細
第6851号
【主な記事】
[郵政グループ]災害対策強化へ
自動安否確認システムが成果
局長会 防災PT発足
日本郵政グループが災害対策を強化している。東日本大震災の際に情報が錯そうした経験を踏まえ、全社員対象の安否確認システムを本格導入したことが熊本地震において一定の成果を上げた。一方、全国郵便局長会(青木進会長)も防災プロジェクトチーム(座長=小野沢豪関東地方会副会長)を立ち上げ、災害活性期に入ったとも言われる全国津々浦々の会員と家族を郵便局ネットワーク力で守っていく。局長会は地域貢献の一環として防災士資格取得を推進しているが、10月20日に日本で初めて開催される地域防災の国際シンポジウムに現役の郵便局長が訓練状況を披露する。
現在も被害の爪痕が残る東日本大震災発生時には、各郵便局現場で様々な情報が錯そうし、社員の安否確認などがスムーズにできなかった経緯があった。それを踏まえ、日本郵便は社員が持つ携帯やスマートフォンなどを使い、災害発生時に情報を収集し、速やかに伝達する安否確認システムを全社員対象に導入した(全社員対象の安否確認システムについては日本郵政は東日本大震災前から、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は、東日本大震災後しばらくしてから導入済み)。
4月に起きた熊本地震では、日本郵便が安否確認システムの導入後、初めて本格的に活用し、地震発生と同時に各社員がアドレス登録している携帯やスマホにメールが送信され、各自がそれに応えて「無事」あるいは「けが」などと応答。その結果、各社員の安否状況が迅速に把握することができ、間接的に地域を守る要因にもなった。
熊本地震では1局全壊のほか、約20か所の関連施設で損傷が発生、避難指示も含め、最大時で19局の窓口業務が停止したことから臨時郵便局開設や車両型郵便局の派遣などで郵便の取扱い、貯金の払い戻しや非常取扱いを実施した。当初、飲料水や食料品などが不足したことから、グループ各社の備蓄物品を緊急配送するとともに、日本郵政グループと災害時協力協定を締結しているローソンをはじめ、日頃からお付き合いのある取引先などから緊急調達し、急場をしのいだ。NTTグループとも災害時包括協定により、被災地近隣のグループ所有地の一部をNTT西日本の復旧作業にあたる資材・車両の置き場として提供した。
日本郵政総務部の宮尾好明危機管理室長は「今回の熊本地震対応では、自宅など被災された社員が多い中、現地では全力を尽くして業務継続に取り組まれたことに敬意を表している。とかく災害が起きると情報が錯そうし、現場と支社、本社の微妙なずれも出てくる。ずれは対応を遅らせてしまう要因にもなり、同じ部署に対して複数の部署から異なった指示が発信されると混乱の原因にもなる。被災現場にある程度の権限を持たせるためにも、正確な情報伝達が非常に大切だ」と指摘。
「今回、日本郵便では早い段階で本社から九州支社に応援要員を派遣し、連絡窓口を一本化するなど、適切な対応をとった。また、安否確認システムの本格導入により、迅速な情報収集に一定の成果を上げることができたことは、大きな前進だった。今後も更に実効性のある災害対策を実施し、危機管理態勢を強化していく」と意欲を示す。
一方、局長会はこのほど防災PTを発足。東日本大震災などの復旧・復興に当たっては置局・局舎専門委員会で対応してきたが、対応範囲が局舎に限られたものではないため、6月の役員会で対策本部の設置と複数の専門委員会から横断的なPTを組成することを諮って承認された。
8月には役員会で防災PTメンバーの選出を行い、座長に小野沢豪関東地方会副会長、関東(埼玉)の鈴木一美委員、信越(長野)の大工原正一委員、関東(千葉)の香取淳委員、東北(福島)の髙島貞邦委員、中国(広島)の向井則之委員、東京の髙塚雅司委員がメンバーとして選ばれた。事務局は窪田勝也事務局次長が務めている。
PTでは当面の課題として、熊本地震の被災地支援、将来の震災発生時の対応準備の在り方を協議している。取り組みは様々あるが、中でも防災士資格取得の促進や防災士活動のさらなる活発化を目指す。また、義援金を募る「赤いポストの会」の配算内容の検討や進捗状況確認、災害対策実施要領の作成、災害発生時における情報収集の方法、会員向け防災用品の販売、備蓄の準備などを行っている。
地域貢献の一環として、局長会が長年防災士資格取得を推進してきたきっかけは1995(平成7)年の阪神・淡路大震災。死者のうち85%が建築物倒壊などによる圧死で、がれきに埋もれた人々を救うのに警察や自衛隊、消防官などでは手が回らず、がれきから救ったのは近隣の救助によるものが多かった。この経験を活かし、防災に対する意識や知識、技能を持つ人への国の認定資格として防災士が提案され、資格を広めるために全国ネットワークを持ち、地域に密着する郵便局長への取得を推進しようと、局長会に話が持ち掛けられた。
現在の防災士の認定資格者数は約11万人。うち7割が一般市民、残る3割のうち約1万7000人が消防署職員と警察官で、約1万3000人は郵便局長が活躍する。大企業の中には、率先して防災士の試験を受けさせているところもあり、自治体でもそのための予算を組むケースもある。
局長会は、9~10月にかけて関東、北陸、近畿の3か所で特定非営利法人日本防災士機構が主催する「列島縦断防災・減災公開講座」に日本防災士会と共催を決定。9月17日にさいたま市内のホテルブリランテ武蔵野で行われた講座では、長年防災士として消防団活動を継続している鏡克利局長(大和下鶴間)と菅原龍雄局長(坂戸石井)の二人も埼玉県防災士会の大澤サユリ副会長や日本防災士会理事長の浦野修元全特会長と共に活動報告を行った。
講演者として招かれた気象予報士の大野治夫氏は「天気予報の当たる確率が四半世紀の間、83%から86%までしか伸びていないが、温暖化やエルニーニョは確実に進み、雨量が非常に増え、それに伴う災害が頻発する事態になった。日本は災害活性期に自分は大丈夫、という安易な考えを排し、携帯やスマホも活用しながら正確な判断ができるように対処しておくことが重要」と語った。
消防団歴21年の鏡局長は防災資格取得を「学生は就職にも有利。女性も増えてきた」などと資格取得を呼び掛けた。菅原龍雄局長(消防団員)は自ら所属する坂戸消防団多機能部隊が日本初の地域防災の国際シンポジウムで訓練状況を海外有識者に披露することを報告。大澤サユリ氏は近年の水害の増加に触れ、社会福祉協議会などとの連携状況を説明した。浦野理事長は「日本は災害活性期に突入したという。最近、龍角散の社長との懇談機会があり、『大変な苦境の時代をどう乗り越えたのか』と尋ねると、『迷うことなく地域貢献を重ねてきた』との答えが返ってきた」と強調した。
※「地域防災」と「消防団」国際シンポジウム(主催=日本消防協会)は10月20日に東京都千代田区の都市センタービルで開催。2014(平成26)年に施行された「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」(消防団充実強化法)により、消防団は地域防災にどう取り組んでいくかが新たな課題として浮上した。国内では地域防災シンポジウムが開かれるようになりつつあったが、今回、初めて主要11か国の消防関係者が集い、地域防災をテーマに国際シンポジウムを開くことになった。坂戸消防団多機能部隊と西東京消防団が救助訓練を行う。
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