コラム「春秋一話」

 年/月

第6991号

求む“変な人” !?

 総務省が主催する「異能vation」の募集が始まった。お役所が何と、“変な人”を求めているらしい。変な人とは、奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗を恐れずに挑戦する人。新しい発想は新たな市場を創り出す。総務省は「最初から地球規模の市場を狙いたい」と変な人が巻き起こす世界的なムーブメントに期待する。
 6月5日に発表された政府の「未来投資会議」(議長:安倍晋三総理)の「成長戦略実行計画案」にも、第4次産業革命に必要な高スキルを持つ人材として「創造性、感性、デザイン性、企画力といった能力やスキルを備えた人材」と具体像を示しており、その育成が必要なことも強調されている。
 変な人とはイノベーションの原動力になる。アメリカには、マイクロソフトやアマゾン、アップル、フェイスブックなど、今や世界的大企業がいくつも存在するが、どれもベンチャー企業から生まれた。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグら創業者は、最初は異端児、変人と言われた。
 自分がやりたいことを明確に持ち、開発する技術、譲らない知的財産権を武器に新たな市場を創り出した。自分が欲しいものでもあり、何が何でもやり通す。それが彼らの推進力だ。アメリカにはそんな思いを持った尖った優秀な人材が、思い切って仕事ができる素地があったことも成功につながっている。
 日本は世界を席巻する勢いのあるサービスが育っているのか。メーカーなどで開発された技術には、次の段階に発展しない多くの「死の谷」が存在する。多くの技術や特許がなぜ死の谷に落ちてしまったのかも分析する必要がある。中国がレアアースの輸出を停止した時、日本メーカーの助けになったのは先輩が残してくれた技術だったという。日本には技術力がある。視点を変えれば死の谷にも、お宝が眠っているかもしれない。
 日本の大学発ベンチャーの成功者に「サイバーダイン」がある。社長で筑波大学の山海嘉之教授には2度、取材をしたことがあるが、1度目の取材では「制度とのぶつかり合い」と課題を指摘。2度目は資金集めだった。そこには山海教授が外国人投資家向けのIR説明会を自ら英語で行う姿があった。研究と経営の両立は苦労がいる。
 成長戦略実行計画案には、第4次産業革命を成功させるには、それに合った組織と人の変革が必要なことも明記されている。モバイル・インターネットの基礎となったNTTドコモのiモードはイノベーションの成功事例として学ぶところも多い。
 同プロジェクトチームもまた当初、社内では異端児扱いされたという。発案者の松永真理さん、ビジネスとしてまとめ上げる夏野剛さん、チーム責任者の榎啓一さんらがそれぞれの知識や経験を生かし、役割分担。チーム力でiモードを成功に導いた。松永さんと夏野さんはこのプロジェクトのために中途採用されたスタッフ。組織の変革には外部の力が有効なのかもしれない。
 異能vationはそんな新しい発想を持ったシード(種)探しの一つ。今年で6年目を迎えるが、昨年度の「破壊的な挑戦部門」の応募者は約1000件、「ジェネレーションアワード部門」は1万人を超えた。ジェネレーションアワードには小学生の応募もあり、プリクラと顔認証を組み合わせて迷子探しができる「子供交番」の提案がノミネートされた。アイデアそのものもあるが、審査には人事部も目を光らせる。ここはアイデア豊富な人材探しの場ともなっている。令和初の変な人はどんな人なのか。
(招福招き猫)

第6990号

ふるさと納税とみまもりサービス

 ふるさと納税の指定制度が6月1日から始まった。指定を外された大阪府泉佐野市はアマゾンギフト券付きの駆け込みキャンペーンで、昨年11月から3月までの5か月間に332億円を集めた。年間予算563億円の市が、その7割に当たる400億円余りの寄付額(見込み)を獲得する異例な事態。
 泉佐野市は指定外となったことに納得がいかないらしく、公表3日後には「ふるさと納税の本来の役割とは?」という主張を公表し、総務省にも質問書を送った。
 2017年度のふるさと納税の寄付額は3653億円(住民税と所得税の控除のうち、住民税の税額控除額は寄付額の67%の2448億円)。その経費は受入額の55.5%に当たる2027億円。新制度により返礼品が3割以下となれば、その分、経費も下がると思われるが、そもそもふるさと納税制度がなければ、寄付額の全額は税として使われる。
 貴重な税金がふるさと納税の返礼品として使われるからには、制度の趣旨「ふるさとやお世話になった自治体に感謝や応援の気持ちを伝える」に沿っていなければならない。
 石田真敏総務大臣は指定制度実施に当たり「クラウドファンディングの活用や納税者との継続的なつながりを持つなど、地域活性化に向けて創意工夫を凝らした取組みを進めてもらいたい」とコメント。これに対して泉佐野市はクラウドファンディングについて「返礼品を送る寄付募集が全て禁止されない限り厳しい」と反論する。
 ふるさと納税は寄付である。東日本大震災では多額の寄付が集まったが、返礼品を求める人がいただろうか。困っているから助けてあげたいという気持ちからの寄付。お世話になったふるさとに恩返しをしたいから寄付するというのと、何ら変わりない。「返礼品がないと寄付はしない」と国民が考えるのであれば、同制度のあり方自体が問題となる。
 ふるさと納税制度は、地方自治体が補助金や交付金に頼らずに事業ができる数少ない手段の一つ。返礼品がなくても「協力したい」「応援したい」と思える事業やサービスがある時だけ寄付を募ればよいのではないか。
 自治体職員は、返礼品探しに奔走するのではなく、そのエネルギーを住民サービスや地域活性化のアイデアの練り上げに使った方がよい。
 「地場産品にすれば地元にお金が落ちるからよい」という意見もあるが、ふるさと納税は景気対策ではない。また返礼品は長年にわたり、同じ事業者にするわけにもいかない。
 返礼品はアイデアを出した受益者が工夫して出せばいい。ふるさと納税の寄付のおかげで作られた産品、サービスであれば「おかげで助かった」「とてもうれしかった」といったお礼の手紙でよいではないか。寄付者と活用者の心が通じ合える。
 郵便局のみまもりサービスは、現在2400の自治体で返礼品として採用されている。月額2500円の訪問サービスの場合は、年間3万円。返礼割合は3割以下のため、寄付額は10万円以上となるが、その額の寄付をするには、年収ベースで680万円から850万円以上と比較的高収入な人に限られる。
 クラウドファンディング型の寄付なら経費以外は全額利用できる。お年寄りや子どもの通学などの見守りニーズは高まっている。
 郵便局はネットワークや人的資源を存分に生かしつつ、自治体と一緒にアイデアを出し合い、そこにサービスプロバイダーとして参画する手もある。
(招福招き猫)

第6989号

「平成」を振り返り「令和」を思う

 「平成」から「令和」の代替わりは10連休もあったが、スムーズに進んでいると思われる。この代替わりは明仁天皇の強い意向によったとされる。これは2016年8月8日に発せられた「おことば」に示されていた。
 生前退位を望む理由として、昭和天皇の逝去時の自粛ムードなどが国民生活に与えた事態を避けるということがあったとされる。この考慮は生かされたと思える。昭和天皇は神聖天皇の名残もあり、象徴天皇としての明仁天皇はそれを避けたいということでもあった。
 国民の多くは生前退位に賛成だったと思われるが、一部にはこれに対する抵抗も伝えられた。代替りが天皇の逝去と共にあるべきとの考えだろうが、そこには神聖天皇の復権を望むこともあったのかと推察される。
 「昭和」から「平成」への代替わりにおいて即位した明仁天皇は「憲法を守る」と明言された。これは天皇の言葉として波紋をもたらしたものだった。天皇の存在は神聖天皇から象徴天皇に敗戦を挟んで変わった。大日本帝国憲法と日本国憲法の天皇の規定を見れば明らかである。
 ただ、この転換には非戦とアメリカ軍の日本占領ということが加わっていて事情は複雑だったのだが、国民にはかつての神聖天皇の残存もどこかにあった。昭和天皇は人間宣言において神聖天皇の脱却を宣言したが、これに対する不満は残ってもきた。三島由紀夫の「文化概念として天皇」擁護は、その極端な現われだった。
 明仁天皇は人間宣言を引き継ぐ形で象徴天皇を模索したと言えるが、それは憲法第1条の象徴天皇を守るということだったのだと思う。象徴ということを考え、守るということは、明仁天皇においては必然のことだったのであろう。私は国民として、同じ条文にある国民主権のことを考えた。私も憲法を守りたいと思ってきたが、主要には国民主権のことが頭にあった。
 明仁天皇が象徴天皇を模索し、守ろうとしてきたことは、平成という時代を振り返るときに忘れてはならないことであろう。これは神聖天皇の否定であり、天皇の神聖化の動きに対する抵抗だった。天皇を政治的力にしようとすることへの抵抗でもあったと思われる。この肯否はそれぞれだろうが、私は国民主権のことを大事に考えながら賛意を持ってきた。
 新天皇は即位に当たって「憲法に沿って」と述べているが、私は「平成」での天皇のあり方を引き継いでいってもらいたいと思う。「平成」時代とは何であったかを考えることは、「令和」時代とは何かを考えることでもある。「令和」時代に対する人々の期待する気持ちと裏腹に、時代を見通すことが難しく、閉塞感もあるのは、「平成」時代が何かを捉えきれていないこともあるからだろう。その意味で「平成」時代を考えることは重要だし、これからも繰り返し行われるに違いない。
 明仁天皇と象徴天皇の模索は「平成」時代を振り返る大きな指標である。私はどちらかというと同じ憲法第1条でも国民主権のあり方を指標としてきたが、「平成」を考えるのには多様な側面があるだろう。最近、昭和の歌謡史の番組を楽しく見ているが、平成歌謡史でもいいし、技術の進展史でもいい。
 平成の後半ににわかに激しくなった災害のことでもいい。家族や自己史でもいいのだが、ある程度、まとまって過去を振り返ることで未来のことを考えるいい契機にして欲しいものである。メディアなどはそれをいろいろと提供してくれるだろうが、自分なりの歴史像を創り未来のイメージを得ていくことが大事ではないか。
(坂田の力)

第6988号

速達料金の1割値下げ

 5月8日に開かれた郵便局活性化委員会で、日本郵便は「日刊紙の土曜配達継続とその料金」「速達料金の値下げ」の2つを提案した。両方とも赤字を拡大させることが分かり、委員や専門委員からは必ずしも賛成できないとの意見が出た。
 郵便事業の収益が悪化することを見越して、料金値上げではなく、サービスレベルの見直しということで、日本郵便は同委員会に、土曜休配や送達日数の1日繰り下げを提案した。
 速達は利用が増えるなら、料金は値下げしてもいいのではないかという意見もあり、日本郵便は1割値下げを提案した。しかし、速達は価格弾力性がなく、値下げしても1割程度しか増えないことが分かった。損益は10億円悪化するという。
 収益が悪化するのなら話は違うということで、委員や専門委員からは、「ユニバーサルサービスの将来的な確保ができなくなる」との意見があった。普通郵便の中では、数少ない黒字の特殊取扱。郵便事業収支約109億円の黒字(2017年度)を支える。
 日本郵便は、速達料金の値下げについては、普通郵便と速達は送達速度において、それほど差がないことを挙げている。サービスと料金のバランスが悪いにもかかわらず、手を付けてこなかったこともあるという。
 速達を選ぶのは、速度というよりは、重要な郵便物であることを受取人に知らせることにあり、料金が高くても利用する人はするのだという。そこにニーズがあるのであれば、それに特化したサービスも考えられるのではないか。スマホやパソコン、郵便配達の人を組み合わせて、届けたことが、差出人に早く確実に分かるサービスなど、新しいメディアとリアルを組み合わせた工夫も考えられる。
 関口博正専門委員の「国家全体に対して、重要な役割があるというのなら、利用者ではなく、国が払うべき」というのは、言論機関である新聞社にとって、国の直接的な補助は受け入れ難いことだと思う。そのうえで、新聞だけを特別扱いにする理由や費用負担の公平性について議論を深めることが大事だ。
 新聞関係者は、パブリックコメントに「世界に類を見ない高度に発達した新聞の流通網は日本の文化であり、民主主義を支える知的インフラ」と意見を提出している。世界に誇る新聞ネットワークというのであれば、例え一部の過疎地であろうと、日本郵便に任せることが良いことなのか。新聞網を守るためにも、まずは新聞社や新聞販売店が自助努力で何とかできないかを考えることも求められる。日刊紙が、共同または持ち回りで過疎地に新聞を配達することはできないのだろうか。
 新聞は大きな事件・事故、選挙など、社会に起きる知らせなければならない情報をギリギリまで頑張って入れようと努力している。そのため、新聞の印刷が遅れることや天候不順で配達自体が遅れることもある。
 日本郵便では、速達の人員体制の中に新聞の土曜配達を組み込むことで、コストを吸収するということだが、本来サービスである速達に影響はないのだろうか。本来サービスが、確実に守られることが利用者にとって優先される。(招福招き猫)

第6987号

子どもの数は38年連続で減少

 子どもの数(15歳未満)は今年の4月1日現在で1533万人、1982年から38年連続で減少、過去最少となった。5月5日のこどもの日にちなみ、総務省が前日の4日に明らかにした。男女別では男子が785万人、女子が748万人、男子が37万人多く、女子100人に対する男子の数は105となっている。
 昨年から18万人ほど減少している。89年の平成元年の2320万人から約30年間で787万人も減ったことになる。総人口は1億2623万人で、子どもの占める割合は12.1%、昨年より0.2ポイント下がった。こちらも過去最低となっている。
 12~14歳が322万人(総人口に占める割合2.6%)、9~11歳が321万人(2.5%)、6~8歳が309万人(2.5%)、3~5歳が295万人(2.3%)、0~2歳が286万人(2.3%)。年齢が低いほど少なくなっている。
 子どもの割合は1950年に3分の1を超えていたが、第1次ベビーブーム(1947~49年)の後は、出生数の減少に伴い低下を続け、65年には約4分の1となった。70年代前半には第2次ベビーブーム(71~74年)を反映して僅かに上昇したものの75年からは再び低下し、97年には65歳以上(15.7%)を下回る15.3%となり、それ以降45年連続で低下している。
 ちなみに諸外国ではイギリス、フランスが19.7%、イタリア、ドイツが13.4%、スペイン14.9%、ロシア17.0%、アメリカ18.7%、中国16.9%、韓国12.9%、フィリピン31.2%、インド30.6%、メキシコ27.0%、ブラジル22.2%、エジプト34.2%などとなっている。
 都道府県別では(昨年10月1日現在)、東京都は8000人増加、沖縄県は同数となった以外は減少した。割合は沖縄県が17.0%と最も高く、滋賀県14.0%、佐賀県13.6%、熊本県、宮崎県が13.4%と続く。
 一方で秋田県が10.0%と最も低く、青森県10.8%、北海道10.9%、東京都、高知県が11.2%などとなっている。子どもの数が100万人を超えるのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府。
 子どもの数が減少しているが、65歳以上の一人暮らし、いわば高齢者の単独世帯は増加傾向だ。国立社会保障・人口問題研究所が4月19日に、日本の世帯数の将来推計を公表した。
 2035年までに沖縄県を除く46都道府県で世帯数は減少する。同時に平均世帯人員も減少、15年に1.99人となった東京都に続き、40年までには北海道や高知県で2人を下回る。世帯主が65歳以上の割合は全都道府県で30年に30%以上となり、40年には45道府県で40%を超えると推計している。
 単独世帯も25年には全ての都道府県で最大の割合を占めるようになる。そのうち65歳以上の単独世帯は、40年に全都道府県で30%以上、15都道府県では40%を超える。
 高齢者の単独世帯の増加に伴い、買い物や通院、介護といった日常生活の支援への要請は高まる。地域での見守り活動の重要性も更に大きくなるだろう。少子高齢化の進展が著しい日本、高齢者を支えると同時に、子どもを育てやすい環境の整備も急がれる。こうした要望に地域の拠点としての郵便局ネットワークを活用することも期待されるだろう。
(和光同塵)

第6985・6986合併号

令和の初めの10連休

 ゴールデンウィークが10連休になる。サラリーマンと言われた人々にとって、日頃の勤めから解放され、思い切って自由に動ける連休は、かつては夢のようなものだった。
 勤め人と言っても非正規雇用が増えた現状では、減収になるから喜んでばかりはいられないという人もいる。昔、よく通った雀荘の小母さんに「休みは人集めが大変なのよ」とこぼされたことがある。連休こそ稼ぎ時という人たちも大変だ。
 5月1日には「令和」時代が始まる。平成から令和に変ることを多くの人が歓迎しているように見える。時代の閉塞感というよりは、先の見えないモヤモヤ感があって、とりあえず、それが解き放されるような気持ちを感じているのだろうか。
 それがどこまで続くのかはともかくとして、実際は10連休をどうして過ごしたらいいのか、戸惑う人も多く、そこが課題だと言えるのだと思う。
 君はどう過ごすのか、という問いを発したら、どんな答えが返ってくるのだろうか。その中には、時代の変化と、そこに対応しようとする人々の意向(考え)が含まれているものもあると思う。
 平成時代を振り返ることが、様々な場面で行われている。昭和に比すれば、激動がなかったこととして特徴づけられる。端的に言えば、昭和のような戦争がなかったのである。昭和の前半は戦争の日々、1945年の後のいわゆる戦後にも、戦争処理の問題が大きな影となっていた。
 平成には戦争がなかった。それには、いろいろな留保をつけないといけないが、特筆すべきことのように思う。しかし、変化の乏しい時代だったのであろうか。戦争という激動を孕んだ時代ではなかったし、それゆえに制度的な変化ということも見えない時代ではあったが、戦争とは違うものの、大きな変化をもたらした時代だったように思える。
 例えば、成長(根本的には経済の成長)という考えが大きく変わったことである。生産が拡大し、進展することは善で、社会の進歩だということに懐疑が生じた。
 生産力の増大は、体制(資本主義か社会主義か)の是非を超えたもので、歴史の進歩に属することだったと思う。しかし、生産優位の社会から消費社会に変わりつつあるという側面は、生産(働くこと)を基軸にした価値観からの転化をもたらすことになった。
 ゴールデンウィークはありがたく、恩寵のようなものであるという考えを、まだ引きずってはいるが、与えられたものから、当たり前の権利で、自由に処するものへということでもある。
10連休をどう過ごすか戸惑っている人もいるのではと言ったが、休日についての考えの変化があるものの、まだそれが明確にはなっていない段階のためだと思う。
 10連休が初めての経験で、休日(労働からの解放日)への意識に変化があり、人々に歓迎されていることは確かだが、休日は人間の生の充実にとって当たり前で、生きる権利に属することである。
 だから、それによって減収する人や休めない人のためには、国や企業が補填をすべきという考えも生じる。それでこそ国民的休日という意味を持つことになるのだろう。
 今回の経験を経ながら、改めて働くことの意義、休日に対する考えの変化も含めて、連休をより確かなものにしていく必要がある。それが令和時代の初めに10連休が設定されたことの意味ではないか。
(坂田の力)

第6984号

高い人口減少率、進む少子高齢化

 日本の総人口は1億2644万3千人、総務省が4月12日に2018年10月1日現在の推計値を明らかにした。前年(2017年)に比べ26万3千人(0.21%)の減少だ。
 総人口は2005年に1万9千人減の1億2776万8千人と、戦後初めて前年を下回った。その後は若干持ち直し、2008年に1億2808万4千人となったが、2011年の1億2783万4千人以降は8年連続して減少している。減少数、減少率ともに比較可能な1950年以降で最大となっている。
 男女別では男性が6153万2千人で48.7%、女性が6491万1千人と51.3%。男性は12万3千人減で11年連続、女性は14万人減で8年連続の減少。
 自然増減(出生児数―死亡者数)は12年連続で自然減少となり、減少幅は拡大している。男女別に見ると男性が14年連続、女性が10年連続。出生児数は第2次ベビーブーム期(1971~74年)以降、減少傾向が続き、2018年は94万4千人と2万1千人減。死亡者数は136万9千人で2万6千人の増加。
 社会増減(入国者数―出国者数)は6年連続で増加した。入国者数は384万8千人で23万3千人増、出国者数は368万7千人で22万3千人増。入国者数が出国者数を16万1千人ほど上回った。
 日本人・外国人別に見ると日本人は3千人の社会減少、外国人は16万5千人の社会増加。日本人は2年振りの減少、外国人は6年連続の増加。外国人の増加幅は拡大している。増加はほとんどが14~64歳の労働の担い手となる生産年齢人口で、外国人労働者の受け入れが増えている実態が浮かぶ。
 日本人の人口は1億2421万8千人で、前年に比べ43万人(0.35%)の減少、こちらも8年連続の減少。年齢層別では15歳未満が1541万5千人で17万8千人の減少。割合は12.2%で過去最低となった。1975年(24.3%)以降、一貫して低下している。
 15~64歳は7545万1千人で51万2千人の減少、割合は59.7%となった。1982年(67.5%)以来、上昇していたが、92年(69.8%)をピークに低下し、50年以降では同年と同率で過去最低となった。深刻な人手不足と言われる現状を反映している。
 一方、65歳以上は3557万8千人で42万6千人の増加。50年(4.9%)以降は上昇を続け28.1%と過去最高となった。このうち70歳以上は2621万人で97万9千人の増加、20.7%を占め、初めて2割を超えた。75歳以上は1797万5千人で49万3千人の増加、65歳以上の人口の半数を超えたのも初めてとなる。
 少子高齢化の傾向に拍車がかかる。なお、明治・大正生まれは140万5千人で1.1%、昭和は9151万人の72.4%、平成は3352万8千人の26.5%。戦後生まれは83.6%を占めている。
 都道府県別では、7都県で増加した。東京都0.72%、次いで沖縄県0.31%、埼玉県0.28%、神奈川県0.20%、愛知県0.16%、千葉県0.14%、福岡県0.01%。このうち自然増となったのは沖縄県のみ。その他の40府県は減少しており、最も大きいのは秋田県の1.47%、次いで青森県1.22%、岩手県1.12%、和歌山県1.08%、高知県1.06%、山形県1.04%と6県が1%を超えている。
 75歳以上の割合が15歳未満の割合を上回っているのは44都道府県に上る。下回っているのは愛知県、滋賀県、沖縄県のみとなった。
(和光同塵)

第6983号

61万人を超す中高年の引きこもり

 半年以上にわたり自宅に閉じこもっている “引きこもり状態”にある満40~64歳の中高年が、全国で61万3000人もいるという。内閣府が3月29日に公表した。40~64歳の5000人を対象に昨年12月、本人や家族から外出の頻度などを聞き、3248人が回答した。これをもとに推計値を明らかにした。
 これまで子供や若者について調査、引きこもりの長期化傾向が明らかになった。今回は40~60歳や同居者も対象に、きっかけや期間などについて把握、子供や若者が引きこもりになることを防ぐ支援策の基礎データを得ることを目的とした。
 内閣府は引きこもりを自宅からほとんど出ない状態に加え、趣味の用事や近くのコンビニに行くこと以外にほとんど外出しないことが6か月以上にわたり続く場合としている。15~39歳の若年層を対象にした2015年の調査では、引きこもりは54万1000人と推計しており、今回の中高年はこれを上回る。中高年の引きこもりが明らかになるのは初めて。男性が76.6%、女性が23.4%を占める。
 引きこもりの期間は6か月以上1年未満が6.4%、1~2年が14.9%、3~5年が21.3%などだが、7年以上が46.7%と半数近くを占める。30年以上も6.4%だった。青少年等の問題と考えられてきた引きこもりだが、長期化、高齢化が見られ、中高年での課題としても浮き彫りとなった。内閣府は「引きこもりは決して若者特有の現象ではない」としている。
 きっかけは「退職したこと」36.2%、「人間関係がうまくいかなかった」「病気」が共に21.3%、「職場になじめなかった」19.1%、「就職活動がうまくいかなかった」6.4%(複数回答)。仕事に関することが多く、一度も「働いたことがない」のは2%だった。
 また、引きこもりになった年齢は60~64歳が17%と最多、次いで25~29歳が14.9%、20~24歳が12.8%、40~44歳が12.8%、55~59歳が10.6%などとなっている。非正規社員が増えた就職氷河期を経験した年代に当たる40~44歳は、3人に1人が20~24歳で引きこもりになっており、内閣府は「就職活動がうまくいかなかったことなども背景にあるのでは」と指摘している。
 年齢層は40代が38.3%、50代が36.2%、60~64歳が25.5%を占める。定年退職を機に社会との接点を失うことが多いのは以前から指摘されている問題。仕事以外の交流が苦手で、地域との接点が少なく馴染めず、“ぬれ落ち葉”と言われるように妻につきまとう夫。現役時の役職や仕事内容をひけらかす人も敬遠される。調査では「悩み事を誰にも相談しない」という回答が4割を超えた。
 また、経済的には親に依存しているのが34%、自身が21%、配偶者が17%、生活保護は9%だった。3人に1人が高齢の親に依存している。親が80歳、本人が50代と、引きこもる中高年の子と高齢の親が孤立し困窮する「八〇五〇問題」も福祉現場では指摘されている。
 人間関係に対する苦手意識、失敗や挫折感から立ち直れない、興味・関心がある世界だけにのめり込むという心理的ひずみからの引きこもりは、予防策を講じることが可能と専門家は話す。「若者とは異なる支援策が必要」と内閣府も話す。
 仕事に役立つ知識や技術を身につける支援、働く場所の確保など中高年のニーズを見た就労施策、本人に適する仕事の可能性を探るため、経験を共有できる居場所なども求められる。地域に密着した郵便局ネットワークが果たす可能性にも期待したい。
(和光同塵)

第6982号

製造業の景況感が大幅に悪化

 日銀は4月1日、3月期の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)を明らかにした。約1万社を対象に年4回実施されるもので、景気の現状認識や収益、設備投資額、事業計画などを企業規模や業種別に集計する。業績が「良い」と回答した割合から、「悪い」とした割合を差し引いて算出する業況判断指数(DI)は、企業の景況感を示し、景気動向を判断する重要な指数となっている。
 DIは大企業・製造業がプラス12となり、前回の昨年12月調査のプラス19から7ポイントほど低下した。2012年12月調査(9ポイント低下)以来、6年3か月振りの大幅な悪化となった。
 大企業・製造業のDIの水準は2017年3月(プラス12)以来の低さとなった。電気機械や生産用機械の落ち込みが目立つ。下げ幅が大きかったのは汎用機械の27ポイント、非鉄金属の21ポイント、石油・石炭製品の19ポイント、紙・パルプの15ポイント、化学と電気機械が12ポイント、金属製品が10ポイントなどとなっている。
 日銀は「貿易摩擦の影響を幅広い業種で指摘する声が多かった」と説明している。輸出や生産が落ち込み、企業心理を冷やす景況感の低下は、特に米国と中国の貿易摩擦などの影響が大きいとされる。中国経済の減速による不透明感が強まってきている。
 中国向けの1~2月の輸出は2兆979億円と、前年同時期の2兆2397億円に比べて6.3%も減少している。電気業界でも中国市場の鈍化による業績の下方修正をしている。英国のEU離脱問題の影響も懸念されている。国内の3月の新車販売は4%減、前年割れは3か月振り。国内の伸び悩みと同時に、主力の米国、中国も頭打ち傾向という。半導体のルネサンスエレクトロニクスは4~6月に国内6工場で平均1か月間、生産を休む計画だ。
 DIの低下は中堅企業・製造業でも見られ、昨年12月調査のプラス17から7ポイント減り、プラス7となった。中小企業・製造業はプラス4と同じくプラス14から8ポイントの低下だ。東日本大震災直後の11年6月調査(11ポイント低下)以来の下げ幅となった。なお、大企業・非製造業は3ポイント低下のプラス21。
 3か月後の先行きは大企業・製造業がプラス8、同・非製造業がプラス20、中堅企業・製造業がプラス3、同・非製造業がプラス12、中小企業・製造業がマイナス2、同・非製造業がプラス5と一層の悪化を見込んでいる。政府が3月20日に発表した月例経済報告では「景気は輸出と生産の一部に弱さが見られるが、緩やかに回復している」とするが、生産は「緩やかに増加している」から「一部に弱さが見られ、おおむね横ばいとなっている」と下方修正しており、動向が一致する。
 10月からの消費税引上げ後の景気減速も懸念材料だ。「令和」への改元、10連休の特需への期待はあるが、景気への影響はほとんどないとの見方もある。旅行業界が例年に比べて前年比で3割増と好調とされるが、一方で工場などが止まり、経済にはマイナス要因、経済効果は期待できないという識者も多い。さらに連休後は、使い過ぎたお金の節約に走り、消費低迷も予測される。全体的には経済指標の悪化が続いており、景気の先行きは暗雲も想定され、的確な政策を期待したい。
(和光同塵)

第6981号

「3・11」に思うこと

 「3・11」という言葉がある。2011年3月11日午後2時46分に起こった東日本大震災である。
 思えば、あれから8年の歳月が過ぎた。大震災が人々にもたらしたもの、深く刻印したものは様々であろう。「時間が止まってしまっている」とは震災に遭遇した人の言葉だが、これは一つの象徴とも言える。
 多くの人にとって、この大震災は時間とともに距離を持ったものになっている。その中には忘却も含まれるが、これは自然なことに属することなのであろう。大震災を遠くの地で聞いた私も、その衝撃は時間とともに薄れゆき、記憶として潜在化していっている。忘却したわけではないが、記憶として残っていく一つの形である。
 ただ、「3・11」が近づくと、想起する様々な催しが開かれ、記憶も現前化する。子供を亡くした父や母の嘆き、母や父を亡くした尽きせぬ思いに心揺さぶられる。こうした中で「3・11」からの復興を願ってきたことを思う。
 被災された人々の苦しみや悲しみの全てを感受できないことは明らかであるが、復旧や復興を願うことで、せめて心を通わせたかったのである。
 「3・11」からの復興はどうなっているのか。テレビの報道で「復興五輪(オリンピック)」と名付けられたことについて、被災地の人々の反応が印象深かった。五輪と復興とは関係がない、それを外してくれという怒りをこらえたような発言が記憶に残った。
 五輪の名分のように付け加えられた復興は、復興を切実に願う人々には欺瞞とまではいかなくても、御都合主義の宣伝に過ぎないと思われるのだろう。本当に復興を願う人たちのところに、復興と言えることが存在していないという苛立ちがあるのだろう。
 復興は大きく言って、震災によって蒙った日常生活の回復、同時に、受けた心的(精神的)打撃(傷)からの回復がある。後者は心的ケアが必要と言われることだ。復興ということにはこの二つの領域の構想が必要なのだが、現状はスムーズには行っていないことを示しているのだろうと思える。
 過去に多くの震災にであっており、復興の歴史を見ている。よく知られているのは関東大震災からの復興である。「3・11」の後に、関東大震災と後藤新平の復興計画(構想)が話題になったのはそのためである。東日本大震災は関東大震災とは違うし、当然にもその復興の構想は違う。それは当たり前のことだが、東日本大震災ではその復興の構想を提起する存在はなかった。
 先にあげた「復興五輪」という構想は、その悲喜劇な姿を示しているとでも言えるのかもしれない。さらに、これまでの震災と違って、東日本大震災には原発震災(福島第一原発事故)が加わっており、復興の道筋というか構想を複雑で難しくしている。福島第一原発の事故は未だに収拾もしていないし、その意味で震災は現在も継続していると言える。
 原発震災についいては、復興の端緒にすらつけないでいるとさえ感じられる。原発政策とも絡んでおり、事を複雑で困難なことにしている。東日本大震災からの復興がこれまでの震災とは違うのは、そこに原発震災があることであれば、原発震災について考え続けていくほかないのである。
(坂田の力)

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