コラム「春秋一話」

 年/月

6913号

銀行の人員や店舗の削減策

 日銀のマイナス金利政策が続くが、銀行の本業である国内貸出しの収益が低迷、メガバンクは相次いで人員や店舗の削減方針を打ち出している。
 「みずほ銀行」は人員を2026年度末までに約1万9000人、店舗を24年度末までに20%ほど削減する。「三菱東京UFJ銀行」は23年度までに9500人分の業務削減、従来型の店舗を削減し無人型店舗を展開。「三井住友銀行」は19年度までに4000人の業務削減、店舗の立地の見直しなどを行う。
 業務量の削減などには人工知能(AI)といったIT技術を導入して、作業をロボット化するという。融資審査までにもAIなどの活用が想定されている。
 9月期の中間決算では本業の収益を示す実質業務純利益は「みずほ」が40・5%減、「三菱UFJ」が13・3%減、「三井住友」が40・4%減となっている。預金金利と貸出金利の利ざやが縮小したことが影響した。地銀も本業の収益を低下させている。金融庁の「金融レポート」も「金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下している」と指摘する。
 全銀協の平野信行会長は「マイナス金利の影響で預貸金利ざやの縮小が継続、法人向けの貸出、住宅ローンも減少を続けている。結果として本業の力を示す業務純益が総じて厳しい」と強調する。
 そして「少子高齢化、人口減少問題があり、既存のビジネスモデルからの転換は共通の課題となっている。AI、RPA(Robotics  Process Automation)を活用した機械化、自動化によるコスト構造の見直しなどを具体化し、実行していくことが必要」との認識を示している。
 人員や店舗の削減は、異次元の金融緩和によってマイナス金利が長期化、貸出しで利やざを稼ぐ、いわば銀行の本業が厳しい状況になっていることが要因。平野会長は「マイナス金利は長期化する可能性があり、人口減が続けば赤字化する店舗が出てきてもおかしくはないと思う」と述べている。
 日本郵政の長門正貢社長は「ゆうちょ銀行、かんぽ生命もメガバンクが打ち出しているような拠点や人員を減らすところには至っていない。貯金、保険とも郵便局を通じてのユニバーサルサービスで、きちんと実行することが使命」と強調しているが、「マイナス金利なので策定中の次期中期経営計画の収益の見通しも大変。対策はしっかり行う」との認識も明らかにしている。
 国内経済と雇用を支える中小企業への影響も懸念される。中小企業への貸出しが減少している。貸出しにはAIを活用しても融資の判断などは、やはり対面の業務が欠かせない。特に、中小企業などでは世代交代期に入り、事業承継が課題となっている。
 「産業の裾野を幅広く支える中堅、中小企業における新しい世代による更なる事業の発展を実現していくためにも、円滑な事業承継が極めて重要だと認識している」(平野会長)。
 異次元の金融緩和は、経済を活性化、デフレ脱却を目的としているが、金融機関の本業の足を引っ張り、日本の大多数を占める中小企業の業績に悪影響を及ぼすとなれば問題だ。
 黒田春彦総裁は最近、金融緩和の長期化により、金融仲介機能が阻害されるリスクについて注視するという発言を繰り返している。異次元の金融緩和の出口を見据える時期に来ているのではないだろうか。(和光同塵)

第6912号

40億個を超えた宅配便

 国土交通省が7月に発表した平成28年度の宅配便取扱実績は40億1861万個、前年と比較して2億7367万個、7.3%の増加となっている。ヤマト運輸の宅急便が46.9%、佐川急便の飛脚宅配便が30.6%、日本郵便のゆうパックが15.9%、西濃運輸のカンガルー便が3.3%、福山通運のフクツー宅配便が3.1%などとなっている。
 宅配便取扱個数の推移を見ると、平成元年度は11億100万個だったが、11年度に23億5700万個と20億個を突破、19年度に32億3200万個、そして28年度に40億個を超えた。ネット通販の急増などが大きな要因とされる。
 これから年末セールやお歳暮、クリスマスの時期となる。12月は1年のうちで最も荷物が集中する。昨年12月は前年同月比10%増の約4億6000万個だった。国土交通省はネット通販は増え続けており、今年は過去最高になるのではと予測している。
 日本郵政の長門正貢社長は11月22日の記者会見で「12月からはお歳暮などの荷物配送が本格化することもあり、ゆうパックの増加が見込まれ、平常月の1.5倍くらいになる。今年はネット通販がますます活況化している」とし、「10月、11月分を見ると油断ならない状況」と、相当数の増加の可能性を示唆した。
 さらに「競合他社の動きもあり一部が我々に流れているのではないかと思われるが、前年に比べ1~2割強の増加を見込んでいる」とし、区分けや配達の体制など例年以上に「万全の体制で臨む」と強調した。
 同時に「必要人数の確保に手を使っているが、マクロの労働需給がタイトになっている。去年と比べても集まり方が遅く、10%強はまだ足りてないと感じる。昨年も派遣会社の力などを借り、労働力確保を図ったが、今年もお願いをすることになるだろう。最終的には本社、支社の社員も必要とあれば、現場に回すという工夫もしたい」と述べている。
 人材の確保が宅配各社にとって大きな課題だが、12月は飲食産業や小売店もアルバイトなどを増やすことが想定され、計画通りに進むか不透明だ。日本郵便のゆうパック担当者は「相当の量が予測される。引受けの抑制も想定しなければならないかもしれない」と緊張感を露わにしている。
 ヤマト運輸は新規の法人客には出荷の1週間前に連絡するように要請する。価格や個数を交渉した上で引受けを決定するという。既存の利用者にも荷物量が急増する場合には事前の連絡を要望している。
 人手不足による長時間の過重な労働が問題となった1年、荷物を減らす総量抑制とともに、コストに見合った適正な料金が課題となり、値上げ実施されている。ゆうパックもサービス改善と合わせて来年3月1日から平均12%の値上げを予定している。
 大口の利用者にも「労働力に対応した相応のフィー(運送費)は、絶えずお願いをしている」と長門社長は語るが、ネット通販に代表されるように、今後も増え続けるであろう宅配便に業界挙げての的確な対応が求められる。
 長時間労働の是正のための適正料金という面では、国民の理解もあるが、消費者も何でもネット通販でという生活様式を見つめ直す必要があるかもしれない。店に行って品番を確認、同じ商品をネットで注文するという人も多い。ネット通販の方が安いこともあるが、リアルな店舗の存在は雇用にも繋がっている。
(和光同塵)

第6911号

社会の混迷と憲法議論

 座間の9人殺害事件の報道を見ながら、生きることの困難さを思う。被害者も、加害者も生きることの困難さというか、混迷感を持っていたのだろうと推察する。この事件のことは、いつか機会あれば自分の考えている所を話したいと思う。
 前回、来年の大河ドラマに決まった西郷隆盛のことを取り上げたが、彼へ多くの人が関心を持つとすれば、今の国家や社会に対する混迷感があるからだと思う。
 明治維新や西郷への関心には明治維新後に、大久保利通→伊藤博文の路線が近代日本にとって好ましい国家や社会を創りだしてきたのか、という思いがある。
 逆に言えば西郷の描いていたビジョンは分かりにくいのだが、もう一つの日本のコースもあったのではないか、という思いもする。歴史にもしもはないわけでこれは夢想かもしれないが、人々にこうした夢想を持たせる、現在の国家や社会に対する深い混迷感があるためではないか。
 よく、閉塞感ということが言われる。石川啄木の「時代閉塞」という言葉以来、何かにつけて出てくる言葉である。これにはまだ、自分が立ち向かう相手というか、大きな意味でも権力の側はそれなりに、ビジョンとして描けている。厚くて、硬い壁としても。今の混迷感は立ち向かう相手も、権力も行方が分からないということであり、閉塞よりももっと進んだ状態ではないか。次々に起こる事件をテレビで見ながら、いろいろな領域で起こっている混迷感を知るが、これは、また、政治においてもある。
 私たちにもう一つの日本のコースを夢想させるのも、それほど深い混迷感が国家や社会についてあるからではないか。過日の衆院総選挙もそのことを解消しなかった。そう思えてならない。
 選挙後の政治はトランプ大統領訪日などがあったが、状況に大きな変化は感じられない。混迷から脱する道を誰しもが考えるとしても、その道はなかなか見出だせない。
 山に登ろうにも、登山口のところでうろついていて、入り口は見えないのである。志のある人たちは入り口を発見する前に仲間喧嘩をやっている。
 そんな状態である。そうした中で憲法の議論が出てきている。これは安倍政権というか、自民党側の憲法改正の提起があり、その動きが具体化してきているのだ。憲法改正には大きな壁がある。それは憲法改正を発議するには衆参の3分の2以上の賛成が必要であり、この壁はなかなか超えられないものとしてある。
 憲法改正は何度も提起されてきたが、この壁を前に頓挫してきた。しかし今、政府与党側がこれを超えられるかもしれないという状態が出てきている。政治的には憲法改正の可能性が近づいている。
 憲法は、広辞苑には国家存立の基本的条件を定めたる根本法とある。憲法は一般法の上位にある根本法であり、それを変えようとすることは大変重いことである。
 これを提起する側には現在の国家や社会の混迷感があり、それを脱したいという意識があるのだと思う。それなしには安易に憲法改正などは提起できないものである。逆に言えば、憲法について考え、議論することは混迷する国家や社会を脱することを考え、議論することに他ならない。
 憲法の改正は政府などの政権担当側からではなく、国民の側から出てくるべきものだ。何故なら、憲法は「国家権力への国民からの命令である」からだ。
 憲法改正の出方には多くの問題(疑問)があるのだが、国家や社会の混迷を脱する道を考え、議論し、発見していくいい機会である。それは、人々のやり方にかかっているのである。
 今度の憲法改正の動きで特徴的なことは、立憲(憲法を創る)とは何か、つまり、根本法を創り出していくとは何か、という議論が出てきていることだ。これを含めて国家とは何か、そのあるべき状態を含めた議論が出てきているということだろう。国家や社会の混迷から脱する道を発見するための契機に憲法議論をすることができる。
 来年は明治維新150年である。「五箇条の誓文」ではないが、「広く世界に知識をもとめ…」、国家や社会の方向を見出す議論にできるのではないか。
(坂田の力)

第6910号

ふるさと納税の新たな取組み

 ふるさとの 山にむかいて言うことなしふるさとの山はありがたきかな
 かにかくに渋民村は恋しかりおもひでの山おもひでの川

 石川啄木でなくとも、故郷は忘れ難いもので、ときとして、その風景が瞼に浮かび上がってくる。故郷を想い、その活性化に少しでも貢献しようと平成20年度に始まったのが「ふるさと納税」。都市部に出てきた人が、生まれ故郷などに寄付し、税収格差を少しでも縮小する狙いがあった。
 しかし、高額な返礼品、金持ち優遇ではとの批判が出てきた。ふるさと納税では寄付額のうち2000円を除いた分が住民税や所得税から差し引かれる。50万円を寄付すると、税金は49万8000円少なくなり、寄付額に応じた返礼品が送られてくる。寄付額の上限は年収で決まるが、高所得者ほど減税の恩恵と自己負担2000円で高額の返礼品を手にすることができる。
 豪華な返礼品の競争など、本来の趣旨から逸脱したかのような状況も出ているが、寄付額は28年度に2844億円に達している。総務省の調査では寄付金の52%が返礼品や送料などに消えているという。総務省は4月、自治体に返礼品の金額を寄付額の3割までに抑えるように通知したが、行政サービスに使用されるべきものが、高所得者への返礼品となるのは納得がいかない人も多いだろう。
 こうした中、新たな動きが出ている。九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市では、被災直後から寄付金が急増した。それも半分は返礼品を求めないという。さらに、高額な返礼品に頼るのではなく、自治体が活用したい事業を限定、その特定の目的に使用するために寄付金を募ることも広がっている。「ガバメントクラウドファンディング型」のふるさと納税だ。
 廃校になった小学校校舎を交流・観光拠点に、低所得者世帯への「こども宅食」、地元ローカル鉄道の維持、貴重な自然の保護、障がい者グループホームづくりなどの多くの例が出ている。超小型人工衛星の打上げを通じ、宇宙産業の振興を図るというものもある。
 総務省も「ガバメントクラウドファンディング型」として、起業や移住、交流の促進などを対象としたものへの支援を来年4月から実施する予定だ。ファンドで集めた寄付金に、自治体が上乗せして事業を行う場合には、特別交付金で支援することで後押しをする。
 野田聖子総務大臣も「返礼品が目的にならないようにしたい」としており、ふるさと納税の本来の趣旨にも近いのではないだろうか。起業支援などはリターンがないが、寄付者には事業報告や見学会の開催、新製品ができた場合の贈呈なども想定されている。
 応援したい事業を選択するふるさと納税の提唱、さらに地域の活性化や暮らしの安心につながることは意義がある。「郵便局のみまもりサービス」を返礼品に採用する自治体も出てきている。都市部の子ども世代と地方の親世代を結ぶのは、ふるさと納税の大きな目的にも叶い、広がりに期待したい。
(和光同塵)

第6909号

読書の秋というのだから…

 まるで戒厳令のような警備の中でのトランプ米大統領の訪日だった。羽田でも成田でもなく、横田基地からのお出ましというのも少し異様な感がした。トランプ大統領に対するもてなしは、「ドナルド」「シンゾー」と呼び合う安倍首相の気持ちを込めたものだったのだろう。
 トランプ大統領の登場後の日米関係を明らかにするものとしても注目していたのだが、緊迫する北朝鮮関係も含めて不安と心配は残ったままで、何とも評しがたい訪日だったと思うのは私だけだろうか。
 相変わらず異変をふくんだ季節の移り変わりの中にあるが、それでも秋は確実にやってくる。今年は長雨にも祟られ、秋があったのだろうか、もう冬だと思わせる日も多かった。衆院選挙からトランプ訪日という政治的行事が重なる中で、恒例のプロ野球の日本シリーズも終わり、そういえば「読書の秋」というのもあったと改めて感じる。
 秋の夜長をというわけでないが、ミッドナイト活用法というのが流行っているらしい。が、活字離れができない私には「読書の秋」ということが頭を離れない。本の売れ行きは芳しくないらしく、書店が閉店したというニュースに接すると寂しい思いをするが、最近はコーヒーの飲める書店に結構足を運んでいる。
 秋の夜長を鳴き通す虫の声などは段々と遠のいている昨今だが、せめて読書はと思う。でも、心身ともども忙しい日々の中では、読書の時間を創り出すのが難しくなっているのだろうと思う。それが、現在という時代だろうか。
 過日、本屋を覗いたら西郷隆盛に関する本がいろいろと出版されているのに驚いた。驚く方がおかしので、来年のNHK大河ドラマ「西郷どん」に因んで、関連の本がドッと売り出されるいつもの光景に過ぎないのだろう。ただ、私はNHK大河ドラマとは関係なく、以前から西郷隆盛のことが気になって、心の隅に彼への関心を置いてきた。
例えば、田中角栄に関する本が書店の一角を占めるような時期があった。角栄本と呼ばれるものの一種のブームがあり、石原慎太郎の『天才』がベストセラーになった。私はこの時、田中角栄のことから西郷隆盛のことをいろいろと連想した。
 大きく言えばアジア型の政治家に対する関心として、田中角栄が西郷隆盛のことを思い浮かばせてくれたのだ。この種の事も含めて西郷に関する本は目につけば手に入れてきた。
 西郷隆盛は謎に満ちた存在であり、それだけ魅かれるところのある不思議な存在である。私は彼について書かれた多くの本の全てというわけではないが、多くに目を通してはきた。それでも、その謎は解けないし、こちらから問いかけるものが増え続ける稀有な存在であると思っている。
 そして、そこには時代の混迷があるのかもしれない。政治や社会はいつの時代でも混沌としていて、混迷状態にある。それが常態であり、明瞭な展望やビジョンなど持てるものではないとも言えるだろう。 
 だが、人は現在から未来についての構想やビジョンを持ちたいと欲求するものだし、それを打ち消すことはできない。そして、その場合には過去を知ることで、未来が見出されるということがある。歴史にということだ。私たちが歴史に向かうのはそのためである。
 西郷に対する興味は、明治維新という時代に対する興味でもあるが、私たちはその探索によって未来を発見しようとするのだと思う。西郷が生きていたら日本の近代の歴史はどうなっていただろうと想像することは、私たちの未来を想像することでもある。過去を探索しながら私たちは未来を探索している。
 読書というのは幅広いもので、様々な領域があるように、また、それぞれの流儀がある。歴史への旅というのもその一つに過ぎないし、それぞれの流儀で楽しめばいいだろう。ただ、「読書の時間」というのを日常の中でスリップさせることが必要なだけだ。
 「読書の秋」というと、少し時代ずれしつつあるが、ネット時代であっても読書という時間を創る契機として、大いに利用したいものだと思う。
(坂田の力)

第6908号

地方創生と郵便局の役割

 東京一極集中を是正、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした地方創生が課題となっている。安定した雇用創出、人口の流入、若い世代の結婚や出産、子育ての支援などで地域の活性化と好循環の維持を目指すとしている。
 全国郵便局長会は「地方創生は創業以来、常に実践してきたもの。地域に密着した我々でなければこそできないことがある。揺るぎない信念と断固たる決意で地方創生の担い手になろう」(長谷川英晴理事)、「地方創生、郵便局ネットワークの維持・将来像は最重要課題」(末武晃理事)と、積極的に取り組んでいる。
 全国で行われている様々な活動は、地方創生施策発表会として共有化しているが、「地域あっての郵便局」と、身を粉にして地域の活性化に尽力している郵便局長の姿が浮かび上がってくる。東京一極集中であっても「地方があって東京がある」との思いで、地方の活性化に貢献している郵便局長もいる。
 高齢化率が32%の奄美大島に、「もらい忘れ年金」の請求を得意とする社会保険労務士を連れて訪問、局長会や老人会と協力して「奄美の高齢者の年金を救う会」を発足させ、年金相談会を開いている郵便局長がいる。戦後、アメリカの統治下にあり、その間に本土に“密航”して働いていた人も多いという。
 年金相談会で請求漏れの年金が見つかったら、郵便局での受け取りに、一時金が入ったら定額貯金にしてもらっているが、それは余談で、これまでに見つかった「もらい忘れ年金」は70件以上にもなり、たいへん感謝されている。また、特産品の東京での販売にも力を尽くしている。まさに「東京での知識や人脈を地方の活性化に生かす」方策は、数多くあるだろう。
 北海道由仁町では、郵政OBと協力し「郵政事業協力会」を立ち上げた。郵便局への意見要望や支援、自治体との連携を行う。こうした中、役場の支所が廃止された地区で、証明書交付だけでなく、全ての業務を郵便局が受託することになった。文書収受事務という。
 役場に提出しなければならない書類などを郵便局で受け付け、役場に届けるサービス。由仁町の松村論町長は「地域の郵便局はなくてはならない存在。行政にとってもたいへんありがたい」と語る。長野県泰阜村でも郵便局への行政関係の業務委託を要望している。
 石川県では移住・定住者の支援を行っている。郵便局長がサポーターとなり、地域に馴染み、生活が安定するよう寄り添って支援する。静岡県富士宮市では、自治体や企業と協力、農地の無償貸与や空き家の活用などで、移住しやすい環境の整備に取り組んでいる。
 千葉県勝浦市の明治から続く直系5代目という郵便局長は、消防団員など数多くの役職を務め、地域に密着、特産品の開発などで活性化を行っている。いずれも、郵便局、そして郵便局長のネットワークの広がり、強靭さが大きな役割を果たしている。
 この郵便局ネットワークの将来展望について、日本郵便は議論を深め、次期中期経営計画にも盛り込む予定だ。郵便局ネットワークの活用とユニバーサルサービスの確保を如何にするか、そして地方創生にどのように貢献するかは注目される。地方創生を担う部署も本社に設置された。
 柘植芳文参議院議員は「自治体と郵便局の業務提携を進めるべきだ。ビジネスとしてウィンウィンの関係を構築する。郵便局で自治体のサービスを行うことで、2名局から4名局へと規模が大きくなり雇用も生まれる。郵便局は絶対に地域に必要だとの価値観がより高まる」と強調する。
 公的な使命を持つ郵便局を地域の核として、地方創生の活動の広がりが望まれるが、自治体との連携は不可欠だ。地方創生推進交付金、地方創生加速化交付金など新型交付金の活用も行うことで、郵便局もより取り組みやすくなるだろう。
 地方創生について、全国郵便局長会は各地方会の代表を集めて11月18日に発表会を開くが、その内容に、改めて注目したい。
(和光同塵)

第6907号

今週はお休みです。

今週はお休みです。

第6906号

地域に欠かせない郵便局

 2007年(平成19)10月1日、郵政事業が民営化され、日本郵政公社から日本郵政グループに移行し10年となった。その前、2005年7月5日、衆議院でわずか5票差で郵政民営化関連法案が可決されたものの8月8日には参議院で否決された。小泉純一郎首相は賛否を問うと衆議院を解散、総選挙では反対した議員に“刺客”を送るなどの話題づくりもあって自民党が勝利、いわば郵政選挙と言われるものだ。10月14日に民営化法は成立した。この一連の出来事を「官から民へ」の言い回しと共に記憶している人も多いだろう。
 「民営化でサービスが良くなる」との言葉とは裏腹に「郵便局のお客さま離れが進んだ」と指摘された。分社化の弊害などを見直すため2012年4月27日に改正郵政民営化法が成立、そして5年の歳月が流れた。
 2015年11月4日には日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が東証1部に上場している。この10年を振り返ると、郵政事業にとってはまさに激動と言える時代だった。
 「民営化のことはもう済んだこと、いつまで言っていても仕方ない。それを前提に新たな道を進むべきだ」との声があるのも事実だ。ただ、あの嵐のような状況を、「再び郵政事業を国民の手に」と見直しまでの道のりを、そして上場となった今日、10年の歩みを再認識して新たな出発を期すことも意義がある。
 民営化当初は現場の郵便局が大きく混乱。現場を預かり地域に密着した活動を続けてきた局長も10年が過ぎれば世代交代が進み、当時を知る人も少なくなってくる。
 奇しくも上場に道筋をつけた日本郵政の西室泰三前社長死去のニュースが飛び込んできた。
 郵政民営化委員長の2012年のインタビューでは「山梨県都留市の出身、特定郵便局長として働いてきた親戚もいる。改正民営化法によって民営化の定義が大きく変わった。郵政グループの方向性、ビジネスモデルを明確にすべきだ。守るべきは(国民への)サービスの質」と強調していたことが印象に残る。
 2013年、日本郵政の社長に就任した折には「三事業一体のユニバーサルサービスが維持できるよう郵便局ネットワークを強化する。民営化の本来の趣旨は、郵便局ネットワークを維持し、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も含めて郵政グループ全体が発展していくこと。郵政グループは日本社会の基盤だ」と話していた。
 郵政グループは次の10年へ向けて新たな旅立ちが始まった。2021年は1871年(明治4)の郵便創業から150周年となる。改めて公益性・地域性を発揮、郵便局を通じて金融を含めたユニバーサルサービスを一体的に提供という改正民営化法の趣旨を活かした施策が求められる。日本郵政の長門正貢社長も「全国にある2万4000の郵便局ネットワークがあるからこそ、郵政グループが高い評価を受けている」と語る。
 郵便局ネットワークの将来像については、日本郵便が検討を進めている。過疎地などの郵便局は地域にとってなくてはならない存在との切実な声がある。将来的にも“地域の砦”として、住民生活を支える役割であり続けることが期待されている。その郵便局ネットワークを維持していくためにも如何に活用するかが課題。三事業以外にも新たな役割を担っていくことが求められるだろう。
 10月11日に開かれた郵政民営化委員会でも「苦労しながら過疎地も郵便局ネットワークを維持していく点を評価。コンビニがない地域は、その役割と同時にコミュニティセンターとしても機能できるのでは」との意見があった。10月23日には群馬県多野郡上野村を視察する。「ユニバーサルサービスを維持する上で、様々な困難があると思われる地域の郵便局を見て総合的な検証を行う」とした。郵便局ネットワークの維持に的確な施策の展開を期待したい。
(麦秀の嘆)

第6904・6905合併号

今週はお休みです。

今週はお休みです。

第6903号

65歳以上が過去最多を更新

 日本の総人口は1億2671万人、昨年(1億2692万人)と比べると21万人の減少となった一方で、65歳以上の高齢者は3514万人と昨年より57万人の増加(9月15日現在)、総人口に占める割合も27.7%となった。いずれも過去最高を更新した。
 総務省が9月17日に公表したが、高齢者人口は昭和25年以降、一貫して増加し、平成24年に3000万人を超えている。人口減少社会、少子高齢化の進展傾向がますます強まっている。
 高齢者の男女別では、男性が1525万人で女性は1988万人、女性が463万人多い。男女別の人口に占める割合は男性が24.7%、女性が30.6%。年齢別では70歳以上が2519万人(19.9%)、75歳以上が1747万人(13.8%)、80歳以上が1074万人(8.5%)、90歳以上が206万人(1.6%)。90歳以上は初めて200万人を超えた。
 また、厚生労働省は9月15日に100歳以上は6万7824人と発表した。昨年より2132人増え、47年連続の増加だ。女性が87.9%を占めている。今年度中に100歳になる人も3万2097人と過去最高の見込みだ。
 政府はお祝い状と記念品として「銀杯」を贈るが、経費節減として昨年から純銀製を合金に銀メッキしたものに変えている。最高齢者は鹿児島県喜界町の田島ナビさんで117歳。男性は北海道足寄町の野中正造さんで112歳。
 高齢者の増加は「医療技術の進歩などが影響している」と厚労省は見ているが、今後も高齢者の占める割合は増え続けるだろう。医療や介護などが大きな課題だ。現在、懸念されているのが、戦後の第1次ベビーブームの時代(昭和22~24年)に生まれた「団塊の世代」が75歳以上となる2025年だ。「2025年問題」とも言われ、国民の5人に1人が後期高齢者となる。現在、要支援・要介護認定者の割合は、75~79歳で14.0%、80~84歳で29.9%、85歳以上では60.3%。75歳を過ぎると、急速に認定者が増える。
 2025年には医療、介護を必要とする人が多くなり、社会保障制度の在り方が課題とされる。介護や看護分野の人材不足もあり、介護を受けたくても受けられない“介護難民”の発生も懸念されている。現在でも公的な養護施設への入居待ちという事態が発生している。
 高齢者の増加は実に喜ばしい限りだが、それを世代間の対立にしてはならない。長寿社会を祝うと同時に、子育て世代への支援を含めて、社会福祉の維持に知恵とお金を使って欲しい。公平な税の負担と真に求められる分野への的確な予算の使い方を今一度に考えることだ。
 主要国における高齢者の就業率は日本が22.3%で最も高い。アメリカ18.6%、カナダ13.1%、ドイツ5.6%、イタリア3.9%、フランス2.8%。健康のために働いているという側面もあるだろうが、働かなければ食べていけないこともある。高齢者、子育て世代を問わず、安心して生活できる社会であることを願う。
(和光同塵)

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