コラム「春秋一話」

 年/月

第6871号

ペッパー君は優秀な社員

 「月給5万5000円で働きます。」というキャッチコピーで紹介されているのはソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)君」。受付や案内から販売促進、介護施設でのレクリエーションまでマルチにこなす。中国語や英語も話す優秀なスタッフとして現在、国内の約2000社で導入されている。アプリやコンピュータを自由に組み合わせることができ、企業の使い方も様々。外国人観光客のコンシェルジュやお年寄りの話し相手、万引き防止の監視、バーテンとしても働いている。
 自然言語を理解・学習し人間の意思決定を支援する「ワトソン」(IBM)やスマート対話システム「TAISHI」(リクルートテクノロジーズ)とつなぐことで、文脈を理解し自然な会話をすることもできる。金融系での導入も増えており、ローンや保険業務のアシスタントとして使っている企業もある。文脈を理解しているため、会話の途中で「金利は?」と質問した時に、定期預金や国債など金利が多数ある中で、住宅ローンの会話をしていれば、その金利を答えてくれる。ワトソンなら大量の情報の中から自ら適切なデータを選び、胸にぶら下がっている画面に映し出してくれる。
 「AI」「IoT」「ロボット」。この3つのキーワードは、次世代のビジネスには欠かせない。世界の企業が開発にしのぎを削っている。日本が得意としているのはロボット。AIの導入は遅れ気味だったが、ロボットとの連携でその活用が広がっている。ソフトバンクロボティクスグループの冨澤文秀社長は「世界では戦いが始まっている。ロボットで日本がリードしているのは、お客さまのニーズを把握し、改良し続けているから。研究所ではできないことだ。良いロボットを作り、この分野で勝ちたい」と世界のペッパー君を目指す。台湾や中国からも引き合いがあるという。
 「ペッパーワールド2017」で、ヤマダ電機の一宮忠男副会長(CEO)は「小売の要はマーケティングデータの活用にある。ワンツーワンマーケティングツールとしてのペッパー君の存在は大きい」と話す。ドライヤーなどの非接客商品(積極的には説明をしない商品)を紹介させ、クーポンを発行させたところ普段の3倍の売上げ。「商品の良さをアピールすれば売れる。小売りの原点を見る思いがした」(一宮副会長)。
 ソフトバンクの店舗ではソフトバンクカードの勧誘にペッパー君を使ったところ、契約数が約2倍になった。ペッパー君を店先に置き、足を止めた人に簡単なアンケートを行い、粗品のプレゼントで店内に誘導、販売員が接客に当たる。店頭で顧客の通信サービスの利用状況や意向などが分かっているので、スムーズな接客ができる。ペッパー君と営業スタッフががっちりタッグを組んで売上げを伸ばしている。
 ある介護施設ではペッパー君が踊ってデイサービスの健康体操の指導員の役割を担っている。顔認識機能もあるので、会話は本人の名前で呼びかける。お年寄りはとても親近感を抱くという。拒否が強く引きこもりがちだったお年寄りが、ペッパー君のレクリエーションには積極的に参加した。「孫のようにかわいい」とお礼の手紙まで書いてきたという。施設では1日のうち2~3時間は話し相手をしているそうだ。
 明治安田生命保険では昨年秋に110台を導入し、全国の支社に置いた。相続セミナーの講師や司会、Jリーグのイベントにも参加させている。社員のタブレットとも連動させているので、ペッパー君を通じて必要なデータを呼び出すことができ、顧客一人ひとりに寄り添う保険の提案にも役立っている。今後は手続きのサポート、無人店舗での案内、知識の継承に活用する計画だ。
 ペッパー君は2014年に生まれて2歳程。人間ならよちよち歩きだが、毎年、成長(バージョンアップ)している。今年はSLAMという機能をプラスし、地図とセンサーでオフィスやショールームの中を自ら動いて案内できるようになる。「AIに仕事を奪われる」と言われているが、低賃金で疲れ知らず、業務成果を上げているペッパー君の導入事例を見ていると、ロボットが人に代わって知的な仕事もする時代を予感させる。日々進化しているロボットやAI。人の能力もバージョンアップしなければ、生き残れないかもしれない。(招福招き猫)

第6870号

受動喫煙防止対策法案

 忘れ来し煙草を思ふゆけどゆけど山なほ遠き雪の野の汽車(石川啄木「一握の砂」)
 たばこは人生の小道具、嗜好品として親しまれ、歌にも詠まれてきた。2月9日に生誕150年を迎えた夏目漱石も愛煙していたという(漱石の誕生日は旧暦の慶応3年1月5日。太陽暦では1867年2月9日に当たる)。
 「吾輩ハ猫デアル」の作中でも苦沙弥先生が吸う姿が描写されており、その銘柄は「朝日」。苦沙弥先生のモデルは漱石自身とされ、彼も「朝日」を好んだ。
 たばこはナス科のタバコ属の植物を原料とし、起源はアメリカ大陸とされる。16世紀初めには数種が栽培され、コロンブスの大航海を経て、世界に広まった。日本にも渡来し、移りゆく時代の中で人々の生活や文化、風俗と深く関わってきた。
 愛煙家にとっては精神安定剤の役目も果たしているだろうが、年々肩身は狭くなっている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、受動喫煙対策を強化する法案が検討されている。
 健康増進法改正案で、飲食店など建物内は原則禁煙とされる。延床面積が30平方メートル以下の小規模店で主に酒類を提供するバーなどは例外とするが、これまでの努力義務から罰則として過料を科す罰則規定も設けられ、今国会に提出が予定されている。
 特に未成年者や患者らが主に利用する学校や病院では、より厳しい敷地内全面禁煙も想定されている。塩崎恭久厚生労働大臣は「受動喫煙のない社会に向けて、必要な準備を行うということで理解をいただきたい」と強調している。
 意に反して他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の防止は、たばこを吸わない人にとっては健康増進の面からも当然との判断だろう。
 近年、五輪開催国は罰則付きの措置を講じているとして「大きな世界の流れがある中で、おもてなしの気持ちとして受動喫煙のない国に変えていかなければならない使命がある」と塩崎厚生労働大臣。
 肺がんとの因果関係も医学的に確立されており、たばこによる医療費や火災などの社会的損失は、年間2兆円に及ぶとの指摘もある。厚生労働省の調査による成人喫煙率は19.3%(男性32.2%、女性6.2%)で年々減少している。1964年の前回の東京オリンピックの頃は男性80%、女性15%を超えていたことを思うと随分と低下した。
 2月6日に日本たばこ産業(JT)は決算短信を明らかにしたが、今年の国内のたばこ販売数は960億本と予想した。2016年の1062億本に比べ9.6%の減少だ。
 1957年に1000億本を超え、64年は1608億本、その後は96年の3438億本をピークに減少傾向となり、再び1000億本を割り込むこととなる。人口減少や喫煙率の低下、煙を出さない新型の登場などが影響すると見る。
 煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし(寺山修司「空には本」)
 酒を飲み紫煙を燻(くゆ)らし「高額納税者だ」と“豪語”する時代は、もう終わったのだろう。寒空にベランダや庭でしか吸えないホタル族との言葉が生まれて久しい。
 家の中では換気扇の下でも吸えない厳しい目があり、禁煙に挑戦して何度も挫折を味わった吾人も多いだろう。いずれにしろ飲み過ぎ吸い過ぎには、くれぐれも注意することが健康にとっては肝要だ。
(和光同塵)

第6869号

100万人を割った出生数

 2016年に生まれた赤ちゃんが100万人を下回り、98万1000人となった。厚生労働省が明らかにした人口動態統計の年間推計結果だ。人口1000人に対しての出生率は7.8。前年(2015年の確定値100万5677人、出生率8.0)に比べ2万5000人の減少。  
 死亡数は129万6000人、人口1000人に対する死亡率は10.3と推計している。こちらは前年(129万444人、10.3)から6000人増えた。32秒に1人生まれ、24秒に1人が死亡する計算だ。人口減少が進む。出生数が100万人を割ったのは統計を開始してから初めてだという。
 戦後の1947(昭和22)年から49年にかけて第1次ベビーブームが起こった。兵士の帰還などが要因で、多くの子供が誕生した。出生数は47年267万8792人、48年268万1624人、49年269万6638人。49年は戦後最多の出生数になっている。この間に800万人超が生まれた。いわば団塊の世代だ。
 団塊の世代が親となる71年から74年にかけては第2次ベビーブームで年間200万人が生まれた。71年200万973人、72年203万8682人、73年209万1983人、74年202万9989人。団塊ジュニアと呼ばれる。
 しかし、この出生数の増加は第1次ベビーブームと異なり合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)の増加が伴わなかったこともあり、その後の少子化は一層進み、第3次ベビーブームは幻となった。
 合計特殊出生率は団塊の世代のころは4.32~4.54と高い値を示したが、団塊ジュニアの時代は2.05~2.16。その後も下がり続けた。人口維持には2.07が必要とされるが、89年には66年の丙午の数値1.58を下回る1.57となった。“1.57ショック”だ。2015年には94年以来の最高値となる1.45となったが、少子化に歯止めがかかったとは言えないだろう。
 2016年の婚姻件数は62万1000組、離婚件数は21万7000組。51秒に1組の結婚、2分26秒に1組の離婚となっている。第1次ベビーブームの婚姻件数は47年93万4170組、48年95万3999組、49年84万2170組。第2次ベビーブームでは71年109万1229組、72年109万9984組、73年107万1923組、74年100万455組。 その後は低下傾向に変わりがない。
 生涯未婚率は70年代までは極めて少なく2%程度だったとされる。70~80年でも5%未満、2000年でも10%未満だったが、2010年には男性で20%を超え、女性も11%になった。今後もさらに増加するのではないかと見られている。
 非正規雇用の拡大などの経済的理由で、結婚しないのではなく、結婚できないと言われる。団塊の世代もこれから続々と70歳になる。少子高齢化社会の進展に如何に歯止めをかけるか、若い人たちの雇用の安定、働く人の所得拡大、子供を育てやすい環境の整備、地域の活性化などが政治に課せられた大きな役割だろう。なお、2016年の主な死因は1位のがんが37万4000人、2位が心疾患19万3000人、3位は肺炎11万4000人、4位は脳血管疾患10万7000人。寒い季節がまだ続く。身体をいたわってください。
(和光同塵)

第6868号

予測不能の超大国

 ある新聞は大きな見出しで「予測不能の超大国」という見出しを打っていた。しかも1面である。トランプ新政権についてだが、アメリカを、世界を、どこに導こうとしているのか不安だということがある。トランプ大統領の既得権保持者や支配層への激しい攻撃は、どこか革命を思わせるところがあってドッキリさせられるが、マイノリティ(少数者)に対する攻撃もあり、人々を不安にするところも少なくない。
 アメリカという超大国が世界に与える影響も甚大であることから不安も大きい。1月20日に大統領に就任した。就任式は歓迎される一方で、大規模な抗議のデモもあるという波乱に富んだものだったが、それだけ人々の関心は高いのだろう。
 就任演説は各新聞に掲載されている。「今日の式典には特別な意味がある。単に政権交代が実現し、権力が政党から別の政党へと移っただけではない。権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還するのだ」。国民主権の回復という極めて民主主義的な発言のように見える。国民主権に対して国家主権を強調するのが右派の通例であり、ある意味でトランプ大統領もそう見られていたのだから、おやと思わせる。
 しかし、これまでの言動からは、この場合の国民は白人中心のイメージであり、移民問題や人種問題を含めて、国民なるものが問われてきた現在の問題を無視しているように思える。これは後に続くアメリカ第一(ファースト)ということにも関わるが、多様性の承認ということに反するように思う。
 白人中心のアメリカと多様性のアメリカということは、アメリカ国家やアメリカの民主主義の根幹に関わる問題だが、彼の国民やアメリカという概念の中にはマイノリティへの敬意や理解が薄くはないだろうか。アメリカの保守思想として白人第一主義は根強いだろうが疑問を禁じえない。イギリスが移民問題でEUを離脱し自国第一を掲げていることも同じ構図である。
 国民概念やイメージを過去に後戻りさせる対応として世界史の課題に逆らっていないだろうか。過去何十年間にわたってアメリカは他国を豊かにしている一方で、我々の富や強さは自国の地平のかなたに消え去った、と言う。1970年代の後半から言われてきたアメリカの衰退であるが、この主張は一方的で一面的に見える。
 「何十年もの間、我々は米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた。米軍の嘆かわしい劣化を招いた一方で、他国の軍に資金援助をしてきた。自国の国境防衛はおろそかにしながら、他国の国境を守ってきた」。かつて世界の工場と呼ばれる製造業の隆盛があり、重厚長大と呼ばれる産業が世界を牽引していた。
 私たちも栄光を極めたアメリカ産業が輝いていた時代を知っている。マリリン・モンローに象徴される映画(文化)もこれらを背景にしていた。こうした産業や文化に支えられたアメリカ第一は、誰もが認めていたが、確かにアメリカ産業の衰退は荒廃としてあり、貧窮化するアメリカだ。そこで、保護貿易も含めた自国産業保護での再生を構想する。雇用(仕事)の創出も含めて政策の柱として打ち出す。
ここは興味深いところだが、現代の産業構造についての錯誤が横たわっているように思える。自動車産業などを呼び戻す政策が中心となっており、日本との関係でも自動車をめぐる貿易摩擦が再燃する気配だが、自由貿易という歴史を逆回転させるような試みが成功するだろうか。
 他国援助に狂奔している間に、アメリカ軍は劣化したと述べていることも含めた外交・軍事政策についても興味深い。9・11以降のことに、とりわけ反テロ戦争をどう処理するのかが語られていないことが気になるが、ここは日本の自衛隊の海外派遣とも関わりがあり注視していきたい。いずれにしても「予測不能」なことが出てくることは十二分に考えられ、面白いと言っては問題だが気の抜けない時代に入った。
(坂田の力)

第6867号

「そばにある」郵便局の使命

 郵便局にキオスク端末――。
 今更何を言っているのかと思われるかもしれないが、自治体ごとに選択する郵便局の行政サービスは全国約1700市町村のうち170ほどと意外に少ない。一方、コンビニエンスストアの行政サービスを選択する市町村は2014(平成26)年末時点に100程度だったものが、16年末には約300まで広がった。
 利便性の鍵を握っていたのは、コンビニに置かれるマルチコピー機などのキオスク端末。各種証明書を簡易な手続きで取得できる。営業時間の違いもあり、郵便局窓口より機械の方が楽とはさみしい気もするが、こうした自治体との連携に郵便局は若干出遅れ感もある。
 全国郵便局長会(青木進会長)は現在、各自治体に新たなビジネスモデルのイメージを伝えようと動き出した。
 主体となるのはタブレットを使った郵便局のみまわりサービスや健康増進サービスだが、そこには同時期に始まり、7月に政府のマイナポータル(マイナンバー制度で個人ごとに設けるポータルサイト。行政保有の特定個人情報や、やり取り記録、自分への通知などをインターネットで閲覧できる)とも連動するデジタルメッセージサービスなどもある。こうしたサービスは、企業版法人ポータルとも連動できる可能性を秘めている。
 タブレットが確実に収益を生み出す起爆剤となり得るか、が注目される。過去における郵便局のみまもりサービスは、ボランタリー的な要素が強かった。しかし、今は確実な収益を得なければならない。
 今回、本格施行されるタブレットを使ったみまもりサービスは人員の確保など課題は多いが、実はそのタブレット、数年前から注目されるフィンテック(金融とITの融合)のツールにもなり得る。
 「日本で最もフィンテックに力を発揮できるのは日本郵政グループだと思う。理由は、金融の決済機能を持ち、保険機能や物を運ぶ機能も持っている。加えて、タブレットを活用した様々なサービスが用意された。資金力と日本で最大のネットワークを持つ郵政グループがフィンテックの先陣を切ってほしい」。昨年10月27日の財政金融委員会で民進党の藤末健三参院議員はこう発言した。
 パソコンやスマートフォンを使って支払などの銀行業務ができれば、大規模な銀行窓口は必要なくなる。ただ、困った時の相談窓口が今まで以上に求められる。そうした時代に、地域住民の「そばにある」郵便局はちょうどよい。
 タブレットで何か頼みたい時も「そばにある」郵便局がサポート。既にグループ内で密にフィンテックを検討している噂も出ている。トータル生活サポート企業を目指すグループにとって、その将来性は見逃せない模様だ。
 金融庁の金融審議会金融制度ワーキンググループ(WG)も12月27日、「オープン・イノベーションに向けた制度整備」と題したフィンテックの報告書をまとめた。電子決済等代行事業者を巡る状況や銀行代理業制度上の課題が記されている。
 フィンテックの技術を郵便局が活かしていくためには、簡易局だけではなく、金融業務を提供できる直営局の存在が欠かせない。
 タブレットはもちろん金融のみが関係するわけではないが、今後のグループにとって、三事業稼ぎ頭のゆうちょ銀行とかんぽ生命を所管する金融庁と、三事業一体を継続するための株式構造を握る財務省の存在が重要性を増してくる。
 金融庁は「森信親長官は就任以来『これまでの管理監督は違っていた』と自ら語り、新しい金融行政に大きく舵を切っている」と話す。
 森長官が強調する〝顧客目線〟を各地域でどう実現していけるのか。約40万人が同じ思いでチーム力を発揮すれば、公益性と地域性の郵便局らしさを取り戻しながらきっと収益も向上できる。(涓埃之功)

第6867号

「そばにある」郵便局の使命

 郵便局にキオスク端末――。


 今更何を言っているのかと思われるかもしれないが、自治体ごとに選択する郵便局の行政サービスは全国約1700市町村のうち170ほどと意外に少ない。一方、コンビニエンスストアの行政サービスを選択する市町村は2014(平成26)年末時点に100程度だったものが、16年末には約300まで広がった。


 利便性の鍵を握っていたのは、コンビニに置かれるマルチコピー機などのキオスク端末。各種証明書を簡易な手続きで取得できる。営業時間の違いもあり、郵便局窓口より機械の方が楽とはさみしい気もするが、こうした自治体との連携に郵便局は若干出遅れ感もある。


 全国郵便局長会(青木進会長)は現在、各自治体に新たなビジネスモデルのイメージを伝えようと動き出した。


 主体となるのはタブレットを使った郵便局のみまわりサービスや健康増進サービスだが、そこには同時期に始まり、7月に政府のマイナポータル(マイナンバー制度で個人ごとに設けるポータルサイト。行政保有の特定個人情報や、やり取り記録、自分への通知などをインターネットで閲覧できる)とも連動するデジタルメッセージサービスなどもある。こうしたサービスは、企業版法人ポータルとも連動できる可能性を秘めている。


 タブレットが確実に収益を生み出す起爆剤となり得るか、が注目される。過去における郵便局のみまもりサービスは、ボランタリー的な要素が強かった。しかし、今は確実な収益を得なければならない。


 今回、本格施行されるタブレットを使ったみまもりサービスは人員の確保など課題は多いが、実はそのタブレット、数年前から注目されるフィンテック(金融とITの融合)のツールにもなり得る。


 「日本で最もフィンテックに力を発揮できるのは日本郵政グループだと思う。理由は、金融の決済機能を持ち、保険機能や物を運ぶ機能も持っている。加えて、タブレットを活用した様々なサービスが用意された。資金力と日本で最大のネットワークを持つ郵政グループがフィンテックの先陣を切ってほしい」。昨年10月27日の財政金融委員会で民進党の藤末健三参院議員はこう発言した。


 パソコンやスマートフォンを使って支払などの銀行業務ができれば、大規模な銀行窓口は必要なくなる。ただ、困った時の相談窓口が今まで以上に求められる。そうした時代に、地域住民の「そばにある」郵便局はちょうどよい。


 タブレットで何か頼みたい時も「そばにある」郵便局がサポート。既にグループ内で密にフィンテックを検討している噂も出ている。トータル生活サポート企業を目指すグループにとって、その将来性は見逃せない模様だ。


 金融庁の金融審議会金融制度ワーキンググループ(WG)も12月27日、「オープン・イノベーションに向けた制度整備」と題したフィンテックの報告書をまとめた。電子決済等代行事業者を巡る状況や銀行代理業制度上の課題が記されている。


 フィンテックの技術を郵便局が活かしていくためには、簡易局だけではなく、金融業務を提供できる直営局の存在が欠かせない。


 タブレットはもちろん金融のみが関係するわけではないが、今後のグループにとって、三事業稼ぎ頭のゆうちょ銀行とかんぽ生命を所管する金融庁と、三事業一体を継続するための株式構造を握る財務省の存在が重要性を増してくる。


 金融庁は「森信親長官は就任以来『これまでの管理監督は違っていた』と自ら語り、新しい金融行政に大きく舵を切っている」と話す。



 森長官が強調する〝顧客目線〟を各地域でどう実現していけるのか。約40万人が同じ思いでチーム力を発揮すれば、公益性と地域性の郵便局らしさを取り戻しながらきっと収益も向上できる。(涓埃之功)

第6867号

「そばにある」郵便局の使命

 郵便局にキオスク端末――。
 今更何を言っているのかと思われるかもしれないが、自治体ごとに選択する郵便局の行政サービスは全国約1700市町村のうち170ほどと意外に少ない。一方、コンビニエンスストアの行政サービスを選択する市町村は2014(平成26)年末時点に100程度だったものが、16年末には約300まで広がった。
 利便性の鍵を握っていたのは、コンビニに置かれるマルチコピー機などのキオスク端末。各種証明書を簡易な手続きで取得できる。営業時間の違いもあり、郵便局窓口より機械の方が楽とはさみしい気もするが、こうした自治体との連携に郵便局は若干出遅れ感もある。
 全国郵便局長会(青木進会長)は現在、各自治体に新たなビジネスモデルのイメージを伝えようと動き出した。
 主体となるのはタブレットを使った郵便局のみまわりサービスや健康増進サービスだが、そこには同時期に始まり、7月に政府のマイナポータル(マイナンバー制度で個人ごとに設けるポータルサイト。行政保有の特定個人情報や、やり取り記録、自分への通知などをインターネットで閲覧できる)とも連動するデジタルメッセージサービスなどもある。こうしたサービスは、企業版法人ポータルとも連動できる可能性を秘めている。
 タブレットが確実に収益を生み出す起爆剤となり得るか、が注目される。過去における郵便局のみまもりサービスは、ボランタリー的な要素が強かった。しかし、今は確実な収益を得なければならない。
 今回、本格施行されるタブレットを使ったみまもりサービスは人員の確保など課題は多いが、実はそのタブレット、数年前から注目されるフィンテック(金融とITの融合)のツールにもなり得る。
 「日本で最もフィンテックに力を発揮できるのは日本郵政グループだと思う。理由は、金融の決済機能を持ち、保険機能や物を運ぶ機能も持っている。加えて、タブレットを活用した様々なサービスが用意された。資金力と日本で最大のネットワークを持つ郵政グループがフィンテックの先陣を切ってほしい」。昨年10月27日の財政金融委員会で民進党の藤末健三参院議員はこう発言した。
 パソコンやスマートフォンを使って支払などの銀行業務ができれば、大規模な銀行窓口は必要なくなる。ただ、困った時の相談窓口が今まで以上に求められる。そうした時代に、地域住民の「そばにある」郵便局はちょうどよい。
 タブレットで何か頼みたい時も「そばにある」郵便局がサポート。既にグループ内で密にフィンテックを検討している噂も出ている。トータル生活サポート企業を目指すグループにとって、その将来性は見逃せない模様だ。
 金融庁の金融審議会金融制度ワーキンググループ(WG)も12月27日、「オープン・イノベーションに向けた制度整備」と題したフィンテックの報告書をまとめた。電子決済等代行事業者を巡る状況や銀行代理業制度上の課題が記されている。
 フィンテックの技術を郵便局が活かしていくためには、簡易局だけではなく、金融業務を提供できる直営局の存在が欠かせない。
 タブレットはもちろん金融のみが関係するわけではないが、今後のグループにとって、三事業稼ぎ頭のゆうちょ銀行とかんぽ生命を所管する金融庁と、三事業一体を継続するための株式構造を握る財務省の存在が重要性を増してくる。
 金融庁は「森信親長官は就任以来『これまでの管理監督は違っていた』と自ら語り、新しい金融行政に大きく舵を切っている」と話す。
 森長官が強調する〝顧客目線〟を各地域でどう実現していけるのか。約40万人が同じ思いでチーム力を発揮すれば、公益性と地域性の郵便局らしさを取り戻しながらきっと収益も向上できる。(涓埃之功)

第6866号

いも文化復興立役者はアメリカ人

 甘い香り、ホクホク、アツアツの焼いもは、寒~い季節の旬な食べ物。「栗(9里)よりうまい13里」といううたい文句で江戸で大流行したという。13里とはいものこと。諸説あるが当時、江戸で人気の甘くておいしいいもは、川越(埼玉県川越市)から船で運ばれた。その距離が13里(約52キロ)だといわれている。
 小江戸といわれる川越は、江戸の風情を残す古い街並みが人気で、週末ともなると多くの観光客でにぎわう。いもパイ・ポテトショコラなどの洋菓子や、せんべい・かりんとう・羊かんなどの伝統的ないも菓子、いも懐石まで豊富に揃う。
 しかし、人気の観光地になるまでには、住民の努力や熱心なリーダーの存在、NHK大河ドラマの放送効果など様々な幸運が重なった結果だ。川越は明治時代後期から、徳川家ゆかりの喜多院や仙波東照宮などを資源に、観光客を誘致してきた。芋菓子資料館は、上野から川越までの鉄道の往復切符と芋掘り、弁当をセットにした川越観光チケットを展示している。いも掘りをする芸者のPR絵葉書もあり、イメージアップへの努力の跡がうかがえる。
 戦争でダメージを受け、観光どころか芋菓子すら生産できなくなった。1990年代に町おこしが軌道に乗るまでは、商店街は閑古鳥が鳴いていた。町おこしの中核になったのが「川越いも友の会」(87年10月13日設立)。会長はアメリカ人のベーリ・ドゥエルさん(東京国際大学名誉教授/74年に同大学に赴任。専門は文化人類学)。
 ドゥエルさんは子どもの頃から日本文化に憧れ、73年に日本に留学、川越に滞在した。いもに出会ったのは、ホームステイ先でのこと。その家の娘さん(後に結婚)が出してくれた蒸かしいもが「とてもおいしかった」。それ以来、いもに興味を持ち「サツマイモがどのように川越に普及していったか」をテーマに論文を書くことにした。
 ドゥエルさんが来日した頃は、外国人は珍しい存在。「外人!外人!」と言われジロジロ見られた。閉鎖的な文化に加え、人はシャイ。地域にどのように溶け込んだらよいのか戸惑ったという。その突破口がいもだった。論文で日本のいもの歴史を掘り下げ、川越いも友の会ではリーダーとして町おこしに奔走した。「いもを通じていろいろな人と交流でき、川越文化も理解できた」と振り返る。
 友の会では、いもを中心に料理の普及や菓子・酒の開発、栽培、いもに関する本の出版、さつまいも資料館の開設、国際サツマイモシンポジウムへの出席、観光資源の開発に至るまで熱心に活動。その功績が認められ、91年にサントリー地域文化賞を受賞した。NHK大河ドラマ「春日の局」(89年放送)で、三代将軍家光の乳母・春日局が使っていたといわれる喜多院の「春日局化粧の間」がドラマの舞台になると、ブームが巻き起こり、多くの観光客が川越を訪れ、芋菓子もバリエーションが増えていった。
 ドゥエルさんが日本に来た頃のいもは「いも姉ちゃん」「いもっぽい」など、「田舎くさい」「ダサい」といったマイナスのイメージ。お年寄りは戦後の食糧難の時に食べた「いも=まずい」という思いが消えなかったという。アメリカではこうしたイメージはない。「こんなおいしいのになぜ…」。そんなレッテルを何とかしたいと考えた。公民館講座「さつまいも大学」で「おいもの地位復権」などをテーマにした講座を企画し、人気を集めた。この大学が友の会の母体となった。
 異なる価値観や文化、風貌。外人と言われ、偏見を持たれていたが、いもに対する日本人の偏見とオーバーラップするものを感じていたのだろうか。ドゥエルさんにとって、いもは居場所でもあった。今ではスイートポテトと言われ、おいしいお菓子もたくさんある。ドゥエルさんは「川越市小江戸川越観光親善大使」だ。川越に住んで40年余りになるが、日本文化・川越文化はまだまだ分からないことがいっぱいだという。しかし、いもへの情熱は尽きない。(招福招き猫)


第6862・6863合併号

日本は何処へ行くのか

 いつのまにか師走になった。忘年会のお誘いと同時に、「喪中の知らせ」のハガキも届く。いつもと変わらぬ年末風景だが、何か、気持ちの張りが薄れてきているように思う。例えば、師走という言葉だって、その響きやイメージがなくてどこか死語になりつつあるように思える。新年を待ち望むというこころが湧きたたない。歳のせいかと考えるが、どうもそればかりではないように思えてならない。
 米次期大統領にトランプ氏が登場し、世界は不確実性の時代になったとはフランス大統領の言だが、どうやらそんな気がする。不確実性といってもその中に希望があればよいのだが、むしろ、それはより不安を含んだ事のようだ。トランプ相場と言われる株価の上昇は期待の現れ、希望を見出そうとする人々の欲求と言えそうだが、それには不安を含んだ賭けの気分もあるように思える。アメリカではトランプ氏の大統領就任に向けての閣僚人選などが進められているが、人々は固唾を飲んで見守る状況なのだろうか。
 日本ではこれも年末風景の一つだが、国会での法案をめぐる与野党の攻防があった。年金抑制法案やカジノ法案が突然のように現れ、さしたる審議もなく、通っていく光景を巷の人々は「あれっ」と思って見ていたのかもしれない。国会というよりは築地市場の移転問題(豊洲市場問題)やオリンピック会場の見直し問題で東京都(小池知事の動き)の方に関心が移っていたのだが、国会では今とばかり懸案の法案を処理しようとしたのかもしれない。
 15日には北方領土問題の行方が注目される中、ロシアのプーチン大統領が来日し日ロ首脳会談が行われた。また、安倍首相の真珠湾訪問も関心を集めそうだ。予測される世界の激動に対して、日本社会は比較的安定しているように見えるかもしれないが、世界の動きと共に日本の動きに対する関心は低くはない。
 新年に望む気持ちの高まりは薄く、どちらかといえば不安含みなのだろうが、日本社会は何処へ行くのかという関心を人々は抱いているように思う。非常に気になるのは南スーダンに派遣された自衛隊の動きである。ひょっとすると日本の自衛隊の戦後初めての海外での戦闘という事態も生まれかねない。この不安があるのだが、何といってもこれについては情報がほとんどない。それ故に不安は募る。
 先に述べたように比較的安定しているように見える日本社会だが、ここ何年かの日本経済を支える中心だったアベノミクスの失速がとりざたされている。再登場した安倍首相の人気の支えとなってきたのはアベノミクスであった。この政策は当初からその矛盾が指摘され、批判も多かったのだが、ここに来てその限界と矛盾が提唱者からも語られ始めたのだ。
 アベノミクスは人為的にインフレーションを引き起こすリフレ論という政策だ。国家が経済過程に介入し、有効需要を創り出すというケインズをより積極化したものであり、単純にいえば国家(日銀)がお札の供給を増やすことである。量的金融緩和と呼ばれたこの政策が経済を活性化させるというように主張されてきたが、そのききめに疑念が出てきたのである。これは金融経済と呼ばれる領域ではその活性化に寄与はする。アベノミクスは金融経済を活性化させた。そして日本経済の停滞を脱するかのような現象を一時的にはもたらした。
 アベノミクスは当初から人々の暮らし(生活)と結ぶ実体経済には届かず、その活性化には寄与しないという批判が強かった。実体経済に向けた三本目の矢は試みられたけれど有効な矢はなかった。実体経済が停滞を脱出して活性化し、そこから消費も活発化する。真の意味で経済全体の活性化に至る道は開けなかった。社会全体では経済格差を拡大した。市場にお金をだぶつかせながら、経済の停滞を脱しえない事態は続いている。
 この脱出がカジノ場建設ではあまりにも寂しい。人々の暮らしに潤いをもたらす経済政策が登場していいのではないか。子育てや地方の再生など、誰もが気がついている領域をはじめ、生活の再生に向けた知恵と工夫が社会の動きとして出てきていいのではないか。(坂田の力)

第6861号

うるう秒でいろんなことが見えてくる

 地球が1回転すると1日。秒に直すと24時間は8万6400秒だが、12月31日(日本では1月1日)だけは1秒増えて8万6401秒となる。「うるう秒」といわれる調整を行うためだ。
 世界標準時で今年の12月31日から来年1月1日に日付が変わる時に23時59分60秒(日本標準時では2017年1月1日午前8時59分60秒)となり、時計は60という異例の数値を示すことになる。
 その60という数値に不具合を起こす機器やシステムもあり、それらの調整が必要となる。特に前回の昨年7月1日のうるう秒調整以降に入れ替えた機器は、誤作動を起こす可能性があるという。
 前回うるう秒の挿入を行ったのは平日で、企業活動の最中だったこともあり業務に支障を起こす企業が相次いだ。そのため、今回は企業活動が比較的少ない元旦に行うことになった。
 標準時は様々なビジネスに使われている。鉄道の運行や放送番組の時間管理、電気通信事業者の時計管理システム、117番電話の時報サービス、電子契約や電子帳簿・特許取得に必要な作成時刻を電子的に証明してくれる「タイムスタンプ」など、社会インフラを支える欠かせない存在となっている。
 うるう秒の調整(挿入)は1972年から行われており、今回で27回目。1日の長さは、数十万年に1秒しか誤差が出ないという「セシウム原子時計」で規定する「国際原子時」(1958年から運用開始)と比べて、37秒長くなっているという。地球の自転が遅くなっていることを示している。
 IERS(国際地球回転・基準系事業/うるう秒の調整時期を決める機関)のデータによると、1日の長さは、1600年ごろと比べ、長くなっている。大規模なエルニーニョやラニーニャによっても1日の長さが変化することも分かってきた。
 「エルニーニョの時は1日が長く、ラニーニャの時は1日が短い」という観測結果が得られている。その原因は解明されていないというが、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象それ自体も原因が分かっていないのだ。
 しかし、現実には南米沖の海水温の変化に端を発するそれら二つの現象に起因する、猛暑の夏や厳寒の冬、大雪などの異常気象は起きている。これらの現象が、1日の長さ=地球の自転速度にまで影響を及ぼしているとは考えてもみなかった。地球は神秘的だ。
 朝、太陽が昇り、夕方には沈む。いつもと変りない毎日。それが微妙に違っているとは…。うるう秒の調整からいろいろなものが見えてきた。
 来年の1月1日午前8時59分59秒から同59分60秒になるうるう秒挿入の瞬間が見たい人は、東京都小金井市にある日本標準時間を管理する「国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)」本館、JR武蔵小金井駅コンコース、福島県田村市都路町の国道288号線、福島県双葉郡川内村に設置されているデジタル時計で見ることができる。
(招福招き猫)

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