コラム「春秋一話」

 年/月

第6936号

新中期経営計画と郵便局ネット

 日本郵政グループは2018年度から20年度までの「中期経営計画2020」(新中期経営計画)を5月15日に明らかにした。「お客さまの生活をトータルにサポートする事業の展開」「安定的なグループ利益の確保」「社員の力を最大限に発揮するための環境の整備」「将来にわたる成長に向けた新たな事業展開」の4点を基本方針とする。
 「郵便局ネットワークを中心にグループ一体となって、チームJPとしてユニバーサルサービスを維持しつつ、トータルサポート企業グループを引き続き目指す」が、新中期経営計画の3年間は厳しい状況が続く見通しも示している。20年度のグループの純利益は4100億円超と見込むが、稼ぎ頭のゆうちょ銀行が17年度の3527億円に比べて2800億円に止まる。
 郵便局ネットワークの維持・強化が求められるが、「地域ニーズに応じた個性・多様性ある郵便局展開等、郵便局ネットワークを最大限に活用して地域と共生」することを挙げる。日本郵便が検討してきた郵便局ネットワークの将来像での内容が反映されている。
 5月9日に開かれた総務省の郵便局活性化委員会では、全国郵便局長会の青木進会長、山﨑雅明副会長、JP労組の柴愼一副委員長らが「郵便局に期待される役割と利便性向上策」で意見交換した。青木会長は、日本郵便と話し合いを重ね郵便局ネットワークの将来像を策定したことを明らかにし、柱は地方創生と地域貢献と強調した。重視するのは法律で明確にされている「公益性と地域性の発揮とユニバーサルサービスの提供」。そのためには「2万4000の郵便局ネットワークを維持・向上させることが必要」とした。
 3事業のユニバーサルサービスに加え、地域のニーズに合った金融商品の提供や高度なコンサルティングサービスも想定している。75歳以上の後期高齢者が増える“重老齢社会”に向けたサービスの開発や、地域のニーズに合致した商品・サービスを展開する。
 合わせて、郵便局運営の弾力化や窓口時間の多様化についても検討している。これらは新中期経営計画にも盛り込まれており、青木会長は「2人局で非常勤を1人配置すれば300世帯は回れる。買い物支援など様々なことができる」とし、自治体との連携強化の方針も改めて明確にした。
 自治体と地域の見守りや情報の提供などを行う包括協定の締結を進め、「まちづくり協議会」などを立ち上げ、地域のニーズを聞きながら郵便局ができることを提案していく。過疎地については、撤退する金融機関や自治体の支所の事務を引き受けることも考えられる。
 北海道の由仁町では、郵政OBやオピニオンリーダーを巻き込み「郵政事業協力会」が立ち上がっている。協力会の活動によって郵便局が役場の支所業務を受託した。文書収受事務として、役場に提出する書類などを受け付け、役場に届けることを行っている。
 柴副委員長は「社会構造の変化に対応した郵便局の活用」について説明。フランスのラ・ポストの例を挙げ、高齢者を対象とした個人向けの商品・サービスの提供や、郵便配達員がみまもりや買い物代行、家電の設置、パソコンの操作支援などを行っていることを紹介した。
 郵便局ネットワークの将来像は、日本郵便の経営理念に基づき、そのあり方を明らかにしたもので、具体的な施策を展開する指針となる。
 郵便・物流事業では、成長分野の荷物事業を発展、IoTや新技術の活用を図る。郵便局運営も地域のニーズに応じて商品・サービスを提供。育児や介護などを含めた働き方改革も行う。人材育成も新しいことへチャレンジできる職場づくりを推進。局舎配置も郵便局を維持しつつ、市場性の高い地域には経営資源を投入。地域の実情に応じた知恵が出せるよう評価の仕組みも検討される。
 活性化委員会では小林史明総務大臣政務官が「郵便局には信頼がある。郵便局ネットワークは重要なインフラ。大事にすることを基本に、手数料を稼げる形にしていかなければならない。局長会はエリアごとにあり、文化や経済圏に一体感がある。やりたいことができるようにすることが重要」と指摘した。
 青木会長も「郵便局の歴史の中で大切なのは地域との信頼。それには相対でやるのが基本」と、人と人の温かみが感じられるのが郵便局。ますます郵便局ネットワークが国民生活の不可欠なインフラであり続けるよう新中経営計画の実現を期待したい。
(和光同塵)

第6935号

再配達は年間9万人の労働力を消費

 受取人が不在でも荷物を預けることのできる宅配ボックスの普及が求められる。再配達は日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便で平均約20%にもなり、年間では約9万人分の労働力が消費され、二酸化炭素(CO2)の増加は約42万トンになると国土交通省が試算している。
 ネット通販の普及で荷物の配達が今後も増え続けることが予想される。一方でひとり暮らしや共働きの世帯が増え、配達時に不在の家庭も増え続けている。こうした解決策に期待が大きいのが宅配ボックス。配達時間を気にすることは必要なく、利用したいと答える人は多い。配達する側にとってもメリットは大きい。
 国土交通省では昨年11月10日、宅配ボックス設置部分の容積率規制を緩和する通知を出した。マンションなどの共同住宅などでは、共用の廊下と一体となった宅配ボックスの設置部分は、容積率規制の対象外とすることを明確化した。宅配ボックスの設置が柔軟にできることとなる。
 2016年12月から昨年3月まで福井県あわら市と宅配ボックスを扱うパナソニックが、106世帯を対象に行った実証実験(日本郵便、ヤマト運輸が協力)では、再配達率が49%から4か月平均で8%に減少した。再配達の減少により、労働時間も22.9時間が削減でき、同時にCO2も約466キロを減らすことできたと想定している。
 また、昨年11月から今年1月までの3か月間、京都市のアパートや京都産業大学のキャンパスに宅配ボックスを設置して行われた実証実験では、43%だったアパートでの再配達率が15%にまで減少した。労働時間では50時間を削減できたとする。
 いずれの実証実験でも再配達の削減には、宅配ボックスの普及促進が非常に有効な手段との結果が明確に出ている。国土交通省では、引き続き共同住宅以外の建築物を含めた宅配ボックスの普及に更なる施策を講じるとしている。
 既に容積率の上限近くまで建築されているマンションなどでは、宅配ボックスを設置しようとすると容積率を超えてしまう。こうした状況に対応するとともに、共同住宅に限らず、需要のあるオフィスビルや病院などにおいても、設置部分の一部を容積率に算入しない方針を検討している。複数の企業が使う共用オフィスの拡大もあり、病院でも入院患者や看護に来る人に根強いニーズがあるとする。
 日本郵便も宅配ロッカー「はこぽす」の設置拡大やコンビニなどでの受取りなどを推進している。戸建住宅での普及も望まれ、昨年2月には住宅設備メーカーなどと協力、大型メール便と書留、ゆうパックの受取・集配ができる宅配ボックスを開発した。
 分譲型の大規模団地で標準装備されるようになっており、同年6月からは、戸建住宅に設置した宅配ボックスへ書留などを配達するサービスを開始した。再配達の削減は深刻な労働力不足や環境への配慮、コスト削減など大きな効果が期待できる。宅配ボックスの一層の普及が期待される。
(和光同塵)

第6933・6934合併号

戦争を知らない世代への提言

 愛読している通販雑誌がある。結構利用していろいろのものを買っているが、読み物としても優れている。昨今、雑誌の売れ行きは逓減しており、これが出版業界を苦しめているらしいが、こんな雑誌なら売れるのにと思わせる。
 この雑誌で「戦争を知らない世代への提言」という記事があった。2号続きで、読者の体験記としてなかなか感銘深いものがあり、読みながら思い浮かべたのは、戦後の戦争と自衛隊のことだった。戦後70年を過ぎて幾らか経つが、世界で未だに戦争がある。
 ただ、大国間の戦争(戦争に至るような駆け引きを別にすれば)は見られないし、日本は海外での戦争も含めて加わってこなかった。戦争を繰り返してきた昭和初期(1945年まで)とは大きな違いがある。今年は明治150年だが、その前半と後半は戦争の有無で大きく分けられると言える。
 ここ何年間は、戦争に加わらないできた戦後日本の姿勢が変えられていくのではと思わせる動きが見られるようになってきた。こうした中、人々の自衛隊に対する視線も変わってきつつあるように思う。自衛隊は国民の強い反省と非戦の意識の中で、自衛のための組織としてつくられた。そして、自衛隊への視線は無関心とは言わないが、強い関心を喚起するものではなかった。
 その点は、戦前の軍隊との決定的な違いと言える。災害救援の自衛隊に対する視線などは別にすれば、自衛隊に対する人々の関心は低かったのである。これが変りつつあるのだと思うが、先鞭をつけたのは自衛隊のイラク派遣だった。さらに、集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更や安保関連法案が成立した後の南スーダンへのPKO部隊の派遣だった。
 南スーダンへの派遣は民主党政権下(野田首相)で始まったが、駆け付け警護や武器使用の緩和が加わった2016年12月以降が特に注目されてきた。従来は憲法9条によって禁じられてきた海外で戦争(戦闘行為)に参加(参戦)する可能性が強くなったと見られてきたのだ。戦争への政府の姿勢の転換が、参戦への道になるのではないかということが、懸念も含めて人々の意識にのぼってきたからである。
 この南スーダンでの活動を記した日報は伏せられ、いわゆる「日報隠蔽」問題として騒動になったことはよく知られている。「日報隠蔽」問題は、昨年の稲田防衛大臣の辞任で幕引きがされたと思われていた。それが最近になって日報が見つかり公表されるようになった。おまけとしてこれまでなかったとされてきたイラク派遣時の日報も見つかった。
 南スーダンではPKO活動の原則(停戦状態にある地域への派遣、停戦が破られれば撤収)に従って、昨年5月に撤収したが、それに至る時期、戦闘状態が発生したのに、これを「衝突」と言い換えて、PKO活動を維持しようとした。だから、戦闘状態を記した日報は伏せられ、存在が隠されてきたのである。
 イラク派遣はPKO活動ではなかったが、海外での戦争(集団的自衛権行使としても)が禁じられていた時代での戦闘状態の対応が問題にされた。いずれにしても、海外での自衛隊の戦争参加という事態が起こり得ることが近づいたのだろうか。
 それならば、自衛隊とは何か、それはどういう存在であるべきかの議論を含めて、人々の関心を喚起することは当然である。戦争一般についてだけではなく、自衛隊への私たちの考えを深めていかなければならないと思う。
(坂田の力)

第6932号

郵便局ネットワークの将来像

 郵便局ネットワークの将来像について、一定の方向性が明確になった。2016年から日本郵便が全国郵便局長会と検討を重ねて、長期にわたっての郵便局のあり方が示された。
 将来像は日本郵便の経営理念に基づき、これからの郵便局ネットワークのあり方を明らかにしたもので、具体的な施策を展開する際の指針となる。
 日本郵便の経営理念は「全国津々浦々の郵便局と配達網等、その機能と資源を最大限に活用して、地域のニーズにあったサービスを安全、確実、迅速に提供し、人々の生活を生涯にわたって支援することで、触れ合いあふれる豊かな暮らしの実現に貢献」としている。
 そのために「郵便、貯金、保険の基幹サービスを将来にわたりあまねく全国で提供」「社会の変化に対応した革新的なサービスへの挑戦」「企業ガバナンスを確立、社会的責任を果たす」「信頼されるよう社員が成長し続ける」ことを挙げている。
 こうした経営理念の実現のため、将来像では法律に定められているように「公益性、地域性が十分に発揮されるようにする」としている。
 また、今後に見込まれる人口減少の中「新たなお客さまにご利用いただくとともに、お客さま一人ひとりへの付加価値の提供」、そして「商品・サービスの充実に加え、郵便局ごとに個性、多様性を発揮し、同時に地域や社員のニーズに応じた多様な働き方が重要」なことも指摘する。
 具体的には三事業を中核としつつ、郵便局ごとの商品・サービスの選択、窓口営業時間などの多様化、コンサルティングに特化した郵便局といった従来のイメージに捉われない新しい形態も検討していく。
 こうした郵便局運営の弾力化に当たっては、労働条件の見直しや育児・介護などに対応できるよう働き方改革も進める。
 改めて「創業以来、培ってきた信頼を基に、ユニバーサルサービスを提供しつつ、地域と寄り添い、地域と共に生き、地域を丸ごと支える」ことが、郵便局の果たすべき社会的使命と確認している。それには「現在の郵便局ネットワークの維持、強化が不可欠」と強調する。
 過疎地や離島を含め、人々の暮らしがある限り、「現在の」郵便局の水準を維持することは、「将来にわたりあまねく全国でサービスを提供する」経営理念の実現となる。
 「若い人が地域に貢献したい、局長になりたいと思える郵便局を目指す」ともされており、一層の創意工夫で地域社会からの信頼がより強固になると期待される。
 地方創生にも繋がるが、郵便局は局長の指導力が大きい。やりがいと同時に責任も重くなるだろう。
 地域の実情に応じた知恵が出せるよう、評価の仕組みや権限の委譲などなど支社や本社の現場へのバックアップも欠かせない。
 同時に郵便局が公益性、地域性を十分に発揮するためには、通常国会に提出が予定されている「郵便局ネットワーク維持のための交付金・拠出金制度を創設し、ユニバーサルサービス提供の安定的な確保を図る」ことを目的とした議員立法の早期成立なども求められる。
 郵便局ネットワークが国民生活に不可欠な生活インフラであり続けることを願う。
(和光同塵)

第6931号

若者の田園回帰が起きている

 日本創生会議が「このまま人口減少の状態が続けば、2040年には全国の自治体の半数は消滅する可能性がある」と「消滅可能性都市」について報告書を発表したのは2014年。その衝撃に、移住対策を積極的に実施する自治体が増えてきた。移住相談窓口を設置する自治体は85%に上る。
 そんな中、「20代、30代の若い世代を中心に、都市から過疎地に移住する“田園回帰”が起きている」という朗報が公表された(3月14日)。総務省地域力創造グループ過疎対策室が開催した「田園回帰に関する調査研究会」(座長:小田切徳美明治大学農学部教授)が、2015年の国勢調査やアンケートを基に若者の過疎地への移住について分析した結果だ。
 都市から過疎地への移住者の45%は20代、30代の若者。移住の理由は「豊かな自然の中で生活したい」「働き方や暮らし方を変えたい」「都会の喧騒を離れて静かな所で暮らしたい」などを挙げている。
 フィギュアスケーターの浅田真央さんが引退後初めて受けたNHKのインタビューで「最終の夢は自給自足をすること。魚を獲ったり狩りをしたり。自由にのびのびと生活してみたい。自分を解放し生涯を終えたい」と語ったのが印象的だった。人生の最終目標が、社会的地位や名誉ではなかったからだ。
 視聴者は真央さんに、世界のトップクラスの選手として成果を上げてきたスケートの世界で、何かを成すことに期待したのかもしれないが、“人間らしい生き方”を夢として語った。 田園回帰する若者もまた真央さんのように田舎暮らしに人間らしさを求めているのではないか。豊かな自然とゆったり動く時間、地域の人との触れ合いがそこにはある。
 しかし田園回帰は、全ての過疎地で一様に起きているわけではない。同調査研究によると、2000年、2010年、2015年の国勢調査で連続して移住者が増えている過疎地は20区域(平成の大合併前の自治体)のみ。連載「過疎の町の地方創生~若者が町おこしにやって来る」で取り上げた島根県海士町や、水牛車で有名な観光地・沖縄県竹富島、輪島塗の町・石川県輪島市、離島を除けば日本一人口の少ないという高知県大川村などだ。
 若者の移住が増えている自治体とそうでない自治体は、どこが違うのか。同調査では、移住先を決めるに当たっては「移住コーディネーターや先輩移住者との出会いが大きな要因」という結果も得られている。まずはコーディネーターが移住後の生活についてどれだけ親身になって相談に乗ってくれるか、が移住格差につながっている。
 2000年に約40万人だった都市から過疎地への移住は、2015年には約25万人に減少した。減った理由は地方の経済の疲弊とそれに伴う転勤の減少によるもの。転勤は本人の意思ではないが、増えつつある若者の田園回帰は積極的に田舎暮らしを選んでいるという違いがある。
 若者に都市から過疎地に移住してもらおうと始まった「地域おこし協力隊」は、今年で10年目を迎える。参加隊員は年々増えており、2009年の制度開始当初は100人にも満たなかったが、現在では4000人を超えている。隊員の7割は20歳代、30歳代の若者で、定着率は約6割だという。
 そんな成果も、都市から過疎地への移住は2010年からはほぼ横ばいと、マスで見ると数値に反映されていない。一方で三大都市圏への人口流入は11年連続で起きている。日本人の半分以上が三大都市圏に住むようになった結果、消滅可能性都市は半数以上に上る。
 若者の移住の鍵は人のネットワークとコーディネーターの人柄。連載した海士町でも人のつながりで、やる気のある優秀な人材が集まり、力を合わせて課題を解決してきた。見知らぬ土地に飛び込んで新しい仕事に就くのだから、そこに住む人の魅力や導きは大事な要素だ。
(招福招き猫)

第6930号

増加する75歳以上の人口

 少子高齢化社会と言われて久しい。総務省の推計によると3月1日現在の人口は1億2652万人。2011年から減少社会に入ったとされている。これに伴い、2045年には後期高齢者とされる75歳以上の人口の割合が増える。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が3月30日に「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」を公表した。
 2015年の国勢調査を基に、その後の30年間の都道府県・市区町村別に人口を推計した(福島県は県全体の推計)。75歳以上の人口割合が20%を超えるのは43道府県となる。最も割合が大きいのは秋田県で31・9%。以下、青森県29・1%、福島県27・4%、山梨県・山形県26・7%。
 少ないのは東京都16・7%、沖縄県17・8%、愛知県18・5%、滋賀県19・5%、埼玉県20・1%。全国平均では21・4%だ。ただ、75歳以上の人口の実数が多いのは埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知などで、1・5倍以上になる。
 また、2040年に単身者世帯が1954万人に上り、全世帯に占める割合が39・3%となると見込んでいる。特に一度も結婚したことのない65歳以上が男女ともに急増、2040年の未婚率は男性14・9%、女性9・9%となる。
 世帯主が65歳以上は44・2%、65歳以上の世帯主に占める75歳以上の世帯主の割合は54・3%になり、高齢世帯の高齢化も一層進展する。65歳以上の独居率は男性で14・0%から20・8%へ、女性は21・8%から24・5%となる。
 75歳以上は医療や介護費用の増加が予想される。団塊の世代が全て75歳以上となる2025年には、在宅医療を受ける人が、現在の1・5倍以上の100万人を超えると厚生労働省が推計している。
 健康保険組合連合会は、国民医療費は2015年度の43・3兆円から2025年には1・4倍の57・8兆円、このうち65歳以上にかかるのは23・5兆円から34・7兆円と1・5倍になると予測している。75歳以上の医療費が44%を占める。
 厚生労働省が5年に1度、国勢調査を基に公表する平均寿命(2015年)は、男性で80・77歳、女性で87・01歳。都道府県別では男性が滋賀県の81・78歳、女性が長野県の87・67歳。滋賀県は初の男性1位となっている。前回より全ての都道府県で延びている。
 長寿はたいへん好ましいことだが、少子高齢化社会を支える仕組みをしっかりと確立することが急務だ。全国津々浦々にあり、公益性と地域性を発揮することが法律に明記されている郵便局ネットワークが、その一翼を担うことが期待される。
 みまもりサービスの充実もしかりで、地域活性化に果たす役割は益々増加すると思われる。そのためにも郵便局ネットワークの維持に、政治の取組みが強く求められる。その一つとされる新たな交付金制度も早期の創設が求められる。(和光同塵)

第6929号

読書0分の大学生が5割超

 1日の読書時間が「0」という大学生が、2017年に初めて5割を超えたという。全国大学生活協同組合連合会の学生生活実態調査で分かった。
 平均の読書時間は前年から0.8分減少し23.6分で3年連続の減。0分の学生は53.1%(文系48.6%理系54.5%、医歯薬系62.6%)と4.0ポイント増加した。
 ここ数年は増加傾向で、12年34.5%、13年40.5%、14年40.9%、15年45.2%、16年49.1%となり17年には5割超となった。5年間で18.6ポイント増えた。一方で120分以上は5.3%。こちらは04年から4.5%~7.5%の間を推移し、横ばいとなっている。0分が4割を超えた13年以降も5%以上を継続している。
 長時間の読書をする層が存在することから、読書する人の平均は51.1分と前年から2.5分伸びた。大学生になって読書をするかどうかは「高校生までの読書習慣で決まるのではないか。全体的に読書習慣が下がっていることの影響が大きい」と連合会。
 1日のスマートフォン(スマホ)の利用時間は平均177.3分(男子174.4分、女子180.8分)で前年から15.8分増えている。利用時間0分は(スマホを持たない、または利用しない)0.8%(男子1.1%、女子0.7%)と、ほぼ全員が利用している。
 ただ、読書とスマホの関連性について、連合会では直接的な効果は弱いとしているが、同時にスマホは学生生活全体に影響を及ぼすツールであることは間違いなく、読書時間を減少させる間接的な効果は十分に検討されるべき課題としている。
 また、全国出版協会の統計では、書籍の販売額は96年をピークに長期低落傾向が続いている。月刊誌、週刊誌も97年がピークで、休刊点数が創刊点数を上回り、減少に歯止めがかからない。若者向け雑誌は厳しく、中高年向けも伸び悩んでいる。
 そうした中で、コミック市場で17年は初めて電子版が紙の販売金額を上回ったという。電子版と紙の全体の市場規模は前年から0.9%減の3377億円と減少したが、紙は14.4%減の1666億円と大きく落ち込み、逆に電子版は17.2%増の1711億円となった。
 比率は紙49.3対電子版50.7と電子版の統計を取り始めた14年以来、初めて上回った。無料や値引きなどのキャンペーンによって、過去の作品を中心に売れ行きが伸びた。しかし、無料で読めるコミックの増加、過去作品が出尽くすこと、さらに海賊版サイトの影響などもあって、今後は不透明な面もあるという。
 ここ数十年、街の本屋が姿を消している。書店が1軒もない自治体は約2割になる。現在の書店は全国で約1万2500店、2000年の約2万1500店から9000店も減少している。2020年には1万店を切るのではと予想される。
 東京や大阪といった大都市でも10年の間に約3割減少した。個性的な本を並べるという取り組みをしている書店もあるが、人口減少、経営者の高齢化、活字離れ、ネット書店の影響などがあるだろう。
 今年は、10年ほど横ばいだった18歳人口が再び減少期に入る。18歳人口は1992年の205万人を境に減少に転じたが、ここ10年は約120万人で推移してきた。しかし、今年からは再び減少すると推計され、大学生も減少する。読書離れが書店の減少を加速させないか懸念される。
 専門書を含めてじっくりと本と向かい合える時間をつくることができるのは学生時代。若い時に読んだ良書はいつまでも心に残り、後の人生に影響を与える。充実した学生時代を送って欲しいと願う。
(和光同塵)

第6928号

失われつつある故郷の言語

 春の匂いを感じさせる暖かさと思えば、冬に戻ったような寒い日もある。不順な天候というか、季節だ。それでも確実に桜の開花は近づいている。今年は例年よりも早いらしい。花が咲くころは心が浮き立つが、一度は吉野の桜を見に行きたいと思っている。吉野の桜に憧れ、庵まで作った西行のことはいつも思い出すが、今年は吉野に住んだ歌人の前登志夫の『いのちなりけり 吉野晩禱』を手にし特にそう思う。10年前に亡くなり、遺稿文を集めたものだが、吉野へと気持ちをそそる。
 桜を見る気持ちは年々変わっていく。以前は桜に魅かれるのは無意識な行為で、何故かなど考えなかった。最近は何故かを考えるようになった。歳を取れば自然が好きになるのは日本人の習性と言われる。妙に納得できるが別の事も考えたい。
 最近、ベストセラーになりつつある『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子)を読んだ。圧倒的な読後感というか、深い感銘を受けた。同年代の人たちの訃報を聞くことも多く、暗い気分になりがちだったが、それから解放してくれた。この小説の主人公は75歳の桃子さん。老境にあってこそ自由に生きる、自由を満喫すると歌い上げる。
 感銘深く、共感できるが、この作品に魅かれるのは感性の保存というか、再生しているからだと思う。冒頭から東北弁が出てくる。最初はおっとなるが直ぐに引き込まれ、親近感を持った。それは作者が感性の保存というか、うまく取り出しているからだろう。読みながら、かつて小林秀雄が言った「故郷喪失の文学」ということを思い出していた。
 故郷喪失の文学とは感性や感覚的なものを失った言葉で成り立つ文学だが、この作品は現代人が失っている故郷言語を持った文学だと思う。私が花見を好きなのは、失われつつある故郷言語を求めようとしていたためだろうか。花見に魅かれるには記憶としてある感性的なものを呼び戻したいためではなかったのではないか。
 花見をするとき、自然豊かだった故郷を、故郷という記憶を思い起こしているのだろう。それは、どこか桃源郷を思わせる春の光景を思い出しているのだが、心の中に感性的な、感覚的な世界を想起したいとの欲求があるのだろう。日本の近代を引っ張ってきた科学技術の進展について、疑問視する現象を多く目にするようになった。このコラムでもしばし語ってきたことで、改めて語らないが、それは文化的には「故郷喪失の文学の成立」ということであり、私たちが故郷喪失者になってきたことである。感性や感覚の世界、それに裏打ちされた言葉を保存し、再生し続けることが大事なのではないだろうか。
 自己の中にある、感覚的で感性的な世界、その記憶を現前化(再生化)することである。桜(花)に触発され、自分の故郷(感性的世界)を思い出し、酒に酔いしれることはよい。そこから、自分の内的世界を豊かにすることが大事ではないか。歴史への旅は同じことである。歴史への旅も己への旅も、感性的な世界を発見し、自分の中に取りこんでいく旅だ。花見をしながらこんなことを考えた。酔いの醒めた暁に。
(坂田の力)

第6927号

少子高齢化に不可欠な郵便局ネット

 世の中の移り変わりが激しいことを「十年一昔」と言う。10年の歳月を一区切りとして、10年も過ぎれば、身の回りも変化して、昔のことのように思えるとの感慨を表わす。一方で「十年一日」との言葉もある。長い年月の間、少しも変わらず同じ状態にあることだ。
 2007年10月の郵政民営・分社化から昨年で10年が過ぎた。民営化でサービスが良くなるとされたが、その正反対に郵便局の使い勝手が悪くなり、長年にわたって培われてきた地域との関係が希薄化した。郵政事業にとって、この10年はまさに一昔か、一日か、複雑な思いの郵政関係者は多いだろう。
 混乱が続いた中、2012年4月には議員立法で改正郵政民営化法が成立し、郵政事業はユニバーサルサービスの義務や公益性、地域性が求められると修正された。しかし、依然として郵便局ネットワークの維持、ユニバーサルサービスのコスト負担のあり方など課題は多い。
 全国郵便局長会(青木進会長)の地方総会が3月10日から始まった。信越総会では青木会長が「昨年は民営化から10年の節目。しかし、郵政事業の将来展望の根幹となることは、ほとんど決まっていない。郵便局ネットワーク維持の具体的な取組みの実施が期待される」と様々な課題の解決を求めた。
 ゆうちょ・かんぽの限度額の再引上げ、ユニバーサルサービス維持の新たな交付金制度、郵便局ネットワークの将来展望、次期中期経営計画、地方創生や組織強化などについての活発な議論が行われた。
 交付金制度は通常国会で議員立法として提出される。新たな一歩だが、やっと動いたとの感は否めず、ユニバーサルサービスコストの観点からは不十分だが、与野党を問わずほとんどの政党が地域社会へ貢献する郵政事業の重要性を認識しており、早期の成立が望まれる。改正郵政民営化法の成立までも、紆余曲折があり、政局に左右されたことは記憶に新しい。
 限度額はまず通常貯金から撤廃される方向だ。中期経営計画では、営業目標の立て方の変更、収益から損益をより重視する方向などが内容。郵便局ネットワークの将来像では、三事業を基本としつつ営業時間の弾力化や地域に合ったサービスをそれぞれの地域で行い、郵便局の存在価値を高める議論がある。連絡会、部会、局長の裁量権の拡大も検討されている。地方創生とリンクさせながら地域活性化に取り組むことも重要だ。
 東京総会には野田聖子総務大臣が招かれ「三位一体でサービスを行ってきたが、支え合うとことが見えにくくなった」と民営化以降の感想を述べ、「法律がありユニバーサルサービスが義務づけられたからとしても法律は変わる」と指摘、「利用者に喜ばれる提案を行い、進化する郵便局に」と期待した。橋本行革では郵政公社で運営、民営化等の見直しは行わないとされたが、反故にされた事実もある。
 東海総会では柘植芳文参院議員が「新しい郵便局を創っていく当事者として活動を」と呼びかけた。国民生活のインフラとしての郵便局ネットワーク、その維持は進展する少子高齢化社会にとって欠かせない存在だ。
(和光同塵)

第6926号

資産形成は「先ず隗より始めよ」と言うが…

 「貯蓄から投資」。2014年にNISAが始まった時の金融庁が作ったキャッチフレーズだ。昨年夏ごろからは、これが「貯蓄から資産形成」に変わった。昨年1月からは個人型確定拠出年金「iDeCo」で公務員と主婦が対象に加わり、今年1月からは「つみたてNISA」が始まった。
 個人の資産形成に向けての制度は整いつつあるが、国民の投資意欲は一向に高まらない。この5年間で国内全金融機関の総資産は240兆円増えたにもかかわらず、その8割は日銀への現金預け金だという。金融審議会・金融制度スタディグループでは「銀行は国民の資産形成に役割を果たしていない」という意見が出たほどだ。
 「資産運用による利益が所得の伸びを上回れば、資産を持つ人と持たずに働く人の格差は広がり続ける」。これをデータで示したトマ・ピケティの「21世紀の資本」は日本でもベストセラーになった(2015年)。
 格差拡大について「給与所得者の賃金の上昇率と比べ、株や不動産、債券への投資から得られる利益の方が高いので、賃金を貯蓄したところで、財産は大きく増えない。投資により資産を運用して財産を築いている方が多くの利益を獲得できる」と説明している。
 国民に投資を呼びかける金融庁だが、足元の職員でさえ投資意欲は高くない。職員に投資に関心を持ってもらおうと昨年12月、情報の提供や口座開設、申込書の受付などを職場内でできる「職場つみたてNISA」を導入した。
 またその実情を知るため昨年11月に、1514人の職員を対象にNISAについてアンケートを行った(922人が回答)。55%の人が投資運用商品の保有経験がないという結果だった。 保有したことのある金融商品は定期預金が55%、投資信託は36%、個別株は21%。昨年の家計の金融資産に占める預貯金の割合が51~52%、2012年は55%。金融庁の職員は平均的とも言える
 保有しない理由としては、「庁内ルールが分からないので自粛している」「損をするのが嫌」「まとまった資金がない」「時間がない」「投資が難しそう」が挙げられている。
 NISAの利用については、口座開設し運用商品を購入した人は18%にとどまり、72%が口座開設さえしていない。つみたてNISAも同様で、「活用したい」と回答した人は17%で、「活用したいと思わない」は21%と、活用したくない人の方が多いという結果。
 金融庁は職員向けに「職場つみたてNISA」のセミナーも開いた。元財務省職員の村井秀樹内閣府大臣政務官は、あいさつの中で「つみたてNISAを家庭に普及させるのは簡単ではない。先ずは隗より始めよ。日本の家計に資産形成が定着するよう、金融庁から大きなうねりを作っていきたい」と100人余り集まった職員に資産運用を促した。セミナーでは「長期・積立・分散投資のすすめ」などの説明もあったが、会場からは質問はなかった。
 金融庁は職場つみたてNISAを他省庁、地方自治体、民間企業へと広げたい意向だが、旗振り役の金融庁がこのような状況では、国民が投資をためらうのも頷ける。
 人生100歳時代と言われており、老後は長い。厚生労働省のモデル的公的年金は夫婦二人で月額22.1万円。試算によると月に約4.8万円が不足する。60歳から65歳までは年金支給がないとして計算すると80歳までに約2500万円は必要になるという。医療費や介護費用は含まれていないので、別途必要になる。
 老後の生活資金を考えた時、ピケティの理論にもあるように賃金を蓄えるだけでは…。とは思うのだが…。国民の預貯金は増え続けている。「デフレ下では現金が有利」「元本保証がない資金運用が老後資金に向かないのでは…」「マネーゲームのような資産運用はちょっと…」「情報が不足していて何を買っていいか分からない」など、投資に向かわせない要因はいろいろ考えられる。セミナーではうまくいった事例が紹介されていたが、最悪のケースも含めて、どんなリスクがあるのか、丁寧に教えてもらわなければ、その一歩はなかなか踏み出せない。
(招福招き猫)

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