コラム「春秋一話」

 年/月

第6996・6997合併号

自動運転レベル4の実現は

 自動運転技術が進み、車、船舶、ドローン、空飛ぶクルマなど人が操縦するモビリティの自動化、無人化は着々と進められている。国内の実証実験は公道でのレベル3(基本は自動化だが、緊急時は人が介在)からレベル4(緊急時にも人が対応せず全て自動化)への過渡期にある。レベル4の実証実験は、横須賀リサーチパークにある「ドコモR&Dセンタ」周辺の公道や東京都江東区にある新東京郵便局の敷地内で行われた。
 トヨタは来年開催される東京五輪の選手村の移動に、次世代電気自動車「e-Plette」でのレベル4の実証実験を予定。しかし、アメリカでは昨年3月にウーバーの自動運転車(テスラ・モーターズ製)が実証実験中に、死亡事故を起こした。ライダーという車の上に付いたレーダーが、走行中に人や自転車を認識できなかったのが原因の一つらしい。自動運転システム側に問題がある事故としては初めてで、社会に大きな衝撃を与えた。グーグルカーもバスと衝突事故を起こすなど、ここに来て自動運転の商用化に向けての取組みは冷え込んだ。「自動運転は危険」「乗るのが怖い」という信号を送ってしまった。
 ウーバーの死亡事故は、ライダーの性能に問題があった。ライダーは360度回転しながらレーザービームを照射し、物体までの距離を測定するシステム。照射時に物体に当たらなければ感知しない。この事故の場合は、真っ暗にもかかわらずヘッドライトが上向きでなかったとの指摘もある。私も自動運転車の試乗で、10メートル以上離れた車線に人が入れば、ブレーキがかかり発車できなかったという体験があるが、感知機能が正常なら止まるはずだ。
 「自動運転は交通事故をゼロにする」というバラ色の世界が語られるが、アメリカでは技術の未完成が露呈した。レベル4の実現は、技術をどこまで完成形に近づけられるのかにかかっている。警察は「道路交通法を100%守っていれば、事故は起きない」と言うが、自動運転は道路交通法をしっかり守れるのか。自動運転車と人が運転する車の混在期を考えると、一層難しさを感じる。
 慶應大学大学院の岸博幸教授は「政府は自動運転ですごい未来を描いているが、近未来はそんなにドラスティックに変わらない。10年後に絞り実現可能な活用を利用者側の視点から提案したい」と、4人のメンバーと共に「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」(座長:岸教授)を7月2日に立ち上げた。この10年で実現可能な技術として、高速道路の自動走行、一般道での衝突や接触防止機能付き車の普及、地方で専用レーンを低速で走る自動運転車の実現、走行状況の遠隔監視などを挙げる。暮らしや観光、地域経済などにもたらす影響や活用のアイデアを提言していく。
 トヨタは「モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジ」を宣言し、ソフトバンクやセブンイレブン、ヤマトホールディングスなどと「e-Plette」を活用した共同プロジェクトを進めている。移動コンビニや宅配事業に取り組む。中身を変えれば、移動道の駅やコーヒーショップ…、いろんなサービスが考えられる。
 高齢ドライバーよる事故、買い物難民、過疎地では乗り合いバスの運行が危ぶまれている。一方でドライバーは不足する。
 自動運転への期待は大きいが、公道でのレベル4の実現までには、画像認識やセンサーなどの技術開発はもちろん、交差点でのセンサーの整備、法律の整備や保険など課題山積だ。そして、何より大事なのは利用者の安心感だ。
(招福招き猫)

第6995号

日本の草地は1%に急減

 この100年間で日本の草地が90%以上消失、その結果、多くの草地性生物が絶滅の危機に瀕しているという。
 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が、京都大学や北海道立総合研究機構森林研究本部、オーストラリア国立大学と共同で、過去10万年間にわたる日本の草地の歴史を、日本人になじみの深いセンブリ、カワラナデシコ、オミナエシ、ワレモコウの4種の草地性植物の遺伝子解析により推測した。
 草地とは「半自然草地」のことで、過度に肥料を施したり種まきなどをせずに、人の手が適度に加わることで維持されているところを指す。
 林業や野焼きなどは、温暖多雨な日本で草地を維持するのに貢献してきた。1万年以上前から継続的に人の手が加えられてきたと指摘されている。
 こうした人の活動によって維持されてきた草地は、最終氷期以降も草地性生物を育んできたと考えられている。
 最終氷期とは約1万年前まで続いた直近の氷期。現在よりも気温が最大で7度ほど低く、乾燥した気候と相まって、北方域では森林が発達せず草地が広がったとされている。
 草地は100年前までは、堆肥や牛馬の飼料、あるいは屋根葺きの材料などを生産する場所として、日本の国土の10%以上を占めていた。これは過去10万年にわたると推定されている。
 しかし、この100年ほどの間に、人工林、あるいは管理放棄による天然林に還った。
 その結果、草地は急激に減少し、今では国土の1%を占めるに過ぎないという。温暖多雨な日本では約7割が森林。森林の面積に大きな変化はないが、草地の90%以上の消失で、そこに依存する多くの生物が減少した。
 草地や草地に依存した生物の減少は、どのような意味を持つのか。
 センブリなどの草地性植物は、数十年前まで秋を彩る草地性植物として、どこでも身近に見られた。センブリなどの種は、過去10万年間にわたって、草地が広域的かつ継続的にあったことで、個体数を安定的に維持してきた。
 最近100年の草地の激減に伴い、「千年~万年を単位とする地質学的な時間スケールで見て、大きな出来事であることを示している」と、森林総合研究所では警鐘を鳴らしている。
 さらに「人類が環境の改変や維持に果たしてきた役割、特に林業や農業が草地を維持してきた役割の歴史的な重要性を示す」という。
 人類の経済活動が地球環境に大きな影響を及ぼしている。改めて温暖化を含めて、地球環境を維持することの大切さを考えたい。
(和光同塵)

第6994号

グループの結束が未来を拓く

 日本郵政グループの株主総会が6月に開かれた。上場している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社とも事業報告などの提案事項は原案通り承認された。日本郵政では長門正貢社長が「グループの当期純利益は予想を大きく上回る4794億円。中期経営計画では2020年までに経営基盤強化のインフラ整備に1兆円、成長につながる資本提携にも数千億円規模の投資を視野に入れている。企業価値向上につなげていきたい」と経営方針を説明した。
 株主からは「増配に向け前向きに考えてもらいたい」「郵便局ネットワークは大事だと強調しているが、銀行は窓口コンサルティング業務に限定し、店舗を廃止する傾向。昔ながらのやり方にこだわると、時代に取り残される。コスト削減策は」などの質問があった。
 経営陣は「郵便局ネットワークは3事業のユニバーサルサービスをフェース・ツー・フェースで提供するお客さまとの大切な接点。現行水準を維持しつつ、収益や価値の向上も図る。局外営業活動やみまもりサービスなど郵便局の強みを生かした各種施策により、収益改善に取り組んでいる」と強調した。
 株主もさることながらお客さまあっての郵政事業。民営化・分社化以降、グループ各社の遠心力が働き、サービスが低下したと指摘された。改正郵政民営化法によって郵政事業は公益性、地域性の発揮、郵便局を通じて3事業のユニバーサルサービスを提供することとされ、グループの一体性の強化も求められた。「2万4000の郵便局がグループの絶対価値」(日本郵便の横山邦男社長)だが、求心力について懸念する声もある。
 5月の全特広島総会では、長門社長は人材育成にからめて「若手から将来への不安が出ている。グループ4社がバラバラで他社が何をしているか分からない、本部が乱暴で現場の意向が全然伝わらない等々の声がある。4社間の連携を一層密にすることをはじめ的確な人事異動も必要」と課題点を挙げた。
 全特の山本利郎会長も「株式売却後もグループ間の連携を深めていくことだ。民営化当初は分社化で遠心力が働いた一面があったが、改正法によって求心力を働かせグループが一体で対応するスキームを作ってきた。これからも深化が重要と認識している」と語っている。日本郵便の髙橋亨会長も「グループには郵便局という素晴らしい存在がある。グループの一致結束、団結こそが将来展望を切り拓く」と強調する。
 新しい郵政事業の進化を政治の中でも加速させたいと言う柘植芳文参院議員は「民営・分社化では、もう公的なことはやらなくていい、市場の中でしっかりと儲かる会社にしていく」との雰囲気があったことを指摘、しかし「長く培ってきた公的使命と社会貢献をする郵政事業に戻っていこうとの気運が出てきたことは確か」と話す。
 そして「グループが市場原理に流され、市場の中で生きていく事業になるのか、郵便局が築いてきた公的使命と社会貢献をベースにした形での事業に変わっていくのか、極めて難しい岐路に立っている」との認識を示し、改めて「もっと国民に利用されやすい、いわゆる公的使命、社会貢献を果たしていく事業としての存在価値を高めていく」ことの重要性を挙げる。
 また「人口減少や過疎化、高齢化社会が進展するが、高齢者を取り巻く問題が提起されている」とし、「高齢者に政治が何をできるかを訴えている。人生100年時代を見据えて、様々な政策が提言されているが、多くの“難民問題”が発生している」と、孤立や生活面での不便といった課題を指摘。「超党派議連で新しい形の制度を作ろうとの気運が盛り上がっている。簡単に言えば協同組合的なものを作り、手を差し伸べ、支え合っていこうというのが趣旨」とした。
 そうした議論で「いつも話題になるのが郵便局。協同組合的なものの中心に置かれ、そこをベースとして幅広く高齢者、地域の方々に寄り添っていくことが、政治の中でも白熱した議論になっている」ことを挙げて「秋の臨時国会には法案が出てくると思う」と述べた。土曜日の配達の在り方などを検討、安定的な郵便サービスを確保することを目的とした郵便法の改正も臨時国会で成立が期待される。
 地域における郵便局ネットワークの存在価値は高く、信頼や期待が大きい。特に地方ではセーフティネットワークになっている。単なる効率化のみでの判断ではなく、期待されている公益性や地域性を「更に高めることをしっかり前に進めていく」(柘植参院議員)ことが改めて求められている。
(和光同塵)

第6993号

多発する高齢者の交通事故

 東京・池袋の路上を暴走し、12人の死傷者を出した交通事故は様々な波紋を投げかけている。事故直後のネット上では、運転者が逮捕されなかったことへの疑問が続出した。これには元高級官僚だったことも影響しているのだろうが、この事故がもたらした衝撃は大きかったし、その投げかけているものは小さくない。その後も高齢者の交通事故が続いている。
 高齢者の交通事故は予測され、警告も発せられていたことだが、起こってみればその悲惨さを示しただけではなく、なかなか解決策が見えない。多分、誰しもが高齢に達した人の運転は止めるべきだと思っただろう。こういう感情が起こるのは自然なことだが、少し冷静になってみれば、そう簡単には片付かないことにも気がつくだろう。
 地域事情などの諸条件によって異なるだろうが、日常生活に欠かせぬ手段となった車を、人は簡単には手放せない。公共交通機関がないといった事情にもよるだろうが、車は生活の重要な構成要素になっており、社会は車を不可欠な存在にしている。高齢化社会も車社会も歴史的にはかつてなかったとも言え、初めて経験する事態である。
 誰でも高齢者による事故には驚くし、運転を自重すべきだと思う。これは自然な思いであり、高齢者の運転免許証の返納が増えているという形でも表れている。だが、返納を考えたにしても、迷い、踏み切れないでいる人も多くいるはずである。
 高齢者の事故の多発で、高齢者は運転に注意深くはなっているだろうが、根本的に無くなるとも言えない。高齢からくる身体の対応が事故につながる事態は避けられないと推察する。これはどのように解決されるべきなのか。高齢者の運転認可の条件の検討というのは当然にも起こるべき事柄であり、これまでと違って本格化するだろう。
 走行スピードや自宅周辺に限るといった運転場所の限定、安全装置のある車などが検討されることは必須であると思われる。現在でも走行スピードには様々な規制があるが、より細かく、年齢による規制といった面が強く出てくることが考えられるだろう。高齢者の運転に関する規制などはこれまで検討が少なかったし、社会の高齢化に対して遅れがあったと考えられ、改善が進むと思う。
 さらに重要な視点は、車の製造者(自動車メーカー)の側に問題はないのかということがある。高齢者の事故は運転者の問題であって、メーカーにはさして言及されてはいないが、車社会をつくりだし、交通形態を変えてきたことの一端はメーカーにもあったことは明瞭である。
 メーカーは高齢者が簡単に運転を断念できないように、人々の生活と社会を変えてきた側面がある。少なくともそのように人々の生活と社会を変えてきた責任の一端を担うべき位置にいるのである。単純にいえば、高齢者に安全な車を作る責任がある。自動運転などの開発に膨大な投資をしていることが伝えられる。そうであれば、高齢者が安全に運転できる車も開発できるのではないか。このことに力を注ぐべきである。
 運転は断念したい、事故を起こしては申し訳ないと思いながら、様々な事情で止められないと苦悩している高齢者に、より安全な車を提供するという責務をメーカーは負っているのではないだろうか。車の機能の改善に向ける努力をメーカーが果たすことを期待する。
(坂田の力)

第6992号

進む少子化、出生率は1.42人

 平成30(2018)年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人、前年より2万7668人減少した。統計がある138万6981人だった明治32(1899)年以降で最も少なかった。少子化が進展している。
 厚生労働省が6月7日に平成30年の人口動態統計(概数)を公表した。3年連続で100万人を割り、史上最少を更新した。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」も1.42で、前年から0.01ポイント低下した。こちらも3年連続の低下。人口維持に必要とされる2.07を大きく下回る。
 一方、高齢化が進んでいるため、死亡数は前年から2万2085人増え136万2485人、戦後最多となった。死亡数と出生数の差である自然減は前年より4万9753人多い44万4085人、初の40万人超で過去最大の減少幅となった。
 人口は30年10月1日現在で1億2422万人、65歳以上は28.5%を占める。今後も高齢化により死亡数が増えることが予測される。少子化と死亡数の増加が同時に進行すれば、人口減に拍車がかかる。
 婚姻件数は前年から2万428組減って、58万6438組と、25年から6年連続で減少、戦後最少を更新した。人口1000人当たりの婚姻数は年4.7組。平均初婚年齢は夫31.1歳、妻29.4歳。初婚年齢が最も低いのは宮崎県で夫29.7歳、妻28.7歳、最も高いのは東京都の夫32.3歳、妻30.4歳。離婚件数は3929組減って20万8333組。人口1000人当たり1.68組。
 出生数は終戦直後の昭和22~24年の第1次ベビーブームには250万人だった。最多は24年の269万6638人。46~49年の第2次ベビーブームでも200万人を超えていた。ピークは48年の209万1983人。その後は一貫して減少傾向が続く。
 平成19年には死亡数が出生数を上回った。第2次ベビーブーム世代も40歳代半ばとなり、出産適齢期から外れつつある。出生数の減少について、厚生労働省は出生数の約85%を占める25~39歳の女性の減少、さらには晩婚化の進展が影響していると分析、今後も出生数の下降傾向は続くと見ている。出産適齢期の女性が少なければ、生まれる子どもの数が減るのは当然のことだ。
 出生率は沖縄県が1.89と最も高く、島根県1.74、宮崎県1.72、鹿児島県4.70、熊本県1.69と続く。低いのは東京都1.20、北海道1.27、京都府129、宮城県1.30、秋田県1.33、神奈川県1.33。
 政府は「2025年年度末までに希望出生率1.8人」「60年に人口1億程度を維持」を目標に、少子化対策を進めているが、現状では達成は難しいだろう。子どもを持ちたいと思いながら躊躇う若い世代の声に、いかに応えるかが重要だ。特に2人目、3人目を断念する“2人目の壁”を低くすることが求められると指摘されている。
 非正規雇用の拡大など経済的な理由もあるが、特に女性は仕事と子育てを両立する環境が整っていないことも大きな要因となっている。日本郵政グループは出産した女性の職場復帰にも取り組んでいるが、郵便局ネットワークを活用した貢献も期待される。
 ちなみに出生率は日本の1.42に対してフランス1.90、スウェーデン1.78、アメリカ1.77、イギリス1.74、ドイツ1.57、イタリア1.32、シンガポール1.14、韓国1.05などとなっている。
(和光同塵)

第6991号

求む“変な人” !?

 総務省が主催する「異能vation」の募集が始まった。お役所が何と、“変な人”を求めているらしい。変な人とは、奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗を恐れずに挑戦する人。新しい発想は新たな市場を創り出す。総務省は「最初から地球規模の市場を狙いたい」と変な人が巻き起こす世界的なムーブメントに期待する。
 6月5日に発表された政府の「未来投資会議」(議長:安倍晋三総理)の「成長戦略実行計画案」にも、第4次産業革命に必要な高スキルを持つ人材として「創造性、感性、デザイン性、企画力といった能力やスキルを備えた人材」と具体像を示しており、その育成が必要なことも強調されている。
 変な人とはイノベーションの原動力になる。アメリカには、マイクロソフトやアマゾン、アップル、フェイスブックなど、今や世界的大企業がいくつも存在するが、どれもベンチャー企業から生まれた。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグら創業者は、最初は異端児、変人と言われた。
 自分がやりたいことを明確に持ち、開発する技術、譲らない知的財産権を武器に新たな市場を創り出した。自分が欲しいものでもあり、何が何でもやり通す。それが彼らの推進力だ。アメリカにはそんな思いを持った尖った優秀な人材が、思い切って仕事ができる素地があったことも成功につながっている。
 日本は世界を席巻する勢いのあるサービスが育っているのか。メーカーなどで開発された技術には、次の段階に発展しない多くの「死の谷」が存在する。多くの技術や特許がなぜ死の谷に落ちてしまったのかも分析する必要がある。中国がレアアースの輸出を停止した時、日本メーカーの助けになったのは先輩が残してくれた技術だったという。日本には技術力がある。視点を変えれば死の谷にも、お宝が眠っているかもしれない。
 日本の大学発ベンチャーの成功者に「サイバーダイン」がある。社長で筑波大学の山海嘉之教授には2度、取材をしたことがあるが、1度目の取材では「制度とのぶつかり合い」と課題を指摘。2度目は資金集めだった。そこには山海教授が外国人投資家向けのIR説明会を自ら英語で行う姿があった。研究と経営の両立は苦労がいる。
 成長戦略実行計画案には、第4次産業革命を成功させるには、それに合った組織と人の変革が必要なことも明記されている。モバイル・インターネットの基礎となったNTTドコモのiモードはイノベーションの成功事例として学ぶところも多い。
 同プロジェクトチームもまた当初、社内では異端児扱いされたという。発案者の松永真理さん、ビジネスとしてまとめ上げる夏野剛さん、チーム責任者の榎啓一さんらがそれぞれの知識や経験を生かし、役割分担。チーム力でiモードを成功に導いた。松永さんと夏野さんはこのプロジェクトのために中途採用されたスタッフ。組織の変革には外部の力が有効なのかもしれない。
 異能vationはそんな新しい発想を持ったシード(種)探しの一つ。今年で6年目を迎えるが、昨年度の「破壊的な挑戦部門」の応募者は約1000件、「ジェネレーションアワード部門」は1万人を超えた。ジェネレーションアワードには小学生の応募もあり、プリクラと顔認証を組み合わせて迷子探しができる「子供交番」の提案がノミネートされた。アイデアそのものもあるが、審査には人事部も目を光らせる。ここはアイデア豊富な人材探しの場ともなっている。令和初の変な人はどんな人なのか。
(招福招き猫)

第6990号

ふるさと納税とみまもりサービス

 ふるさと納税の指定制度が6月1日から始まった。指定を外された大阪府泉佐野市はアマゾンギフト券付きの駆け込みキャンペーンで、昨年11月から3月までの5か月間に332億円を集めた。年間予算563億円の市が、その7割に当たる400億円余りの寄付額(見込み)を獲得する異例な事態。
 泉佐野市は指定外となったことに納得がいかないらしく、公表3日後には「ふるさと納税の本来の役割とは?」という主張を公表し、総務省にも質問書を送った。
 2017年度のふるさと納税の寄付額は3653億円(住民税と所得税の控除のうち、住民税の税額控除額は寄付額の67%の2448億円)。その経費は受入額の55.5%に当たる2027億円。新制度により返礼品が3割以下となれば、その分、経費も下がると思われるが、そもそもふるさと納税制度がなければ、寄付額の全額は税として使われる。
 貴重な税金がふるさと納税の返礼品として使われるからには、制度の趣旨「ふるさとやお世話になった自治体に感謝や応援の気持ちを伝える」に沿っていなければならない。
 石田真敏総務大臣は指定制度実施に当たり「クラウドファンディングの活用や納税者との継続的なつながりを持つなど、地域活性化に向けて創意工夫を凝らした取組みを進めてもらいたい」とコメント。これに対して泉佐野市はクラウドファンディングについて「返礼品を送る寄付募集が全て禁止されない限り厳しい」と反論する。
 ふるさと納税は寄付である。東日本大震災では多額の寄付が集まったが、返礼品を求める人がいただろうか。困っているから助けてあげたいという気持ちからの寄付。お世話になったふるさとに恩返しをしたいから寄付するというのと、何ら変わりない。「返礼品がないと寄付はしない」と国民が考えるのであれば、同制度のあり方自体が問題となる。
 ふるさと納税制度は、地方自治体が補助金や交付金に頼らずに事業ができる数少ない手段の一つ。返礼品がなくても「協力したい」「応援したい」と思える事業やサービスがある時だけ寄付を募ればよいのではないか。
 自治体職員は、返礼品探しに奔走するのではなく、そのエネルギーを住民サービスや地域活性化のアイデアの練り上げに使った方がよい。
 「地場産品にすれば地元にお金が落ちるからよい」という意見もあるが、ふるさと納税は景気対策ではない。また返礼品は長年にわたり、同じ事業者にするわけにもいかない。
 返礼品はアイデアを出した受益者が工夫して出せばいい。ふるさと納税の寄付のおかげで作られた産品、サービスであれば「おかげで助かった」「とてもうれしかった」といったお礼の手紙でよいではないか。寄付者と活用者の心が通じ合える。
 郵便局のみまもりサービスは、現在2400の自治体で返礼品として採用されている。月額2500円の訪問サービスの場合は、年間3万円。返礼割合は3割以下のため、寄付額は10万円以上となるが、その額の寄付をするには、年収ベースで680万円から850万円以上と比較的高収入な人に限られる。
 クラウドファンディング型の寄付なら経費以外は全額利用できる。お年寄りや子どもの通学などの見守りニーズは高まっている。
 郵便局はネットワークや人的資源を存分に生かしつつ、自治体と一緒にアイデアを出し合い、そこにサービスプロバイダーとして参画する手もある。
(招福招き猫)

第6989号

「平成」を振り返り「令和」を思う

 「平成」から「令和」の代替わりは10連休もあったが、スムーズに進んでいると思われる。この代替わりは明仁天皇の強い意向によったとされる。これは2016年8月8日に発せられた「おことば」に示されていた。
 生前退位を望む理由として、昭和天皇の逝去時の自粛ムードなどが国民生活に与えた事態を避けるということがあったとされる。この考慮は生かされたと思える。昭和天皇は神聖天皇の名残もあり、象徴天皇としての明仁天皇はそれを避けたいということでもあった。
 国民の多くは生前退位に賛成だったと思われるが、一部にはこれに対する抵抗も伝えられた。代替りが天皇の逝去と共にあるべきとの考えだろうが、そこには神聖天皇の復権を望むこともあったのかと推察される。
 「昭和」から「平成」への代替わりにおいて即位した明仁天皇は「憲法を守る」と明言された。これは天皇の言葉として波紋をもたらしたものだった。天皇の存在は神聖天皇から象徴天皇に敗戦を挟んで変わった。大日本帝国憲法と日本国憲法の天皇の規定を見れば明らかである。
 ただ、この転換には非戦とアメリカ軍の日本占領ということが加わっていて事情は複雑だったのだが、国民にはかつての神聖天皇の残存もどこかにあった。昭和天皇は人間宣言において神聖天皇の脱却を宣言したが、これに対する不満は残ってもきた。三島由紀夫の「文化概念として天皇」擁護は、その極端な現われだった。
 明仁天皇は人間宣言を引き継ぐ形で象徴天皇を模索したと言えるが、それは憲法第1条の象徴天皇を守るということだったのだと思う。象徴ということを考え、守るということは、明仁天皇においては必然のことだったのであろう。私は国民として、同じ条文にある国民主権のことを考えた。私も憲法を守りたいと思ってきたが、主要には国民主権のことが頭にあった。
 明仁天皇が象徴天皇を模索し、守ろうとしてきたことは、平成という時代を振り返るときに忘れてはならないことであろう。これは神聖天皇の否定であり、天皇の神聖化の動きに対する抵抗だった。天皇を政治的力にしようとすることへの抵抗でもあったと思われる。この肯否はそれぞれだろうが、私は国民主権のことを大事に考えながら賛意を持ってきた。
 新天皇は即位に当たって「憲法に沿って」と述べているが、私は「平成」での天皇のあり方を引き継いでいってもらいたいと思う。「平成」時代とは何であったかを考えることは、「令和」時代とは何かを考えることでもある。「令和」時代に対する人々の期待する気持ちと裏腹に、時代を見通すことが難しく、閉塞感もあるのは、「平成」時代が何かを捉えきれていないこともあるからだろう。その意味で「平成」時代を考えることは重要だし、これからも繰り返し行われるに違いない。
 明仁天皇と象徴天皇の模索は「平成」時代を振り返る大きな指標である。私はどちらかというと同じ憲法第1条でも国民主権のあり方を指標としてきたが、「平成」を考えるのには多様な側面があるだろう。最近、昭和の歌謡史の番組を楽しく見ているが、平成歌謡史でもいいし、技術の進展史でもいい。
 平成の後半ににわかに激しくなった災害のことでもいい。家族や自己史でもいいのだが、ある程度、まとまって過去を振り返ることで未来のことを考えるいい契機にして欲しいものである。メディアなどはそれをいろいろと提供してくれるだろうが、自分なりの歴史像を創り未来のイメージを得ていくことが大事ではないか。
(坂田の力)

第6988号

速達料金の1割値下げ

 5月8日に開かれた郵便局活性化委員会で、日本郵便は「日刊紙の土曜配達継続とその料金」「速達料金の値下げ」の2つを提案した。両方とも赤字を拡大させることが分かり、委員や専門委員からは必ずしも賛成できないとの意見が出た。
 郵便事業の収益が悪化することを見越して、料金値上げではなく、サービスレベルの見直しということで、日本郵便は同委員会に、土曜休配や送達日数の1日繰り下げを提案した。
 速達は利用が増えるなら、料金は値下げしてもいいのではないかという意見もあり、日本郵便は1割値下げを提案した。しかし、速達は価格弾力性がなく、値下げしても1割程度しか増えないことが分かった。損益は10億円悪化するという。
 収益が悪化するのなら話は違うということで、委員や専門委員からは、「ユニバーサルサービスの将来的な確保ができなくなる」との意見があった。普通郵便の中では、数少ない黒字の特殊取扱。郵便事業収支約109億円の黒字(2017年度)を支える。
 日本郵便は、速達料金の値下げについては、普通郵便と速達は送達速度において、それほど差がないことを挙げている。サービスと料金のバランスが悪いにもかかわらず、手を付けてこなかったこともあるという。
 速達を選ぶのは、速度というよりは、重要な郵便物であることを受取人に知らせることにあり、料金が高くても利用する人はするのだという。そこにニーズがあるのであれば、それに特化したサービスも考えられるのではないか。スマホやパソコン、郵便配達の人を組み合わせて、届けたことが、差出人に早く確実に分かるサービスなど、新しいメディアとリアルを組み合わせた工夫も考えられる。
 関口博正専門委員の「国家全体に対して、重要な役割があるというのなら、利用者ではなく、国が払うべき」というのは、言論機関である新聞社にとって、国の直接的な補助は受け入れ難いことだと思う。そのうえで、新聞だけを特別扱いにする理由や費用負担の公平性について議論を深めることが大事だ。
 新聞関係者は、パブリックコメントに「世界に類を見ない高度に発達した新聞の流通網は日本の文化であり、民主主義を支える知的インフラ」と意見を提出している。世界に誇る新聞ネットワークというのであれば、例え一部の過疎地であろうと、日本郵便に任せることが良いことなのか。新聞網を守るためにも、まずは新聞社や新聞販売店が自助努力で何とかできないかを考えることも求められる。日刊紙が、共同または持ち回りで過疎地に新聞を配達することはできないのだろうか。
 新聞は大きな事件・事故、選挙など、社会に起きる知らせなければならない情報をギリギリまで頑張って入れようと努力している。そのため、新聞の印刷が遅れることや天候不順で配達自体が遅れることもある。
 日本郵便では、速達の人員体制の中に新聞の土曜配達を組み込むことで、コストを吸収するということだが、本来サービスである速達に影響はないのだろうか。本来サービスが、確実に守られることが利用者にとって優先される。(招福招き猫)

第6987号

子どもの数は38年連続で減少

 子どもの数(15歳未満)は今年の4月1日現在で1533万人、1982年から38年連続で減少、過去最少となった。5月5日のこどもの日にちなみ、総務省が前日の4日に明らかにした。男女別では男子が785万人、女子が748万人、男子が37万人多く、女子100人に対する男子の数は105となっている。
 昨年から18万人ほど減少している。89年の平成元年の2320万人から約30年間で787万人も減ったことになる。総人口は1億2623万人で、子どもの占める割合は12.1%、昨年より0.2ポイント下がった。こちらも過去最低となっている。
 12~14歳が322万人(総人口に占める割合2.6%)、9~11歳が321万人(2.5%)、6~8歳が309万人(2.5%)、3~5歳が295万人(2.3%)、0~2歳が286万人(2.3%)。年齢が低いほど少なくなっている。
 子どもの割合は1950年に3分の1を超えていたが、第1次ベビーブーム(1947~49年)の後は、出生数の減少に伴い低下を続け、65年には約4分の1となった。70年代前半には第2次ベビーブーム(71~74年)を反映して僅かに上昇したものの75年からは再び低下し、97年には65歳以上(15.7%)を下回る15.3%となり、それ以降45年連続で低下している。
 ちなみに諸外国ではイギリス、フランスが19.7%、イタリア、ドイツが13.4%、スペイン14.9%、ロシア17.0%、アメリカ18.7%、中国16.9%、韓国12.9%、フィリピン31.2%、インド30.6%、メキシコ27.0%、ブラジル22.2%、エジプト34.2%などとなっている。
 都道府県別では(昨年10月1日現在)、東京都は8000人増加、沖縄県は同数となった以外は減少した。割合は沖縄県が17.0%と最も高く、滋賀県14.0%、佐賀県13.6%、熊本県、宮崎県が13.4%と続く。
 一方で秋田県が10.0%と最も低く、青森県10.8%、北海道10.9%、東京都、高知県が11.2%などとなっている。子どもの数が100万人を超えるのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府。
 子どもの数が減少しているが、65歳以上の一人暮らし、いわば高齢者の単独世帯は増加傾向だ。国立社会保障・人口問題研究所が4月19日に、日本の世帯数の将来推計を公表した。
 2035年までに沖縄県を除く46都道府県で世帯数は減少する。同時に平均世帯人員も減少、15年に1.99人となった東京都に続き、40年までには北海道や高知県で2人を下回る。世帯主が65歳以上の割合は全都道府県で30年に30%以上となり、40年には45道府県で40%を超えると推計している。
 単独世帯も25年には全ての都道府県で最大の割合を占めるようになる。そのうち65歳以上の単独世帯は、40年に全都道府県で30%以上、15都道府県では40%を超える。
 高齢者の単独世帯の増加に伴い、買い物や通院、介護といった日常生活の支援への要請は高まる。地域での見守り活動の重要性も更に大きくなるだろう。少子高齢化の進展が著しい日本、高齢者を支えると同時に、子どもを育てやすい環境の整備も急がれる。こうした要望に地域の拠点としての郵便局ネットワークを活用することも期待されるだろう。
(和光同塵)

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