コラム「春秋一話」

 年/月

2019年8月12日付 第7000・7001合併号

小宮山さんのSDGsとは

 この数年、ゲリラ豪雨による被害が日本列島で多発している。土砂崩れや川の氾濫、浸水…毎年のように起きる水害に“異常気象”とひと言では片づけられないものがある。上映中の映画「天気の子」のラスト、住んでいた家は水の中というシーンは、妙なリアリティ感がある。
 地球温暖化を止めよう!とCO2削減に取り組む企業も増えた。日本は2015年9月、国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)2030アジェンダ」を採択。環境・人権・平和、掲げられた17のゴールに向けて、日本企業の取組みも活発になった。企業は経営ビジョンにそれらを取り入れ、企業価値向上に生かしている。
 CO2削減は、CO2を吸収することも同時に考えなければならない。8月8日に公表された日本政府の森林割合の指標は68.4(2017年)。5年間に0.1ポイント下がった。
 日本は国土の約7割が森林に覆われ、「CO2の吸収は十分」と考えがちだが、実はそうではないらしい。日本の森は、林業が衰退しているため、木を切ることができず、森の新陳代謝が低い。成熟した森は吸収と排出が同レベル、CO2削減には貢献しないのだという。
 「日本はこんなに木がありながら、木材は輸入している。林業を復活させれば、5兆円・50万人の雇用が地方に生まれる。森の木を切り出し、新たに木を植えることで7%の炭酸同化・CO2削減効果も得られる」と元東京大学総長の小宮山宏・三菱総合研究所理事長は林業の振興を切望する。
 日本の森林作業の従事者は、正社員は少なく、日給制や出来高払い。年収は、他の産業に比べて低く、若者の林業離れにつながった。
 小宮山理事長は「林業をやりたい若者は必ずいる。そんなに多くなくてもいい。50万人いればいい。それには年収を400万円まで引き上げることが必要(200万円から250万円ほどだといわれている)」と主張する。そもそも魅力がないため、就職先として選ばれなくなった林業をどのように魅力的なものにするか。木材の耐火機能が向上し木造の高層ビルの建設が可能になったことが注目される。耐火基準の「1000度に3時間耐えられる」木材の開発も複数の企業で進んでいる。
 住友林業が2041年までに木造70階建てを東京・丸の内に建てる構想を発表したことも朗報だ。鉄鋼を使わない7階建ての木造の建物も完成しているという。世界でも木造の高層ビルの建設はトレンドだ。
 木の建物は注目を集めているが、林業を復活させるには課題が多い。木を切るという最初の仕事が衰退してしまっている。日本の森林組合は世界の森林組合の規模と比べ小さく非効率。現在の100倍、100億円規模は必要だという。小宮山理事長は、ITを総動員させて一次産業を活性化することを提案する。
 そうすれば、日本は木材の自給率100%どころか、輸出国にもなれる。木材チップは地元の病院や温泉施設など、ボイラーでお湯を沸かしている事業所に使ってもらう。木材は建設資材に。輸入は内需に変わり、GDPを押し上げる。
 若い人が戻り地方を活性化させるには、その土地の魅力も必要。東京に人が集まるのは、仕事がある、というのが大きな理由だが、文化の集積もある。街には広告や建築物、インテリア…、人が生み出したアイデアがあふれている。映画や音楽、美術、演劇など芸術にも身近に触れることができる。地方での文化的生活の魅力も同時に考えなければならない。
(招福招き猫)

2019年8月5日付 第6999号

日本人住民は最大の減
外国人住民は年々増加

 日本の総人口は今年1月1日現在で1億2744万3563人、前年より26万3696人減少した(0.21%減)。総務省自治行政局が7月10日に住民基本台帳に基づく調査として明らかにした。
 このうち、日本人住民は1億2477万6364人で43万3239人の減少(00.35%減)となった。
 日本人住民は昭和43年に現在の調査を開始して以降、平成18年に初めて減少、20、21年には増加したものの、21年をピークに22年から10年連続して減少した。減少数も最大となった。
 一方で、外国人住民は266万7199人で16万9543人の増加となった(6.79%増)。総人口に占める外国人の割合は前年の1.96%から2.09%となり、初めて2%を超えた。
 日本人住民の出生者数は91万1000人、こちらも昭和54年度の調査開始以降で最少となった。逆に死亡者数は136万3564人で、調査開始以降で最多。平成13年度から11年連続で増加し、24年度は減少したものの、25年度以降は6年連続での増加だ。
 年齢別人口では、年少人口(0~14歳)は1553万1403人(全体に占める割合12.45%)、平成6年の調査開始以降、毎年減少している。生産年齢人口(15~64歳)は7423万887人(同59.49%)で、調査開始以降、7年を除き毎年減少傾向だ。
 老年人口(65歳~)は3501万4064人(同28.06%)で、こちらは毎年増加している。平成27年からは年少人口の2倍以上となっている。
 年少人口、生産年齢人口の割合は毎年減少、老年人口の割合は毎年増加という傾向は一貫している。老年人口の割合が最も高いのは市区部では北海道夕張市の51.41%、町村部では群馬県南牧村の62.09%。
 少子高齢化、人口減少社会が進展する。また、外国人住民は毎年10万人を超えての増加で、年齢別では年少人口が8.51%、生産年齢人口が85.07%、老年人口が6.42%。ほとんどが生産年齢人口であることが大きな特徴だ。
 留学生や技能実習生らの外国人受入れが進んでいることがうかがえる。政府は働き手不足に対応するため、4月に新たな在留資格「特定技能」を創設した。技能実習生からの資格変更を含めて5年間で最大約34万5000人を見込んでいる。今後さらに増えることが予測される。
 国籍・地域別では中国が最も多く3割近くを占め、次いで韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルなど。外国人住民が増加しているといっても日本は諸外国に比べれば、割合はまだ少ない。フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、アメリカなどの欧米は10~15%を占める。
 労働力不足などを勘案すれば、外国人住民の増加は避けて通れない。互いの文化を尊重しながら良好な付き合いを深めていくことが求められる。
 なお、世帯数は総計で5852万7117世帯、51万9581世帯増加した(0.90%増)。昭和43年の調査開始以降、毎年増加している。世帯平均構成人員は2.18人(0.02人減)。こちらは毎年減少している。
(和光同塵)

2019年7月29日付 第6998号

選挙で提起された課題解決を

 断続的に小雨の降る中で佇んでいたせいか、風邪気味になった。東京の渋谷駅頭での熱気あふれる演説に、ついつい長く付き合ったためだ。7月21日の開票報道は、早く寝なければと思いながら結局、うつらうつらしながら、夜遅くまで繰り返される画面に見入っていた。いつものこととはいえ、なかなか寝床には行けないのだ。
 今回の参議院選挙は、重要な課題の提起があったにも関わらず、もう一つ盛り上がりに欠けているという印象が消えなかった。最大の争点と言われた年金問題にせよ、また、安倍首相の憲法改正の提起にしろ、人々の関心を喚起していなかった印象がある。これは投票率となって現れたのだと思う。ここには選挙というよりは、政治に対する不信というか、疑念が強くあるように思えてならない。
 高齢化が急速に進む社会の様々な矛盾の露呈、その中での暮らしの不安、世界の対立的動向と戦争が忍び寄る恐れなど、見通すことの難しい世界の動きの中で、人々には政治に期待するものがあるはずだ。だが、期待するより不信を抱き、政治に背を向ける人々が増えている。
 こうした現象は一概に否定的なこととは言えないかも知れない。政治の限界を見極めることは、政治がなし得ることへの認識でもあり、社会が成熟していることで、必然とも言える。投票に行かなかった人は様々であるだろうが、投票放棄(棄権)には政治へのこうした視線のあることを考えると、否定面だけを見ることはできなくなる。
 しかし、投票を棄権し、政治に期待しないと言ったところで、それは現実の政治を変えるわけでは決してない。政治の可能性(政治が生活にプラスにもマイナスにも作用すること)がなくなったわけではなく、やはり、政治は人々(普通の暮らしにある人)の意志であり、暮らしという日常に大きな力を及ぼすことだからだ。より良い政治を求める行為を放棄してはならないと思う。
 その政治が今求めている課題は年金や憲法改正の是非などの問題だったと言えるが、これに対する人々の答えはどうだったのだろうか。年金は老後の暮らしの問題(その不安)で、提起されたということに意味はあるが、今回の選挙で解答の出ることではなかった。
 各政党の年金問題に対する構想(政策、もしくは方向)は、付焼刃的に感じられ、納得のいくものは見受けられなかった。これは各政党の責任というよりは、致し方のないもので、そこに目が向けられたところに意義を持つものだった。高齢化の進む社会の中で、暮らしの安定(不安の解消)という問題を政治に突きつけ、これに向き合わなければならなくなったということで、今後に残された大きな課題だ。
 安倍首相が提起した改憲の問題はどうなのだろう。改憲の発議に必要な3分の2以上の賛成議員を確保できなかったことが一つの答えと言えるが、安倍首相が言う「議論をすることに賛成が国民の審判だ」ということも一理はあるものの、今なぜ憲法改正なのかということが、多くの人にはピンとこなく、関心が薄かったというのが実情だろう。これもまた、今後に残された課題だ。
 政党にとっては選挙の勝敗が第一義だろうが、大きな主体である国民にとっては、目指すべき課題が見えたということも大事なことだ。年金問題も憲法問題も、今後の重要な政治課題として明瞭になってきた。選挙の終了とともに消え去るものではない。私たちは解決策を見出すべき努力を政治に求め続けるべきだ。
(坂田の力)

2019年7月15日付 第6996・6997合併号

自動運転レベル4の実現は

 自動運転技術が進み、車、船舶、ドローン、空飛ぶクルマなど人が操縦するモビリティの自動化、無人化は着々と進められている。国内の実証実験は公道でのレベル3(基本は自動化だが、緊急時は人が介在)からレベル4(緊急時にも人が対応せず全て自動化)への過渡期にある。レベル4の実証実験は、横須賀リサーチパークにある「ドコモR&Dセンタ」周辺の公道や東京都江東区にある新東京郵便局の敷地内で行われた。
 トヨタは来年開催される東京五輪の選手村の移動に、次世代電気自動車「e-Plette」でのレベル4の実証実験を予定。しかし、アメリカでは昨年3月にウーバーの自動運転車(テスラ・モーターズ製)が実証実験中に、死亡事故を起こした。ライダーという車の上に付いたレーダーが、走行中に人や自転車を認識できなかったのが原因の一つらしい。自動運転システム側に問題がある事故としては初めてで、社会に大きな衝撃を与えた。グーグルカーもバスと衝突事故を起こすなど、ここに来て自動運転の商用化に向けての取組みは冷え込んだ。「自動運転は危険」「乗るのが怖い」という信号を送ってしまった。
 ウーバーの死亡事故は、ライダーの性能に問題があった。ライダーは360度回転しながらレーザービームを照射し、物体までの距離を測定するシステム。照射時に物体に当たらなければ感知しない。この事故の場合は、真っ暗にもかかわらずヘッドライトが上向きでなかったとの指摘もある。私も自動運転車の試乗で、10メートル以上離れた車線に人が入れば、ブレーキがかかり発車できなかったという体験があるが、感知機能が正常なら止まるはずだ。
 「自動運転は交通事故をゼロにする」というバラ色の世界が語られるが、アメリカでは技術の未完成が露呈した。レベル4の実現は、技術をどこまで完成形に近づけられるのかにかかっている。警察は「道路交通法を100%守っていれば、事故は起きない」と言うが、自動運転は道路交通法をしっかり守れるのか。自動運転車と人が運転する車の混在期を考えると、一層難しさを感じる。
 慶應大学大学院の岸博幸教授は「政府は自動運転ですごい未来を描いているが、近未来はそんなにドラスティックに変わらない。10年後に絞り実現可能な活用を利用者側の視点から提案したい」と、4人のメンバーと共に「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」(座長:岸教授)を7月2日に立ち上げた。この10年で実現可能な技術として、高速道路の自動走行、一般道での衝突や接触防止機能付き車の普及、地方で専用レーンを低速で走る自動運転車の実現、走行状況の遠隔監視などを挙げる。暮らしや観光、地域経済などにもたらす影響や活用のアイデアを提言していく。
 トヨタは「モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジ」を宣言し、ソフトバンクやセブンイレブン、ヤマトホールディングスなどと「e-Plette」を活用した共同プロジェクトを進めている。移動コンビニや宅配事業に取り組む。中身を変えれば、移動道の駅やコーヒーショップ…、いろんなサービスが考えられる。
 高齢ドライバーよる事故、買い物難民、過疎地では乗り合いバスの運行が危ぶまれている。一方でドライバーは不足する。
 自動運転への期待は大きいが、公道でのレベル4の実現までには、画像認識やセンサーなどの技術開発はもちろん、交差点でのセンサーの整備、法律の整備や保険など課題山積だ。そして、何より大事なのは利用者の安心感だ。
(招福招き猫)

2019年7月8日付 第6995号

日本の草地は1%に急減

 この100年間で日本の草地が90%以上消失、その結果、多くの草地性生物が絶滅の危機に瀕しているという。
 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が、京都大学や北海道立総合研究機構森林研究本部、オーストラリア国立大学と共同で、過去10万年間にわたる日本の草地の歴史を、日本人になじみの深いセンブリ、カワラナデシコ、オミナエシ、ワレモコウの4種の草地性植物の遺伝子解析により推測した。
 草地とは「半自然草地」のことで、過度に肥料を施したり種まきなどをせずに、人の手が適度に加わることで維持されているところを指す。
 林業や野焼きなどは、温暖多雨な日本で草地を維持するのに貢献してきた。1万年以上前から継続的に人の手が加えられてきたと指摘されている。
 こうした人の活動によって維持されてきた草地は、最終氷期以降も草地性生物を育んできたと考えられている。
 最終氷期とは約1万年前まで続いた直近の氷期。現在よりも気温が最大で7度ほど低く、乾燥した気候と相まって、北方域では森林が発達せず草地が広がったとされている。
 草地は100年前までは、堆肥や牛馬の飼料、あるいは屋根葺きの材料などを生産する場所として、日本の国土の10%以上を占めていた。これは過去10万年にわたると推定されている。
 しかし、この100年ほどの間に、人工林、あるいは管理放棄による天然林に還った。
 その結果、草地は急激に減少し、今では国土の1%を占めるに過ぎないという。温暖多雨な日本では約7割が森林。森林の面積に大きな変化はないが、草地の90%以上の消失で、そこに依存する多くの生物が減少した。
 草地や草地に依存した生物の減少は、どのような意味を持つのか。
 センブリなどの草地性植物は、数十年前まで秋を彩る草地性植物として、どこでも身近に見られた。センブリなどの種は、過去10万年間にわたって、草地が広域的かつ継続的にあったことで、個体数を安定的に維持してきた。
 最近100年の草地の激減に伴い、「千年~万年を単位とする地質学的な時間スケールで見て、大きな出来事であることを示している」と、森林総合研究所では警鐘を鳴らしている。
 さらに「人類が環境の改変や維持に果たしてきた役割、特に林業や農業が草地を維持してきた役割の歴史的な重要性を示す」という。
 人類の経済活動が地球環境に大きな影響を及ぼしている。改めて温暖化を含めて、地球環境を維持することの大切さを考えたい。
(和光同塵)

2019年7月1日付 第6994号

グループの結束が未来を拓く

 日本郵政グループの株主総会が6月に開かれた。上場している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社とも事業報告などの提案事項は原案通り承認された。日本郵政では長門正貢社長が「グループの当期純利益は予想を大きく上回る4794億円。中期経営計画では2020年までに経営基盤強化のインフラ整備に1兆円、成長につながる資本提携にも数千億円規模の投資を視野に入れている。企業価値向上につなげていきたい」と経営方針を説明した。
 株主からは「増配に向け前向きに考えてもらいたい」「郵便局ネットワークは大事だと強調しているが、銀行は窓口コンサルティング業務に限定し、店舗を廃止する傾向。昔ながらのやり方にこだわると、時代に取り残される。コスト削減策は」などの質問があった。
 経営陣は「郵便局ネットワークは3事業のユニバーサルサービスをフェース・ツー・フェースで提供するお客さまとの大切な接点。現行水準を維持しつつ、収益や価値の向上も図る。局外営業活動やみまもりサービスなど郵便局の強みを生かした各種施策により、収益改善に取り組んでいる」と強調した。
 株主もさることながらお客さまあっての郵政事業。民営化・分社化以降、グループ各社の遠心力が働き、サービスが低下したと指摘された。改正郵政民営化法によって郵政事業は公益性、地域性の発揮、郵便局を通じて3事業のユニバーサルサービスを提供することとされ、グループの一体性の強化も求められた。「2万4000の郵便局がグループの絶対価値」(日本郵便の横山邦男社長)だが、求心力について懸念する声もある。
 5月の全特広島総会では、長門社長は人材育成にからめて「若手から将来への不安が出ている。グループ4社がバラバラで他社が何をしているか分からない、本部が乱暴で現場の意向が全然伝わらない等々の声がある。4社間の連携を一層密にすることをはじめ的確な人事異動も必要」と課題点を挙げた。
 全特の山本利郎会長も「株式売却後もグループ間の連携を深めていくことだ。民営化当初は分社化で遠心力が働いた一面があったが、改正法によって求心力を働かせグループが一体で対応するスキームを作ってきた。これからも深化が重要と認識している」と語っている。日本郵便の髙橋亨会長も「グループには郵便局という素晴らしい存在がある。グループの一致結束、団結こそが将来展望を切り拓く」と強調する。
 新しい郵政事業の進化を政治の中でも加速させたいと言う柘植芳文参院議員は「民営・分社化では、もう公的なことはやらなくていい、市場の中でしっかりと儲かる会社にしていく」との雰囲気があったことを指摘、しかし「長く培ってきた公的使命と社会貢献をする郵政事業に戻っていこうとの気運が出てきたことは確か」と話す。
 そして「グループが市場原理に流され、市場の中で生きていく事業になるのか、郵便局が築いてきた公的使命と社会貢献をベースにした形での事業に変わっていくのか、極めて難しい岐路に立っている」との認識を示し、改めて「もっと国民に利用されやすい、いわゆる公的使命、社会貢献を果たしていく事業としての存在価値を高めていく」ことの重要性を挙げる。
 また「人口減少や過疎化、高齢化社会が進展するが、高齢者を取り巻く問題が提起されている」とし、「高齢者に政治が何をできるかを訴えている。人生100年時代を見据えて、様々な政策が提言されているが、多くの“難民問題”が発生している」と、孤立や生活面での不便といった課題を指摘。「超党派議連で新しい形の制度を作ろうとの気運が盛り上がっている。簡単に言えば協同組合的なものを作り、手を差し伸べ、支え合っていこうというのが趣旨」とした。
 そうした議論で「いつも話題になるのが郵便局。協同組合的なものの中心に置かれ、そこをベースとして幅広く高齢者、地域の方々に寄り添っていくことが、政治の中でも白熱した議論になっている」ことを挙げて「秋の臨時国会には法案が出てくると思う」と述べた。土曜日の配達の在り方などを検討、安定的な郵便サービスを確保することを目的とした郵便法の改正も臨時国会で成立が期待される。
 地域における郵便局ネットワークの存在価値は高く、信頼や期待が大きい。特に地方ではセーフティネットワークになっている。単なる効率化のみでの判断ではなく、期待されている公益性や地域性を「更に高めることをしっかり前に進めていく」(柘植参院議員)ことが改めて求められている。
(和光同塵)

第6993号

多発する高齢者の交通事故

 東京・池袋の路上を暴走し、12人の死傷者を出した交通事故は様々な波紋を投げかけている。事故直後のネット上では、運転者が逮捕されなかったことへの疑問が続出した。これには元高級官僚だったことも影響しているのだろうが、この事故がもたらした衝撃は大きかったし、その投げかけているものは小さくない。その後も高齢者の交通事故が続いている。
 高齢者の交通事故は予測され、警告も発せられていたことだが、起こってみればその悲惨さを示しただけではなく、なかなか解決策が見えない。多分、誰しもが高齢に達した人の運転は止めるべきだと思っただろう。こういう感情が起こるのは自然なことだが、少し冷静になってみれば、そう簡単には片付かないことにも気がつくだろう。
 地域事情などの諸条件によって異なるだろうが、日常生活に欠かせぬ手段となった車を、人は簡単には手放せない。公共交通機関がないといった事情にもよるだろうが、車は生活の重要な構成要素になっており、社会は車を不可欠な存在にしている。高齢化社会も車社会も歴史的にはかつてなかったとも言え、初めて経験する事態である。
 誰でも高齢者による事故には驚くし、運転を自重すべきだと思う。これは自然な思いであり、高齢者の運転免許証の返納が増えているという形でも表れている。だが、返納を考えたにしても、迷い、踏み切れないでいる人も多くいるはずである。
 高齢者の事故の多発で、高齢者は運転に注意深くはなっているだろうが、根本的に無くなるとも言えない。高齢からくる身体の対応が事故につながる事態は避けられないと推察する。これはどのように解決されるべきなのか。高齢者の運転認可の条件の検討というのは当然にも起こるべき事柄であり、これまでと違って本格化するだろう。
 走行スピードや自宅周辺に限るといった運転場所の限定、安全装置のある車などが検討されることは必須であると思われる。現在でも走行スピードには様々な規制があるが、より細かく、年齢による規制といった面が強く出てくることが考えられるだろう。高齢者の運転に関する規制などはこれまで検討が少なかったし、社会の高齢化に対して遅れがあったと考えられ、改善が進むと思う。
 さらに重要な視点は、車の製造者(自動車メーカー)の側に問題はないのかということがある。高齢者の事故は運転者の問題であって、メーカーにはさして言及されてはいないが、車社会をつくりだし、交通形態を変えてきたことの一端はメーカーにもあったことは明瞭である。
 メーカーは高齢者が簡単に運転を断念できないように、人々の生活と社会を変えてきた側面がある。少なくともそのように人々の生活と社会を変えてきた責任の一端を担うべき位置にいるのである。単純にいえば、高齢者に安全な車を作る責任がある。自動運転などの開発に膨大な投資をしていることが伝えられる。そうであれば、高齢者が安全に運転できる車も開発できるのではないか。このことに力を注ぐべきである。
 運転は断念したい、事故を起こしては申し訳ないと思いながら、様々な事情で止められないと苦悩している高齢者に、より安全な車を提供するという責務をメーカーは負っているのではないだろうか。車の機能の改善に向ける努力をメーカーが果たすことを期待する。
(坂田の力)

第6992号

進む少子化、出生率は1.42人

 平成30(2018)年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人、前年より2万7668人減少した。統計がある138万6981人だった明治32(1899)年以降で最も少なかった。少子化が進展している。
 厚生労働省が6月7日に平成30年の人口動態統計(概数)を公表した。3年連続で100万人を割り、史上最少を更新した。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」も1.42で、前年から0.01ポイント低下した。こちらも3年連続の低下。人口維持に必要とされる2.07を大きく下回る。
 一方、高齢化が進んでいるため、死亡数は前年から2万2085人増え136万2485人、戦後最多となった。死亡数と出生数の差である自然減は前年より4万9753人多い44万4085人、初の40万人超で過去最大の減少幅となった。
 人口は30年10月1日現在で1億2422万人、65歳以上は28.5%を占める。今後も高齢化により死亡数が増えることが予測される。少子化と死亡数の増加が同時に進行すれば、人口減に拍車がかかる。
 婚姻件数は前年から2万428組減って、58万6438組と、25年から6年連続で減少、戦後最少を更新した。人口1000人当たりの婚姻数は年4.7組。平均初婚年齢は夫31.1歳、妻29.4歳。初婚年齢が最も低いのは宮崎県で夫29.7歳、妻28.7歳、最も高いのは東京都の夫32.3歳、妻30.4歳。離婚件数は3929組減って20万8333組。人口1000人当たり1.68組。
 出生数は終戦直後の昭和22~24年の第1次ベビーブームには250万人だった。最多は24年の269万6638人。46~49年の第2次ベビーブームでも200万人を超えていた。ピークは48年の209万1983人。その後は一貫して減少傾向が続く。
 平成19年には死亡数が出生数を上回った。第2次ベビーブーム世代も40歳代半ばとなり、出産適齢期から外れつつある。出生数の減少について、厚生労働省は出生数の約85%を占める25~39歳の女性の減少、さらには晩婚化の進展が影響していると分析、今後も出生数の下降傾向は続くと見ている。出産適齢期の女性が少なければ、生まれる子どもの数が減るのは当然のことだ。
 出生率は沖縄県が1.89と最も高く、島根県1.74、宮崎県1.72、鹿児島県4.70、熊本県1.69と続く。低いのは東京都1.20、北海道1.27、京都府129、宮城県1.30、秋田県1.33、神奈川県1.33。
 政府は「2025年年度末までに希望出生率1.8人」「60年に人口1億程度を維持」を目標に、少子化対策を進めているが、現状では達成は難しいだろう。子どもを持ちたいと思いながら躊躇う若い世代の声に、いかに応えるかが重要だ。特に2人目、3人目を断念する“2人目の壁”を低くすることが求められると指摘されている。
 非正規雇用の拡大など経済的な理由もあるが、特に女性は仕事と子育てを両立する環境が整っていないことも大きな要因となっている。日本郵政グループは出産した女性の職場復帰にも取り組んでいるが、郵便局ネットワークを活用した貢献も期待される。
 ちなみに出生率は日本の1.42に対してフランス1.90、スウェーデン1.78、アメリカ1.77、イギリス1.74、ドイツ1.57、イタリア1.32、シンガポール1.14、韓国1.05などとなっている。
(和光同塵)

第6991号

求む“変な人” !?

 総務省が主催する「異能vation」の募集が始まった。お役所が何と、“変な人”を求めているらしい。変な人とは、奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗を恐れずに挑戦する人。新しい発想は新たな市場を創り出す。総務省は「最初から地球規模の市場を狙いたい」と変な人が巻き起こす世界的なムーブメントに期待する。
 6月5日に発表された政府の「未来投資会議」(議長:安倍晋三総理)の「成長戦略実行計画案」にも、第4次産業革命に必要な高スキルを持つ人材として「創造性、感性、デザイン性、企画力といった能力やスキルを備えた人材」と具体像を示しており、その育成が必要なことも強調されている。
 変な人とはイノベーションの原動力になる。アメリカには、マイクロソフトやアマゾン、アップル、フェイスブックなど、今や世界的大企業がいくつも存在するが、どれもベンチャー企業から生まれた。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグら創業者は、最初は異端児、変人と言われた。
 自分がやりたいことを明確に持ち、開発する技術、譲らない知的財産権を武器に新たな市場を創り出した。自分が欲しいものでもあり、何が何でもやり通す。それが彼らの推進力だ。アメリカにはそんな思いを持った尖った優秀な人材が、思い切って仕事ができる素地があったことも成功につながっている。
 日本は世界を席巻する勢いのあるサービスが育っているのか。メーカーなどで開発された技術には、次の段階に発展しない多くの「死の谷」が存在する。多くの技術や特許がなぜ死の谷に落ちてしまったのかも分析する必要がある。中国がレアアースの輸出を停止した時、日本メーカーの助けになったのは先輩が残してくれた技術だったという。日本には技術力がある。視点を変えれば死の谷にも、お宝が眠っているかもしれない。
 日本の大学発ベンチャーの成功者に「サイバーダイン」がある。社長で筑波大学の山海嘉之教授には2度、取材をしたことがあるが、1度目の取材では「制度とのぶつかり合い」と課題を指摘。2度目は資金集めだった。そこには山海教授が外国人投資家向けのIR説明会を自ら英語で行う姿があった。研究と経営の両立は苦労がいる。
 成長戦略実行計画案には、第4次産業革命を成功させるには、それに合った組織と人の変革が必要なことも明記されている。モバイル・インターネットの基礎となったNTTドコモのiモードはイノベーションの成功事例として学ぶところも多い。
 同プロジェクトチームもまた当初、社内では異端児扱いされたという。発案者の松永真理さん、ビジネスとしてまとめ上げる夏野剛さん、チーム責任者の榎啓一さんらがそれぞれの知識や経験を生かし、役割分担。チーム力でiモードを成功に導いた。松永さんと夏野さんはこのプロジェクトのために中途採用されたスタッフ。組織の変革には外部の力が有効なのかもしれない。
 異能vationはそんな新しい発想を持ったシード(種)探しの一つ。今年で6年目を迎えるが、昨年度の「破壊的な挑戦部門」の応募者は約1000件、「ジェネレーションアワード部門」は1万人を超えた。ジェネレーションアワードには小学生の応募もあり、プリクラと顔認証を組み合わせて迷子探しができる「子供交番」の提案がノミネートされた。アイデアそのものもあるが、審査には人事部も目を光らせる。ここはアイデア豊富な人材探しの場ともなっている。令和初の変な人はどんな人なのか。
(招福招き猫)

第6990号

ふるさと納税とみまもりサービス

 ふるさと納税の指定制度が6月1日から始まった。指定を外された大阪府泉佐野市はアマゾンギフト券付きの駆け込みキャンペーンで、昨年11月から3月までの5か月間に332億円を集めた。年間予算563億円の市が、その7割に当たる400億円余りの寄付額(見込み)を獲得する異例な事態。
 泉佐野市は指定外となったことに納得がいかないらしく、公表3日後には「ふるさと納税の本来の役割とは?」という主張を公表し、総務省にも質問書を送った。
 2017年度のふるさと納税の寄付額は3653億円(住民税と所得税の控除のうち、住民税の税額控除額は寄付額の67%の2448億円)。その経費は受入額の55.5%に当たる2027億円。新制度により返礼品が3割以下となれば、その分、経費も下がると思われるが、そもそもふるさと納税制度がなければ、寄付額の全額は税として使われる。
 貴重な税金がふるさと納税の返礼品として使われるからには、制度の趣旨「ふるさとやお世話になった自治体に感謝や応援の気持ちを伝える」に沿っていなければならない。
 石田真敏総務大臣は指定制度実施に当たり「クラウドファンディングの活用や納税者との継続的なつながりを持つなど、地域活性化に向けて創意工夫を凝らした取組みを進めてもらいたい」とコメント。これに対して泉佐野市はクラウドファンディングについて「返礼品を送る寄付募集が全て禁止されない限り厳しい」と反論する。
 ふるさと納税は寄付である。東日本大震災では多額の寄付が集まったが、返礼品を求める人がいただろうか。困っているから助けてあげたいという気持ちからの寄付。お世話になったふるさとに恩返しをしたいから寄付するというのと、何ら変わりない。「返礼品がないと寄付はしない」と国民が考えるのであれば、同制度のあり方自体が問題となる。
 ふるさと納税制度は、地方自治体が補助金や交付金に頼らずに事業ができる数少ない手段の一つ。返礼品がなくても「協力したい」「応援したい」と思える事業やサービスがある時だけ寄付を募ればよいのではないか。
 自治体職員は、返礼品探しに奔走するのではなく、そのエネルギーを住民サービスや地域活性化のアイデアの練り上げに使った方がよい。
 「地場産品にすれば地元にお金が落ちるからよい」という意見もあるが、ふるさと納税は景気対策ではない。また返礼品は長年にわたり、同じ事業者にするわけにもいかない。
 返礼品はアイデアを出した受益者が工夫して出せばいい。ふるさと納税の寄付のおかげで作られた産品、サービスであれば「おかげで助かった」「とてもうれしかった」といったお礼の手紙でよいではないか。寄付者と活用者の心が通じ合える。
 郵便局のみまもりサービスは、現在2400の自治体で返礼品として採用されている。月額2500円の訪問サービスの場合は、年間3万円。返礼割合は3割以下のため、寄付額は10万円以上となるが、その額の寄付をするには、年収ベースで680万円から850万円以上と比較的高収入な人に限られる。
 クラウドファンディング型の寄付なら経費以外は全額利用できる。お年寄りや子どもの通学などの見守りニーズは高まっている。
 郵便局はネットワークや人的資源を存分に生かしつつ、自治体と一緒にアイデアを出し合い、そこにサービスプロバイダーとして参画する手もある。
(招福招き猫)

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