コラム「春秋一話」

 年/月

2019年 9月16日 第7005号

人生100年時代と働き方

 人生100年時代。95歳まで生きた場合、「老後資金は2000万円不足する」(モデル世帯)という金融庁の審議会の報告書は、どの世代にも将来不安を与えた。年金不安は、貯蓄熱が高まる一方で消費マインドは冷え込む。マイナス金利にもかかわらず、銀行の貯金・預金残高は膨らんでいる。デフレから抜けられず、日銀が目指す物価上昇率2%は程遠い。
 企業は65歳定年制の導入にようやく漕ぎつけて、一安心と思ったら、政府は次なる課題「70歳雇用」に取り組む(6月発表「未来投資会議の成長戦略実行計画」)。定年制の廃止や70歳定年制といった従来型の雇用契約の延長のほか、フリーランス契約・起業支援のための資金提供、子会社などでの継続雇用、他の企業への再就職など多様な働き方を示している。
 8月末には5年に1度の「年金制度の財政検証」も公表された。モデルケース(夫婦2人で月額22万円)では、現役時代の月平均の手取り額と比べた年金額の割合「所得代替率」は61.7%。所得代替率は、年々下がる。成長がほぼ止まった状況を想定した場合、25年後には50%となる。現役時代の平均手取り額の半分。政府はこれを何とか確保したい考えだ。
 年金を加算する方法として、受給の繰り下げがある。繰り下げれば毎月0.7%が増額される。最大70歳まで年金(老齢厚生年金・老齢基礎年金、国民年金)を繰り下げれば、年額で42%増える。平均余命を基準に作られ、65歳から70歳までの繰り下げも60歳からの繰り上げも等価になる仕組み。基本的には平均余命より長く生きれば、繰り下げ期間が長いほど得になる。何を選択するかは、本人次第だ。
 高齢者は何歳まで働く意欲を持っているのか。NRI社会情報システムが、シニア世代に行ったインターネット調査(55歳から79歳までの2000人)では、「何歳まで働きたいか」について、正社員の平均は55歳から59歳が69.6歳、60歳から64歳までが70.3歳、65歳から74歳は74.4歳という結果。65歳までの年金の空白期間はもちろん、これから議論が始まる70歳まで働くことにも前向きだ。理由として「経済的理由」を挙げる人が一番多く、「生きがい・自己実現」はその次だ。
 金融庁の2000万円問題は物議をかもしたが、調査では65歳以上のシニアは「家計に余裕がなく、不安を抱いている人」は6~7割に上る。一番多いのは「余裕はないが、何とかやりくりしている」。「余裕があり、将来の心配はない」という人は1割に満たない。仕事の内容については、60歳から64歳の正社員は「現役時代の知識やスキルが活かせる仕事」を望む人が半数を占める。働くには生きがいも大事な要素だ。
 希望する従業員は65歳までの雇用を義務付けた「改正高年齢者雇用安定法」(2013年4月施行)により、企業では65歳定年制を導入する企業も増えてきた。日本郵政グループも来年度から導入する。団塊の世代が後期高齢者になる時期も迫っており、年金・医療・介護、70歳雇用延長など制度が高齢社会に対応するよう、本格的な議論が始まる。
 「老後資金を貯めつつ70歳まで働き、社会保険も支払うのがいい」と数字が語る。少子高齢社会が進行する日本では、制度の維持には高齢者も女性も働かなければならないという側面もある。
 同調査では「働いている人の方が、健康状態が良い」という結果もある。自分に合った働き方が見つかり、健康であれば、働ける間は働くのも良いのではないか。
(招福招き猫)

2019年 9月9日 第7004号

災害を語り継ぐ大切さ

 9月1日は「防災の日」。これは1923(大正12)年の直下型地震、関東大震災が9月1日に発生したことに合わせ、1960年に決められた。関東大震災の発生は正午直前、昼食の用意を多くの人が行っていたこともあって、大規模な火災が生じ、犠牲者は10万人以上に及んだとされる。
 防災の日が制定された契機となったのは、前年の59年、甚大な被害が発生した伊勢湾台風だ。紀伊半島に上陸した台風により、当時の観測史上最大の高潮が名古屋市を中心とする伊勢湾の奥まで打ち寄せ、死者・行方不明者は5千人を超した。
 昨年は6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月には高潮で関西国際空港が機能マヒに陥った台風21号、北海道胆振東部地震など災害が相次いだ。今年も8月28日には、九州北部が記録的な大雨に見舞われた。連なった雨雲が帯状に並び、長時間にわたり豪雨を降らす「線状降水帯」が要因とされる。
 今年は関東大震災から96年と約1世紀、伊勢湾台風から60年となる。悲劇を繰り返さないためにも、情報伝達の確立や避難の仕組みといった災害への備え、また災害に強い街づくりなどに知恵を集めることが求められている。
 地球温暖化の影響だろうか、過去に経験のないような大規模な災害も起きている。従来にない発想での備えも迫られている。地震、台風、豪雨、津波、火山噴火など日本は“災害列島”。備えを怠ることが決してあってはならない。同時に過去の災害から学ぶことは多い。
 「天災は忘れたころにやってくる」と言ったのは物理学者の寺田寅彦とされている。天災を経験した者は、その恐ろしさを覚えているが、時がたち次世代になると災害への備えや意識が疎かになりがちとなる。そうした頃に、また天災が起きるとの戒めだろう。寅彦は『科学と文学』で「歴史は繰り返す。法則は不変である。それ故に過去の記録はまた将来の予言となる」と述べている。
 「二百十日の前後ろ(まえうしろ)」は、昔からよく聞く。立春から数えて二百十日、いわば9月1日の前後は台風が来襲し、荒れた天気になるので用心しなければならないとされる。全国各地には、災害についての様々な言い伝えがある。総務省消防庁のホームページには、災害の教訓は各地に記録として、あるいは言葉として伝承されているものが多くあると「全国災害伝承情報」が掲載されている。
 「地震のときは竹藪へ逃げろ」「雉が鳴くと地震が起きる」「井戸水が引くと地震」「古代から使っている道は浸水しない」「堤防には柳を植えよ」「ネズミがいなくなると火事」「鯰が動くと地震」。科学的根拠の薄いものもあるだろうが、昔からの言い伝えには経験による示唆が含まれているのだろう。過去に学ぶことも大切だ。
 三陸地方には「津波てんでんこ」との言葉がある。東北地方の方言で「てんでんこ」は「おのおの」「それぞれに」という意味。津波はあっという間にくるから、各自がとにかく全力で逃げろ、自分の命は自分で守れということだ。津波を何度も経験した三陸地方ならではの伝承だろう。
 昨年の西日本豪雨で大きな被害にあった広島県坂町の小屋浦地区、天地川の上流の砂防ダムが崩壊し、土石流が集落を襲った。この地区では1907(明治40)年7月にも大雨で土石流が発生し44人が死亡した。その土砂災害を伝える石碑が建てられていた。被災の生々しい状況と死没者の名前が刻まれている。災害を語り継ぐ大切さを忘れてはならない。
(和光同塵)

2019年9月2日 第7003号

戦争について考え続ける

 マンションの通路にアブラゼミが迷い込むことがある。いくらか小ぶりになったかなと取り上げるたびに思うのだが、同時にああ夏なのだと感じる。セミや小鮒取りに夢中だった少年期の記憶がよみがえるのだが、8月になると戦争のことが顧みられる。そんな月だと気がついたのはいつからだろうか。8月6日の広島原爆の日から8月15日の終戦記念日まで、この月の真ん中にかけての日々は戦争を顧みる日だが、そう思うようになったのは、かなり年を経てからだ。
 少年期は戦死者慰霊碑の建つ小学校の校庭で盆踊りに夢中だった。神社や学校の片隅にある戦死者の慰霊碑は、もう誰も気にとめない光景があり、これは何だろうと思ったことは記憶に残っているにしても。毎年8月になるとテレビや新聞は戦争の特集を組み、戦死者の追悼を含めた報道がなされる。いつも新しい証言(戦争体験)が、長い沈黙を破った人々の口からなされるとき、言いようのない感情にさせられる。戦争の深さと広さについて考えさせられる。
 終戦の時は4歳を少し経たくらいだったが、かすかであるものの戦争の記憶はある。無意識な戦時下の記憶も含め、それが戦争についての関心を喚起する基盤になっているのだと思う。だから、戦争を経験しなかった世代にとって、戦争のことはどう考えられているのだろうということも気になる。そこには大きな断絶があるのだろう、と想像もする。戦争を考えることは、この断絶を織り込まなければならないと思う。
 8月には戦争について考える。これは当たり前のことだが、戦争について長く沈黙していた人たちの証言を聞くたびに、戦争とは何であったのか、どう考えればいいのか、その謎は深まるように思う。物心がついてからと言うと早すぎるということになるのだろうが、物事を考え始めるようになってから、戦争についての多くの本を読んだ。論稿をしたためたこともある。著作だってある。けれど、戦争についての考察は段々と謎だという面を深めもするように思える。本棚が戦争に関する本で埋まっても、戦争の認識が明瞭になるわけではない。
 今年は昭和天皇の「拝謁記」が話題になっている。終戦と昭和天皇の言動は分らないことが多かったし、戦争責任の問題を含めた評価が分かれてきた。「拝謁記」は昭和天皇の戦争での役割を含め、これまで明瞭でなかったところを明らかにすると思われる。この新資料は毎年のように出てくる資料の一つであり、それだけ戦争というのは深くて、また、複雑なものだということを示すのだと思う。
 今年の8月は例年になく、悪化する韓国との関係が影を落としていた。「徴用工訴訟」や「慰安婦問題」がその根にあることは誰しもが認めることだが、この問題での日本政府と韓国政府の対立はよく見えないところがある。例えば「徴用工訴訟」問題は1965年の日韓会談で解決済みというのが政府の立場だが、何が解決したのか明瞭でないことが挙げられよう。「慰安婦問題」は2015年の日韓合意で解決済みというが、同じように何が解決したかは不明瞭だ。
 こうした問題を正面にして事の対立があり、どのような解決が目指されているのか明らかではない。別の事でもって問題の解決に当たろうとしているからだが、その背後にはかつての戦争やその責任についての認識での対立があるからだろう。ここには戦争の問題のとらえ難さがある。
 日本国民の一人として、戦争の認識や理解の難しさを自覚し、それを考え続けることが課せられているのだと思う。8月はそうした時節なのだということに思いを馳せ、戦争について考え続けていきたい。
(坂田の力)

2019年8月26日 第7002号

「子どもの貧困」対策、未来への投資

 ポキポキと暑さのせいで折れているシャープペンの芯と集中力が(若山牧水記念文学館「こども短歌コンクール」)
 夏休みも終わりに近い。子どもたちには宿題の進捗度合いが気になる時期だろう。暑さにもめげず、夏休みには蝉取りなどに没頭した少年時代が懐かしい。歳をとったこともあって、この頃の暑さは耐え難い。暑さなどに負けない溌溂とした子どもの歓声は社会の息吹だ。
 近年は社会問題として「子どもの貧困」が注目される。政府は2009年に初めて相対的貧困率を公表、12年には16.3%に達し、15年には13.9%に下がったが、7人に1人が貧困ラインを下回る生活を余儀なくされている。13年に子どもの貧困対策の推進に関する法律が成立したが、対策はまだ不十分だ。
 金銭的な理由で必要な食料を買えなかった経験があり、授業が分からないと感じ、クラブ活動にも参加しない子どもがいる世帯は、貧しさの度合いが高いと専門家は指摘する。特にひとり親の相対的貧困率は50.8%に達する。その中でも母子家庭は58.5%と高い(内閣府)。とにかく生活を維持するために必死で、子どもと向き合う時間がなかなか取れないこともある。
 学習意欲やコミュニケーション能力、アイデンティティーなどを涵養し、自信を持って生きるように子どもを仕向けることが重要だ。親の収入が少なく、進学や就職のチャンスに恵まれず、その子どもの世代も貧困から脱することが難しいとされる“貧困の連鎖”を断ち切ることが求められている。
 親の収入や幼少期の環境で将来が決定してしまうことの理不尽さが連鎖してはならない。意欲と能力があれば、等しく進学でき、自分の希望や夢を叶えることができる社会でありたい。
 こうした「子どもの貧困」は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも日本は34か国中10番目の高さだ。また、家庭分野への社会支出の対GDP(国内総生産)比では、最も多いイギリスは3.76%、各国平均は2%、一方で日本は1.25%に過ぎない。
 「子どもの貧困」の連鎖は、急速に進む人口減少との相乗によって、人材・市場の縮小、社会保障費の増加といった悪影響が指摘される。貧困対策によって進学率や高校中退率などが改善した場合、生涯所得が2.9兆円ほど増え、国の財政は1.1兆円も改善するとの試算がある。「子どもの貧困」対策はいわば未来への投資でもある。
 貧困をなくすのは容易ではないだろうが、自治体やNPO法人、企業などが連携、子どもの居場所づくり、子ども食堂、学習支援、フードバンク(ボックス)などの取組みが進められているものの十分とは言えない状況だ。
 コンビニエンスストアのファミリーマートは、3月から「ファミマ子ども食堂」を2000店で開始した。イートインスペースを利用し、子どもに食事を提供したり、住民のコミュニケーションの場にすることで、地域の活性化につなげるという。
 鳥取県因幡地区連絡会では、2月から子ども食堂への支援策として、全国で初めて郵便局にフードボックスを設置した。家庭で利用する見込みのない食品を持ち寄ってもらい、子ども食堂に寄付している。同様の取組みは、沖縄県うるま市の郵便局でも7月から始まっている。
 また、全国各地で郵便局と自治体の包括連携協定の締結が進んでいるが、山口県宇部市と郵便局が7月に行った協定の締結式では、高齢者や子どもの居場所、地元野菜の販売所などとして利用、行政のパートナーとして力添えを願うとの市長の期待が表明されている。
 郵便局ネットワークを通じて、地域の安心・安全に貢献することは意義深い。将来、社会を担っていく子どもたちの感性が、伸び伸びと育まれるようにしたいものだ。
 夏の雲くじらわたあめヘリコプターどんどんかわる空の絵本だ(北海道立文学館「小・中学生短歌コンテスト」)
(和光同塵)

2019年8月12日付 第7000・7001合併号

小宮山さんのSDGsとは

 この数年、ゲリラ豪雨による被害が日本列島で多発している。土砂崩れや川の氾濫、浸水…毎年のように起きる水害に“異常気象”とひと言では片づけられないものがある。上映中の映画「天気の子」のラスト、住んでいた家は水の中というシーンは、妙なリアリティ感がある。
 地球温暖化を止めよう!とCO2削減に取り組む企業も増えた。日本は2015年9月、国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)2030アジェンダ」を採択。環境・人権・平和、掲げられた17のゴールに向けて、日本企業の取組みも活発になった。企業は経営ビジョンにそれらを取り入れ、企業価値向上に生かしている。
 CO2削減は、CO2を吸収することも同時に考えなければならない。8月8日に公表された日本政府の森林割合の指標は68.4(2017年)。5年間に0.1ポイント下がった。
 日本は国土の約7割が森林に覆われ、「CO2の吸収は十分」と考えがちだが、実はそうではないらしい。日本の森は、林業が衰退しているため、木を切ることができず、森の新陳代謝が低い。成熟した森は吸収と排出が同レベル、CO2削減には貢献しないのだという。
 「日本はこんなに木がありながら、木材は輸入している。林業を復活させれば、5兆円・50万人の雇用が地方に生まれる。森の木を切り出し、新たに木を植えることで7%の炭酸同化・CO2削減効果も得られる」と元東京大学総長の小宮山宏・三菱総合研究所理事長は林業の振興を切望する。
 日本の森林作業の従事者は、正社員は少なく、日給制や出来高払い。年収は、他の産業に比べて低く、若者の林業離れにつながった。
 小宮山理事長は「林業をやりたい若者は必ずいる。そんなに多くなくてもいい。50万人いればいい。それには年収を400万円まで引き上げることが必要(200万円から250万円ほどだといわれている)」と主張する。そもそも魅力がないため、就職先として選ばれなくなった林業をどのように魅力的なものにするか。木材の耐火機能が向上し木造の高層ビルの建設が可能になったことが注目される。耐火基準の「1000度に3時間耐えられる」木材の開発も複数の企業で進んでいる。
 住友林業が2041年までに木造70階建てを東京・丸の内に建てる構想を発表したことも朗報だ。鉄鋼を使わない7階建ての木造の建物も完成しているという。世界でも木造の高層ビルの建設はトレンドだ。
 木の建物は注目を集めているが、林業を復活させるには課題が多い。木を切るという最初の仕事が衰退してしまっている。日本の森林組合は世界の森林組合の規模と比べ小さく非効率。現在の100倍、100億円規模は必要だという。小宮山理事長は、ITを総動員させて一次産業を活性化することを提案する。
 そうすれば、日本は木材の自給率100%どころか、輸出国にもなれる。木材チップは地元の病院や温泉施設など、ボイラーでお湯を沸かしている事業所に使ってもらう。木材は建設資材に。輸入は内需に変わり、GDPを押し上げる。
 若い人が戻り地方を活性化させるには、その土地の魅力も必要。東京に人が集まるのは、仕事がある、というのが大きな理由だが、文化の集積もある。街には広告や建築物、インテリア…、人が生み出したアイデアがあふれている。映画や音楽、美術、演劇など芸術にも身近に触れることができる。地方での文化的生活の魅力も同時に考えなければならない。
(招福招き猫)

2019年8月5日付 第6999号

日本人住民は最大の減
外国人住民は年々増加

 日本の総人口は今年1月1日現在で1億2744万3563人、前年より26万3696人減少した(0.21%減)。総務省自治行政局が7月10日に住民基本台帳に基づく調査として明らかにした。
 このうち、日本人住民は1億2477万6364人で43万3239人の減少(00.35%減)となった。
 日本人住民は昭和43年に現在の調査を開始して以降、平成18年に初めて減少、20、21年には増加したものの、21年をピークに22年から10年連続して減少した。減少数も最大となった。
 一方で、外国人住民は266万7199人で16万9543人の増加となった(6.79%増)。総人口に占める外国人の割合は前年の1.96%から2.09%となり、初めて2%を超えた。
 日本人住民の出生者数は91万1000人、こちらも昭和54年度の調査開始以降で最少となった。逆に死亡者数は136万3564人で、調査開始以降で最多。平成13年度から11年連続で増加し、24年度は減少したものの、25年度以降は6年連続での増加だ。
 年齢別人口では、年少人口(0~14歳)は1553万1403人(全体に占める割合12.45%)、平成6年の調査開始以降、毎年減少している。生産年齢人口(15~64歳)は7423万887人(同59.49%)で、調査開始以降、7年を除き毎年減少傾向だ。
 老年人口(65歳~)は3501万4064人(同28.06%)で、こちらは毎年増加している。平成27年からは年少人口の2倍以上となっている。
 年少人口、生産年齢人口の割合は毎年減少、老年人口の割合は毎年増加という傾向は一貫している。老年人口の割合が最も高いのは市区部では北海道夕張市の51.41%、町村部では群馬県南牧村の62.09%。
 少子高齢化、人口減少社会が進展する。また、外国人住民は毎年10万人を超えての増加で、年齢別では年少人口が8.51%、生産年齢人口が85.07%、老年人口が6.42%。ほとんどが生産年齢人口であることが大きな特徴だ。
 留学生や技能実習生らの外国人受入れが進んでいることがうかがえる。政府は働き手不足に対応するため、4月に新たな在留資格「特定技能」を創設した。技能実習生からの資格変更を含めて5年間で最大約34万5000人を見込んでいる。今後さらに増えることが予測される。
 国籍・地域別では中国が最も多く3割近くを占め、次いで韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルなど。外国人住民が増加しているといっても日本は諸外国に比べれば、割合はまだ少ない。フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、アメリカなどの欧米は10~15%を占める。
 労働力不足などを勘案すれば、外国人住民の増加は避けて通れない。互いの文化を尊重しながら良好な付き合いを深めていくことが求められる。
 なお、世帯数は総計で5852万7117世帯、51万9581世帯増加した(0.90%増)。昭和43年の調査開始以降、毎年増加している。世帯平均構成人員は2.18人(0.02人減)。こちらは毎年減少している。
(和光同塵)

2019年7月29日付 第6998号

選挙で提起された課題解決を

 断続的に小雨の降る中で佇んでいたせいか、風邪気味になった。東京の渋谷駅頭での熱気あふれる演説に、ついつい長く付き合ったためだ。7月21日の開票報道は、早く寝なければと思いながら結局、うつらうつらしながら、夜遅くまで繰り返される画面に見入っていた。いつものこととはいえ、なかなか寝床には行けないのだ。
 今回の参議院選挙は、重要な課題の提起があったにも関わらず、もう一つ盛り上がりに欠けているという印象が消えなかった。最大の争点と言われた年金問題にせよ、また、安倍首相の憲法改正の提起にしろ、人々の関心を喚起していなかった印象がある。これは投票率となって現れたのだと思う。ここには選挙というよりは、政治に対する不信というか、疑念が強くあるように思えてならない。
 高齢化が急速に進む社会の様々な矛盾の露呈、その中での暮らしの不安、世界の対立的動向と戦争が忍び寄る恐れなど、見通すことの難しい世界の動きの中で、人々には政治に期待するものがあるはずだ。だが、期待するより不信を抱き、政治に背を向ける人々が増えている。
 こうした現象は一概に否定的なこととは言えないかも知れない。政治の限界を見極めることは、政治がなし得ることへの認識でもあり、社会が成熟していることで、必然とも言える。投票に行かなかった人は様々であるだろうが、投票放棄(棄権)には政治へのこうした視線のあることを考えると、否定面だけを見ることはできなくなる。
 しかし、投票を棄権し、政治に期待しないと言ったところで、それは現実の政治を変えるわけでは決してない。政治の可能性(政治が生活にプラスにもマイナスにも作用すること)がなくなったわけではなく、やはり、政治は人々(普通の暮らしにある人)の意志であり、暮らしという日常に大きな力を及ぼすことだからだ。より良い政治を求める行為を放棄してはならないと思う。
 その政治が今求めている課題は年金や憲法改正の是非などの問題だったと言えるが、これに対する人々の答えはどうだったのだろうか。年金は老後の暮らしの問題(その不安)で、提起されたということに意味はあるが、今回の選挙で解答の出ることではなかった。
 各政党の年金問題に対する構想(政策、もしくは方向)は、付焼刃的に感じられ、納得のいくものは見受けられなかった。これは各政党の責任というよりは、致し方のないもので、そこに目が向けられたところに意義を持つものだった。高齢化の進む社会の中で、暮らしの安定(不安の解消)という問題を政治に突きつけ、これに向き合わなければならなくなったということで、今後に残された大きな課題だ。
 安倍首相が提起した改憲の問題はどうなのだろう。改憲の発議に必要な3分の2以上の賛成議員を確保できなかったことが一つの答えと言えるが、安倍首相が言う「議論をすることに賛成が国民の審判だ」ということも一理はあるものの、今なぜ憲法改正なのかということが、多くの人にはピンとこなく、関心が薄かったというのが実情だろう。これもまた、今後に残された課題だ。
 政党にとっては選挙の勝敗が第一義だろうが、大きな主体である国民にとっては、目指すべき課題が見えたということも大事なことだ。年金問題も憲法問題も、今後の重要な政治課題として明瞭になってきた。選挙の終了とともに消え去るものではない。私たちは解決策を見出すべき努力を政治に求め続けるべきだ。
(坂田の力)

2019年7月15日付 第6996・6997合併号

自動運転レベル4の実現は

 自動運転技術が進み、車、船舶、ドローン、空飛ぶクルマなど人が操縦するモビリティの自動化、無人化は着々と進められている。国内の実証実験は公道でのレベル3(基本は自動化だが、緊急時は人が介在)からレベル4(緊急時にも人が対応せず全て自動化)への過渡期にある。レベル4の実証実験は、横須賀リサーチパークにある「ドコモR&Dセンタ」周辺の公道や東京都江東区にある新東京郵便局の敷地内で行われた。
 トヨタは来年開催される東京五輪の選手村の移動に、次世代電気自動車「e-Plette」でのレベル4の実証実験を予定。しかし、アメリカでは昨年3月にウーバーの自動運転車(テスラ・モーターズ製)が実証実験中に、死亡事故を起こした。ライダーという車の上に付いたレーダーが、走行中に人や自転車を認識できなかったのが原因の一つらしい。自動運転システム側に問題がある事故としては初めてで、社会に大きな衝撃を与えた。グーグルカーもバスと衝突事故を起こすなど、ここに来て自動運転の商用化に向けての取組みは冷え込んだ。「自動運転は危険」「乗るのが怖い」という信号を送ってしまった。
 ウーバーの死亡事故は、ライダーの性能に問題があった。ライダーは360度回転しながらレーザービームを照射し、物体までの距離を測定するシステム。照射時に物体に当たらなければ感知しない。この事故の場合は、真っ暗にもかかわらずヘッドライトが上向きでなかったとの指摘もある。私も自動運転車の試乗で、10メートル以上離れた車線に人が入れば、ブレーキがかかり発車できなかったという体験があるが、感知機能が正常なら止まるはずだ。
 「自動運転は交通事故をゼロにする」というバラ色の世界が語られるが、アメリカでは技術の未完成が露呈した。レベル4の実現は、技術をどこまで完成形に近づけられるのかにかかっている。警察は「道路交通法を100%守っていれば、事故は起きない」と言うが、自動運転は道路交通法をしっかり守れるのか。自動運転車と人が運転する車の混在期を考えると、一層難しさを感じる。
 慶應大学大学院の岸博幸教授は「政府は自動運転ですごい未来を描いているが、近未来はそんなにドラスティックに変わらない。10年後に絞り実現可能な活用を利用者側の視点から提案したい」と、4人のメンバーと共に「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」(座長:岸教授)を7月2日に立ち上げた。この10年で実現可能な技術として、高速道路の自動走行、一般道での衝突や接触防止機能付き車の普及、地方で専用レーンを低速で走る自動運転車の実現、走行状況の遠隔監視などを挙げる。暮らしや観光、地域経済などにもたらす影響や活用のアイデアを提言していく。
 トヨタは「モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジ」を宣言し、ソフトバンクやセブンイレブン、ヤマトホールディングスなどと「e-Plette」を活用した共同プロジェクトを進めている。移動コンビニや宅配事業に取り組む。中身を変えれば、移動道の駅やコーヒーショップ…、いろんなサービスが考えられる。
 高齢ドライバーよる事故、買い物難民、過疎地では乗り合いバスの運行が危ぶまれている。一方でドライバーは不足する。
 自動運転への期待は大きいが、公道でのレベル4の実現までには、画像認識やセンサーなどの技術開発はもちろん、交差点でのセンサーの整備、法律の整備や保険など課題山積だ。そして、何より大事なのは利用者の安心感だ。
(招福招き猫)

2019年7月8日付 第6995号

日本の草地は1%に急減

 この100年間で日本の草地が90%以上消失、その結果、多くの草地性生物が絶滅の危機に瀕しているという。
 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が、京都大学や北海道立総合研究機構森林研究本部、オーストラリア国立大学と共同で、過去10万年間にわたる日本の草地の歴史を、日本人になじみの深いセンブリ、カワラナデシコ、オミナエシ、ワレモコウの4種の草地性植物の遺伝子解析により推測した。
 草地とは「半自然草地」のことで、過度に肥料を施したり種まきなどをせずに、人の手が適度に加わることで維持されているところを指す。
 林業や野焼きなどは、温暖多雨な日本で草地を維持するのに貢献してきた。1万年以上前から継続的に人の手が加えられてきたと指摘されている。
 こうした人の活動によって維持されてきた草地は、最終氷期以降も草地性生物を育んできたと考えられている。
 最終氷期とは約1万年前まで続いた直近の氷期。現在よりも気温が最大で7度ほど低く、乾燥した気候と相まって、北方域では森林が発達せず草地が広がったとされている。
 草地は100年前までは、堆肥や牛馬の飼料、あるいは屋根葺きの材料などを生産する場所として、日本の国土の10%以上を占めていた。これは過去10万年にわたると推定されている。
 しかし、この100年ほどの間に、人工林、あるいは管理放棄による天然林に還った。
 その結果、草地は急激に減少し、今では国土の1%を占めるに過ぎないという。温暖多雨な日本では約7割が森林。森林の面積に大きな変化はないが、草地の90%以上の消失で、そこに依存する多くの生物が減少した。
 草地や草地に依存した生物の減少は、どのような意味を持つのか。
 センブリなどの草地性植物は、数十年前まで秋を彩る草地性植物として、どこでも身近に見られた。センブリなどの種は、過去10万年間にわたって、草地が広域的かつ継続的にあったことで、個体数を安定的に維持してきた。
 最近100年の草地の激減に伴い、「千年~万年を単位とする地質学的な時間スケールで見て、大きな出来事であることを示している」と、森林総合研究所では警鐘を鳴らしている。
 さらに「人類が環境の改変や維持に果たしてきた役割、特に林業や農業が草地を維持してきた役割の歴史的な重要性を示す」という。
 人類の経済活動が地球環境に大きな影響を及ぼしている。改めて温暖化を含めて、地球環境を維持することの大切さを考えたい。
(和光同塵)

2019年7月1日付 第6994号

グループの結束が未来を拓く

 日本郵政グループの株主総会が6月に開かれた。上場している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社とも事業報告などの提案事項は原案通り承認された。日本郵政では長門正貢社長が「グループの当期純利益は予想を大きく上回る4794億円。中期経営計画では2020年までに経営基盤強化のインフラ整備に1兆円、成長につながる資本提携にも数千億円規模の投資を視野に入れている。企業価値向上につなげていきたい」と経営方針を説明した。
 株主からは「増配に向け前向きに考えてもらいたい」「郵便局ネットワークは大事だと強調しているが、銀行は窓口コンサルティング業務に限定し、店舗を廃止する傾向。昔ながらのやり方にこだわると、時代に取り残される。コスト削減策は」などの質問があった。
 経営陣は「郵便局ネットワークは3事業のユニバーサルサービスをフェース・ツー・フェースで提供するお客さまとの大切な接点。現行水準を維持しつつ、収益や価値の向上も図る。局外営業活動やみまもりサービスなど郵便局の強みを生かした各種施策により、収益改善に取り組んでいる」と強調した。
 株主もさることながらお客さまあっての郵政事業。民営化・分社化以降、グループ各社の遠心力が働き、サービスが低下したと指摘された。改正郵政民営化法によって郵政事業は公益性、地域性の発揮、郵便局を通じて3事業のユニバーサルサービスを提供することとされ、グループの一体性の強化も求められた。「2万4000の郵便局がグループの絶対価値」(日本郵便の横山邦男社長)だが、求心力について懸念する声もある。
 5月の全特広島総会では、長門社長は人材育成にからめて「若手から将来への不安が出ている。グループ4社がバラバラで他社が何をしているか分からない、本部が乱暴で現場の意向が全然伝わらない等々の声がある。4社間の連携を一層密にすることをはじめ的確な人事異動も必要」と課題点を挙げた。
 全特の山本利郎会長も「株式売却後もグループ間の連携を深めていくことだ。民営化当初は分社化で遠心力が働いた一面があったが、改正法によって求心力を働かせグループが一体で対応するスキームを作ってきた。これからも深化が重要と認識している」と語っている。日本郵便の髙橋亨会長も「グループには郵便局という素晴らしい存在がある。グループの一致結束、団結こそが将来展望を切り拓く」と強調する。
 新しい郵政事業の進化を政治の中でも加速させたいと言う柘植芳文参院議員は「民営・分社化では、もう公的なことはやらなくていい、市場の中でしっかりと儲かる会社にしていく」との雰囲気があったことを指摘、しかし「長く培ってきた公的使命と社会貢献をする郵政事業に戻っていこうとの気運が出てきたことは確か」と話す。
 そして「グループが市場原理に流され、市場の中で生きていく事業になるのか、郵便局が築いてきた公的使命と社会貢献をベースにした形での事業に変わっていくのか、極めて難しい岐路に立っている」との認識を示し、改めて「もっと国民に利用されやすい、いわゆる公的使命、社会貢献を果たしていく事業としての存在価値を高めていく」ことの重要性を挙げる。
 また「人口減少や過疎化、高齢化社会が進展するが、高齢者を取り巻く問題が提起されている」とし、「高齢者に政治が何をできるかを訴えている。人生100年時代を見据えて、様々な政策が提言されているが、多くの“難民問題”が発生している」と、孤立や生活面での不便といった課題を指摘。「超党派議連で新しい形の制度を作ろうとの気運が盛り上がっている。簡単に言えば協同組合的なものを作り、手を差し伸べ、支え合っていこうというのが趣旨」とした。
 そうした議論で「いつも話題になるのが郵便局。協同組合的なものの中心に置かれ、そこをベースとして幅広く高齢者、地域の方々に寄り添っていくことが、政治の中でも白熱した議論になっている」ことを挙げて「秋の臨時国会には法案が出てくると思う」と述べた。土曜日の配達の在り方などを検討、安定的な郵便サービスを確保することを目的とした郵便法の改正も臨時国会で成立が期待される。
 地域における郵便局ネットワークの存在価値は高く、信頼や期待が大きい。特に地方ではセーフティネットワークになっている。単なる効率化のみでの判断ではなく、期待されている公益性や地域性を「更に高めることをしっかり前に進めていく」(柘植参院議員)ことが改めて求められている。
(和光同塵)

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