コラム「春秋一話」

 年/月

第6896・6897合併号

郵政の原点は“三事業一体”

 野田聖子衆院議員が総務大臣に就任した。3年前、「私、総務大臣になりたいの」と語っていた。1998(平成10)年には37歳の若さで小渕内閣の郵政大臣も務めている。
 郵政関係者にとって忘れられない2005(平成17)年の郵政国会では旧民営化の内容について「将来を考えた本当の改革をしてもらいたい」と主張した。様々な出来事の中で郵便局長からも厚い信頼が寄せられている。
 2か月程前に女性誌に子育ての様子が紹介されていたが、息子さんに「聖やん」と呼ばれることが嬉しいと、深い愛情を持って育てている思いが文面から伝わってきた。母としての優しさと強さは、日本中の母親にどれほど勇気を与えただろうか。
 5月に大阪市で開催された全特総会の前夜祭で登壇した際、開口一番、「私、(党職の中で)今は特別な肩書はないのですよ」とにこやかに自己紹介しながら、集まった郵便局長に「疲弊してほしくない。少し原点に立ち返りながら、望ましい郵便局のあり方を皆で検証していただきたい」などと、郵政事業が転換期、過渡期にさしかかっている見方を示し、励ました。
 原点とは何だろうかー。
 2012(平成24)年、再び政権が自民党に戻った直後、自民党総務会長を務めた時にも「一番大切なことは原点に返れるか。過去には三事業一体で概ね安定的な経営がなされてきた」と、原点が“三事業一体”を意味していることを示唆した。
 13年に、“つげの兄貴”とも呼ぶ柘植芳文参院議員の応援演説に入った際には「過去には苦しい日もあった。しかし、その時の苦労が今を築いた。多くの高齢者の方々を支えるためにも全国あまねく存在する郵便局は新たな役割を担い始めている。どこにいても生活を営める暮らしの質を保証することが求められている」と指摘。8月4日の就任記者会見でもそうした思いを繰り返した。
 総務大臣就任のニュースに触れて「この人であれば、自分たちのことを分かってくれる」と多くの郵便局長や郵政関係者が思っただろう。
 柘植参院議員は「野田聖子先生は議員という立場を超えて郵政事業を考え合える同志。互いに岐阜県出身で、私に議員になることを説得してくださったのも野田先生。長年、郵政を守ろうとしてきた野田先生が総務大臣になられたのはこの上なく嬉しい。しかし、今後、野田先生が政治家として成長されるにあたり、郵政事業だけに絞って過度な期待をかけてしまうのはプレッシャーになり、政治家としての足を引っ張ることになりかねない。そこに十分配慮し、考えながらサポートしなければいけない」と話した。
 就任会見では、記者団の「総裁選出馬に意欲を示された。今の安倍政権との対立軸を示す必要があると思うが、総務行政を進める中でどう考えるか」との質問に対し、「自民党がしっかりと国民に信用され、政権を任せてもらえる仕事をしなければならないのは安倍晋三首相との共通認識。例えば、男性にも多様な考えがあり、女性にも様々な生き方がある。対立ではなく、多様性の考え方が必要だ。人口減少という負荷がかかる時代に、多くの意見を吸収できる政権与党を作ることが自民党として国民の皆さんに約束すべきこと」と強調した。
 「山あり、谷ありの経験をしてきた互いの知見の中で、自ずと政策の違いは出てくる。そういうものも時には示すことができればよい。今は首相との共有の寄りどころである自民党の土台が崩れている。外で批判するのではなく、力を合わせて修復していかなければならない」とも加えた。
 総務大臣の所管する業務は実に幅広だ。郵政事業を深く理解する人が総務行政を担うのは心強い。
(涓埃之功)

第6895号

「みまもりサービス」に期待

今日(8月7日)から「郵便局のみまもりサービス」の申込受付が全国の郵便局で開始された。提供は10月からとなる。
 試行サービスは2013年10月から北海道などの6地域で始まり、15年10月には13都道県83市町村の738郵便局で実施した。
 新たなサービスは、タブレット端末2万台を郵便局に配備しメールで生活状況を家族や自治体などに報告する。確認する生活状況の項目も増やした。タブレット端末を使った実証実験は山梨県と長崎県で15年10月から16年3月までの予定を9月まで延長して行われた。
 こうした実証実験の結果などを踏まえ、16年11月には日本郵政の長門正貢社長が記者会見で「16年度中に事業化したい。高齢化社会の中で、健康は大きな課題。郵便局社員はお客さまと接しており、これは我々がやるべき仕事だと認識している。自治体とも連携を図ることもできる」と強調していた。
 本格サービスの開始に当たり、日本郵便の横山邦男社長も「超高齢化社会を迎えている日本、この大きな社会的課題を解決するために、日本郵便が果たす社会的使命、それが郵便局のみまもりサービス。社会に寄り添い、貢献していく新たな一歩」と強調し、「全国展開に向けて社員に心配もかけたが、ようやくここまで来た」と述べている。
 現場を預かる郵便局長も「2万の郵便局ネットワークを活かし、地方創生とリンクさせ、しっかりユニバーサルサービスを提供、更に地域の特性を活かし、活性化に取り組む。地域に貢献する」(全国郵便局長会の青木進会長)と強調、「過疎地のみならず地域に貢献する郵便局にとって有用な施策。実施は局長会が求めた経緯もあることから成功させたい。ただ、成功のカギは日本郵政グループ全社を挙げてということだ。これは会社に求めていく」との考えを明らかにしていた。
 日本郵便も「郵便局から懸念の声が多かった認知症の可能性のあるお客さまへの対応については、専門家の助言を得ながら適切に対応。訪問する社員は難しい判断を要する場合もあるかもしれないが、不安を感じないようにする。サービス提供後も必要な対策は迅速に講じるよう本社・支社の体制も整えた。全社一丸となって取り組む」としている。
 また、茨城県大子町では、同種のサービスを今年4月に日本郵便が町から一括して受託して提供している。自治体からの受注は東京都檜原村に続き2例目。こうした自治体との連携も大いに期待される。大子町では高齢者宅を訪問する社員は大子町の嘱託職員から関東支社所属(大子郵便局駐在)の期間雇用社員となった。
 その社員が「役場ですと言って訪問していたときは、軒先で元気ですといった程度の対応だったが、郵便局の赤い車で制服を着て“郵便局です”と回るようになると、家の中にまで上げてお茶まで出してもらい、じっくりと話をすることができるようになった。郵便局の地域と結びついた信頼関係、歴史の重みを痛感した」と話していることは、郵便局長の間でも広く共有されている。
 郵便局の信頼の高さだろう。横山社長も「2万4000の郵便局ネットワークという日本で最高の社会インフラを活用して、ユニバーサルサービスを提供してきた。これこそが創業以来のDNAとして組み込まれてきた日本郵便の普遍的な使命。安心・信頼の郵便局ブランドを更に発展させる」と意欲を語る。
 そして「料金は類似のサービスを展開している企業と比べても遜色ないものとしている。将来的に数万人規模のサービスとなるよう育てたい」と期待をしている。
 タブレット端末の活用で、訪問時の様子を写真で報告することも可能。また、質問項目も地域のニーズに合わせたものにすることも考えられている。「様々なメニューの追加も想定され、郵便局ネットワークの価値が向上、更に厚みのあるものになるチャンス。顧客基盤の強化、郵便局利用の拡大に結びついていく」と捉えている。
 新たなビジネスモデルとして発展が期待される郵便局のみまもりサービス、親世代、子ども世代の両方に対してより一層、郵便局への信頼が深まることで、ビジネスチャンスが増えることを望みたい。
(和光同塵)

第6894号

自然との循環関係の維持

 東京(関東圏)は空梅雨だったらしい。早速、節水が呼びかけられているが、九州北部や秋田、新潟などは集中的な豪雨に見舞われている。50年に一度の降雨という言葉と濁流をテレビで見るたびに、自然の異変が進行しているのだと思う。
 これまで自然(天候)は季節という移り変わりはあるものの、あまり変化はないという意識が埋め込まれてきた。自然が猛威を振るうことはあっても、それは予測されるものとしてあった。
 人々の心の不安を取り除く「空なる望み」だったのかもしれないが、少なくとも人々は天候という季節の動きをそのように認知してきたのだ。私たちはそれを覆すような天候に不安を感じ、どこか考え直すべき事態が起こっているのだと思う。その手掛かりすら見出しにくいのが実際のところであるにしても。
 過日、友人のSさんからのメールにこうあった。
 「私の住む長崎の離島、壱岐が7月の前半、50年ぶりという豪雨に二度みまわれた際には、ご心配のお電話やメールを頂きました。NHKの全国放送で、『壱岐に全島避難警報が出た』と報道されましたが、幸いに私のみならず、島の人々の生活に支障をきたすほどの実害はありませんでした」
 「私が見る限り、島民が営んできた農業、漁業は自然を全く変えることなく行われている。その自然は、今回のような猛威も全て吸収するようです。いわゆる開発なるもので自然が破壊、加工されていないので、鉄砲水が出たり、土石流が発生したり、がけ崩れが起きたり、水田に泥水が流れ込むようなことはなく、降る雨は全て土中に吸収されています」
 「島民の多くは『壱岐は自然災害に強い』という言い方をしますが、私に言わせれば、自然を壊し、加工していない壱岐は、自然災害に強い、ということです」
 かつてなかった自然の猛威に見舞われ、災害に遭遇する事態を私たちはテレビで見ているのだろうが、この背後には少なからず経済の高度成長に伴う列島の改造があることを想像してきた。地域や自然は開発という名の加工がほどこされ、山間部などにも家が建ち並び、居住区が広がった。
 これは高度成長が人々の生活を豊かにすることの象徴でもあって、それ自体をどうこういうわけにはいかない。
 ただ、開発が利便性や機能性が中心に置かれ、自然への考慮や配慮が十二分にあったと思われない。
 私は少年期までを農村で過ごした。実家を含め集落の大半は農家だった。実家は甥が代を継ぎ農業を行っている。だが、専業農家はほとんどなく、兼業で細々と続けられているだけである。私たちが少年期に遊んだ山々には家が建っている。家が途絶える境界にあった墓を越えて家が出来ていた。
 しかし、裏山というか、少し奥に入れば、山は残っている。けれども里山(かつてはという意味だが)は竹林となり、人々は入れないし遊べる環境ではなくなっている。
 山菜採りもキノコ採りも、山の実も採りに行けない。荒れたまま放置されているのだ。これはかつての農村地帯の平均的な風景ではないのだろうか。
 Sさんのメールでは、壱岐の農業・漁業は自然を全く変えることなく営まれているとある。農業や漁業も機械化などは取り入れられているが、自然との関係では古くからのならわしが保たれているということのように思う。
 人々が生活の知恵として育んできた自然との関係(自然との循環関係の維持)の保存がある。自然との関係が自然(当たり前)というか、その配慮がある。
 直接的な自然との関係から離反して営まれる社会と生活への自然からの警鐘ということが、よく言われるが、それを確認させられる何十年に一度の降雨だった。(坂田の力)

第6892・6893合併号

人命を守る避難体制の確立を

 九州北部を襲った7月5日からの記録的な集中豪雨で、福岡県朝倉市、東峰村、大分県日田市、中津市などで全壊約100棟、半壊約30棟、犠牲者も出て大きな被害となった。孤立した集落も多かった。
 住宅や農地を埋め尽くした土砂の映像を見ると心が痛む。現在も避難を余儀なくされている住民が多い。高齢者もいて心身ともに疲労感が増していると思われ、一刻を争う対策が求められる。
 郵便局も7月6日には112局で窓口業務を休止したが、7日には77局が業務を再開した。13日時点では休止は6局(朝倉市5局、日田市1局)になっている。
 災害は起きてほしくないが、起きた場合にいつも素早い対応をするのが“地域と共にある”郵便局だ。貯金の払い戻しなどの非常取扱いや災害義援金の無料送金サービス、現金書留の料金免除は被災者にとってたいへんありがたい。
 今回の九州北部での被害は、集中豪雨による地すべりによって、大量の土砂と流木を発生させたことが大きいとされる。
 大量の土砂や流木が家屋を押しつぶし、また橋脚などに引っ掛かり河川を氾濫させた。朝倉市では筑後川に注ぐ支流にそって集落が点在する。多くの谷で土石流が発生、川を埋め尽くした。
 安否が分からない人の捜索を阻むのも土砂と流木。林業の衰退で山が荒れたことも要因の一つと指摘する専門家もいる。山崩れなどにより大量の土砂が一気に押し寄せる「山津波」と呼ばれる現象は、山間部の多い日本ではどこでも起こる可能性がある。
 随筆家の寺田寅彦の言葉とされる「天災は忘れた頃にやって来る」のではなく、現在は「忘れる間もなくやって来る」と言った方がふさわしいかも知れない。
 九州北部では2012年7月にも記録的豪雨があった。対馬海峡から朝鮮半島付近に停滞する梅雨前線の南側に位置する九州北部に、東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込んだ。積乱雲が次々と発声して連なる線状降水帯が、上空に留まって、猛烈な雨をもたらした。
 線状降水帯は、2014年8月に住宅地を襲い死者74人を出した広島土砂災害、2015年9月の関東北部から東北南部を中心に大規模な被害をもたらし、鬼怒川が氾濫した関東・東北豪雨も引き起こしている。2016年には観測史上初めて台風が3度も北海道に上陸した。災害では2011年の東日本大震災も記憶に残る。
 今回の線状降水帯は24時間に約550ミリという観測史上最大の雨量だった。四季の移ろいが美しい日本では、古来より様々な雨を言葉で表してきた。突然の雨の代表は「時雨(しぐれ)」、特に強く降って通り過ぎるものは「村時雨(むらしぐれ)」。これは「群時雨」だったが、いつのころから「村」の字になったという。
 夏の雨は「白雨(はくう)」「驟雨(しゅうう)」などがある。「白雨」は雨脚の激しさで風景が白く見えることから。「驟雨」は雨が地面を叩きつけながら通り過ぎ、馬が疾速していくという意味。最近では「ゲリラ豪雨」との言葉もあるが、どこか風情がないと感じる。異常気象が産んだ言葉だろう。 
 地球温暖化の影響もあるだろうが、九州北部では今後も雨が続くことも予測されている。警戒を強めて被害の拡大を防ぐことが重要だ。これまでの雨で地盤が緩んでいる地域も多い。台風シーズンはこれからだ。土石流の発生の危険性がある場所の確認や、いざという時の避難体制の確立など災害から身を守るための備えが求められる。
 人命を優先した自然災害への対応に国や自治体が果たす責任は重い。
(和光同塵)

第6891号

一人ひとりのレベルアップを

 ビットコイン(仮想通貨)やフィンテック(金融とITの融合)、AI(人口知能)と急速な勢いで社会が変化する中、ふと気になった。保険の販売チャネルはここ数年間でどのように変化しているのか。人件費のかからないインターネットを通じたチャンネルは価格も安く、当然、伸展していると思った。ところが、保険に関しては逆の現象が起きていた。
 生命保険文化センターは一般家庭における加入実態を1965(昭和40)年から3年に1度調べている。直近の調査は2015(平成27)年に全国436地点を訪問し、4020枚回収したアンケートでまとめられている。アンケートが100%実態を表すとはいえないが、大まかな動きは十分参考にできるものだと思う。直近12年間の3年ごと5回の経年変化を示す表も分かりやすい。
 意外だったのは保険の加入チャネル調査で、インターネットを通じた契約が12~15年に4.5%→2.2%とおよそ半分になった点。いわゆるセールスレディ(男性も含む)を通じた契約も12~15年に68.2%→59.5%と占める割合は今も多いものの、年々減少している。
 一方、一般の金融機関を除く保険代理店窓口からの加入は03年から12年まではほぼ横ばいが続いているが、12~15年までの3年間は6.9%→13.7%と2倍に増えている。1社商品だけでなく、数社商品を取り扱う来店型店舗の人気が高まっているようだ。
 生命保険協会関係者も「保険の場合、他の金融商品と異なるのは、インターネットだけでそれぞれの商品を理解するのが難しい。分からないことがあった場合、コールセンターの電話番号が記載されていても、そこまでするのであれば対面で詳細を聞き、相談に乗ってもらいながら納得のいく契約をしたいと思われる方が多いのではないか」と指摘する。
 郵便局のうち、直営郵便局2万56局と簡易局624局(16年3月末時点)が生保募集を行う来店型店舗。もちろん渉外社員も活躍している。かんぽ生命新契約の販売チャネルは、郵便局渉外社員と郵便局窓口が9割を占める。郵便局は他生保、他損保の商品を扱ういわば乗合代理店だが、かんぽ生命役員は「郵便局のパワーを使ってビジネスモデルを確立している」と公の場で語っていた。
 高齢化社会が進む中、自分がどこまで生きるか分からないものの、生きる資金を残すために保険料を安くしたいと同時に、多少お金がかかっても、必要な保障は契約したい。公的保険でどこまで保障され、足りないものは何なのかを知るのに人生を的確にとらえてくれ、見合った商品をアドバイスしてくれるところに出向きたいのは誰しもの共通の思いだろう。
 調査のうち、「保険の加入理由」14項目のうち、「掛け金が安かった」なども含めて11項目が12~15年で減少したが、「営業職員がFPの資格を持つなど専門性を有しているため」は2.1%→3.1%と増えている。
 都内の一部郵便局では「積極的来店型コンサルティング営業」も数年前から試行的に行われていたようだが、今はどうだろうか。金融庁は「保険料率の改定もあり、業界全体が苦しい時期に来ているが、その意味で郵便局の方々にさらなる実力をつけていただくことを切に願っている」と期待を寄せる。
 専門性を高めるにはやはり研修などが重要になるが、ある郵便局長は「保障性商品を販売するのに社員の教育が重要になるのはよく分かるが、研修は連絡会に任されるケースが多い。保険は土日も稼ぎ時で、平日も短期で見ると貴重な1日を無駄にしてしまうようで研修の継続開催はなかなか難しい」と漏らす。
 保険を販売できるのは窓口社員のうち、おおよそ3割と耳にした。仮に、2倍になれば大きく収益にも影響する。一人ひとりのレベルアップは、日本郵政グループの企業価値にきっと直結する。
(涓埃之功)

第6890号

女子陸上部の応援Tシャツ

 日本陸上競技選手権大会が6月23~25日に大阪のヤンマースタジアム長居で開かれたが、日本郵政グループ女子陸上部(髙橋昌彦監督)の活躍が目立った。5000メートルで鍋島莉奈選手が自己ベストを更新する15分19秒87で1位、キャプテンの鈴木亜由子選手も15分20秒50で2位となった。1万メートルでは鈴木選手が31分41秒65で2位、関根花観選手は32分23秒83で6位の好成績だ。
 8月4~13日にロンドンで行われる第16回世界陸上競技選手権大会には、日本代表として鈴木選手が5000、1万メートル、鍋島選手が5000メートルに出場することになった。鈴木選手は「もう一段の力をつけ、自分の走りが貫けるように頑張る」、鍋島選手は「充実した練習ができた結果。より一層の努力をしていきたい」と意欲を語っている。
 「手紙を届けることで人や社会を“つなぐ”郵政事業は、“たすきをつなぐ”駅伝と親和性が高い」と、2014年4月に正式に創部された日本郵政グループ女子陸上部、新規参入ながら日本陸上界を牽引するチームとして勢いを感じると陸上関係者の評価も高い。駅伝を中心に中長距離の選手を育成・支援している。
 昨年11月27日に行われた全日本実業団対抗女子駅伝大会で初優勝した記憶は新しい。「できればシード権を獲得したいと思っていたが、優勝など考えていなかった。選手たちに感謝」と髙橋監督はコメントしていたが、今年は追われる立場となった。
 タスキをつなぐ駅伝での活躍を祈るが、駅伝と言えば日本で最初に行われたのは大正6(1917)年。4月27日から3日間にわたり京都―東京の508キロを23区間に分けてタスキをつないだ。「奠都五十周年記念大博覧会」が上野で開かれたが、その行事の一つとして「東海道駅伝競歩競争大会」が実施された。
 スタートは京都三条大橋、ゴールは東京の不忍池の博覧会正面玄関。これを契機に3年後の大正9年には、箱根駅伝が誕生したという。京都三条大橋と不忍池には「駅伝発祥の碑」がある。「駅伝の歴史ここに始まる」と記され、タスキをかけたランナーが描かれた同じ碑が建っている。日本陸上競技連盟が中心となって平成14(2002年)年に建立した。台座には中継地点が刻まれている。
 この「東海道駅伝競歩競争大会」を企画したのが、当時、読売新聞社会部長だった土岐善麿。若山牧水や石川啄木などとも交流、ジャーナリスト歌人として名を成した。駅伝との命名も土岐善麿と言われている。

 りんてん機、今こそ響け。
 うれしくも、
 東京版に、雪のふりいづ。

 土岐善麿が社会部長だったときの作(第2歌集「黄昏に」)。新聞の校正が終り印刷に回る。手がけた記事を輪転機が音を立てて印刷し、そして多くの人の目に触れることになる。ふと窓の外を見ると明け方の空に雪が降っている。ほっとした中に充実感も漂っていただろう。
 今回の女子陸上部の選手たちの活躍を改めて知るために、翌日の新聞を楽しみにした日本郵政グループの社員も多いだろう。駅伝のみならず2020年の東京オリンピックには多くの選手の出場を期待したい。陸上部の応援企画として郵便局のネットショップでTシャツが売られている。1枚2950円(税込、郵送料別)。これを着れば、応援にも一体感が増し熱が入るのでは。
(和光同塵)

第6889号

豊洲市場への移転と築地の再開発

 難航していた築地市場の移転問題がどうやら決着をみたようだ。新聞では小池東京都知事が、築地市場を豊洲に移転し、跡地は5年後をめどに再開発する方針を示したとある。昨年の8月、安全性確保を理由に同年11月に予定されていた移転を延期していたが、豊洲市場への移転を決めたようだ。
 そして、この時点では構想されていなかった築地市場の跡地の利用も組み込まれた。築地市場は5年をめどに再開発し、市場機能を確保して、営業を希望する業者は戻れることになっている。
 今回の移転延期騒ぎは一応収まって、反対の人たちにも配慮した形になっている。豊洲への移転延期を不当としてきた人たちは、大山鳴動して鼠一匹という騒ぎだったと冷ややかに、一方で築地存続を希望していた人たちは、不安ながら期待が持てるとしているのかもしれない。
 私は仕事のついでに築地やその周辺に出掛けることもあり、その場が好きだった。長年の間に築かれ、人々に愛されてきた築地市場がなくなることに愛惜を感じ、移転には気にそぐわないところがあった。老朽化に伴う機能的な問題があるのだろうと推測はしていたけれど…。
 今回の移転延期をめぐる騒動は、築地市場の問題を改めて多くの人に知らせた。私自身はこの種の問題を考える契機になって良かったと思う。移転延期で損害を被った人たちも、もちろん多くいるだろうと思う。
 築地市場の移転の動きを知ったのは大分前であり、興味を持ったが、関わるまでにはいかなかった。先に述べたように、築地市場やその周辺が好きで、これが失われるのは寂しいということ以上を出なかった。豊洲市場の安全性が重要なことは情報として得ていたが、これほどの問題であるとは気づかなかった。
 私たちは様々なところで再開発の問題に遭遇している。年月の経った古い施設などの場が再開発されることに立ち会っている。いろいろな事情があるのだろうが、それが無残な結果にしかならなかったことも知っている。
 再開発を企画し推進する人は、様々な施設(場)を技術的に革新し、その機能を高めること、そのことによる利便性を無前提に良きことであるという考えに立っているように思われる。確かに施設や場に様々な問題が生まれ、その解決として技術が導入されて、より利便的で合理的なものがつくられることもある。
 ただ、再開発などは内在した矛盾よりは、利便的で合理的な施設(場)にすることが、良きことであるという前提で進められることがあるように思う。そうすると、これに疑問を抱き、再考を促すことは難しいだろう。
 利便的で合理的な施設にリニューアルするという考えに再考を促すのは、その施設や場が文化的な要素を持ち、文化財としての保存が問題になる時である。
 文化ということが古い施設や場の保存を促し、利便性と合理的という名目での施設の革新に待ったをかける場合があるのだ。
 これを除けば再開発という名のリニューアルは止められないのが現状である。築地市場の移転の場合は、築地ブランドを守るということが言われるが、これは築地市場や周辺が培ってきた「食の文化」を守るということだろう。
 今回の豊洲市場移転問題で考えさせられたのは、移転の基準というか、根拠は何かということであり、その現在的な難しさである。
 利便的で合理的であり、それを技術が可能にするという、再開発をめぐる基準や根拠が疑われたと思う。これは経済の成長神話が疑われていることと同じである。
 豊洲市場移転問題は再開発などの基準、いうなら理由が疑われ出したところが興味深いし、それは今後も残っていくことのように思われる。
(坂田の力)

第6888号

郵便局のみまもりサービス

「郵便局のみまもりサービス」が開始される。8月から募集を受け付け、10月から始まる予定だ。料金は月間2500円。地域に住んでいる高齢者の生活状況を社員が確認し、都市部に住んでいる子ども世代など身内に伝える。それに先だち4月から茨城県大子町(綿引久男町長)で郵便局社員による「みまもり訪問サービス」と「みまもりでんわ」の提供が行われている。
 訪問サービスは、一人暮らしの高齢者を毎月1回訪問し、確認した生活状況をタブレット端末を活用して大子町や子ども世代などに報告する。みまもりでんわは、毎日指定された時間に自動音声による電話(オートコール)がかかり、健康状況に合った番号を押すことにより、体調を確認する。こちらも結果は大子町や子ども世代などに伝えられる。
 大子町では以前から「あんしん訪問事業」「あんしんコール事業」として同種のサービスを行っていた。これを日本郵便が一括して受託した。こうした自治体からの受注は東京都檜原村(坂本義次村長)に続き2例目。大子町も料金は自治体が負担する。訪問する社員は大子町の嘱託員から関東支社所属(大子郵便局駐在)の期間雇用社員となった。
 その社員が「『大子町役場です』と言って訪問していたときは、軒先で『元気です』といった程度の対応だったが、郵便局の赤い車に乗り、制服を着て『郵便局です』と回るようになってからは、わざわざわざ家の中に上げてくれて、お茶まで出してもらい、じっくりと話をすることができるようになった。契約では30分だが中には1時間も話す場合もある。郵便局の地域と結びついた信頼関係、歴史の重みを痛感した」と話していることを、関東地方郵便局長会の長谷川英晴会長(全特理事)がある会合で披露していた。
 郵便局への信頼が大きいことの証だ。郵便局が主体的に取り組むみまもりサービスの開始も注目されるが、訪問社員の確保も課題。関東郵政退職者同友会では、今年度の事業計画の中の郵政事業への積極的な協力として「高齢者宅を郵便局社員が訪問するサービスでは郵政OBの支援も必要としており、要員の派遣などについて協力する」としている。地域活動を積極的に行っている郵政OBとの連携も期待される。
 フランスのラポストでも“あなたの両親を見守ります”と高齢者を訪問するサービスを開始しているという(3面参照)。訪問支援サービスの特別なトレーニングを受けた郵便配達員が、一人暮らしの高齢者を訪れ、何かあれば子どもに知らせる。さらに、水道などのトラブルの際には修理のための人を派遣するサービスも含まれる。料金は訪問頻度や内容によって約4880円~1万7200円だ。
 郵便局のみまもりサービスも、新たなビジネスモデルとなることが期待される。親世代、子ども世代の両方に、更に郵便局への信頼が深まることで、ビジネスチャンスが増えることを望みたい。
 全特の青木進会長も5月に開催された大阪総会で再任された後、記者会見で「2万の郵便局ネットワークを活かし、地方創生とリンクさせながらしっかりユニバーサルサービスを提供していく。それぞれの地域の特性を活かし、活性化に取り組む。昨年から地域貢献・地方創生専門委員会が立ち上がっており、更に活発化して地域に貢献したい」と強調している。
 その地方創生の一環として、ふるさと納税の返礼品の一つに郵便局のみまもりサービスをという動きがある。既に長野県の1市で始まっているという。例えば5万円をふるさと納税すると、その3割程度とされる返礼品として、6か月のみまもりサービスが受けられることになる。
 欧州でも高齢化への対応は課題。高齢化の最先端を走るわが国での郵便局のみまもりサービスの成功、更に新たなビジネスモデルとして進化していくことが期待される。
(和光同塵)

第6887号

少子化対策は人間の営みに則して

 厚生労働省が6月2日に発表した人口動態統計によると、日本の出生数が初めて100万人を割り込んだ。2016年に生まれた子どもの数は97万6979人。一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均数である合計特殊出生率は1・44。前年より0・01ポイント下がった。
 子どもの数は1975年以降、減少傾向にある。少子化対策として、働き方改革や保育所の整備などの施策、経済支援として「こども保険」の創設の議論など様々なことが進められているが、何が大切なのか。
 都道府県別の特殊出生率を見ると、沖縄が一番高く、1・95、続いて島根1・75、長崎と宮崎が1・71、鹿児島が1・68、共働きの多い福井が1・65。
 子どもが増えないのは経済的理由だけというのは当てはまらないかもしれない。合計特殊出生率最上位の沖縄の平均年収は、47都道府県で最下位だからだ。
 都市部の自治体は待機児童の解消に躍起になっている。政府は2020年度末の待機児童ゼロを目指している。潜在労働力としての女性を活用し経済成長につなげようとしているからだ。その目標は「2020年の25歳から44歳の女性就業率77%」。
 野村総合研究所の調査によると「その達成には追加で整備が必要な保育の受け皿は88・6万人分」。ただし、保育の受け皿には認可保育園への入所ばかりでなく、親族による保育も含まれる。
 共働きが多い福井では、3世代同居が比較的多く、祖父母が子どもの世話をしてくれる。安心して働ける要因の一つだ。核家族の場合でも、かつては近くの同じ年齢の子どものいる家や子育てを終えた人に預けていた。人間関係の中で自然に補い合っていたのだ。
 合計特殊出生率の高い沖縄は、認可外保育園が充実しているという。認可保育所の待機児童の数が問題になっているが、もっと柔軟な考え方や工夫があってもいいのではないか。
 野村総研の調査によると、保育サービスを利用している児童でも、約16万人の児童が転園を希望しているという。その理由として31・2%が「家や職場からの距離」を挙げる。その次に多いのが「3歳以下のサービスがない・就学前まで通えないなど保育期間」で15・2%を占める。
 ある人材派遣会社がサテライトオフィスを開設するに当たり、子育て中のママに働いてもらおうとベビースペースを併設した。
 職場と保育スペースが同じだから移動の無駄がない。子どもが職場にいて安心だ。ママ同士で子育て情報も共有できる。終身雇用や正社員、働く期間にこだわらなければ、子どもの発育に合わせて柔軟に対応できるのではないか。
 出生率を上げるという提案から始まった少子化対策の背景には、社会保険を負担する人の減少があった。待機児童ゼロ対策は、子育て中の女性の就業率を上げるのが目的だ。
 専業主婦にも働いてもらわないと、2020年に最大で305万人も不足するという。どちらにしても、社会システムを支えるのに必要な労働力の確保にはどうすればよいか、という議論ばかりだ。
 結婚して子どもは2人以上じゃないと社会システムがもたない。そうして頑張って、子どもを産んだら、就業人口が減るので働いてもらわないと。でも保育所が…。
 そもそも、人が家族を作って子どもを育てるのは、社会システムを支えるためではない。人間の営みに則した議論に変えてはどうか。
 2010年の総務省「国勢調査」によると、女性の未婚率は、25~29歳で60・3%、30~34歳で34・5%、35~39歳で23・1%。子どもを産む年齢の人の未婚率が高くては、子どもが減少するのも当たり前だ。
 結婚しないのは「適当な相手にめぐり会わない」のが理由というが、少子化は、時間やお金、管理され過ぎる社会、人や社会への寛容…いろんな意味で社会のゆとりや人間らしさがなくなった結果かもしれない。(笑福招き猫)

第6886号

ユニバを守り地域社会に寄与

 「先駆の栄ある歴史を胸に輝かしい未来の実現へ…」と全国郵便局長会の大阪総会が5月28日に開かれた。昨年の総会で会長に就任した青木進会長、山本利郎副会長、山﨑雅明副会長が再任された。
 青木体制は2年目に入るが、郵政事業には課題も多い。就任以来、先人の事業を引き継ぎ発展させ、未来を切り拓くという「継往開来」を座右の銘に、組織運営に当たってきた青木会長の手腕には、大きな期待が寄せられている。
 総会後の記者会見では、1年を振り返って「時間が経つのがあっという間だった、2万局の郵便局ネットワークを地方創生とリンクさせながら、しっかりとユニバーサルサービスを提供していく。また、地域の特色を生かし、活性化に取り組む活動を強化する」と改めて意欲を語った。
 総会や27日の前夜祭では、日本郵政グループの経営基盤の確立と郵便局ネットワークの維持と不可分なユニバーサルサービスの確保、地方の特色や実情に合わせたサービス展開の重要性などについて、多くの来賓が強調した。
 「地域の実態に合ったサービスを」(原田憲治総務副大臣)、「郵政事業は国の礎、郵便局ネットワークの重要性は益々高まっている」(二階俊博自民党幹事長)、「限度額はまだ不足。ユニバーサルサービスの確保が重要」(古屋圭司自民党選挙対策委員長)、「郵便局ネットワークを守っていかなければならない」(石田祝稔公明党政務調査会長)、「ユニバーサルサービスと郵便局ネットワークを将来にわたって維持」(井上義久公明党幹事長)。
 ユニバーサルサービスに関してはコスト負担や手数料の消費税問題などもある。会社間窓口の委託料に係る消費税の問題は、民営・分社化された当初から課題となってきた。
 昨年12月の税制改正大綱に「経営基盤の強化」という新たな文言が加わったが、「三事業のユニバーサルサービス維持のための具体的なスキームを決定したいとの決意」(野田毅自民党郵活連会長)と、決着が期待される。
 「ユニバーサルサービスを義務づけたのだから、それに関して税制上の配慮があってしかるべきだ。今年こそ決着させる」(斉藤鉄夫公明党郵政議員懇話会長)。
 さらに「限度額や消費税、ユニバーサルサービスコストなど課題はあるが、同時に現在の形態で(郵政事業が)本当にやっていけるのかという議論を行っていきたい。郵活連に小委員会をつくった。新たな提言を議論している」(山口俊一郵活連幹事長)と、郵政事業の展望を考える動きも注目される。
 経営基盤の確立に関しては、豪トール社について「赤字になったことは郵活連で厳しい意見が出た。どう受け止めて前に向かっていくのか、非常に大事な局面を迎えている」(野田郵活連会長)、「国民の財産を預かり地域の生活インフラを支える社員が、大いに頑張れる会社にしてほしい」(山口郵活連幹事長)と、郵政文化の重要性を説きながら苦言を呈した。
 青木会長もトール社については「再建は喫緊の課題。局長会としても協力は惜しまない」としつつも、「4000億円を超える減損処理を行ったことは遺憾と申し上げるほかない。二度と起こることのないよう強く要望している」と述べざるを得なかった。
 日本郵政の長門正貢社長は「今年度は3年間の中期経営計画の最終年度。同時に次期中期経営計画を作成する年でもある。郵便制度の創業150年に向けて郵政グループが一体となって未来志向の計画をつくりたい」と語る。
 総会の開催地を代表して、歓迎のあいさつをした近畿地方郵便局長会の吉城和秀会長も「局長会の使命は地域社会に寄与し、国民の財産である郵政事業を守り、発展させること。心を一つに未来ある展望を拓いていこう」と呼びかけた。
 郵政グループが郵政文化を守り、今後も発展させることを期待したい。地域の生活インフラとなっている郵政事業、郵便局の意義を改めて受け継いでほしいと願う。
(麦秀の嘆)

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