「通信文化新報」特集記事詳細

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第6736・6737合併号

【主な記事】

郵政新時代への道(59)
主戦場の東京市場でシェア拡大
全目指標の達成を目指す
日本郵便 井上修三東京支社長

 競合他社がひしめく主戦場の東京。勝つか、負けるかは紙一重の判断だ。4月に日本郵便東京支社長に就任した井上修三支社長は「かつて郵便局は三事業の商品のみ取り扱っていたが、民営化以降商品は増え続け今や局によっては17商品。しかし、お客さまにお知らせできていない」と語る。17商品あれば、本来様々な顧客ニーズに応えられるはず…。シナジーを発揮しながらPRしなければ、と考えた井上支社長は“レンケイ営業”という仕組みを打ち出した。約4万7000人が働く支社の1人ももれなく、その力を活かそうと取り組んでいる。また、1日4~8件、成果を上げた局を選び、局長や社員に直接電話をかけて激励し、自らが学んだ成功事例の横展開を図る。「東京がいかに頑張れるかが会社を左右する」との責任感の下で大東京の指揮を執る。
(園田万里子)





■東京支社長就任の抱負を。
 郵政グループの中期経営計画「~新郵政ネットワーク創造プラン2016~」では、平成28年度までに巨額の投資を行い、郵政グループ総体で約3500億円の純利益を生み出す成長戦略を描いている。戦略とは「形勢を逆転するためのもの」であり、「思わず語りたくなるようなストーリーでなければ成功しない」とも言われる。高いハードルを乗り越えるには、従来の延長線上のやり方では厳しい。就任に際して、四つの方針を示した。
 まず「常に勝利を目指す」ということ。同業他社に勝つには毎月をリーグ戦ととらえ、与えられた目標を確実に達成することが先決だ。2点目は「事業は人なり、人材育成」。中長期的な視点からも社員の持つ潜在能力を120%引き出すのは最大の課題。営業成績や品質向上に向けて各種研修、フォローアップ、管理者の日常的な社員指導を通じて育成を図りたい。
 3点目は「組織運営の在り方」。社員数が多い会社だが、個々の社員の力を引き出していくには個別の動きをしていてはだめで、呼吸を合わせ、チーム力を発揮しなければ一人ひとりも活きてこない。そのために必要なのは①見える化②話せる化③スピード化の3点だと考えている。見える化、透明性は即組織のパワーになる。もともとが役所だったため、上から下ろしていく運営が多いが、会議も極力双方向での話し合いを念頭に置きたい。役所と企業の違いはスピード化にも表れる。「役所3年、会社3分」と言われないように仕事のスピードアップを図る。
 4点目は「上位の役職者ほど仕事をする文化、社風づくり」を進めたい。何も長時間働くということではなく、成果を出して会社に貢献するという意味。そうした社風になれば、競合他社に負けるはずがない。

■三事業別の目標は。
 東京支社の年間目標は郵便収入で4535億円。これは全国のシェア27.8%を占める。総貯金純増は3124億円、生命保険新契約目標も47億円という大きな目標を掲げている。東京は大企業が多く、競合他社がひしめく主戦場。東京がいかに頑張れるか、が会社を左右するという気概でやっている。
 6月末時点の郵便収入は1095億円(推進率97.6%)、総貯金純増は1407億円(同99.89%)、生保新契約は12億6758万円(同100.6%)。郵便は昨年度、NISA特需もあり、会社全体で対前年比200億円以上の上積みをした。そのうちの73億円が東京だ。
 新年度は対前年実績プラス60億円であり、中小口特約チャレンジ目標達成のため、見積もり増加ロケットキャンペーンを実施し、5月末累計成約516件、成約金額1億7629万円、個数で71万1000個を達成したものの、第1四半期は不足分を特約収入で補いきれず大苦戦した。シェアから判断するとゆうメール、ゆうパックで約4000億円がまだ他社利用になる。
 郵便は奪還営業の取り組みを強化するほか、企画提案営業による新規拡大を図りたい。更に外務営業実績向上会議を毎月開催し、特約の「匠」の育成と推進管理を徹底していきたい。
 また、2014年度版スーパーエースチームを編成し、班の垣根を越えた奪還活動と要員投資を強化している。特約営業推進リーダーを各班から1人ずつ選出し、第1回特約営業推進リーダー研修を行った。6月17日には「特約の匠」全体会議も開催し、好取組の横展開を図った。
 かもめ~るは、「かもめタウンとDMを中心とするビジネスユースの利用拡大」「個人需要の維持、拡大」「単独マネジメント局のフットワーク、エリアマネジメント局のネットワークを活用した「レンケイ営業の展開」に取り組んでいる。
 貯金は新しいシステムの活用に挑戦している段階。6月23日からの夏のキャンペーンは好調に推移している。エリア局中心に強力に進めていただいている定定純増は6月末時点で全国トップ。後半は年金給与口座獲得にも力を入れていきたい。保険は各局の努力によりガイドラインの目標は達成しつつある。毎月薄氷を踏む戦いをしているが、着実に成果を出している。
 月次計画の達成に取り組んできた結果、第1四半期を終えて見えてきた東京の課題を克服し、徹底した推進管理や挽回策などで年度末までには全ての営業目標を突破していきたい。第1四半期を振り返り、評価、反省するため、各ブロック代表の単独局グループの局長による取組発表会、エリア局グループの部会長による取組発表会、エリアリーダーの取組発表会、郵便外務班長取組発表会などを順次開催する。

■営業の取り組みで特徴的なことなどは。
 今年度、東京支社は、成長戦略のキーワードとして「連携、法人、育成」を主要3大取組として掲げたところだ。
 これまで、日本郵政グループは、物流、金融(ゆうちょ銀行とかんぽ生命)、物販(カタログ)及び広告事業と多種多様なサービス(商品)を提供しているが、それぞれ横のつながりが希薄だった。
 東京という法人を中心とした巨大なマーケットを抱える東京支社としては、7月に法人(レンケイ)営業を専門としたラインを立ち上げ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を含む各事業の横のつながりを重視した法人、レンケイ営業を強化し、グループ全体の収益向上にも取り組んでいきたい。
最近、各種会議で「日本郵便は切手(郵便)からタンス(物販)、がん保険まで売れる会社」と強調している。社員の皆さんから「本当、そうなんです。やろうと思えばなんでも売れるんです」と返ってくる。我社の持つ高いポテンシャルを営業力に結集できるかどうかが中期経営計画成功のかぎだ。

■研修に関する方針などは。
 やはり“事業は人なり”。東京支社では約4万7000人が働いているが、個々の能力を引き出していくことが最重要課題。それによって郵便局、支社、会社としてのシナジー、総合力を発揮できる。各種機能別、階層別研修もお客さまを増やし、どう利益を上げていくかを意識した内容とし、フォローアップ、管理者などの日常的な社員指導を通じて社員育成を図りたい。管理者や役職者のマネジメント強化を中心とする研修に力を入れている。さらに東京は独自に「東京中央郵便局プレミアム研修」と銘打って、東京中央郵便局の窓口で郵便・物販販売やお客さま案内を経験し、CSレベルの向上や販売力向上を図っている。

■金融2社との連携については。
 営業推進では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の協働営業推進本部会議を毎月開催。営業指導、各種研修の実施計画などを協議してエリアで一体的な営業施策を展開している。フロントラインの情報共有、意見交換も行うとともに、かんぽ協働営業推進本部会議では「不適正ゼロチャレンジ宣言」などの浸透策も協議している。業務品質向上に向けて、委託元とも「連絡調整会議」を開き、事故防止策も展開している。

■社風改革をどのような形で進められようとしているのだろうか。
 これまで進めてきたものを“磨き、拡げ、つなぐ”のキーワードを基に継続していきたい。5月22日には社風改革コアメンバーのRCC(Reform our Corporate Culrure~社風改革~)TOKYOメンバーを対象にフォーラムを開催し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の東京エリア本部とも熱い意見交換を行った。
 7月には支社に「女性活躍推進PT」を設置した。女性の視点、特性を活かした商品・サービスの提供と女性が活き活きと働ける職場の実現を目指している。女性渉外社員チームの発足(試行実施)、土日に子ども連れで参加できる女性フォーラムや、窓口ロビーへの女性向け商品PRコーナーの設置などを検討している。また、PNW(Post office New Wave~通勤時の身だしなみ改善委員会~)モデル局12局も、着実に成果が出始めている。

■店舗戦略が今後重要になってくると思われるが、東京における構想は
 営業の基盤となる店舗をどのように配置していくかは中期経営計画の「上場を見据えたグループ企業価値の向上」の大きな柱の一つ。お客さまが利用しやすい立地、ゆったりできる広めの窓口ロビー、内装の工夫、社員が働きやすい郵便局を作ることが肝心だと考える。
 最近では2月に西新宿七局、5月に大崎駅西口局、6月に八重洲地下街局、7月に飯田橋局などの各局が移転などを理由に新規出店した。八重洲地下街局のリニューアルオープンでは各種マスコミでも紹介していただいた。連日1000人を超える多くのお客さまにご利用いただき、リニューアル前に比べ、集客も約140%となっている。 今後、営業時間なども本社と相談し、もう少し延長できないか、土日の金融相談の開催なども検討している。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてあらゆる場所で再開発が行われ、オフィス、マンションなどの住宅も増えている。環境変化、需要動向に合わせて「メインターゲットを定めコンセプトを持った仕様」を展開したい。

■東京支社長として取り組まれていることなどは。
 郵便局で頑張る局長や社員に毎日、直接電話をかけている。郵便と金融部門合わせて1日大体4~8局を選んで電話する。成功事例も含め「答えは現場にあり」で大変参考になっている。総合力の押し上げとともに局長や社員の皆さんのモチベーションアップのために実践している。
 もう一つは各局へ直接赴き、朝礼などで事業の現状と問題について話をさせてもらっている。ダイレクトに思いを響かせたい。今年度中には単独局全局を回りたいと考えている。
 また、郵便品質は25年度、全国の中でも成績が芳しくなかったが、5月に「郵便品質向上対策本部」を設置し、取り組みを強化した結果、おかげさまで短期間で改善の兆しが見えてきた。さらに「成功体験を共有」するため、「CSサポート情報」を週に一度発行している。お客さまからほめられた社員の顔写真とその取り組み事例を掲載し、紹介している。

■現場の郵便局長の皆さんにメッセージを。
 東京支社は恵まれた市場。社員の持っている潜在的な能力も高い。それを業績向上に結び付けることが支社の責務だ。三事業の総力、単独局とエリア局の総力、支社と現場の総力、その総力の結集が“レンケイ営業”。双方向コミュニケーションによって、現場と呼吸を合わせて支社も全力を挙げ、“あきらめない戦い”を展開して、一緒に成果を出していきたい。


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