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2024年04月15日 第7244・7245合併号

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新型ドローン「JP2」登場
出石郵便局(兵庫県豊岡市)で試行

 


 日本郵便とACSLが開発を進めてきた物流専用の新型ドローン「JP2」が3月21日、兵庫県豊岡市の出石(いずし)郵便局で披露された。無人地帯での飛行なら目視を補助者なしで自動飛行できるレベル3.5で、実際の荷物を積んで実施された。サイズが大きくなったほか、航続距離、搭載できる荷物の重さも増加した。音も以前のものより小さくなった。実用化は2024年度中を目指している。
 JP2は、大きさが、2.3メートル×2.5メートル×0.7メートル。搭載できる荷物の重さは最大4.5キログラム(100サイズ)。最大飛行距離は35キロ。風速10メートルまでなら飛行可能。自動操縦で、オペレーターが画面で安全を確認している。荷物を上から入れて下に落とすタイプ。
 レベル4(有人地帯で目視を補助者なしで飛行)の型式機体認証に向けて更なる改良を進めており、2024年度中の申請を目指す。
 試行サービスが行われたのは、出石郵便局(同市出石町町分117)から唐川公民館(同市但東町唐川区)までの約11キロ。車では25分掛かるところ、ドローンなら19分で荷物が届けられる。
 試行サービスは3月4日から22日まで実施された。披露の日は雪が降るあいにくの空模様。ドローンは晴れ間を縫って荷物を積み込んで出発したが、雪のため同公民館までは飛ぶことができなかった。荷物は雑貨などを詰めたゆうパック。実サービスでの飛行は今回が始めて。到着を予定していた公民館側では晴れ間に着陸デモが行われた。
 唐川区内には約60世帯、140人が住んでいる。唐川公民館は避難所にもなっている。視察に訪れた斎藤元彦知事は「ここを拠点に各地域の家庭にどう運ぶかがこれからの課題。市と連携していきたい。この公民館は避難所に指定されており、災害時には住民が集まる。平時に日本郵便の集配所からこの公民館まで運ぶポイントを決めておけば、災害時に薬や医薬品などの必要な物資を運ぶことができる。日本郵便としっかり連携し、実用化に向けて進めていきたい」。
 関貫久仁郎豊岡市長は「先端技術を使い、住民の生活に密着した形で進んでいることはわくわくする社会への第一歩。実施になれば、受け取り側の体制も大事になる。地域の皆さんと協力して支援しながら、荷物がスムーズに受け取れるようにしていきたい」と述べた。
 今回の飛行について日本郵便の五味儀裕執行役員は「集落の機能維持という観点から、この地区をフィールドにした。デモでは無事、離陸着陸ができた。航続距離や重量も進歩し、社会実装に向けて大きな一歩。この地区は高齢化や過疎の課題が凝縮している地域。配達拠点から先の配達を協働していくコミュニティモデルづくりに取り組みたい」と話している
 ACSLの鷲谷聡之社長は「従来の機種に比べると、荷物を運べる重さは2倍以上、飛行距離は3倍以上と向上している。耐候性、通信インフラに対する通信の強化など、日本郵便と協力して改良し、持続可能な物流を実現していきたい」と、機体の更なる改良を進めている。
 配達地は、出石郵便局から11キロにある唐川公民館と8キロの所にある高齢者支援センターきずなの2か所だが、配達先は15キロ地点の県境にまで広げる計画。


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