「通信文化新報」特集記事詳細

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2024年03年18日  第7240・7241合併号

【主な記事】

変化に対応、持続可能な経営へ
ゆうちょ銀行 笠間貴之新体制に


 ゆうちょ銀行は3月1日、池田憲人社長の退任と笠間貴之副社長の新社長就任の会見を開いた。笠間新体制では、「新しいリテールビジネスモデルの変革」「市場運用業務の更なる高度化」「Σビジネスの本格稼働」と3つの経営戦略を取り組むことを課題に挙げ、池田社長の敷いた路線を引き継ぐ。笠間新社長は「強く(インテンシティ)、変化に素早く対応する(アジリティ)、持続可能(サステナブル)な経営の最前線に立ち、これまで以上にスピード感を持ち、推進していきたい」と抱負を述べた。就任は4月1日。


 笠間新社長は、有価証券ビジネスの責任者として市場運用部門のクレジット投資や債券などを担当してきた。顧客目線でサービスを見直す「サービス向上委員会」や地域課題を解決する「Σビジネス戦略委員会」の委員長にも抜擢されており、3つのエンジンといわれる経営戦略の柱の全てにトップとして携わってきた。
 「市場運用業務を中心に、ゆうちょらしさの追求と企業価値向上を多くの仲間と共に取り組んできた。お客さまと社員の幸せのために、先頭に立ち挑戦を続けてきた池田社長からバトンを引き継ぐことになった」と説明。「コミュニケーションとチームワークを大切にする一方で、物事には信念を持って取り組みたい」と抱負を述べた。
 経営戦略の柱の一つ「新しいリテールビジネスモデルの変革」では、リアルとデジタルのサービスが相互補完する新しいビジネスモデルを作り上げる。ゆうちょ通帳アプリを起点に、プッシュ通知やお知らせ機能を活用し、多様なサービスや新しいリテールビジネスを構築する。
 笠間氏は「便利な金融デジタルサービスを、高齢者を含めた全ての皆さまに利用してもらうため、リアルネットワークを通じて普及に努めてきた。今後も郵便局などを活用しながら、通帳アプリの口座数を更に積み上げ、お客さま基盤の維持振興を図りたい」と通帳アプリをデジタルサービスの基本にする方針を示した。
 「市場運用業務の更なる高度化」では、リスク性資産と円金利資産を合わせて収益拡大を目指し、運用ポートフォリオの最適化に取り組む。日銀の低金利政策により、運用はリスク性資産に大きくシフトしてきたが、円金利の上昇により円金利ポートフォリオの拡大に取り組んでいる。日銀の当座預金に預けてある約60兆円は昨年下期から日本国債に投資を進めているという。
 「Σビジネスの本格稼働」は、投資のパートナーや地域金融機関と協働しながら、GP業務を通じて、地域課題を解決していく。笠間氏は「地域課題解決と企業価値向上を両立させて、成果を一つひとつしっかりと積み上げていきたい。ビジネス戦略は中期経営計画の見直しの中で公表する」と抱負を述べた。
 GP業務について通信文化新報は「前社長の長門正貢氏もGP業務がやりたいと常々、おっしゃっていました。これまで実施に向けて準備をしてきたと思いますが、2月28日にGP業務を行う子会社の認可申請をされました。今後のGP業務の方針は」と質問した。
 笠間氏は「認可されたことが前提の話になるが、市場運用で、海外でGP業務を行う会社に出資し、研究してきた。プロフィットやプロファイルもしっかりと見てきた。これを日本でも展開させていきたい。池田社長にはΣプロジェクトで切り拓いてきていただいたので、我々はしっかりとバトンを引き継いで進めていきたい」と回答した。
 人材マネジメントについては「成長、能力、多様性を掛け算方式で、社員の活躍を促すインナーコミュニケーションを強化し、働きやすい職場づくりに全力で取り組みたい。組織文化や風土改革には先頭に立ち取り組みたい」と話す。
 笠間新体制では、田中進・取締役兼代表執行役副社長と、4月1日に代表執行役副社長に就任する矢野晴巳・執行役副社長、専務執行役に昇格する新村真常務執行役が笠間新社長を支える。
 池田社長は経営の新体制と人物評価について「笠間氏は、温和だが厳しさを持っている。柔軟でチャレンジ精神も持っている。将来に向けて事業を展開できると指名委員会が全員一致で推薦した。補佐する田中氏は設立以来業務に携わっており、実務の生き字引的な存在。困った時に手を打ってくれる。矢野氏は博学で理路整然としている。新村氏は報道官として勤めてきた。この体制で新しいガバナンス体制を作った」と理由を話す。
 笠間新社長は「3つの事業の柱を好循環で回すための仕掛けづくりを行っていきたい。お客さまに信頼される"トップレベル"かつ"ユニークな"銀行を目指し役員一丸となって前に進みたい」と抱負を述べた。
【笠間貴之・新社長経歴】
 早稲田大理工学部卒。日本長期信用銀行(現:SBI新生銀行)、興銀証券を経て、ゴールドマン・サックス証券マネージング・ディレクター、クレジット・トレーディング部長、ゴルビス・インベストメントPTE.LTD取締役CEOなどの要職を歴任。ゆうちょ銀行には2015年11月入社。同行市場部門執行役員、同部門専務執行役員、2020年6月に専務執行役、2023年6月には取締役兼代表執行役副社長に就任した。岡山県出身。
【矢野晴巳・代表執行役副社長(新任)経歴】
 東京大法学部卒。日本興業銀行からみずほコーポレート銀行管理部室長、みずほ証券経営調査部長を経て、2011年4月にゆうちょ銀行に入行。コーポレートスタッフ部門調査部長、執行役、同コーポレートスタッフ部門経営企画部ALM企画室長、常務執行役、専務執行役、執行役副社長などの要職を歴任。神奈川県出身。
【田中進・取締役兼代表執行役副社長(現)経歴】
 郵政省入省後、郵務局国際課長、総務省郵便企画課国際企画室長、貯金経営計画課長、郵政事業庁貯金部資金運用課長、日本郵政公社郵便貯金事業本部企画部長、内閣官房郵政民営化準備室参事官、日本郵政公社金融総本部郵便貯金事業本部企画部長を経て、2007年10月にゆうちょ銀行に入行。執行役、常務執行役、専務執行役、取締役兼代表執行役副社長などの要職を歴任。
【新村真・専務執行役(新任)経歴】
 住友銀行、朝日監査法人、あずさ監査法人を経て、2007年4月に日本郵政に入社。ゆうちょ銀行には同年10月にコーポレートスタッフ部門審査室長として入行。同部門審査部長、リスク管理部門審査部長、同統括部長、2020年6月からは常務執行役。=関連記事2面=  


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