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2024年03月11日 第7239号

【主な記事】

郵便局、駅の一体化を推進
日本郵政 日本郵便 JR東日本と社会課題の解決へ
鉄道と郵便車の連携も検討

 


 日本郵政と日本郵便、JR東日本(深澤祐二社長)は2月21日、「社会課題の解決に向けた連携強化」を目的とした協定を締結した。少子・高齢化・過疎化によるコミュニティの弱体化や、地域産業の振興、持続可能な物流などの社会課題に、両社の知見やリソースを持ち寄り、協力して解決していく。
 
 両社は2018年6月に「地域・社会の活性化に関する協定」を締結し、千葉県鴨川市にJR江見駅と郵便局が一体化した「江見駅郵便局の開局」(2020年8月31日)とJR業務の日本郵便への委託、東北の農産物を両社の配送網(日本郵便の運送便と新幹線)を利用して東京駅で販売するなど、連携を深めてきた。
 今回の締結により、2万4000の郵便局、2700か所の駅という拠点のリアルネットワークを活用し、社会課題解決のために更なる連携強化を図る。取り組む課題は①郵便局・駅の地域コミュニティ拠点化②持続可能な物流の実現③アセット連携による共創型まちづくり④地域産業振興と新たな地域事業創造⑤デジタル化による地域の暮らし支援の5項目。
 郵便局・駅の地域コミュニティ拠点化では、駅と郵便局の一体化を進め、2024年度中に内房線の安房勝山駅、宇都宮線の蒲須坂駅、2025年度中には外房線の鵜原駅で予定されている。住民が集えるラウンジや買い物の場所、行政窓口機能としても活用する。
 物流面での協力として、鉄道と郵便車での運送を組み合わせることで、輸送の省力化や環境負荷の低減を図る。JR東日本では、配送事業者の大量の荷物を運ぶオペレーションの実証実験をしている。1日40本の新幹線で荷物を運んでおり、日本郵便は東北での配送で参加している。
 日本郵便は、鉄道の積載率のアップで運送便のドライバー不足、CO2削減にもつながることから、郵便車両の運行時間と列車のダイヤが合えば、活用を検討したいという。
 また、駅に設置されているJRの多機能ロッカー「マルチエキューブ」で、ゆうパックの受取ができるようにする(2024年度中に実施予定)。
 駅周辺で都市の魅力や国際競争力を高めるため、お互いのアセットを活用し共創型まちづくりを進める。かつて、鉄道を使い郵便を運んでおり、主要駅の近くには中央郵便局がある。東京駅の近くには東京中央郵便局があり、東京駅の改装と共にKITTEやJPタワーが建設されたという開発事例もある。
 横浜駅東口では現在、国際都市の玄関口にふさわしい都市空間を形成するというプロジェクトが進んでいるが、周辺地域には横浜中央郵便局もある。
 JR秋葉原駅から御徒町駅間の高架下に専門店が入る商業施設「SEEKBASE AKI―OKA MANUFACTURE」(JR東日本都市開発が開発、2019年12月開業)の一角に、みらいの郵便局プロジェクト「SOZO BOX」(日本郵政がJPデジタルに運営を委託)が2月29日に開業した。贈り物の体験をテーマにしたスペースで、2026年3月末まで営業予定。
 地域産業振興と新たな地域事業創造としては、地域産業の担い手の高齢化や若者の働く場所が減り、人口が都会に流出してしまうなどの問題が起きており、郵便局やエキナカで特産品を販売するなどにより、地方の産業を支援する。2024年夏には東京中央郵便局と東京駅の「のもの東京駅グランスタ丸の内店」でイベントを開催する予定。また、空き家などを活用した古民家再生を通じて宿泊事業の検討も行う。
 駅や郵便局というリアル拠点の強みを生かし、デジタルとの組み合わせで地域の暮らしを支援する。オンライン診療や処方薬の集荷・配達で協力する。JR東日本では、2022年4月から西国分寺駅で、地域の病院が駅のスペースを借りて拠点を開設する形でオンライン診療を始めている。
 日本郵便では、郵便局自体が診療所として認定され、石川県七尾市の南大吞郵便局で実証実験を行っている。
 オンライン診療の協業についてJR東日本では「駅で行うオンライン診療での薬の配送は日本郵便にお願いし、今後は郵便局を診療所として活用できるということも含めて、何ができるか、両社で検討したい」としている。
 このほか、1億2000万あるゆうちょ銀行の口座と2500万のモバイルスイカの連携を通じて、暮らしに便利なキャッシュレスサービスの提供について検討する。
 会見で増田社長は「社会課題への取り組みは企業としては収益性の面で難しいことも多いが、地域の郵便局をハブとして、連携することにより、地域を持続可能なものとする。利益と公共性を両立させる中で、当社と同じネットワークを持つJR東日本グループと地域に対する思いを共有し、協定を締結した」とあいさつ。
 深澤社長は「郵政グループとの協業を通して、様々な社会課題解決にチャレンジすることにより、日本社会を支える存在になりたい」と抱負を述べた。


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