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2024年03月04日 第7238号

【主な記事】

瀬戸隆一衆議院議員 三事業一体の回復を
郵便局は地域の「最後の砦」
将来の姿を考える重要な時期

 


 郵政民営化から17年。急速な人口減少など、郵政事業を取り巻く環境は大きく変わりつつある。郵便事業が赤字に転落する中で、郵便料金の値上げも予定されている。郵政省(現総務省)出身で、現在財務大臣政務官を務める瀬戸隆一衆議院議員は、郵政事業は大きな分水嶺を迎えており、三事業の一体感の再醸成なくして将来の郵政の姿は描けないと強調する。(坪内隆彦)


■瀬戸議員は平成3年に郵政省(現総務省)に入省、衆議院議員になる平成24年まで、郵政事業に携わってきました。郵政事業を取り巻く環境の変化をどうご覧になっていますか。
 総務省は昨年12月に郵便料金の値上げを発表しました。これにより郵便事業の収支は一時的には改善しますが、次の年度には再び赤字に戻ると見られています。では、どのようにして日本郵便の経営を守っていけばいいのか。地域のユニバーサルサービスをどう維持していくのか、いま、大きな過渡期にあると認識しています。日本郵政のあり方をもう一度考える必要があるかと思っています。
 郵便事業に重大な影響を与えているのが、急速な人口減少です。
 10年前の2014年に、現在日本郵政の社長を務めている増田寛也氏を座長とする「日本創成会議」が、「このままでは全国896の地方自治体が消滅する可能性がある」とするレポートを出しました。
 今年「消滅可能性都市」に関する新たな推計を出すようですが、出生率の低下に歯止めがかからず、厳しい推計になると予想されています。人手不足がさらに深刻になり、いかにして人手を確保していくかが重要な課題になります。
 地域にとっての「最後の砦」である地方の郵便局をどう守っていくのかについて、国としてきちんと考えていかなければなりません。国として何ができるのかを考える必要があります。
 また、このような厳しい環境の中で、日本郵政グループがどのようなサービスに注力すべきかを改めて考える必要があるかもしれません。例えば、利益率が高い荷物分野をどう強化していくかを考えていかなければならないでしょう。
 ■郵政民営化によって日本郵政グループ各社の一体化が弱まったとも指摘されています。
 ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、郵政事業全体の中で非常に大きな役割を果たしています。かんぽ生命は、業務改善命令に基づいて金融庁、総務省に提出していた「業務改善計画」が完了し、販売自粛も解除され、1月に一時払終身保険「つなぐ幸せ」を発売しました。
 「人生100年時代」において、資産を相続する人に残したいという要望に応えた商品で、売れ行きも良いと聞いています。
 この数年間、かんぽ生命は厳しい状況にありましたが、これを機に再び元気を取り戻し、積極的に前に出ていってほしいと思っています。
 かんぽ生命とゆうちょ銀行の経営がしっかりすることは重要です。これら2社の株の配当、交付金、委託手数料が郵便局のネットワーク維持に一定の意味をもつことを、改めて意識する必要があります。
 郵便・貯金・保険の三事業が一体になって頑張らなければ、地域の郵便局は守れません。ところがいま、三事業の一体感が薄れてしまっていることが最大の問題だと思っています。その一体感をどう取り戻していくかが重要な課題です。
 この問題の解決なしに、郵政の将来は描けません。三事業一体で取り組む体制が崩れれば、事業経営を危うくし、地域の最後の拠点である郵便局を守れなくなってしまいます。つまり、いまは郵政事業を見つめ直し、将来のあるべき姿を考える非常に重要な時期だということです。(2面につづく)


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