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2024年02月12日付7235号

【主な記事】

全国初 デジカメによる空き家調査
奈良県生駒市 集配社員が研修

 


 近畿支社(西口彰人支社長)は1月19日、奈良県生駒市の空き家対策におけるデータベース化のサポートを目的に、「空き家外観調査業務」を受託し、生駒郵便局で空き家調査を行う集配社員を対象に研修を実施した。
 2020年3月25日の「生駒市と市内郵便局との包括連携協定」締結時から、生駒市が空き家プラットホームを構築し、生駒部会も協力。以前、生駒市はコンサル会社に委託していたが、郵便局の集配社員ならもっと安く、高い精度で行えるのではないかとの思いが2、3年前からあり、郵便局でできないかと考えていた。
 当初は配達原簿(配達情報)の活用を考えていたが、郵便法上できないことが判明。総務省の会議に生駒市から参加して意見を述べ、地方公共団体が使用したいと要望したが叶わなかった。
 昨年4月に生駒郵便局の宮崎敏宏局長、近畿支社経営管理部地方公共団体営業担当の谷口尋海係長が着任。生駒部会から説明を受け、郵便局でできると判断して単価を試算。生駒市との調整は生駒部会と生駒郵便局が行い、日本郵便本社との折衝・調整や1軒当たりの単価は谷口係長が担当し、懸案であった空き家調査の受託に向けて動き出し、今回の受託となった。
 研修には各班から選ばれた集配社員(集配区を複数担当できる社員)14人と管理者・役職者が参加。生駒郵便局の宮崎局長、奈良県北和地区連絡会生駒部会の奧垣進司部会長(東生駒)、生駒台郵便局の中村大輔局長、谷口係長が出席した。
 宮崎局長は「生駒市と部会で協議を重ねてきた空き家調査が具体的になり本日を迎えた。生駒市から180軒のデータをもらっている。皆さんが配達している知識を持って調べればさほど難しい話ではないが、これでは郵便法に違反することになる。今回のように、郵便以外の業務で外観調査をするのは全国で2件目、近畿で初めての取り組み。結果によっては1つの形が出来上がる」と話した。
 谷口係長は「今回の調査は配達原簿などを使用しない、自治体からもらったリストをもとに現地調査をする受託。通常の配達業務途上に調査対象住所で業務端末(携帯端末)を切り替え、腕章を着けて①建物の有無②門扉・表札③敷地の状況④窓の状態⑤電気メーターの稼働状況⑥ガスメーターの稼働状況⑦郵便受けの状況―の7つの調査項目をチェックし、その後デジタルカメラで外観写真と顕著な箇所(郵便受け箱に郵便物が溢れている、窓ガラスが割れている等)の撮影を行って調査は終了。腕章を外し、携帯端末を配達業務に切り替えて郵便の配達に戻る」と説明。
 研修は、個人情報やSDカード、データの取り扱いと管理方法、調査中に住民から不審に思われた場合の対処方法などの注意点を中心に行われた。
 谷口係長は「郵便局は配達社員、機動車等が元々ある。従来業務にプラスするだけで、受託業務を行える」、宮崎局長は「今回の受託料は当局に全て入る。生駒市との窓口となり、努力した生駒部会の頑張りが評価されないことは今後の課題」と話す。
 今回の受託ができたのは、エリア局の生駒部会が部会長3代(生駒台郵便局の中村局長・生駒萩の台郵便局の梁瀬健司局長・東生駒郵便局の奧垣局長)が生駒市との強いパイプを持ち、配達局の協力体制が整い、近畿支社が受託に向けて本社との調整を行った結果。
 また、三重県玉城町ではタブレットを用いた空き家調査であったが、今回のデジタルカメラを使用した集配社員による空き家調査は全国初で、1軒当たりの調査費用も安価で、他の自治体にも訴求できる。
 このような取り組みが全国に広がっていけば新しい収入源となり、地方自治体との連携強化に繋がり、横展開が期待される。
 


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