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2024年1月22日 第7232号

【主な記事】

日本郵政と日本郵便を合併
ゆうちょ銀行かんぽ生命 株式3分の1以上保有

郵政関連法改正要綱案(素案)

 今通常国会での郵政民営化法改正案提出を目指し、自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」を中心に法案作成が進められる中、「郵政関連法の改正に関する要綱案(素案)」がまとめられた。2007年の郵政民営化から17年を経て、日本郵政と日本郵便を合併し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を3分の1以上保有するなど抜本的な改正を求める内容となっている。改正要綱案は定稿ではなく、たたき台の段階で、現在これをもとに自民党内などで議論が進められている。
 
 郵政関連法改正要綱案(素案)
 
 要綱案は、①「郵政三事業の堅持のための改正」、②「郵便局ネットワークの維持・活用のための改正」、③「上乗せ規制の緩和」、④「外国人等による(合併後の)日本郵政株式会社の議決権保有制限」からなる。
 ①「郵政三事業の堅持のための改正」では、日本郵政と日本郵便の合併とともに、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の発行済株式の総数の3分の1を超える株式を、それぞれ保有していなければならないものとするとしている。
 小泉純一郎政権下の2005年に成立した郵政民営化法では、2017年9月までに金融2社の株を完全に売却して両社を民間企業とすることが義務付けられていたが、2012年の法改正で売却時期が「できる限り早期に」と修正された。その後、郵政グループの紐帯関係の低下が指摘されるようになる中で、全国郵便局長会は、「郵政民営化に関する意見書」(令和5年10月)で、「郵便局ネットワークを維持するために、日本郵政又は日本郵便による、一定数のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式の保有等、一体経営を担保する仕組みについて引き続き検討していただきたい」と要望してきた。要綱案はこうした要望に沿った内容となっている。
 ②「郵便局ネットワークの維持・活用のための改正」では、公共サービスその他の地域住民が日常生活、社会生活を営む基盤となるサービス(「基盤的サービス提供業務」)を日本郵便の本来業務に追加するとしている。
 少子高齢化、人口減少などを背景として、市町村の支所など公共サービスを提供する拠点が減少する中で、高齢者を中心とした交通弱者にとって拠点の確保が急務となっている。こうした中で、郵便局を公的基盤として明確に位置づけるべきだという考え方が強まっており、「デジタル田園都市国家構想基本方針」(2022年6月)でも「郵便局などの既存施設の行政サービス窓口としての活用」が強調されている。
 ただ、市町村からの委託を受けて行う郵便局の公共サービスの運用実績は限定的な水準に留まっている。
 要綱案は、郵便局ネットワークを維持するための資金を確保するため、「郵便局ネットワーク維持基金」(仮称)の創設を盛り込み、日本郵政が保有するゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の処分による収入の一部を基金に積み立てなければならないものとするとしている。
 さらに、郵便局ネットワーク維持基金では不足する場合に備え、郵便局ネットワークの維持のために政府が講ずる必要な措置の例示として、「財政上の措置」を加えることとしている。
 人口減少、手紙利用の減少などによって、郵便事業の経営基盤は悪化の一途をたどっており、郵便料金の値上げも予定されている。ゆうちょ銀行、かんぽ生命からの委託手数料、郵便局ネットワークの維持の支援のための交付金・拠出金制度に基づくゆうちょ銀行、かんぽ生命からの拠出金では賄いきれなくなるため、資金の確保が急務となっている。
 ③「上乗せ規制の緩和」では、日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式の2分の1以上を処分した後は、「適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供への配慮規定」を削除するとしている。また、日本郵政がゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の2分の1以上を処分した後は、ゆうちょ銀行が銀行を子会社とすること、かんぽ生命が保険会社を子会社とすることを可能とするとしている。
 「金融2社が行う、社会の要請に合致した魅力ある商品や新サービス、新規業務について他の金融機関と同様に速やかに認可いただけるようにするために、上乗せ規制を直ちに撤廃し、公平な条件としていただきたい」との郵便局長会の要望に応えたものだ。
 ④「外国人等による(合併後の)日本郵政株式会社の議決権保有制限」では、外国人等により占められる日本郵政の議決権の割合が3分の1以上となるときは、その氏名、住所を株主名簿に記載してはならないこととしている。外国人投資家による経営介入を危惧する声に応えたものだ。=2面に郵政関連法の改正に関する要綱案(素案)=


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