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2024年02月05日付7234号

【主な記事】

加納聡北陸支社長 フロントラインの声を大事に
経済 社会の変化に的確に対応


  就任して3年目を迎えた北陸支社の加納聡支社長。この2年間、支社独自取り組みに粉骨砕身してきた。特に「フロントラインの声を大事にすること」を掲げ、郵便局の多数回訪問や頑張っている社員との面談など、直接話を聞くことで、郵便局に寄り添ってきた。そのうえで郵便と金融を融合した「統合営業トライアル」と命名した取り組みを加速させている。また、2023年11月には全国初となる「オンライン診療」の実証を石川県南大呑郵便局で開始。郵便局ネットワークの活用にも力を入れている。これらの背景と今後の展望について聞いた。(編集部注=インタビューは能登半島地震発生前の2023年11月28日に行いました。地震でお亡くなりになられた方々のご冥福を謹んでお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、北陸支社をはじめ、被災地での救助活動・復旧作業に従事されている全ての方に深く敬意を表します。)
▼2021年に経営管理本部長から支社長に就任され3年目になられました。これまでで、特に力を入れられた取り組みは、どのようなことでしょうか。
 支社長に就任した時は、かんぽ問題が発生し、後処理をどうしていくかということと、新型コロナウイルスが蔓延し、経済活動が止まっていった時期でした。
 かんぽ問題の対応で一番大事なことは「お客さまの信頼回復」。そして、社員が受けたダメージやモチベーションの低下をいかにして回復するか、というのが私のミッションだと思ってやってきました。
 色々な問題が起こって、これから変わっていかなくてはならない時期でもあったので、「私は郵便担当だ」とか「金融担当だ」とかのセクト意識を捨てること。特に北陸は小さい支社なので、何もかも全員で一致団結し、全員で前を向いて行けるようにということを基本的なコンセプトとして取り組んできました。
▼日本郵便は風通しのよい組織風土づくりに取り組んできましたが、北陸支社管内ではどのようなことに取り組まれているのでしょうか。また、モチベーションが低下した社員を元気づけるために、取り組まれたことをお聞かせください。
 私たちのような立場の者が、どういう形で社員にメッセージを伝えていくかということがポイントになりますが、北陸支社は3県でエリアは大きくないので、各局を訪問することをベースに考えています。
 コロナ禍での制約も徐々に緩和されてきましたので、今年度は単マネ局には3回訪問しています。年末までに4回目の訪問をする予定で、その後、来年度の方針を伝えていくために、年明けから5回目の訪問を予定しています。
 その間にもエリマネの役員局を訪問していますし、最近は頑張っている社員が勤務している局を訪問することにも重点を置いています。
 特に保険営業で苦しんだ時期を経験した社員が、これから前向きに取り組めるよう、今こそ、彼らの話を聞いて、悩みを理解することが重要だと思っています。かんぽ問題の終結のためには、私たちが動くべきだと思っています。
 日本郵便のような大きな組織の欠点とも言えることは、フロントラインの声が上に伝わってくる間に取捨選択されてしまいがちなことです。なので、訪問して直接、話を聞くことが、一番効果があると思います。私が動くことで、支社の部長クラス以下も臨局しやすくなり、私たちが本当に郵便局に寄り添うことができる。これが一番大事なことだと思っています。
 訪問することで社員の顔を覚えますし、名前で呼びかけることが一番良いと思うので、できる限り直接訪問を心がけています。私が直接郵便局を訪問すると、社員は私の顔を知っているので、入口の自動ドアが開いた途端にびっくりしますが、突然訪問すると社員の本音が聴けるので、一番大きな収穫だと思います。
 また、コロナ禍でリモート会議が定着し、わざわざ集まらなくてもリモートで十分ではないかということに気付いた利点もありますが、やはり対面でないと伝えきれないこともありますので、今は集合とリモートをうまく使い分けることが大切だと思います。
▼2024年3月期の第2四半期決算も明らかになりました。北陸支社管内の郵便・物流事業、郵便局窓口事業の現状、今後の展望等についてお聞かせください。
 郵便・物流事業では、ヤマト運輸との協業というドラスティックな出来事がありましたが、お客さまには比較的受け入れていただけていると思います。
 例えば荷物一つ取っても、この数年間で新しいお客さまが格段に増えてきているという現状があります。逆に、これまでのお客さまの利用が減ってきているというのもあって、プラスとマイナスで、かろうじてプラスになっている状況です。
 これまでのように同業他者との戦いもありますが、経済状況、社会状況はかなり変化しています。コロナ禍でウナギ登りに増加した通信販売自体が、コロナ禍が落ち着いて減っているという状況もありますし、ここ20年以上右肩上がりで拡大してきた小荷物市場のパイが狭まっています。また、自社で直送する会社もあり、得意、不得意分野がある中で、各社の組み合わせが過渡期なのではないかと思います。
 その意味では、新たな発見もある一方で、弱点も見えてきており、そこが立て直すべきところなのだろうと思います。
 金融は、かんぽ問題以降徐々に回復傾向にあると思いますが、「お客さまのために提案する」という従来の流れにまでは、完全に回復していないと思います。
 社員自身が数年前の活動を忘れてしまっているというのもあるでしょうし、積極的な声掛けを控えてきた時期もあり、それをあからさまに示したときにお客さまに選択していただけるかどうか、これもある意味、過渡期になっていると思います。
 ただ、金融は人口減が進む中で、保険、特に投資信託は国の政策でもあり、私はNISAを「魔法の言葉」と呼んでいるのですが、若い人は、ものすごく反応するので、ここから保障の必要性を訴えていくことだと思います。また、既存の顧客重視も必要ですが、新たなお客さまに色々なことをお知らせしていく時期でもあるので、これがうまく浸透できれば、いくらでも金融部門の回復ができると思っています。(2面につづく)


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