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2024年02月05日付7234号

【主な記事】

野田聖子衆議院議員 郵便局の原点に回帰を
三事業一体で運営
国民生活の最後の拠り所

 



 2007年の郵政民営化から17年、2012年の郵政民営化法改正から12年。郵便局ネットワークの活用は、岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」で重要なテーマと位置づけられている。一方、少子高齢化・人口減少が進行する中で郵政事業を取り巻く環境は厳しくなっている。今通常国会では民営化法改正案が議員立法として提出される見通しで、現在「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)が法案作成を進めている。郵政大臣、総務大臣、地方創生担当大臣を歴任し、「郵便局の原点回帰」を目指した民営化法の抜本改正を唱える野田聖子衆議院議員に聞いた。(坪内隆彦)


■2012年の改正民営化法による再編から12年が経過しました。郵政事業、郵便局の現状について、どのような感想をお持ちでしょうか。
 現在、郵政事業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。特に深刻な問題が人口減少です。2023年の日本の人口は前年に比べ80万人以上減少しました。人口を維持するためには合計特殊出生率を2.07に保つ必要があるとされていますが、現在は1.26まで低下しています。いまや人口減少は、戦争や大災害に匹敵するような国家存亡に関わる大問題となっています。
 人口減少の結果、人手不足が深刻化しています。これまでは農業の人手不足が注目されていましたが、現在はコンビニ、旅館・ホテルなどのサービス業や郵便局でも人手不足に陥っています。サービスを提供する側の人手不足が深刻になるだけではなく、サービスを利用する人の数も減っていきます。人口減少は決して短期的な問題ではなく、これから100年続いていく問題です。我々は、この問題をどう乗り越えていくかという重い宿題を与えられているのです。
 郵便事業は労働集約型の産業ですから、若い担い手がいなくなることは死活的な問題です。また、郵便事業のお客さまは全国津々浦々にいらっしゃいますが、人口減少に伴いお客さまも急速に減っていきます。
 すでに、金融機関は生き残りのために地方の支店をどんどん閉鎖しています。そのため、地方に住んでいる人の生活はますます不便になっています。こうした中で、国民が全国どこでも平等に利用できるように、郵政民営化法はユニバーサルサービスを行うことについて定めています。しかし、利用者が減っていく中で収益を上げることが難しくなっていきます。
■地方創生のため、自治体と郵便局との包括連携協定締結が推進されています。また、郵便局ネットワークの将来展望として、自治体の窓口事務を取り扱ったり、集落の課題解決への参画、買い物支援、見守り、空きスペースの活用、交流拠点など、郵便局を活用した多様な地方活性化策が総務省PTで提言されています。今後、郵便局が地域で果たすべき役割、期待などについてご所見を聴かせてください。
 郵便局は民営化する前の本来の姿、原点に回帰するべきだと思っています。郵便、貯金、保険の三事業一体で運営し、国民生活のライフライン、最後の拠り所としての役割を果たしていただきたい。例えば、「郵便局を活用した地方活性化方策」(令和5年3月)には「地域の事情に精通した元郵便局員等を集落支援員として活用する」ことが盛り込まれていますが、民営化以前の郵便局は、そうした役割を当たり前のように担っていました。ところが、民営化されたことによって、地域住民の生活を支えるという一番重要な部分が切り捨てられてきました。だからこそ、郵便局は原点に回帰し、そうした役割を果たしていく必要があるのです。
 郵便局の利活用として、買い物支援、見守りなどの高齢者対策や、自治体の窓口事務の取り扱いなどが進められています。郵便局でのマイナンバーカードの申請や受け取りもできるようになっています。
 今後は、証明書の発行などマイナンバーカードを利用した申請手続きができる端末を郵便局に設置し、様々な行政サービスを提供できるようにしていく必要があります。役場が廃止されても、郵便局であらゆるサービスを受けられる環境を整えるということです。今後、郵便局がそうしたサービスの提供を本業としてやっていく時代になると思います。
 郵便局が公共サービスを担うということになれば、地方財政措置のようなものも必要になるでしょう。
■野田議員は郵便局への公衆電話の設置を提案しています。
 NTTは、ピーク時の1984年には日本全国に約93万台の公衆電話を設置していましたが、携帯電話の普及によって利用者が減少し、現在は約10万台に減っています。いずれ、約3万台まで減らす計画です。
 NTTのHPや自治体の防災マップなどで公衆電話の場所が掲載されたりしていますが、いざという時にどこに公衆電話があるかわからないという方も多いのではないでしょうか。その点、郵便局は多くの人が場所を知っているので、郵便局やその最寄りに公衆電話があれば、緊急時にすぐに利用できます。公衆電話は緊急用に限定し、一定の通話時間であれば無料で使用できるようにしてもいいと思います。
 かつてはNTTの電報と日本郵便のレタックスがシェア争いをしていましたが、今や電報事業は赤字となり、配達員も不足しています。そこで、両者を統合するという考えも出てきています。
 さらに、最大のライバルと言われてきたヤマト運輸は「クロネコDM便」を終了し、2月1日から、同社が顧客から受け取り、日本郵便に配達等を委託する「クロネコゆうメール」を開始することになりました。その背景にあるのも、深刻な人手不足です。日本社会の状況は民営化が行われた17年前とは根本的に異なります。いまこそ、これまでのやり方を抜本的に見直すときです。 (2面につづく)
 


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