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2019年8月12日付 第7000・7001合併号

【主な記事】

土曜休配などを承認
[郵便局活性化委]臨時国会に改正案

 総務省の「情報通信審議会郵政政策部会」(米山高生部会長=東京経済大学経営学部教授)とその下部組織の「郵便局活性化委員会」(米山高生主査)が8月6日、開催された。「郵便サービスのあり方に関する検討」の答申案が原案通り承認された。土曜休配や翌日配達の廃止など日本郵便の提案が認められた。今後は8月27日までのパブリックコメントを経て、石田真敏総務大臣に答申。関連法の改正案は、秋の臨時国会への提出を目指す。
 郵便物の減少傾向や働き方改革、人手不足など日本郵便の郵便・物流事業を取り巻く環境の変化を背景に、郵便局活性化委員会では昨年8月から「郵便サービスのあり方」について検討してきた。
 日本郵便が提案したのは、郵便料金の値上げではなく、サービスレベルを見直すことで、郵便事業の収支悪化を抑制しようというもの。
 見直しは「土曜を休配し週5日配達とする」「翌日配達を廃止し、送達日数は原則3日以内を原則4日以内とする」「同一郵便局内で引き受け・配達をする場合は、例外として低廉な料金を適用しているが、これを拡大する」の3つ。
 ただし、同委員会は要望事項として「郵便サービスの将来にわたる安定的な提供を確保するために必要な見直しであること」を前提に、実施に当たっては「国民の理解が得られることが重要で、国民に対して丁寧に理解を求めれば、今回の見直しの実施は可能」という条件を付けた。
 論点整理の段階で、パブリックコメントを実施し、新聞関連事業者や団体からは日刊紙の土曜配達を求める意見が多数寄せられた。答申では、日本郵便からは「現在引き受けている土曜配達については、差出人から一定の負担を求めていくことを条件に続けていきたい」という提案がなされた。
 委員会の意見としては「必要なコストの分担という方向性は適切」「第3種郵便制度を利用した配達について、低廉な料金を逆手にとって日刊紙が販売促進の材料にすることは適正でない」「今後の社会状況や技術の発展に応じて柔軟に適用できるようにしておくべき」の3点が示された。
 部会長会見で通信文化新報の「『日刊紙だけ特別扱いをするのがよいのか』『止めるという選択肢もある』という委員の意見もあったが、どのようにとりまとめたのか」との質問に、米山部会長は「新聞協会の言い方で『情報弱者』をどう守るのかという主張だった。既存の利用者を守りたい。それには相応のコストをシェアすることになった。厳しい意見もあったが、全体としてはそういう方向でまとまった」と答えた。
 今後の検討課題として、第3種郵便物、第4種郵便物に適用されている政策的低廉サービスについて、費用負担が適切なのかも含めて検討の必要性が盛り込まれている。
 政策的低廉料金について米山部会長は会見で「この料金は制度が始まった当初の趣旨から段々とズレてきた。民間企業である日本郵便が割引を行わなければならないのか。行うとしたらどのような理念で行うのか。根本的に考えなければならない。日本郵便は弱者に郵便を通して貢献してきたことについて、将来はどう考えるか。理念から洗い直すことが必要だと思う」と話している。
 郵便局活性化委員会で竹内健蔵専門委員は費用負担について「日本新聞協会が主張する民主主義や活字文化の維持となると、その費用を一般国民ではなく郵便利用者が負担しなければならないのか。その理由も考えなければならない。様々な費用負担に関して、不思議な点がある」と今後の議論に期待を寄せている。
 答申案全体について、東條吉純主査代理は「日本郵便が要望した3つを認めることになったが、短期的に時間的猶予を与えられたに過ぎない。この時間をフルに活用して、次の一手を進めていっていただきたい」とアドバイスする。
 関口博正専門委員は「社会情勢は厳しいが、郵便事業は単独で採算を取らなければならない。長期的には、それを変えていくことを粛々と進めなければならないと思っている」との意見。
 石山アンジュ専門委員は「今後の検討には、環境の変化に対応できうる柔軟性が維持できるかが必要となる」、泉本小夜子郵政政策部会委員は「再配達の問題は、業界を挙げて取り組んでもらいたい」、根本直子同委員は「デジタル化や業務効率化を継続して進めてもらいたい」という意見や感想を述べている。
 総務省では、同答申案の意見募集を8月8日から27日(同日必着)まで行っている。9月上旬をめどに答申を取りまとめる予定。


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