「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6995号

【主な記事】

【1面】
前島密翁の精神を受け継ぐ
[全国郵便局長会]山本利郎会長

 全国郵便局長会の山本利郎会長(北陸地方会長/金沢扇町)は、5月に開かれた広島総会で新会長に就任した。「『令和』最初の全特総会、前島密翁の没後100年に会長に指名され、特別な思いを感じる」と話す。前島翁の精神は「ユニバーサルサービスを展開している郵政事業に携わる者にとって拠り所。崇高な理念として、局長会の原点をもう一度見つめ直し、多くの課題解決に向けて取り組んでいかなければならない」と決意を新たにしている。
〈インタビュー=通信文化新報・富澤敦社長〉

対話を深め活発に議論

■5月の全特広島総会で会長に就任されました。まずは就任の抱負をお願いします。

 新しい時代、「令和」最初の全特総会であり、前島密翁の没後100年の年に全特会長に指名され、就任したことに特別な思いを感じます。令和の意味は「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め決定した」と聞いています。全特の組織も、会員が明日への希望を持っていけるような組織になれば良いと思います。
 また、前島密翁の没後100年という年でもあり、創業の精神を再確認しました。翁は郵政事業だけでなく、東京遷都、駅制改革、海運事業の振興、海上保険の構築、新聞事業の育成、東京専門学校(早稲田大学)や訓盲院(筑波大学附属視覚特別支援学校および同聴覚特別支援学校)の設立など先見性に満ちた提案により、大久保利通、大隈重信、渋沢栄一などにも影響を与え、その結果、近代国家としての日本国の骨格が出来上がったと言われています。その前島密翁の言葉が養女だった小山まつ子の寄稿文に書かれています。
 「縁の下の力持ちになることを厭ふな 人の為によかれと願ふ心を常に持てよ」。これこそが、三事業のユニバーサルサービスを展開している郵政事業に携わっている者にとって、精神の拠り所です。地域貢献を実践し、郵政事業の発展に努力している全特の崇高な理念として、局長会の原点をもう一度見つめ直し、全ての関係者に理解されてほしいですね。
 そして、会長として多くの課題解決に向けて、しっかり取り組んでいかなければならないと決意を新たにしたところです。改革は半年以内に行わないと、体制に流されてしまうと言われています。スピード感をもって取り組みます。大きな組織なので簡単にはいかないと思いますが、役員、事務局の協力を得ながら進めていきたいと思います。

■総会後の記者会見では、一糸乱れぬ行動ができるような組織にと強調されていました。改めて全特の課題は。また、組織強化などについてどのように取り組まれますか。

 全特役員、地方会役員、地区会役員がしっかりと役員同士だけでなく会員とも対話することが大切です。
 「人は人間的付き合いのない人には攻撃的になる」。アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスの熟知性の法則です。こうした習性を持つ私たちが、人と関わっていく中で、出来るだけ多くの相手と共通部分を見出していくことが大切なのは言うまでもありません。
 上から目線で相手に自分の考えを押しつけるのではなく、同じ目線、あるいは相手より低い目線で、相手の言葉に耳を傾け、会員より多くの情報を持っている役員が丁寧に説明をし、役員間、役員と会員間、会員同士で安心感を覚える人間関係の構築が必要です。
 会員から、役員の為に営業活動や政治活動をさせられているとの声が上がらないように、それぞれの会を運営していかねばなりません。役員だけが恩恵を受けているかのような誤解を与えないことが必要です。役員は会員のために汗をかき、お世話をしている姿を会員が実感できることが必要です。
 会社の組織である地区連絡会は、マネジメント力が必要で上意下達になるのはやむを得ないと思います。局長会組織もマネジメント力は必要ですが、違いは皆平等であり、役員はお世話役だということです。
 会議の持ち方も変えていかねばなりません。全特、地方会、地区会、部会を経由するために、情報の伝達に時間がかかり、正しい情報も伝わりにくくなっています。会議は単に決まったことを伝えるだけでなく、なぜ決めたのかという理由、背景を説明出来なければ、正しく伝わらないと思います。全特役員会では、時間をかけて議論をし、それから決定するようにします。そうすれば、役員全てが自らの責任で決めたことになり、地方会などの会議も中身の濃いものになるはずです。
 会議では様々な意見が出ますが、必ず議論をしてから決定します。意見は違っても、決まったことには従う。これが「民主主義」であり、時間がかかるものです。この手法が「同一認識・同一行動」をさらに強力にし、組織強化につながると思います。
 全特役員になってから全国を回っていると、全特役員と会員との距離が縮まるのではなく、むしろ広がっているように感じてきました。小さな綻びが大きな問題にならないよう、会員との距離を縮めることに取り組んでいかなければなりません。そのためにも、役員が各地方会へ出向き対話活動を実施する予定です。

■日本郵便は2019年3月期決算で、純利益1266億円になりました。かんぽ生命の1204億円を上回っています。引き続き、収益の向上にはどのようなことが重要とお考えでしょうか。

 経営に関わることは、会社の仕事ですが、私見としてお話させていただきます。
 三事業だけで大きな収益を上げることは、今のビジネスモデルでは困難だと思います。ユニバーサルサービスを提供するコストの問題が、利益を上げることに影響していることはあえてここでは触れないでおきます。
 郵便局会社と郵便事業会社が合併したことにより、郵便事業においては、経営努力で直接収益向上を図ることができるようになったと思います。一方、金融の分野では、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険からの委託手数料が収入源になっています。そのため、委託手数料を見直さない限りは、自助努力で収益を大きく増やすことが出来ない点に限界があると思います。
 その為には、新たな収入源として新規事業が必要になり、今取り組んでいるがん保険、投資信託、物販、不動産事業などに積極的に取り組むことが欠かせません。それ以外にも、今後始まる地公体の窓口業務包括受託による受託手数料も収入源になります。すでに幾つかの市町村との打合せも進んでいます。
 ネッワークの将来像においても、全国から4000件以上のアイデアが会社に提案されたと聞いています。この中からも、日本郵便の収益の向上に役立つものが出てくると思います。
 会社にお願いしたいのは、目先の利益ばかりを追求するのではなく、将来への投資にも積極的に取り組んでいただきたいということです。
 例えば、社員育成。直接的な収益向上にはつながらなくても、将来の収益向上につながると確信しています。コスト削減を目的に研修所を閉鎖し、大切な社員育成が十分にできず、社員の少ない現場でOJTによる育成が中心になり、現場の負担が増しています。現場で新採を育てるためのコストを無視できない状況にきています。社員・人材は会社の大切な財産のはずです。一考していただきたいと思います。


「地域が求めるものは」の視点で
期待される郵便局ネット

■郵便局ネットワークを維持、ユニバーサルサービスを確保することを目的に、交付金制度が創設されました。将来にわたり郵便局ネットワークを維持・発展させるために重要なことは、どのようなことでしょうか。

 先の全特広島総会での森山裕先生(自民党国会対策委員長、郵政特命委幹事長)の話に多くの会員が感動しました。先生曰く、「前島密翁は自由・平等・公平ということを理念としながら、身分や肩書のある人だけでなく、貧しき人も、富める人も平等に使える郵便システムを築いてきた。それが先人たちの努力により、日本の文化になっていることを忘れてはならない。このことがユニバーサルサービスの原点であることを決して忘れてはならない」。
 郵政事業に携わる人々がこの意味をもう一度認識するところから、この議論が始まります。
 私はかねがね、郵便局は日本国の社会インフラ、生活インフラであると言ってきました。同時に「郵便局」は「安心・安全・信頼」に裏打ちされたブランドだとも発言してきました。
 この郵便局の役割を今後も果たしていく取組みが大切になります。三事業だけを提供するのでなく、地域の人々に必要とされる業務を取り扱うことです。
 銀行が撤退、農協も撤退し、ついには地公体の支所まで撤退しても、郵便局は撤退しないと会社は決めました。郵便局に求められる地域の生活インフラとしての役割は何なのか。サービスを提供する側の発想ではなく、地域住民が求めているものが何なのかの視点が必要です。撤退した銀行や農協のATMを郵便局に設置するとか、地公体の支所業務を受託するなど、住民の生活に必要な業務を全て郵便局でできるようにすることが理想ですね。
 ネッワークの維持・発展と言うと、過疎地ばかりに思いがいきそうですが、この問題は過疎地に限ったことではなく、都市部でも同じような問題を抱えています。都市部でも、銀行は撤退しているし、高齢化の進んでいる地域もあります。
 重要なことは、それぞれの地域で必要とされる郵便局になることではないでしょうか。その為に「地域貢献」「地方創生」の活動があります。
 郵便局の特徴は「集団的機能」と「地域密着性」にあります。地域に寄り添い、地域と共に生き、地域を丸ごと包み込む、そんな郵便局になることがネッワークの維持・発展の原点です。このことを私たちの先達が実践してきたから今があるわけで、私たちも継続し、次の世代に引き継ぐことが必須です。

■郵便局ネットワークの将来像ですが、現在の議論の進展状況、また、今後はどのような方針で取り組まれるのでしょうか。

 会社とわれわれは、長い時間をかけてネットワークの将来像の議論をしてきました。同時に全特でも、様々な角度から議論を続けてきました。2万4000のネッワークを維持・発展させること、そのためにあるべき郵便局の考え方、取り組む姿勢は「ネットワークの将来像」の指針に記載されています。
 「この『将来像』は、日本郵便の経営理念に基づいて、今後の郵便局ネットワークのあり方を示したものであり、具体的な施策を展開するに際しての指針となるものである」と指針の前文に書かれています。
 総論の中には「郵便局ネットワークの活用その他の郵政事業の実施に当たっては、その公益性及び地域性が十分に発揮されるようにする必要がある。郵便局の社会的使命を果たし、公益性及び地域性が十分に発揮されるためには、同時にそれを実施する健全な企業としての収益性を確保することが重要である。公益性と企業性の両立は、郵便局ネットワークの持続性を確保する上で必須の要件である」とも書かれています。これが、今後の取組みの基本になるものだと考えています。
 昨年、会社がネットワークの将来に関する具体的な商品・サービスの募集をしたところ、4000件を大きく超える提案があったと聞いています。それを、分類し、その中で実現可能なものを各支社にフィードバックしたところです。局長会としても、今後は個々の施策について具体的な取組みをしていく予定です。

継続した取組みが重要
自治体の評価が高い包括協定

■地方創生のため、自治体との包括連携協定締結が推進されています。今後の自治体との連携強化は、どのような方針で臨まれるのでしょうか。

 昨年度まで地方創生専門委員会の担当副会長として取り組んできました。地方創生の活動は、長年続けてきた日々の地域貢献活動を土台としています。全国の地域貢献活動及び地方創生活動の実態を報告してもらったら、全国の会員が様々な取組みをしていることに感動すら覚えましたが、それぞれの活動がその地域ならではのものが多く、そのまま横展開できるものは多くありませんでした。
 その中で、横展開しやすい取組みとして「婚活」「買い物サービス」を取り上げ取り組んできました。「婚活」は多くの地域で実施してきました。これも、それぞれの地域に合わせた工夫をして実施しています。一方、「買い物サービス」は地域の方々のニーズがあるのは十分に理解していますが、実施者が誰か、コスト負担をどのように賄うのか、受益者のニーズに合った方法になっていない等の問題がありなかなか前に進んでいません。
 地方創生のもう一つの取組みとして、県、市町村との包括連携協定の締結があります。この取組みは、局長会が先導して取り組んできました。締結した多くの包括連携協定は、地元の郵便局長の働きかけによるものです。局長が地元の首長などと直接話をし、内諾を取り、本社、支社に事務的な仕事をしてもらう形で、今も拡大しています。
 地公体との協定は、民営化後疎遠になった地公体との関係を元に戻し、更に親密になっていくことを最初の目的としました。ですから、協定を結ぶのが目的ではなく、協定を結んだあと、協定の内容に沿って、継続して、何をするかが大切であると言い続けてきました。 最初は、御用聞きから始め、次に協定に沿った取組みによって、地公体との関係が緊密になることで、郵便局の持つ公益性、地域性が益々発揮されるきっかけになれば良いのです。中期的には、地公体と郵便局がウインウインになることが理想です。
 他の民間会社も連携協定を結んでいますが、ほとんどが自分の会社の利益を優先しており、具体的な取組み実態はなく、協定を結んだままになっています。そのため郵便局は、忠実に取組みを実施してくれると評価されています。
 郵便局の真面目さがここに出ていると思いますが、この取組みは地域に根差す郵便局長の得意分野であり、地域の発展に協力する最も重要な取組みと捉えています。

■改正郵政民営化法に則って、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と一体的なユニバーサルサービスの推進が求められています。民営化後に一時は遠心力が働いたとの指摘がありましたが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命との連携についての所見を聞かせてください。

 民営・分社化後、5社体制になった時、グループ会社の一員としての意識は希薄で遠心力が働いていたと感じていました。郵便事業会社と郵便局会社が同じ郵便局に居ながら、局長室をどちらが使う(現実は郵便会社の支店長、局長は窓口)で揉めたり、エレベーターを使うな、駐車場を使うなとかの揉め事や、ゆうちょ銀行、かんぽ生命とはお客さまを取った、取られたとの争いも絶えませんでした。
 また、郵便の配達員、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の社員がお宅を訪問しても玄関を開けてもらえないので、「郵便局」と言って訪問したことが郵便局に知れるところとなり、郵便局の名を騙って営業するなと問題になったりもしました。
 いつの時代も、変化の直後はトラブルがつきものですが、改正郵政民営化法が成立し、郵便局会社と郵便事業会社が一体となり、日本郵便になってから、少しずつ改善されてきたように感じます。
 民営化直後より、JP労組には、全ての社員が所属するJP労組の役割は重要と言ってきました。会社間の遠心力が働いていたのを、組合員の力で求心力に変えていけないかとも話をしてきました。組合が会社別にならなくて良かったと思っています。
 また、会社が行うスポーツ大会等のレクリエーションもグループの精神的な垣根を無くす効果があると思います。
 グループ各社の連携を密にするには、人事交流も大切ですが、本社、支社だけでなく、郵便局レベルでもお互い情報交換を密にし、積極的に協力し合う姿勢が必要です。基本は、そこで働く社員同士の信頼関係を如何に構築するかということだと思います。

局長はオピニオンリーダーに

■全国の会員の皆さまへ改めて元気の出るメッセージをお願いします。

 われわれの会則にある活動目的を忘れず、それを明確にして、邪念は捨て、活動目的に向かって邁進することが重要です。
 組織は内部から崩壊すると言われています。一方、外圧があると組織は結束し、共通の敵に向かうものですが、安定した時代においても同一認識・同一行動をとり結束する組織でありたいと思います。
 地道に郵便局長としての活動を続ければ、必ず地域の皆さまから信頼される郵便局長になれます。郵便局長自身が地域のオピニオンリーダーになることが、郵政事業の発展、地域社会の発展に大きく貢献することになります。
 最近CSRという言葉を耳にしますが、私たちの会社はCSVを実践する会社だと私は考えています。CSRとは、社会貢献を通じて自社のイメージアップを図ることを目的としており、事業との相関性はほとんどありません。
 一方、CSVは自社の持つ強みを活かし、ビジネスとして社会問題の解決を図るという視点で企業活動を継続することで、課題を解決し持続可能な成長へつなげていくことが企業の差別化戦略とするならば、ここに郵便局長の活躍の場があると思っています。
 日本郵便は公益性と企業性を両立させる稀有な会社であり、その役割を果たすのが局長会だと思っています。また、そうすることで会社にとって局長会が必要不可欠な存在になっていくと確信しています。われわれの活動が日本郵便だけでなく郵政事業全体に大きく影響を与えることになります。
 地域社会に貢献できることに生きがいを感じ、郵便局長の仕事に誇りを持てるようになるまで、活動を続けてほしいと思います。継続すれば、必ず道は開け、郵便局長の存在価値も向上すると確信しています。
 最後に、風通しを良くし、活力ある、元気な組織を皆で作り上げていきたいと思います。創業150年まであと2年、全特設立70年まであと4年。今後、大きな節目が待っています。元気よく、活力ある局長会として、これらの節目を迎えましょう。


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