「通信文化新報」特集記事詳細
第6975号
【主な記事】
配達頻度、送達日数の緩和
[日本郵政]長門社長 早期の実現を期待
日本郵政の長門正貢社長は2月1日の記者会見で年末年始の業務運行について、おおむね順調だったと評価した。郵便の配達頻度や送達日数の緩和について「安定的なサービスの提供には、ユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要。日本郵便の今後を見据えれば早期の実施を希望する」との考えを改めて示した。また、スルガ銀行の一連の問題を受けて設置したゆうちょ銀行の社内調査委員会の調査状況について報告した。春闘については「扶養手当や65歳定年、働き方改革などに伴う非正規社員の処遇改善ということがテーマだろう。非正規社員は大事なステークホルダー、誠実にコミュニケーションを取って時代のテーマに応えていきたい」とした。
長門社長は、まず年末年始の業務運行について「年賀状、ゆうパックともおおむね順調に届けることができた。年賀はがきは対前年比で販売枚数が若干減少したが、52円から62円への値上げ、5年振りに購入者に賞品が当たるキャンペーンの復活、お年玉くじの賞品充実などによって、収益ベースでは若干昨年度を上回ることができた」と評価した。
「今後も人口減少、メールやSNSの普及などにより、減少傾向が続くものと思われるが、賞品の充実や喜んでもらえる取組みを行うほか、小中高校やショッピングセンターなどで各種の手紙教室を実施することなどにより、手紙需要の創出を図り、年賀状の差出しの意識の向上につなげていきたい」と述べた。
ゆうパックは「12月に約1憶69万個を取り扱った。全体では前年を5.8%ほど下回ったとはいえ、平常月の3割増し程度の個数となった。前年度からの大きな伸びが一巡したことに加え、大口契約の見直しなどにより、伸び率の縮小は続いているが、Eコマース市場の拡大は予想されて、引き続きしっかりと対応していく」とした。
普通扱い郵便物の配達頻度の週6日以上、送達日数の3日以内の緩和に関する制度改正については「郵便物の減少傾向が今後も継続する可能性が高いと考えられる中、ニーズに即したサービスの提供や働き方改革への対応が求められている。安定的なサービスを提供していくためには、郵便のユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要。日本郵便の今後を見据えれば、ぜひとも実現したい見直しで、早期の実施を希望することに変わりはない」との考えを改めて示した。
また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の寄付金付切手を3月12日に発行することを明らかにした。エンボス加工を施しており、凹凸があるものとなっている。「大会の準備運営に使用されるので、ぜひ多くの人にお買い求めいただきたい。日本郵便は、オフィシャルパートナーとして大会を盛り上げていきたい」とした。
ゆうちょ銀行のスマートフォンを活用した新しい決済サービス「ゆうちょPay」の取扱いを5月から開始することも発表した。店頭でのスマホ決済機能やマルチバンク機能などがある。2020年2月から郵便局でも利用できるように準備を進めている。
スルガ銀行の一連の問題を受けて、昨年8月31日に設置したゆうちょ銀行の社内調査委員会における住宅ローンの媒介業務に関する調査状況について報告した。ゆうちょ銀行のコンプライアンス部門監査部門等の役員のほか、外部の弁護士という体制で調査を進めてきた。調査対象は、ゆうちょ銀行が住宅ローンの媒介業務を行った賃貸併用住宅ローンの257件。
「住宅ローンは契約者が融資を行った物件に居住することが条件となっているが、当初から居住意思が無かったことが疑われる事案が24件、調査資料の偽装関係事案が8件あることが確認されたが、社員の関与は確認されなかった」とした。しかし「ゆうちょ銀行が媒介した中に、こうした不適切な事案が含まれていることが確認されており、事態を重く受け止めている。さらなる体制強化に取り組んでいく」と述べた。
ゆうちょ限度額については、12月の会見で貯金を大幅に増やすような経営は行っていない、日銀当座預金はほとんど増えていないと述べたことについて、具体的数字・グラフを示して説明した。
貯金残高のピークは1999年度の261兆円、他の国内銀行は286兆円だった。これが2018年度でゆうちょ銀行が180兆円、他の銀行は464兆円となっている。
とりわけ民営化の2007年以降はほぼ180兆円の水準で動いている。他の銀行は62%くらい増えている一方、ゆうちょ銀行は減っている。1000万円から1300万円に限度額が拡大して以降も、農協や銀行、信用組合、信用金庫と比べ、伸び率は最も低くなっている。日銀当座預金残高もゆうちょ銀行はほとんど増えていない。
昨年に報道発表したアフラックとの資本提携の進捗状況については「現在、株式の取得のための信託の設定、関係当局への届け出等の準備をしている。米国内のルールで企業が一定の要件を満たす株式を取得する場合、独禁法上の問題が生じないかを事前に審査するため、関係当局に事前届け出が必要。これらの準備は順調に進捗しており、遅くとも年度内には株式の取得を開始したいと考えている」と説明した。
このほか、日本郵政グループに関する「スルガ銀行の救済策で早々にノーの返事を突き付けた」「郵便局の老朽化対策工事に三井不動産が関係した」「グループ全体の大がかりのシステム構築が各社の抵抗で頓挫」といった雑誌記事などがあったことに関して、「このような事実は全くない」と反論した。
また、ダボス会議に行った折の印象として「目立ったのは安倍首相を中心とした日本グループ。日本が国際社会に貢献、気候変動に立ち向かうイノベーションを先導など日本の存在感が大きかった。国際経済のリスクは米中問題、貿易の問題にとどまらず、軍事や情報問題などにも関わり、相当長引くというのが各国の見方」などと明らかにした。
春闘に関する記者の質問には「正式に組合から要望書をもらっていないが、扶養手当や65歳定年、働き方改革などに伴う非正規社員の処遇改善ということがテーマだろう。非正規社員は大事なステークホルダー、同一労働同一賃金も勘案して議論になるだろう」との見方を示し、「誠実にコミュニケーションを取って時代のテーマに応えていきたい」とした。
「正社員、非正規社員の格差を是正する場合に、正社員の待遇を下げて非正規社員に合わせるのは望ましくないという政府の方針があるが」に対しては、「きちんと踏まえて対応していきたい。40万人のうち非正規社員は半分の20万人、大事な戦力になってもらわないと業務が回らない。一般職でも様々な手当があるが、総合的に常に見直して時代に則して対応していく」と語った。
ゆうパックの動向については「量を追うためだけにダンピングをすることは止めるということで、平均10数%の単価を上げた。昨年のピークと比べて量は少し落ちてきているが、価格効果があって売上げが増えている」とした。
落ちている理由は「一つはレート。値段を上げたので、全部郵便だけでなく他社にもというところがあると思う。2点目は一時的に他社にいろいろなことがあって、我々に流れていたのが少し収まったこと。3点目はアマゾンや楽天が自らラストワンマイル配達をすると言って、一部でトライしているところがある。4点目はゆうパケットの方が料金が安いので、小さいものはかなり流れているのではないか、現にゆうパケットは非常に増えている」などと分析した。
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